プロローグ -再度舞台の幕は上がる-
「……あぁ、そういえば一旦戻すって仰ってたか」
だんだんハッキリしていく頭に去来してくるのは、
「やぁ、おかえり」
「師匠」
天空に座する都市を久しぶりに見て、何となく
「さて、余韻に浸っているところ悪いけど、早速始めていこうか」
「本当に早速なんですね……」
わざわざ迎えに来て下さったかと思えばこれである。もう少し
「つくづく君の敬意は言葉だけだよねと思うんだよ、私は」
「普段の行いを思い出して、ご自身の胸に手を当ててくだされば、自ずと答えも見えてきますよ」
仕事ほっぽり出して東に遊びに出かけたり、かと思えばご飯時には戻ってきて、食べるだけ食べて今度は西へ遊びに行って、私が他の神様方や天使の方々に同情が込められた目線を受けることを思えば、これでも敬意を払っている方だと思うのだ。
「…………うん、何で私は罵倒されてないんだろうね」
「本当ですよ」
やがて、色々と思い当たるところがあったようで、師匠はご自身の事なのに不思議そうな顔をしながらそう零すのであった。自覚があってこれなのだから、本当に何で私は敬語を使い続けているのだろうかと思うことがあるのも許して欲しい所である。
「さて、じゃあ君の優しさに感謝をしつつ、儀式の間に行くとしようか」
「はぁ……承りました」
そんなこんなで、結局、調子を崩すことなく、師匠は軽い足取りで都市の中心部へと歩を進めていくのであった。私もそれに遅れないように追従していくとしよう。
「よぉし、これで終わりだ。気分はどうだい?」
「いえ、特に悪くはないですよ」
眩い神威の輝きを身に受けて行われた神化の儀を経て、私は師匠の言葉に手を握ったり腕を曲げたりしながら返事をする。特に不調は感じられないし、それどころか────
「特に変わった感じもしませんね」
「そりゃあそうさ。君は元から神化がある程度進んでたんだから」
生まれ変わったというのに上がりも下がりもしない調子に首を傾げていると、師匠はからからと笑いながらそんな言葉を零した。なるほど、そういえばそんなことも仰っていたか。
「まあ、あくまで神の末席として正式に登録するための儀礼的な意味合いの方が強いかな」
「そうですか」
続く師匠のお言葉に、私は気のない返事で一応の納得を示しておく。
そう仰られると、降りる前から既に師匠の仕事の肩代わりなんかもやっていて、更に私が神性を持っていたが故に、
「さて、これで暴走の心配もなくなって一安心! ……と言いたいところだけど」
「何か新しい問題でも?」
「いや、問題というわけではないんだけどね」
それなら降りれる時が来るまでゆっくりしておくかと思った矢先、水を差す様な師匠のお言葉で、私は辺りを見回していた視線を師匠に移した。
そこから語られた師匠のお言葉曰く、何でも、神性を高めるためにどういった形でもいいので下界で信仰を集めて欲しいとのことらしい。善行を積むも良し、神威を振るい超然とした力を知らしめるも良しと、手段は様々なのであるが、とにかく民衆から崇められることで私自身の力を高めて欲しいとのことであった。
何となく神様っぽいなぁとぼんやり思考して、とりあえずそれを了承すると、師匠がにっこりと笑みを深めたのが何処となく胡散臭かったが。
ただ、そのために本来降りる時よりも早く下界へ行くことができると知った時は、寧々との再会が早まるので素直に嬉しかった。
「それじゃあ、早速修行のために降りてもらうけど準備は良いかい?」
「えぇ、いつでもどうぞ」
というわけで、まだ天界に戻ってきて一時間ほどしか経っていないが、私は下界へ降りるための魔法陣の上で師匠と対面する。数年ぶりに見たそれに郷愁を覚えつつも、やはり、近い再会の時への期待は抑えられずに口角が自然と上がっていった。
「今度の世界では私も降りてくることは無くなるから、一人で頑張るようにね」
「寧ろ私としては師匠が一人で生活できてるかずっと不安でしたよ」
「お世話係がいるから大丈夫さ」
高まる魔力を感じながら、私と師匠は軽い調子で別れの挨拶を済ませていく。しばらくお会いできないことにほんの少し寂しさを感じている間にも、転移のための魔力は方陣に満ちていく。
「では、我が弟子よ、君の新生の神としての働きに期待しているよ」
「しかと御照覧あれ」
そして、いよいよ下の位階に転移するという寸前に、師匠は師としての顔で私に激励のお言葉をかけてくださった。それを受けて、私は一礼しつつ言葉を返すと、それと同時に私の身体は眩い光に包まれるのであった。
Main Chapter -神覧舞台- Restart
勢いに身を任せてる。