※この作品はR-18です。

巨根なグラン君が色んな女の子にいいようにされたりしたりする話   作:空使い

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今回もエロ無し。
ホント前置き長くてゴメンなさい。



アリーザ、気付く。

「アリーザ、ソレどうしたの? スッゴいクマ。寝不足?」

 

「……別に」

 

すべての依頼を片付けてルーマシーを発った夜、マリーとカルバは早速約束のブツを受け取るべく、ワクワクしながらマリーの寝室にアリーザを呼び出した。

呼び出されたアリーザはナゼか疲れきったようなげっそりした顔をしつつ、どこかフワフワとおぼつかない足取りで重そうな袋を持って部屋に入ってきた。

 

コレはお宝を手に入れるため、そうとう厳しい戦いを繰り広げたに違いないと、二人は期待が否応もなく高まるのを感じた。

 

「そっ、それよりさ……お宝、ちゃんと手に入れられたカンジかいっ……?」

 

「あ、そうだ! アリーザ、ビビって無理だったからってセクシーグラビアかなんかでごまかそうなんてしてないでしょーね!?」

 

我慢できないという風に鼻息荒く自分の持った袋をチラチラと盗み見る二人を見て、アリーザはナニか一歩先んじたような優越感を覚えつつ、袋に手を突っ込んだ。

 

「フフ……言っとくケド、スッゴいかんね。カクゴした方がイイよ……超恥ずかしかったんだから……」

 

「ゴクリ……」

 

「にしし……ど、ドキドキししてきた……♪」

 

そう言って袋の中の四冊をまとめて掴むと、たっぷりもったいつけたあと、ドサッと二人の目の前にソレを放り投げた。

 

「っ……ひゃっ!?」

 

「おおぉ…………こ、コイツはヤバいぜ……!」

 

ソレを見た瞬間、二人は目を見開いて恐れおののいたように息を飲んだ。

 

『ナマイキヒューマン娘のお仕置きプレイ大特集~ちっちゃい子っ、だけっ!~』

『thrillfre@ks 淫乱メスドラフ危機百発♡ 三つ穴開発拡大版』

『Skystar☆ メスドラフ×オスエルーンしか見たくないっ! 総集編④』

『月刊素人娘ラブエッチ♡ 最高にキモチイイ膣内射精⑰ リリーナ・ドラフ130cm』

 

胸もアソコもほとんど丸見えで、清々しいホドのどエロい表紙。

最新高画質フルカラー魔導プリントが今だかつてないほどの衝撃を二人に撃ち込む。

 

「うわ……うわー…………うっわぁ……」

 

「……エッチだ……スリルありすぎ……♪」

 

女の子がしちゃいけない顔してるぞ。

アリーザはどこか得意気にそんな二人を見る。

 

「どーよ。言われた通り、ちゃんと買ってきたわよ。こっちはマリーで、コレはカルバね、一応」

 

差し出された本を震える手で受け取り、恐る恐るページをめくる二人。

完全に内股になってモジモジしている。

頭から湯気が出そうになっているのを見て、アリーザはアタシもあんなんだったのかなとちょっと恥ずかしくなった。

 

「うっわぁ……ヤッばいねこれ……ままま、まる、丸見えじゃん……エッロ……」

 

「にへへ…………私たちが見つけたお宝なんか比較になんないね。こりゃあヤバいぜ……アリーザ、見直しちゃったよ!」

 

「ホンットに恥ずかしかったんだからね! ……変装までして、エッチなコーナーん中に入ったんだけど、そっちはもっとスゴかったよ」

 

「そんなに……?」

 

「アタシの身長の二倍以上の棚、三百六十度、全部そんなんバッカ。マリーじゃ気絶するかも」

 

「しっ、しないわよ……! ……タブン」

 

「そっかー……ソイツはいつか挑戦しなきゃね……も、燃えてきたぜ……!」

 

「………………カルバ、そ、そんときはあたしも連れてって……」

 

コレが15才、17才、18才の少女達の会話である。

グランが聞けば鼻血と精液を吹きそうだ。

 

