巨根なグラン君が色んな女の子にいいようにされたりしたりする話 作:空使い
正直冗長過ぎて面白くないかもなのでそのうち大改稿したいです。
だから読み飛ばしたってイイノヨ。
アリーザは、自分の興味を一ミリたりとも刺激しない ”ルーマシー環境史・第七巻 ~苔植物・地衣類~” の二百三ページから視線を上げると、もう何度目か分からない視線を棚ひとつ隔てた先に見える黒い暖簾にさりげなく走らせた。
時々、若い男性がフラッとそこに近づいていっては、チラリと自分の方を見て、一瞬ギョッとしたような顔をしてから何事もなかったように脇にそれてゆく。
(つ、次っ……今入ってる一人が出てきたら、今度こそ……!)
そわそわしながら視線を本の上に戻し、もはや視力検査目的としか思えない極小の文字の上を一瞬滑らせた後、またチラリと暖簾を気にしながらページをめくった。
(――出てきたっ)
暖簾をかき分け、だいぶ年かさのエルーン男性が小脇にカラフルな一冊の本を抱えて淀みない歩調で堂々と会計に向かっていくのをみはからい、アリーザはやたら重い本型の鈍器を素早く元の棚に差し込んだ。
そのまま、つとめて冷静に、視線を泳がすこともなく、速くも、しかし遅すぎもしない絶妙(と本人が確信する)な歩調で暖簾に近づくと、一切の迷いもよどみもなく、さも馴染みの屋台の暖簾を潜るように颯爽とそこをくぐり抜け――ようとして、ツノに引っ掛かってカターーンッと大きな高い音を立てて落っこちた、
”18禁”
と書かれた暖簾を、盛大に赤面しながらあたふたとかけ直し、逃げるように奥へと入っていった。
「――あああ、焦ったーっ! も、もうっ、ナンで固定してないかなー! 信じらんないっ!」
アリーザ(17)は完全に八つ当たりな怒りをマスクの中に小声で発散させつつ、狭い通路の両脇に高くそびえる棚にダテ眼鏡越しの視線を向けた。
「……うっわー……す、スゴい……」
そこに並んでいたのは、肌色、肌色、肌色――
全裸で、あるいはより扇情的な半裸で、ひどくエッチなポーズで股を広げたり、自分のアソコを大きく広げたり、大きくなった ”おちんちん” を上や下で咥えたりしている色々な種族の女性が、最新の高画質魔導プリントを惜しげもなく使用して印刷された表紙がズラリと並んでいた。
「うっわー……うわー…………うわー……」
顔が真っ赤になっているのがわかる。
アリーザはなんだか頭がクラクラした。
ココだけ室温が何度か高いような気がして、羽織っているローブの中でじんわりと全身が汗ばむのを感じる。
ある程度予想はしていたが、それがまったく幼稚なモノだったと一瞬で分からされてしまった。
ココは、ヤバい。
「う、うわー……うわー……こ、こんな……うわ……」
完全に語彙が死んでいる。
熱に浮かされたようにフラフラと棚に近づき、何となく手に取った、ドラフ族の女性が表紙の本を裏返して、裏表紙の過激な写真の数々に、思わず鼻血が出そうになった。
ジュンっ、とアソコがアツく濡れるのが分かる。
あまり長くココにいるのはマズい、そう思いながらも、手がページをめくるのを止められない。
「うわー……スゴい……お、おちんちんってこんなになっちゃうんだ……うわっ、くく、口っ!?……きっ、汚くないのかな……」
背中を丸めて、鼻息荒くページをめくる。
「……ほ、ホントにココに入っちゃうんだ……こんな、太い……指一本くらいしか入んないのに……大人だからかな……? わわわっ、コレっ、この白いのがせーえき……あ、赤ちゃんの……わわっ、わわっ、どっ、どろどろしてる……ウソ……このヒト赤ちゃんできちゃうのかな……? うわ、口の中に……の、飲めるんだ……どんな味がするんだろ……」
モジモジと太ももを擦り合わせながら、ブツブツと独り言を呟くドラフ少女。
目深にかぶった帽子、でっかいサングラスは写真を見るために下にずらされ、鼻から下をマスクでおおい、魔法使いみたいなローブを羽織っている。
完全に不審者だ。
