『朝よぉ♪伊吹ちゃーん。』
『起きてます。』
起きないと、触って、キスして、舐めてくるじゃないですか。
そう言い返すと。
『ぶーっ。つまんなぁい。昔はママの頬とか唇とかお返しに舐めてくれたのにぃ。』
いくつの時の話をしてるんですか。
自室から、階下のダイニングまで降りながら、先日の黒霧さんの依頼について考えます。
雄英高校の内部情報を入手するための協力者を作って欲しいとの事。
私や母の個性は、呼気を相手に吸わせることで心身に影響を与えるものです。
例えば、向かい合って話しているだけで、相手の警戒心を解く、酒に酔いやすくするなどできますし、抵抗力の弱い相手なら、キスをして直接吹き込めば、麻痺や失神させることも容易いです。
時間をかければ、相手の意思をねじ曲げたり、記憶を改竄することも可能です。
更に、闇メーカーが精製したサポートアイテムであるタバコを併用すれば、効果を劇的に上昇させたり、作用する時間を伸ばすなど、様々な曲面での対応力が上がるのです。
つまり私たち母娘は、うまく立ち回ることで、本人の自覚の無いままに協力者や内通者を作ることができるわけです。
ヴィラン連合の目的まではわかりませんが、ようはトップクラスのヒーローを排出している雄英高校にテロを仕掛けたいんでしょうね。
と、言うわけで。
『父さん、母さん、私……雄英のヒーロー科を受験したいの。』
朝食の席でそう口にしました。
『まぁまぁまぁ。どぉしたの?伊吹ちゃんってば。』
……空々しいですね、ほんっとに。
『人を助ける仕事につきたいの。その為にはヒーローライセンスはきっと力になる。そして、雄英で受けられる教育も、雄英で出会える人達も全てが大きな糧になるわ。』
まぁ全部が嘘では無いですね。
母を助けるヴィランになるのですから、表に出ないヴィランであれば、ヒーローを隠れ蓑にするのは悪くないです。ならば一流たる雄英に入学する意味はあります。
もっとも、内部工作で在学中に雄英が潰されたらそれまでですが。
『伊吹ちゃん……そこまで考えていたなんて。ママ嬉しいわぁ。ね、パパも嬉しいでしょ♪』
『あぁ、嬉しいとも。私達は賛同するよ、伊吹。』
母は嬉しそうに笑い、父も微笑んで私の希望を許してくれました。
……当たり前ですね。
父と呼んではいますが、私とは血のつながりはありません。
母が選んだ隠れ蓑。
大手サポート会社の資材管理部門長。
ヴィランに婚約者を、家族を殺され、お腹に子を身籠ったまま身寄りを亡くした……という設定の母を救い、愛した善人です。
まぁその行動も母の仕込みですが。
私は出生の秘密を知らないという事になっているので、実の親子として、たくさんの愛を注いでくれています。
母の言動には、己も気がつかないままに原則的に従うようになっているのですが、母も家庭内では良き妻を演じているため、平和な家庭を維持できています。
職場における立場は母と闇サポートメーカー、ブローカーの方達が有効に利用しているようです。
ちなみに母に、父の事をどう思っているのか聞いたことがあります。
『大事な道具で隠れ蓑よぉ♪大切に扱わないとねぇ~。
だからメンテナンスもしっかりしてるでしょ?』
『それにぃ、ママは女の子の方が好きだけど、男の人と
平常運転で最低ですね。
ちなみに、実の父についてはまだ教えてくれません。
大物ヴィランだったりするのでしょうか?
さて、着替えて登校……何故か
母が用意してくれていた着替えです。
『……母さん?何ですか、これは。』
ニコニコしながら自室に入ってきた母が、手にした携帯端末を操作すると、膨らみが振動します。
『新しいオモチャを買ったの♪使い心地を伊吹ちゃんに試してほしーなーってぇ。』
大人のオモチャ、ですか。
『
『うん♪ダメぇ?』
……敏感なところを刺激されてしまいます。
こんな物をはいて登校なんて、できるはずも有りませんが、有りませんが、その、でも。
『……まさか1日中ではないですよね?』
『んー、伊吹ちゃんが学校に着くころにはぁ、いったんスイッチ切るねー。そっから先はお楽しみって事で。』
『~っ。……帰ってきたら!私の事たくさん可愛がってよね!ママ!!』
『はぁい♪』
意を決して、オモチャが仕込まれた下着を身につけます。
……何事も、無けれ、ば、うッ!い、いのですが。
……何事も無ければよいのですが。
巨大ヴィランと巨大ヒーローが闘うところに出くわしたりしないといいですね。