「……ねぇ。そー言えば、ソッチはアリーザのだよね? もう読んだの?」

 

マリーが、モゾモゾしながら残りの二冊をチラリと見て言う。

明らかにスタンを意識したようなラインナップだ。

 

「いや……んーん、ソレもういいや。二人にあげるよ。好きな方持ってって」

 

なんだか奥歯にモノが挟まったような物言いでそう二人に言うアリーザ。

 

「えっ!? いっ、イイの? ……そんな良くなかった……?」

 

「いや……別に、もうイイかなって」

 

そんなアリーザを見て、二人はなんとなくピンときた。

 

コイツはまたスタンとケンカしたな……?

 

「アリーザ、ひょっとしてまたスタン君と――」

 

「別にアイツなんか関係ないわよっ! ……スタンなんか知らないモンあんなヤツぅ……!!」

 

図星だった。

正直あんなヘタレを好きになるアリーザのキモチがイマイチ分からない二人は、こっそり目をあわせて肩をすくめた。

毎度毎度よく飽きもせずケンカするものだ。

 

まあ、二人としてはライバルが少なくなる分には全く困らないので、スタン君にはぜひとも頑張って欲しいモノである。

 

まあそれはそれとして。

 

「じゃあ……」

 

「遠慮なくっ……♪」

 

そそくさとそれぞれ一冊づつ手元に引き寄せるマリーとカルバ。

くれるというなら貰っておく。

スケベな二人であった。

 

「言っとくケド、代金は貰うかんね……けっこう高かったんだからソレ」

 

「分かってる分かってる♪」

 

「……おやっ? アリーザそれ、袋の中。もう一冊入ってないかいっ?」

 

ビクッ! と肩を跳ねさすアリーザ。

ソレを見て、マリーはニヤァと笑って両手をワキワキとして迫った。

 

「おやおやーっ? アリーザったら、このゴにおよんであたし達に隠し事ぉー??」

 

「べっべっ、別にイイじゃん!」

 

「いやいやー、あたしたちの間にそういう隠し事は無しでしょぉーっ? ホラホラ、観念しろーっ!」

 

「やっ、やめっ……! あっ!?」

 

「にっへへ~♪ 油断大敵さっ。どれどれー……♪」

 

顔を真っ赤にしてマリーに抵抗したアリーザだが、どさくさに紛れてカルバに袋を奪取されてしまう。

 

「わーーーっ!? ちょっ、ホントダメっ!」

 

「バーン♪ コレがアリーザちゃんのとって………お、き……!?」

 

「……え?」

 

意気揚々と最後の一冊を取り出したカルバは、ソレを掲げて、固まった。

キャイキャイともみ合っていたマリーもソレを見て目を見開いている。

アリーザは真っ赤な顔で口を開いたり閉じたりしている。

 

『スケベ騎空士三本勝負! 格闘娘のエロ下剋上 ~降参禁止のデスマッチ! 許してくださいっ、ホントにもう一滴も出ないんですっ……!!~』

 

「ソレ……」

 

「……ち、違うの」

 

「いやぁ……ヤ~バ~いねぇ……」

 

アリーザ似の女優と、どっからどう見ても団長――グランを意識してるとしか思えない男優の、絡み合う表紙。

 

「アリーザ、まさか……!」

 

「コイツは、ちょおっと聞かなきゃなんないっかなあ~……!」

 

「ちっ、ちがうんだってばーーーーーっ!!?」

 

 

 

 

 

 

トコロ変わって、グランサイファー。

騎空船団の先頭で、月明かりの中、夜風を切って悠々と空を駆ける一番最初の相棒の甲板の上で、グランは一人剣を振っていた。

 

船首に立って、背筋を伸ばし、剣を正眼に構える。

スッ……と両腕を高く上げ、

 

「ふっ……!」

 

音もなく、ゆっくりと振り下ろす。

切っ先には一分のブレも見えない。

 

再び切っ先を上げる。

ピン――と空気がはりつめる。

そのまま数秒間、時が止まった。

 