そして嘆かわしいコトに、精液の味を想像して小ぶりな唇に指先を当て生唾を飲み込んでいるこの不審者は未成年で、しかもどこぞのお姫サマだった。
世も末である。
しかし待ってほしい。
かのバルツ公国の大公継承権を持った良家の息女であり、武勇に名だたる炎鳴流の継承者であり、花も恥じらううら若き乙女であり、幼なじみに恋をするごく普通のドラフ族の少女でもある彼女が、こんな表通りから一本離れた所にある大型書店のエロコーナーに入り込んでいるのは、ナニも彼女が並外れたドスケベであるからではない。
「はあっ……はあっ……うわぁ……うわわ…………」
……いや、多少ドスケベであったとしても、それだけが理由な訳ではないのだ。
「ちょっとちょっと、アリーザ……」
「うん? マリー?」
修行でかいた汗を熱いシャワーで洗い流し、さっぱりとしたキモチで甲板を歩いていたアリーザに物陰から声をかけたのは、団員仲間のトレジャーハンター、マリーだった。
年も近く、同じ火の魔力適正持ちということもありよく会話するマリーがイタズラっぽい表情で手招きするのを見て、アリーザはなにか面白いコトでもあるのかと素直に積み荷の陰に入っていった。
そこにはマリーだけでなく、同じく最近よくつるむドラフ族の女の子、トレジャーハンターにして重篤なスリル中毒患者でもあるカルバもいた。
彼女もまた物陰に小さな体を隠し、小さめの樽に腰掛けて華やかな笑顔で、やあっと陽気に声をかけてくる。
それに返事をして、差し出された空箱にお尻をのせると、さっそくマリーが探るように話しかけてきた。
「あのさっ、最近スタンとの仲って進展した?」
「なっ、とっ、突然なんなのさっ!?」
「いーからっ!」
「……別にナニも。進展ナシ」
一瞬、こんなトコロにわざわざ呼び出して突然何を聞いて来るのかと驚いたが、同じ船の女性同士、そういった話題は珍しくもないし、スタンとの仲についてはマリーやカルバにも相談したコトがあったので正直にそう答えるアリーザ。
「そう、良かった♪」
「……ナニ? まさかそれだけ言うために呼んだんじゃないでしょ?」
不機嫌そうに膨れるアリーザに、ゴメンゴメンとまったく詫びれた様子もなく言ったマリーは、
「いや~、そんな寂しい独り身仲間なアリーザちゃんに、あたしたち二人で発掘してきたトッテオキのお宝を見せてあげよっかなって。ね、カルバ?」
「にしししっ……まあ、お姫様なアリーザちゃんにはちょお~っと刺激が強いかもだけど……ぶっつけ本番もスリルがあってイイけどさっ、スタン君との恋の発展のためにも、下調べくらいは必要かなってね♪」
そう言って、いぶかしむアリーザの目の前に二人が鞄から取り出したのは――何冊もの古い、くたびれたエロ本達であった。
「こっ、ココココこ、コレって……!?」
「ふっふっふっ~! 正真正銘、未成年お断りのエッチな本よ!」
「この前立ち寄った町。あそこの裏道をマリーと探検してたら今にも崩れそうなスリル満点の古本屋を見つけてねっ! その店のすみっこにこんな本ばっかのコーナーがあってさ、もうビックリしちゃったよ」
マリー(15)とカルバ(18)が興奮に頬を赤く上気させながらいかに勇気を出してモウロク気味な爺さん店員からこのエロ本を購入したかを力説しているのを聞きつつ、アリーザは甲板に広げられたその白黒のエッチなイラストが気になってチラチラと視線を泳がせていた。
「そ、それは分かったケドさ……カルバは十八だけど、アタシらはまだ未成年じゃん。こ、こーいうのはさぁ……」
「……見ないの?」
「…………見る」
「おやおや~? アリーザもやっぱり興味あるんだ~♪」
「べっ!? ……別に、普通だし……マリーだってまだ十五才じゃん! 二個下!」
「にへへへ……こういうのもさ、ちょっとスリルあるよね。ドキドキしちゃうぜ……♪」
ひとしきりじゃれた後は、三人ともムッツリと黙り込んでそれぞれ気になった雑誌のページをめくっていった。
