※この作品はR-18です。

私の母は淫靡なヴィラン   作:炬燵猫鍋氏

6 / 10
今回はエロ無しです。


纏う衣は清濁で

オールマイトは平和の象徴。

存在そのものが犯罪の抑止力。

組織だって活動していたヴィランはことごとく彼と、彼に勇気づけられたヒーロー、警察組織の前に破れ去り、今は散発的に暴れるヴィランばかりになった。

 

『でもね~。人の悪意と欲望は滅びないのよぉ。』

 

嗤う母。いや、洗脳ヴィラン〝スモーキング・クィーン〟。

 

『闇の市場もすっかり冷え込んじまった。敵(ヴィラン)連合に期待したいね。とはいえ、あんたと俺が集めてるのは今のところチンピラばかりだしな。なぁ、クィーン。雄英を揺さぶるって作戦、どうなんだろうな。』

 

闇のブローカー、義爛さん。

 

『オールマイトが雄英の教師に赴任するのは間違いないわぁ。後継者でも養成するんじゃないかしら~。』

 

スモーキング・クィーンは携帯端末……普段使っている普及品ではなく、ハッキングや対ハッキング機能に優れた闇市場のサポートアイテムですね。それをいじりながらシガレットホルダーで紫煙を燻らせている。

 

『5(・)年(・)前(・)からオールマイトの活動は明らかに変化しているわぁ。サイドキックの独立。ヴィランの制圧件数は相変わらず多いけど、メディアへの対応の一(・)件(・)あ(・)た(・)り(・)の(・)減(・)少(・)。……異変が起きているのは確かね。』

 

義爛さんが咥えたタバコに、クィーンは自分のタバコの先端を押し当て火を点けてあげました。

シガーキスですか。

 

『どーも。……つまり、オールマイトを擁する雄英に打撃を与えれば、次代の時代に楔を打ち込める、と?』

 

艶然と微笑むクィーン。

 

『可能性は大きいわぁ。オールマイト、私はここにいる。そして、私の育てた愛しい娘が、お前の元に忍び寄るンだから。』

 

『忍び寄れるかどうかはこれからですけどね。』

 

私はクィーンにそう答えると、身につけた装備のチェックを進めます。

 

『伊吹ちゃんなら大丈夫よぉ♪あ、ママとシガーキスする?』

 

『しません。……個性使用時以外は喫煙はしないって言ってるでしょう。』

 

ここは義爛さんと母が手配した、父の会社の地所内に有る倉庫……の地下に有る隠し部屋です。

ちょっとした公園並みの広さを有するこの場所が、スモーキング・クィーンのアジトの一つとなります。

 

今日の目的は、雄英の実技試験に向けた装備の確認と、ヴィランとして耳目に触れる形の活動をするときの装備。

その双方の確認です。

前者だけならこの様なシークレットスペースを使う必要は無かったのですが。

 

まずは表向きの装備。

あくまでも父の会社のコネという形で、社内のラボで作製した物。

正式に、ヒーローライセンスの無(・)い(・)少女が使用する物として国の認可をうけた装備。

 

ガントレットとグローブ、ロングブーツ……というよりはグリーブですか。

その手足に付けるパーツから伸びた伝達チューブが、私の口許を覆うフェイスガードに繋がっています。

 

『私の表向きの個性、息使いを攻撃と移動補助に用いる装備ですね。』

 

射撃試験スペースに移動しながら、手足の取り回しを確認します。

少し重いですね。試験までに体力増強も課題となりそうです。

 

20メートルぐらいの距離でしょうか。

人体の形を模したターゲットが並んでいます。

 

『まずはアイテム無しで。』

 

個性を発動。呼気を圧縮します。

常に体内には大量の空気を蓄えているため、大きく吸気をするた(・)め(・)は必要ありません。

 

ブォッ!!

 

口から放った圧縮空気は、衝撃をもってターゲットに亀裂を入れます。

常人ならこの一撃で骨を折れるでしょう。

 

『悪くないな。』

 

義爛さんがコンソールを操作し、ターゲットが交換されます。

 

『右腕の装備。』

 

右腕のガントレットに備え付けられた射出口をターゲットに向け、私はフェイスガードから右腕への伝達チューブに息を吹き込みます。

 

ガッ!!

 

円錐形のバレットが、ターゲットにめり込み、大きく破片を散らせます。

粉砕骨折、内部致命傷レベルですかね。

……国の認可、おりるんですねー。

 

『左腕の装備は射程が短いので……移動補助!』

 

今度はグリーブへと息を吹き込むと……体が軽く浮き上がります。

とっ、とと……スケートの感覚に近い、ですかね。

床を滑って加速。

 

ターゲットまで5メートル!

左腕を向け、射出!!

 

ガガガガガッ!!!

