原作との絡みについては、独自解釈がかなり入る予定。
昔々、中国で生まれた光輝く赤ん坊。
それが
そして、次々と生まれる不思議な力を持つ子どもたち。
砂を操り、正規兵を次々と生き埋めにした少年ゲリラ。
電流をまるで飴細工のように素手で扱う少女。
確率を超越した偶然をまとわりつかせ、不幸を周囲にもたらした双子の姉妹。
世界は震撼し、異能を持つ子どもを恐れた。
迫害、隔離、謀殺。
抵抗、逃走、闘争。
生まれ続ける子どもたち。
彼らが大人になり、第二世代に異能が遺伝することが判明したとき、人々は知った。
そう遠くない将来、世界は彼らの異能に塗り潰されるのだと。
そして、異能は個性と名を変えた。
持つ者が持たざる者を数で上回り、異常が日常になった。
黎明期、混乱期、安定期……。
その中で生まれた新たな言葉。
ヴィラン。敵を意味する言葉は、個性を悪用する犯罪者を指し示す。
ヴィジランテ。警察や軍隊で抑えきれぬヴィランに対抗するべく、民衆の中に生まれた自警団。
そして法整備が現実にどうにか追い付き、ヴィジランテの行動を免許制度で管理するようになり、誕生したのが……ヒーローだ。
個性を自由に使うことを許された者がヒーロー。
個性を許可無く使用し、犯罪を為すものがヴィラン。
私達は5世代目の個性持ち。
今日もテレビで、新聞で、Webサイトで、ヒーローとヴィランの織り成す狂想曲を眺めながら生きている。
ここまでは、常識。皆の生きる世界。
ちょっと常識と異なる私の家庭環境は……。
『いーぶーきちゃん♪宿題終わったぁ?ママと遊びましょー。』
大きな胸を揺らす母。
髪は綺麗な紫。シャギーも揺れる。
タレ目気味の、甘えるような眼差し。
黒いドレスは胸元が丸見えだし。
『宿題は終わったけど……母さんのお客さんは帰ったの?』
まあ帰ったから私の自室に入ってきたのだろう。
『うん。お仕事の打ち合わせは終わりぃ~。だからぁ、ママと遊ぼ?……あ、てゆーか、ママの事はママって呼んでくれなきゃ嫌よぉ。』
若々しい美貌と言えるだろう。
実際、14才になる私という娘がいるようには見えない。
近所でも評判だ。
『お仕事……
最近、母は仕事を数こなしているようだ。
『だーいじょーぶよぉ。ママ、今は表にでないからー。』
『気をつけてよね。せっかく転校も引っ越しもなく10年以上もここで暮らせたんだから。私の高校受験も有るし。』
『うん、うん。そーねー。ママ、伊吹ちゃんが立派なヴィランになれるよう頑張るから。お金もコネも沢山準備するからね~。』
相変わらず無邪気に禍々しい事を口にする。
『……あのねぇ。』
わかっている。母は、不適合者で破綻者で犯罪者だ。
よぉく知っている。
逆らっても無駄だ。
良識的な言葉を母は理解できない。
好きなように生きてきた。
好きなように生きている。
母は私を愛してくれている。
けれど、その愛は。
『ね、だから遊ぼぉ♪』
諦めて、私は勉強机の前から立ち上がる。
『……どこでするの?ここ?お風呂場?』
『あ~、どうしよぉかなぁ。んー、あ、その前にぃ♪』
母はポケットからシガレットケースを取り出すと、細く長いタバコを抜き出した。
はぁ、やっぱり……。
『それはやめて欲しいんだけど……。』
『えぇ、だって伊吹ちゃん最近ドライなんだものぉ。ママね、伊吹ちゃんの可愛い鳴き声とぉ、トロンってした目が好きだからぁ。』
咥えて、銀色のライターで火を点ける母。
吸い込み、赤々と燃えるタバコの先端。
『はい、ふ~っ♪』
母が煙を、いや、タバコの煙に混ぜた個性の効果を吹きかけてくる。
甘い、香り。
頭の芯が、瞬く間に痺れて……。
『あ、あ……。もぅ、母さ……ママのいじ、わる。』
あ、ダメ。
もう、うまく、考え、られないの。
あたま、ぼーっと、気持ち、いい。
ママ、ステキ。
あ、おふろ、いくの?
うん、いぶき、おふろだいすき。
『伊吹ちゃん。ママねー伊吹ちゃんのこと大好きよぉ。』
『いぶきもママのことだいすき♪おふろできもちいいこと、いっぱいしてね~。』
ママ、キレイでやさしくて、いぶきのことたくさんきもちよくしてくれるの。
おふろ、たのしみー♪
……業が深いな、我ながら。