どれも一昔も二昔も前のモノで、カラーどころか魔導プリントですらなかったが、微に入り細に穿った写実的なイラスト達は、ヒト族のエロに対する情熱の凄まじさというか、どれも奇妙な程に生々しくエロティックで、こういったド直球なエロスに初めて触れる三人は夢中になって読みすすめてゆく。
アリーザも、公女として大切に育てられてきただけあって、最低限の性教育こそ受けていたが、こうした直接的な娯楽目的のエロスに触れる機会はなく、新鮮な驚きにドキドキしっぱなしであった。
二人もこういったコトには詳しそうに見えるのに、実情はたいして違いもないらしく、時折、むはーっ! とか、うわぁ……とか呟いたり、スゴいページを見せあったりして、少女三人で不健全な楽しみに大いに興奮しつつ盛り上がった。
一通りの雑誌に目を通したあと、ふと、思い付いたようにマリーが言った。
「ねぇねぇ、アリーザさ……もしもスタンと付き合うコトになったらさ、最終的にはこういうコトするんだよね……?」
「なあっ!? ちょ、ちょっとマリー、やめてよっ! か、考えないようにしてたのにっ」
顔の前でパタパタと手を振るアリーザに、カルバがムムムと唸りながら追い討ちをかける。
「うーん、でもまあ、普通そうだよね。私達だってそうやって生まれてきたワケだしさ」
「うう……で、でも、そーいうのはまだ早いっていうか……」
「……もしスタンとそうなったらさ、詳しく教えてよ。参考にするからさ」
「ぜっ、ゼッタイイヤっ!!」
「ちょっ――シーっ! シーっ!」
顔を真っ赤に紅潮させ大声で叫び、すぐにハッとした様子で慌てて口をおさえるアリーザ。
こんなトコロ、リーシャやカタリナなんかには絶対に見せられないし、万が一男性団員なんかに見つかった日には、あまりの恥ずかしさに船を降りるしかなくなってしまう。
「……そ、そんなのムリだよ……恥ずいじゃん……」
「えー……私達だって勇気出してこんなエッチな本買ってきたんだよー。……じゃあさ、アリーザもどこかでこういう本、仕入れてきてよ」
「なっ、なんでそうなるかなっ!?」
「だーって、アリーザが自分の体験談は秘密にしたいって言うからさ~。それを期待して見せたげたんだよ? なにかしら代わりのモノをもらわないとさ~、トレジャーハンターとしては♪」
「うんうんっ、トレジャーハンターとしてはっ♪」
「うう……くそー、ハメられたぁ……」
そんなこんなで、いつになるかも分からない初体験を暴露するなんて出来るハズもなく、アリーザは次に寄る島で最新のエロ本を仕入れるコトになってしまったのだった。
はふーっ! と大きく息を吐き、記念すべき一冊目を閉じたアリーザは、オモテで売っているセクシー雑誌がいかに子供だましであったか、白黒イラスト程度で鼻息を荒くしていた過去の自分達がいかに幼稚であったかを思い知り、ナゼかマリーやカルバから一歩先んじたような、優越感にも似た全能感に興奮をおさえられなかった。
処女のクセになかなかの童貞力である。
今度はいくらか冷静に棚に視線を走らせ、次に手に取る表紙を吟味する。
気分は既にベテランだ。
停留した船のタラップを降りている最中は、どうしてこんな約束をしてしまったのかと後悔しかなかったが、今となってはそれも杞憂だったと分かる。
ココに入ったばかりの動揺は既になかった。
自分の背の二倍はゆうにありそうな高い棚に沿ってヒト一人分の狭い通路を歩きながら、所々にささった間仕切りのジャンル分けをドキドキしながら見送っていく。
(種族毎にも分かれてるんだ……ど、ドラフが一番多い……素人……熟女……アイドル……学生? 学生が出てるのもあるの!? ここは……巨乳……エルーンにもおっきいヒトいるんだ……妹系って……うわわ、ハーヴィンは完全に分けられてる。……企画ものってナニよ)
ドラフ女優とエルーン男優がからむモノからめぼしい作品を何冊か見つけ、厳選に厳選を重ねた後、そのうち二冊をキープして小脇に抱え、更にマリーとカルバ用に子供っぽい顔のヒューマンモノと、拘束されてイタズラされるドラフモノを一冊ずつみつくろって小脇に抱えた。
