「えへ、えへへへ♪」
にこにこと少女然とした満面の笑みを浮かべて私の膝の上に座る寧々を、私は久しぶりに彼女のさらさらの髪の感触を味わう様に、ゆっくりと手を動かす。今日はもう店じまいしたので、来訪したお客さんに通報されるという悲しい事態は起こらないので安心して欲しい。
そんなことよりも、久しぶりに会った寧々は記憶の姿よりも幼くなっていて、美しいというより可愛いという言葉が似合うようだ。
「天都君天都君」
「どうしたんだい?」
「天都君はどうしてもう戻ってきてるんですか?」
身体を擦り付けて嬉しそうにする猫みたいな寧々を撫で続けていると、寧々は胸のあたりからこちらを見上げて、そんなことを聞いてくる。まあ、私も戻る前は寧々が中学生になってから降りてくると思って彼女にもそう説明していたので、その疑問は尤もなのであるが。
「話せば長くなるんだけど……」
そこから、私の長い長い、本当に長ーい思い出話が幕を開ける。
まず、天界から降りてきた私はまた前回の時と同じ様に、天の音色工房の居住スペースにある自室で意識が目覚めた。その時は寧々の魔法で巻き戻った分だけ時間を遡っていると思っていたのだが、意気揚々と外に出た私が目撃したのは、明らかに十年そこらどころではないほどに古い町並み。一瞬予想外の光景に固まってしまったものの、ちょうど落ちていた新聞に書かれていた日付を目にして、私はその場でひっくり返らんばかりに驚いてしまった。なんと、私が遡ったのは五十年近い時であったのだ。
それで私は大慌て……ということにはならず、一先ず前回と同じ様に資金繰りを始めることにした。行動するにせよしないにせよ、とにかくお金は必要だったから。
相変わらずの
ノウハウが分かっているので前回よりもだいぶ早く生活基盤を整え終えた私は、嘆いていても仕方がないとばかりに、与えられた長い時間を前向きに捉えて、信仰集めのために旅に出ることになる。
ところで、
やがて、旅を続けていく最中、私はそういった存在に悩まされている村や都市を多く目撃することとなり、私はこれを駆逐、討伐することになる。信仰集めという点もあったが、それ以上に、超常の現象によって苦しめられている人たちを助けたいと思ったからだ。
それから、私は
そんな生活を四十年近く続けて、国内の大きな異変も粗方片付け終えた私は、流石に働き通しで疲れてしまったのと、かなりの信仰を得て神威も強化されたこと、そして、寧々が時を遡ってくるであろう時期というのもあって、自身の正体をバラした一部の場所への訪問を除いて旅を一時中断することにした。以前の高校二年時のようにゆっくりとした時間を寧々と過ごすために。
「そんなことが……」
おおよその事を話し終えてコーヒーで一息つくと、相槌を打ちながらも口を挟んでこなかった寧々が、ほんの少し呆けた表情でそんなことを口にする。話のスケールの大きさに頭がついていってない様子だ。
「楽しかったのは楽しかったんだけど、やっぱり五十年は長すぎたかなって」
「そ、そうですよね……前世の生よりも遥かに長い時間を天都君は独りで……」
何だかちょっぴりしんみりしてしまった空気を変えるために、私が軽い調子でそう口にするが、それを聞いた寧々は余計に気落ちしていった。うむむ、ヒトとして言葉を紡ぐ機会が少なくなったせいか、会話も下手になってしまったか?
そんな風に思い悩む者が二人いる不思議な空気がしばらく続くが、それは意を決した様な寧々の発言で払拭されることになる。
「あ、天都君、私とえっちしましょうっ」
「…………What?」
その代わりに特大の爆弾を残していったのだが。
まさか、身長140cmほどの体躯の少女を犯せと仰っておられる? あ、目が本気ですねこの娘。
「え、えっと、あの、私とえっちしましょうっ!」
「あぁ、うん聞こえてる、バッチリ聞こえてる」
聞き間違いという可能性もあったが、二度も聞こえればそれは幻聴ではあるまい。どうやら寧々は私が齢十ほどの幼き少女を犯す鬼畜になるのを御所望らしい。何故、本当に何故そういう発想に至ったのだろうか。
「そ、その、ずっと独りで頑張ってきた天都君にご褒美と言いますか何と言いますか……」
そして、だんだん俯きながら、寧々はその発言に至った理由を零し始めた。
そりゃあ、私だって最愛の恋人と身体を重ねたくないと言えば嘘になるし、五十年間で寧々への想いが風化してしまったわけなどあるはずがない。
長い間人肌恋しい想いを燻ぶらせ続けてきたわけだが、だからこそ、今の幼い寧々にとって過酷な性行為を行うわけにはいかないのだ。何も肉体的な接触だけが恋人関係というわけでもあるまい。
「気持ちは嬉しいんだけど、今の寧々は子供なわけだし……」
「か、身体は確かに子供かもしれませんが、心は大人です!」
私がやんわりと断りを入れようとすると、寧々はなおも食い下がってくる。少し必死過ぎるような気がするが、これはもしや……。
「寧々、もしかして自分が我慢できない?」
「……」
思い当たったことを私が口にすると、私を見上げていた寧々の顔がふいっと横に逸れていく。この反応はどうやら図星らしい。
「寧々……」
「だって、だって、私だって寂しかったんです……」
ジト目を送りながら、本当は自分の欲を叶えようとしてた寧々の頬を両手で挟んで再度こちらに向けさせると、寧々は拗ねた表情をしながらそう零した。何だか、外見と相まって酷くマッチしているような気がする。
「確かに、天都君と比べると全然短いですし、身体への気遣いも嬉しくて胸がキュンキュンしちゃうんですけど……い、今は、それよりも天都君の温もりが欲しくて……」
かと思えば、寧々は徐々に顔を赤く染めながら、見た目にそぐわぬ色っぽさを醸し出しつつ私へと熱視線を送ってきて、少し遠回りに抱いて欲しいとオネダリをしてきた。小さくなっても寧々はやっぱり寧々である。
「寧々はえっちだねぇ」
「こ、こんなにえっちにしたのは、天都君なんですから、責任取ってください……♡」
以前の彼女と同じものを幻視して、それが何だか面白くて揶揄いの言葉を口にすると、寧々は瞳を蕩けさせてオネダリを重ねる。
ここまで言わせて恋人に手を出さないのは流石に情けないか。身体は小さいと言えど、考えてみれば色々とヤりようは幾らでもあるわけであるし。
「よしよし、じゃあ寝室に行こうか、寧々」
「えへへ……」
そんな大層な文言を使うほどでもないが覚悟を決めて、私は寧々を一撫でしてからそのまま彼女を抱え上げて移動を開始した。向かう場所は先程口にした通り、私と寧々が以前何度も身体を重ねた寝室だ。
昼下がりの淫行が静かに幕を上げる。
既に「完成」されているので、天都君の精神はどれだけ経っても老成しません。