 

左腕から放たれたのは、超硬合金の極小のキューブからなる粉(・)。

ターゲットも、その背後のコンクリートの壁もズタズタです。

 

『悪くないですね。後は立ち回りの練度を上げることと、体力増強ですか。』

 

『雄英のテストはおそらく対人戦闘、障害物踏破、対ロボット戦闘のどれかだ。充分対応できるぜ。合格したら、それをベースに被服控除申請をすればいい。……どうした、クィーン?』

 

『もっと可愛いのが良かったのにぃ。』

 

『……正式コスチュームまで待てよ。』

 

クィーン……母は通常運転ですね。

 

『では、裏装備……コントロール・プリンセス用のヴィラン・スーツですか。着替えてきます。』

 

『ママが手伝ってあげましょうかぁ?』

 

『余計なところを触られるからイヤです。』

 

『……はぁーい。』

 

 

 

特殊繊維とラバーのアンダースーツ。

先ほどの装備よりずっと軽量化されたロンググローブとロングブーツ状のパーツ。

鼻から下を完全に覆い隠すマスク。

瞳の色を赤く偽装するカラーコンタクト。

桃色の地毛を押し込んで、漆黒のウィッグをなびかせる頭部防護性も有するヘッドギア。

 

なるほど。

 

装着して戻ってくると、クィーンがきゃあきゃあと喜びました。

 

『伝達チューブは細分化してアンダースーツに組み込んである。』

 

ふむ。動きやすいですね。

 

『右手のパーツからは、お前さんの個性を強化するドラッグをミスト、スモーク、シャワーと切り替えて放出。』

 

『左手のパーツからは、ニードル射出、パイル突出、ネット発射だ。ニードルとパイルは超超硬合金製。ネットはカーボンと耐熱性の高い特殊樹脂の混合。』

 

『セレクターはベルトについてる。後は、マスクのボイスチェンジャーと、隠し武器としてウィッグの中に混ぜたワイヤーブレードだな。』

 

なかなかの装備ですね。特にニードルやパイルは完全にプロヒーローの殺傷前提、と。

 

『改善や修繕はすぐやらせる。何かあったらすぐ連絡をくれ。』

 

『これでママと現場に行けるわね♪可愛いヒーローでもデビュー戦で拉致っちゃう?』

 

それも楽しそうですけど、あまり目立つのは良くないのでは?

というか、表に出ないで暗躍するヴィランでしょうが、母さんは。

 

『これから受験に向けて忙しいんです。ヒーロー相手にデビューしてる暇なんてありませんよ。』

 

『え~。つまんなぁい。』

 

『だから……ヴィランやも(・)ど(・)き(・)の 女性でも持ち帰って、ここで可愛がりましょう? 飽きたらどこかに売り飛ばせばいいんだから。義爛さん。後腐れのなさそうな小物、クィーンに紹介してくれません?』

 

『ステキ♪ステキ♪さすがは私のお姫様ぁ。』

 

私の言葉に義爛さんは苦笑しました。

 

『さすがはクィーンの娘だ。優等生ぶってるが充分あかれたヴィランだなぁ。。いいぜ、だいじな商売のパートナーだ。ご要望に答えましょう。』

 

『よろしくお願いいたします。あ、そういえば……義爛さん。〝不死身の少年〟って知ってらっしゃいます?』

 

私はここ数日、ネットを騒がす少年の話題を口にしました。

動画投稿サイトにアップ・削除を延々と繰り返しているその動画は、〝ヒーロー殺し〟の異名を持つヴィランの殺害現場に出くわし、現場の混乱に巻き込まれて死亡した少年が、その場で復活するというものです。

喉を切り裂かれて倒れている少年の側で、赤く輝く靄が体を……全裸の肉体を形成する様は、以前に見た瓦礫の下敷きから復活した少年と同じものでした。

 

つまり、少なくとも2回は生き返った事になります。

しかも、自分の死体の側で新しい体に生まれ変わって。

 

なんというか、レアですよね?

 

『あぁ、名前は藤宮続行(ふじみや・つづく)。折寺中学の3年生だ。アイドル系ヒーローの路上ライブを見に行って、そいつの上司を狙ったヒーロー殺し……ステインの起こした事件に巻き込まれたみたいだな。』

 

『お詳しいですね。』

 

『まぁ極レアだしな。ヒーローになるなり、ヴィランになるなり、将来こ(・)っ(・)ち(・)に来るかもしれない逸材だからネタは押さえておくさ。お嬢さんは何でまた?』

 

『まぁ今は雄英に入る事、協力者を作ることを優先しますけど、やはり、不死身というのは気になるでしょう?』

 

あら?どうしたんですか母さん?

 

『伊吹ちゃ~ん!そんなどこかの馬の骨に心動かすなんてやめてぇ!ママ寂しいのおっ!』

 

 

……はぁ。相変わらずですね。

今晩は又おそわれそうです。

 

大丈夫ですよ。私は……ママだけの伊吹だから。




次回はヴィランのデビュー戦か、それともお付き合いしてる女性との日常回かな?
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