その辺りでいいかげんクラクラと酔ったような気分になってきたアリーザは、コレをどう会計に通そうかとシミュレーションしつつ、なんとなく棚に目を走らせながら入り口に向かって歩いた。
途中ふと、企画モノコーナーのけして狭くない一角が目に留まった。
「うわっ……コレ、騎空士がテーマなんだ……」
そこには、いかにも騎空士です! な格好をした女性が、騎空艇の上であられもない姿になって何人ものおちんちんに囲まれているモノや、女騎空士的な姿の女性が縛って吊るされ、おちんちんなんかにはゼッタイ負けない! とデカでかと煽りが書かれている本やらが何冊も並んでいる。
自分自身騎空士なだけに、なんとなく興味がそそられるコーナーではあるのだが、アリーザはその中でも、ある一冊の上に視線が吸い寄せられるのを感じた。
”スケベ騎空士三本勝負! 格闘娘のエロ下剋上 ~降参禁止のデスマッチ! 許してくださいっ、ホントにもう一滴も出ないんですっ……!!~”
アリーザはフラフラと棚に近づくと、平積みの棚の上にキープした四冊を置き、ナゼかひどく緊張しながらその本に震える手を伸ばした。
ゴクリ……と生唾を飲み込む。
立ち読み防止用なのか、新作らしいこの本には透明なカバーがかけられ中身を見ることが出来ないが、表紙だけでもナニか運命的に強く引かれるモノを感じる。
エロ本に運命を感じる17才公女(処女)。
女優はドラフ族……キレイな銀髪で、長い髪を頭の後ろで一くくりにして額にサークレットをはめている。
格闘娘をイメージしてか、安っぽくてテカテカした赤い生地の胴着と手甲脚甲を身につけ、男優を大股開きにひっくり返して上からのし掛かり、濡れそぼったアソコに組敷いた男優のおちんちんを挿入して勝ち誇った顔をしている写真だった。
下剋上される団長役の男優はヒューマンだ。
やや大柄で筋肉質。
短髪で、髪の色は…………明るいブラウンだった。
「……………………」
スッ……とその本をキープした四冊の間に挟みこんだ。
「…………うん。まあ、こういうのも、一冊くらいはね。……ぜんぶいちゃラブって言うのもさ、飽きちゃうっていうかさ……逆転モノってのもね! 格闘娘とか親近感沸くし……似てないけどね! ぜんっぜん、これっぽっちも似てないケドっ! …………いや似てないっていうかそんなのべべ別にどうでもいいっていうかっ!!」
誰にナニを言っているというのか。
五冊ものエロ本を大事そうに小脇に抱えたアリーザはそそくさと18禁ブースを退室すると、速足にならないコトを気にするあまり、やたらゆっくりといくつかの無関係な棚を物色しつつ、生まれてこのかたやましいことなどナニひとつして来なかったかのような顔で、年取った無表情なお婆さんの担当する会計に並んだ。
隠しようもない程にカラフルでドスケベな表紙をあえて隠しもせず、さもナンテコトないような、こんな本ゼンゼン買いなれてますし? と言わんばかりの涼しい顔をして前に並んだ一人が会計を済ませるのを待つ。
内心冷や汗ダラダラだ。
この瞬間の為に下調べは十二分にしてきた。
何件かの本屋を巡り、ココの店員が自分より明らかに幼い男の子相手にも、無反応にエロ本を売るのを何度かこの目で確認した。
ゼッタイに大丈夫だ。
既に女の子的にアウトである。
喉をカラカラにしながら出口近くの棚を眺めつつ待っていると、前のヒトの会計が終わったらしい。
コロコロと楽しげな声で、「お待ちのお客様~♪」と言うのを聞き、ほとんど無意識に前に出てカウンターの上に五冊の本を置いて顔をあげ――
「え~、こちらの五点でよろしいでしょうか~♪」
「――――!!!?」
――そこに立って笑顔を浮かべるシェロカルテを見て、愕然とした。
(えっ!!? なっ!? えっ、なんっ!? ……なんでっ、シェロカルテさん……ウソっ!? なんでっ!!?)