カラン、という音とともに、根元から折れた刀身が甲板に転がる。

気付けば、振り下ろされたグランの両拳の中から、砕け散った柄がサラサラと風に流されてゆく。

 

「…………ふぅー……」

 

残身を解いたグランは、月光に淡くキラキラと輝く雲の果てに遠く目をやって、大きく一つ、白い息を吐いた。

 

(セックスしてぇー…………)

 

台無しだよ。

 

グラン君は今日も今日とて、ずっしりと重くなった玉袋をなんとか冷まそうと終わりの見えない修行に精を出していた。

 

精を出せないだけに。

 

ルーマシーでシェロさんを探すも見つけられず、ククルとクムユは依頼の疲れでぐっすりと眠ってしまい、ラムレッダは大量に仕入れた酒樽に抱きついて幸せそうに鼻提灯を作っていた。

要するに、抜いてくれるヒトがいなかったのだ。

 

最近、ナゼか妙にラッキーが続き、立て続けに四人の美少女(?)とスケベな関係を持てたグランは、以前より長年鍛え続けた堪え性を失いつつあった。

先程も辛抱たまらずオナニーの一発でも決めるかとズボンを下ろそうとして、突然部屋に飛び込んできてニコニコと居座るルリア(ナゼか片手に切る前のタクアンを持ってポリポリと齧っていた)に大慌てで誤魔化したり、トイレで処理しようとしたトコロ(無論男子トイレで、鍵もかけていた)で突然トイレのドアを(ドアノブを握りつぶして)開けて入ってきたうっかりもののジータ(あっ、間違えちゃった☆ ゴメンねお兄ちゃん♪)に悲鳴を上げたりとろくに処理も出来ず、仕方なく夜風を浴びながら素振りをしていたのだった。

 

「――見事だな、団長」

 

そんなチンチンイライラ☆状態のグランに、静かに澄んだ声がかけられた。

振り返るグラン。

 

「ああ……シルヴァさん、見てたんですね」

 

「ああ。今日はこの船の夜番でね。すまない……なんとなく、目に入ってしまった」

 

タラップを踏んで船首甲板に上がり、欄干に腕を預けて長い三つ編みを風に遊ばせて微笑むのは、騎空団の頼れる狙撃主、銃工房が三姉妹の長女、シルヴァであった。

青く輝く雲の航路を眺めてクールにキメているようだが、この作品においては、知らぬ間に大好きな妹二人に自分のベッドの上で脱処女の先を越された、ちょっとかわいそうなお姉ちゃんである。

 

27才だ。

27才ってイイよね。

ね。

 

「いやあ、恥ずかしいです」

 

「そんな事はないさ、……その、」

 

頭をかいて照れるグランから目線を外し、船の進路を見つめてシルヴァは小さな声で続けた。

目線の先、グランが先程素振りをした延長線上。

巨大な積乱雲が、真ん中で定規を引かれたように真っ二つになって左右に別れてゆく。

何ともバカげた光景だ。

 

「……君はきっと、一人でなら、あっという間に空の果てにでも行ってしまうのだろうな……」

 

「……? あの、何か言いました?」

 

「いや、何でもないよ。私ももっと精進しなければと思ってね……所で団長」

 

目をつぶって軽く頭を振り、ふと思い出したようにシルヴァが言う。

 

「最近妹達がどこかよそよそしいんだ……何故かちょっと避けられているような……。私が何かしてしまったのだろうか、とも思ったのだけれど……情けない事に、思い当たる事が無くてね。ククルもクムユも、君には良くなついているようだし、団長は何か知らないだろうか?」

 

そう言って、グランの方を見て髪をかき上げるシルヴァに、グランは、

 

「…………さ、さあ、俺はナニもしてな、知らないですねぇ~……」

 

目を反らして、堂々とシラを切った。

アレだけ散々ナニしといてヒドいヤツである。

 

「そうか……いや、すまない。身内の事情だったな。……今度折を見て、ちゃんと本人達に聞いてみるよ」

 

「あー! あー、いや! そういえばっ!!」

 

「? ……なんだい、団長」

 

「あーいやー、その、知ってます。知ってました! ナルホドーアレかー……し、シルヴァさん、その事なんですがね?」

 

ソイツを聞かれるのはマズいっ!