真っ青になって、ブワッと全身の毛穴から冷たい汗を吹き出すアリーザ。
(そんなまさか、だってさっきまで確かにお婆ちゃんが……っていうかなんでココにシェロカルテさん……いやっ、じゃない、それよりも見られた!? よりによって知り合いにっ!! こ、こんなエッチな本を!! ごっ、五冊もっ!! ……しかも一冊ちょっと自分似の女優と団長似の男優のヤバいヤツが……いや似てないけどっ!!? たまたまだけどっ!!!)
血の気の失せた顔で今にも倒れそうなアリーザをよそに、シェロカルテは楽しそうに本の値札を確かめてソロバンを弾いてゆく。
一冊、二冊、三冊目――
一瞬、極わずかに目を見開き、チラッとアリーザを盗み見るシェロカルテ。
しかし、人生最大の窮地に心身喪失状態のアリーザは気付かない。
シェロカルテは誰にも分からないくらい小さくクスッと笑い、何事もなかったように五冊の合計を出すと、すべてのエロ本を中身が見えない袋に手早くしまって、可愛そうなくらい憔悴したアリーザに小さく耳打ちした。
「……あのお婆さんは、ちょぉ~っとだけ若い女の子にイジワルなんです~……安心して下さい~、お客様の秘密はゼッタイに漏らしませんよ~♪」
それを聞いて、言葉の意味をゆっくりと理解するにつれてようやく正気を取り戻し、今まさに逆転無罪を勝ち取ったような表情をしたアリーザは、青色から一転して顔を真っ赤にして、小声でボソボソとお礼を言った。
なんでココにシェロカルテさんがいるのかさっぱり分からないし、かなり、それはもうかなりの恥ずかしい思いはしたが、どうやら自分はシェロさんに窮地を助けてもらったようだった。
顔から火を吹くような思いとはきっとこういうのを言うのだろう。
「……っ、ぁっ……ぁりがとう、ございます……」
そう言って、消え去りたいような気分を抱きながら会計を済ませ、大きな代償を払って勝ち取った戦利品――はたしてうら若き乙女の誇りに見合うだけのモノかは分からないが――の入った袋をひっ掴むと、そそくさと出口に向かって歩いてゆこうとして、
「それはそれとして~、アリーザさんに少ぉ~しだけお話があるので、ちょっとだけこちらのお部屋に来ていただいてよろしいでしょうか~♪」
アリーザは今なら空の底にだって喜んで飛び降りられると思った。
「ゴメンナサイ……!」
鮮やかな……それはまだ年若い少女がするには、あまりにも鮮やかな土下座であった。
ラムレッダ流に言うなら、DO・GE・ZAだ。
シェロカルテにスタッフ用の休憩室に通されたアリーザは、シェロカルテがドアを閉めるや否や、流れるような動作でもってドラフ族女性に伝わる最上級の謝罪をキメた。
完全無抵抗、絶対服従、全力謝罪の伝統的ポーズである。
それを見たシェロカルテは、一瞬キョトンとした後、慌ててアリーザにかけよって自分の説明不足を詫びた。
「すっ、スミマセン~! アリーザさん、この部屋にお通ししたのは、是非ともご紹介したい新商品があるからでして~、その、謝るコトなんかなんにも無いですよ~。 お顔を上げて下さい~」
「……えっ?」
シェロカルテは、目の端に涙を浮かべたアリーザをなんとか落ち着かせると、椅子をすすめてそこに座らせ、自分はアリーザの向かい側のハーヴィン用に背を高く作られた椅子に座った。
「グスッ……あ、あの……」
「はい~?」
「……シェロさんは、その……どうしてこのお店に……?」
「ああ、それはですね~♪ 最近、タイヘン評判の良い新商品が開発できまして~、その儲けで色々な業種に資本業務提携の手を広げていまして、このお店はその一つなんです~♪」
「?? は、はぁ……」
まだいくらか赤い顔をして椅子の上で小さくなっているアリーザに問いかけられ、笑顔で答えると、まさにその商品がオススメしたいモノなんですけどね~♪ と続けた。
「ええ~っと、では、新商品をおすすめする前に、一つ二つ、確認したいコトがあるのですが~……よろしいでしょうか~?」
「は、はい」
グイッと身を乗り出すシェロカルテに、ハーヴィンとは思えないナゾの圧を感じてやや引き気味に答えるアリーザにニッコリと笑いかけてたずねた。
「アリーザさんは、団長さん……グランさんについて、どう思われますか~?」
「ふひゃっ!?」
「あ、結構です~♪ ただの確認ですので~……うふふ~、今ので大体分かりました~♪」
シェロカルテの問いかけに、面白いように肩を跳ねさせたアリーザを見て、シェロカルテは口元に両手を当てて楽しそうに笑った。
なんとも隠し事のヘタな少女である。
「にゃっ、にゃにをっ、ナニが分かって……っ! その、団長は団長だしっ……!」
「先ほど、チラッと目にはいってしまったんですが、あの本の男優さんはどこか団長さんと良く――」
「わーーーーっ!? わーーーーーーーーっ!?」
顔を茹でダコのように真っ赤にしたアリーザが目をぐるぐる回して腕をブンブン振るのを見て、シェロカルテはとうとうこらえきれずに吹き出した。
「うぷぷっ……し、失礼しました~。 いや~、実はあの男優さん、かの有名騎空団の団長さんにソックリ! ……という口コミが広がって、最近かなり売れているそうなんです~。まあ、よくよく見ると確かに全然違うのですが、私も結構儲けさせて頂いてるんですよ~♪」
「っ…………!! いやっ……それはっ……その、たまたま……」
なんだかこの可愛らしいドラフの少女が焦りまくっているのが微笑ましくて少々からかいすぎてしまったと思ったシェロカルテは、こほんと小さく咳をすると、一言謝ってから続けた。
「いえ、すみません~、団長さんのコトが好きかどうかはお聞きしませんよ~♪ ただ、少なくとも嫌いじゃない、好ましく思っているコトが分かればイイので~……団長さんは本当に素敵な方ですから、団員さんみんなに愛されているのは当然かと思います~♪」
「いや、まあ……その、嫌いな訳じゃないケド……その、同い年位なのに、スゴいなぁって尊敬してるし……」
机の木目に向かってボソボソと呟く声には気付かないふりをした。
尊敬してる同い年の少年ソックリのエロ本買うの? とは聞かない優しいシェロちゃんである。
「では、もうひとつ~♪ こちらでご紹介する商品については、出来ればむやみな口外をさけて欲しいんです~……特に団長さんには、くれぐれも~♪」
自室のベッドの端に腰掛けて枕を胸に抱き締め、アリーザはそわそわと足の指先を絡ませて落ち着かない気分でいた。
思い付いたようにすっと立ち上がると、ドアの所まで歩いていき、確かに防音効果付きの魔法錠がかかっているコトを確認して、ベッドに戻る。
こんなコトをもう三回は繰り返している。
ココはかの騎空団の船団が一隻、フロンティア号の一室である。
今でこそ復数隻の騎空艇を所持する大騎空団だが、その最初期、天然ヒトタラシな団長のせいか、ブクブクと増え続ける団員の船室を賄うべく初めて購入した記念すべき船がこのフロンティア号だった。
より居住性に特化した大型艇を購入した今でも、当時のゴチャゴチャと窮屈で楽しい思い出を懐かしむ古株の何人かは未だこの船に居住スペースをかまえている。
そんなロマンチスト達の一人でもあるアリーザは今、重厚でシックな皮製キャリーケースを前に、まったくロマンチックでない悩みで唸り声をあげていた。
「うぅ~…………!」
床に置かれたケースを穴が開くほどに睨み付け、おもむろにまたすっと立ち上がり、四度目の確認をしようとしてしばらく逡巡したあと、ボスン、とベッドに座り込んだ。
「……も、もう買っちゃったワケだし……見るだけなら……うん、見るだけ……!」
自分に言い聞かせるようにそう呟くと、枕をベッドの上に放り投げ、ケースの前に正座してゴクリと生唾を飲み込んだ。
本屋の18禁暖簾をくぐった時とは比較にならない程の緊張で、伸ばした手にじっとりと汗がにじむ。
カチリ。
ケースのロックを外し、一度深呼吸をしたアリーザは、一息にえいやっとその皮製ケースの蓋を開け放った。