いや、ククルが漏らすとは思えないが、クムユの隠し事に期待は出来ない。

どこでボロが出ても可笑しくない。

 

そう思ったグランは、頭を高速で回転させた。

 

「あ、ああ」

 

「そのー……出来れば、気付いてないふりをして貰えませんか? 二人とも、すっごく張り切ってたんで……シルヴァさんも、きっと驚きますから、期待しててあげて下さい!」

 

「……! ああ……、そうか、フフ……♪」

 

シルヴァはソレを聞いて、何かに気付いたように目を見開くと、嬉しそうに微笑んだ。

 

(あ、あっぶねーっ!?)

 

グランは顔面ににっこりとした笑顔を貼り付けながら内心で冷や汗をぬぐった。

適当に二人の妹がサプライズ的なナニかをシルヴァに用意してる風を装ってみたが、上手くいったようだった。

シルヴァはナニに気付いたというのか。

 

後でククルに上手いことやってもらわないと、と窮地を乗り切った安心で一息ついていたグランに、シルヴァが話しかけてくる。

 

「ありがとう団長。危うく妹達の思いを台無しにするところだったよ」

 

「いやそんな……二人には、俺が漏らしたって言わないで下さいね?」

 

(いやホント何があるんだ!? マジで頼むぞククルねぇちゃん!)

 

「もちろんだとも……と、所でね、団長……?」

 

そう言って、少し口ごもるシルヴァ。

グランは突然目を反らし、モジモジしはじめたシルヴァにいぶかしげな視線を向けた。

 

「その……お礼、と言う訳じゃ無いんだが……ルーマシーで、とても珍しい紅茶を手に入れたんだ」

 

そう言って、スッ……と、一歩だけグランの方に近付くシルヴァ。

フワリ、と、グランの鼻先を甘い香水の香りがくすぐる。

目線は外したまま、少しだけ頬に朱がさしている。

 

「君さえよければ……その、どうだろう、私の部屋で、一緒に紅茶でも飲みながら次の依頼についてでも……く、クッキーも焼いてみたんだ。ヘルエスやソーンにも手伝って貰って……ハーブやオレンジ何かを練り込んだりしてね、我ながら美味しく出来たと思うのだけど――」

 

そう言って、甲板を見つめたまま、もう一歩グランの方に近付く。

……と、

 

「――団長?」

 

顔を上げると、先程までグランが立っていた所には誰もいなくなっている。

慌てて銃を持ち、周囲を見渡すと、

 

「ナニすんだーっ!?」

 

「――、――――」

 

楽しげなティアマトの龍の一匹に服の裾を咥えられて、空に拐われてゆくグランが遠くに見えた。

ジタバタと暴れながら何事かをわめくグランを見て、それぞれの船の見張りが一瞬ギョッとして、すぐにまたかと呆れた顔をしているのが分かる。

 

(しまった……ティアマト殿に見られていたか……迂闊だったな)

 

グランは人気ものだ。

団内ではいつもみんなが牽制しあって、抜け駆けを阻止しようとしたり、少しでもグランのそばに行こうとしたりしている。

 

そしてそれは星晶獣も例外では無かった。

 

惚れた腫れたに疎い星晶獣達は、時にヒト族の団員達よりもストレートに愛情を伝えようと、突拍子も無いことをしようとするのだ。

グランが一人でいたりするとじゃれついたり、燃やしたり水浸しにしようとしたり、殺そうとしたり石にしようとしたりしまっちゃおうとしたりと様々だ。

 

グランじゃなかったら死んでる。

 

ティアマトなんかは割りと人間臭くて、女性団員とグランが仲良くしていると嫉妬するのか、その場からグランを拐ってしまおうとするのだ。

 

普通のヒューマンならあんな拐われ方をしたら生きた心地がしないだろうが――

 

(あっ、落ちたな……)

 

とうとう服がちぎれたグランが、空の底へとまっ逆さまに落下して行く。

…………と、すぐに自力で飛行魔法を使ったグランが戻ってきて、楽しそうに船の間を逃げ回るティアマトを、怒った顔で追いかけ回し始めた。

 