ケースの内側には、滑らかな赤いビロードが張られ、更に中身を隠すように、シェロカルテのお店のエンブレムと見慣れた騎空団のエンブレムが箔押しされ、流麗な細い文字でビューティー&ヘルス・プレミアムと書かれた一枚の赤い布が被さっている。
恐る恐る、その柔らかな布を取り払う。
「――――ぅ……わぁ……!」
その下にあったのは―――引っ張るまでもなく、大方の読者の予想通り、かのリアルグラン君シリーズ・プレミアムであった。
アリーザ、お前もか。
どうやらシェロカルテにそそのかされて、この狂気のサタとしか言えないようなリアルディルドを買わされてしまったようだった。
ただしその本数がスゴい。
左から小さい順に、四分の一スケールから始まり、三分の一、二分の一、三分の二と続き一分の一スケールまで、実に八本もの、サイズの違うグロテスクなまでに本物ソックリのリトルグラン君がうやうやしく整列しているのだ。
どうでもいいが玉無しタイプだった。
ちょっとしたブラクラレベルである。
左上の空きスペースには、ご丁寧に切り傷によく効くポーション配合の軟膏の缶と、あのヒトの精液の味と匂いと触感を高度に再現! リアル精液ローション(食べても害はありません)と書かれたクリスタルの瓶、そしてハーヴィンでも出来る! 完全トレーニングマニュアルと書かれたカードが入っていた。
さすがカユいところに手が届くシェロカルテクオリティだ。
愛すべきおバカ具合である。
アリーザは、そのあまりにも生々しく、あり得ないほどにイヤらしくて、なんだか意味もわからずお腹の奥をキュンキュンさせるそのオチンポ達をまじまじと見つめた。
「これが…………だ、団長の……団長のおちんちん……お、おっきぃ……♡」
アリーザは、瞳のなかにうっすらとハートマークを浮かべ、熱に浮かされたように真ん中辺りの一本に手を伸ばしかけ――
「っ!? だっダメっ! や、やっぱりこんなのダメだよっ!」
弾かれたように引っ込めると、ブンブンと頭をふった。
銀色のポニーテールが一緒になって左右に揺れる。
(こっ、こんな、団長に内緒で、こんな覗きみたいなっ……だっ、第一こんなの浮気じゃん! え、エロ本くらいならまだ分かるけど、誰かを想像しながらそのヒトソックリな写真とか使ってシちゃったらもうほとんど浮気だよっ!!)
鋼の意思でぎゅっと目をつぶり、重い腕を無理矢理動かしてケースの蓋を閉じる。
既にイロイロと手遅れな気がしないでもないが、少なくともこの瞬間、アリーザはオチンポの誘惑に勝利したのだ。
スゴいぞアリーザ!
アリーザはケースを持ち上げると、さっさとこの悪魔の誘惑を処分すべく入り口に近づいてドアノブに手をかけた。
(……処分しよう。シェロさんには悪いけど、やっぱりこんなのダメだよね……あ、アタシには、その、スタンがいるんだから……アタシはスタンのコトが好きなんだから……別に団長は嫌いじゃないケド……別に好きなワケでもないっていうか…………強いし、優しいし、頼れるし、カッコいいし、あと一緒にいると楽しくてなんかドキドキするし、ちょっとイイ匂いだし、そりゃ好きか嫌いかなら好きだけどそういうんじゃないし…………ホントにたまにしかオカズにしないし……グランは私のコトなんてなんとも思ってないし……!)
ゆっくりとドアノブから手を外す。
「……何も処分するコトはないよね。た、高かったし、もったいないもん……使わなきゃいいんだから、とりあえず次の島でシェロさんのお店に返品しちゃおう。み、未使用だし、他にほしいヒトがいるかもしれないしねっ!」
そう独り言をまくしたて、『四分の1~一分の1スケール豪華八本セット ~ドラフ族もハーヴィン族もあきらめないで!~ 多機能マイリアルグラン君ズ・プレミアム入門セット(ディルドタイプ・玉無し) 本革専用ケース付き©️』のケースをいそいそとベッドの下に滑り込ませるアリーザ。
ちなみにこの商品は安心安全な一年保証付きだ!
カッコ悪いぞアリーザ!