シルヴァは、せっかく用意したお茶の準備が無駄になったコトを残念に思いながら、少しだけ安心したようにため息を吐くと、グランに向かって一度手を振って、見張りに戻って行くのだった。

 

 

 

 

何とかマリーとカルバの追求を逃れ、グラン似のエロ本を三人で回し読みするコトで勘弁してもらったアリーザは、熱くなった顔を冷やそうと再びフロンティア号の甲板に出てきていた。

 

「もうっ……マリーもカルバも、何もあんな必死になんなくたってイイじゃん……」

 

ブツブツと独り言を呟きながら、頬を撫でる夜風に目を細める。

 

『ちょ、ちょっと! あ、アリーザが好きなのってスタンじゃなかったのっ!? こっ、コレっ、まるっきり団長じゃん! 完全に自分と団長意識してんじゃん!!』

 

『いやあ、まいったねえ……まさかアリーザも――いやいやっ、アリーザが団長のコトが好きだったなんてね……コイツぁビックリだぜ……』

 

『い、イヤっ、コレはたまたま……! あ、アタシはアイツのコトなんか別に……』

 

二人も必死だ。

ただでさえライバルが多いところに、恋に積極的なアリーザなんかが参戦してきたら、ちょっと勝てる気がしない。

相手がスタンであったからこそ応援していたのであって、相手がグランとなると話が変わってくる。

 

『!? ホラッ、早速尻尾を出したわねっ! いま団長のコトアイツって! アリーザがアイツって呼ぶのはスタンのヤツだけだったじゃん!』

 

『おやおや~? コイツは言い逃れできないなあ! アリーザ、いつからだい? いつから大好きなアイツがスタン君から団長になったんだい?』

 

『違っ!? だ、だから好きとかじゃなくて――』

 

『じゃなくて!?』

 

アリーザは思い出して、再びボッ、と顔を上気させた。

 

『すっ、好きじゃなくてっ――だ、団長のコトはっ』

 

 

 

 

『性的な目で見てるだけだからっ!!!』

 

 

 

 

「なんであんなコト言っちゃうかなあー! もーーーーーーうっ!!」

 

アリーザは頭を抱えて崩れ落ちた。

盛大な自爆だった。

 

(いくらなんでもアレはないよ……ありえないじゃん……!)

 

たしかに、確かにその場は誤魔化せた。

誤魔化せたけれども!

アリーザの魂の叫びを聞いた二人は、揃って顔を真っ赤にして、

 

『っ!? ……そ、それは……うん』

 

『う、うん。……ナルホド』

 

下を向いて居心地悪そうにモジモジしながら、深く納得したのだった。

その後、やけっぱちになったアリーザと残りの二人は、団長がいかにエッチか、性的な魅力をどれだけ振り撒いているか、普段からどれだけ自分達をムラムラさせているかアツく語り合った。

 

グランが腕を上げる度に、つい脇の下に目がいってしまうコトや、グランが上半身裸になるときには乳首にシールかナニか貼ってくれないととても集中できないコト、グランの水着の写真をこっそりオナニーのネタに使っているコト等で意気投合した三人は固い友情で結ばれた。

 

……かわりにナニか大切なモノは失ったが。

男子中学生か。

 

「…………ぜんぶアイツが……団長が悪い」

 

アリーザはそれをすべてグランのせいにした。

とんだ言いがかりだが、実際グランのせいだから仕方がない。

 

(好きじゃない、か……)

 

こうして一人になって、頭を冷やすと、見えないふりをしていたソレが、ムクムクと湧き上がってくる。

大声でバカなコトを叫んで、三人で馬鹿話に花を咲かせて。

それで誤魔化しきった気になっていたのに、むしろ反対で。

 

アリーザはしゃがみこんだまま、とうとう誤魔化しきれなくなった思いを口に出した。

 

「……そりゃ好きだよ。好きに決まってんじゃん。大好きだよ」

 

ずっと。

 

ずっと、ずぅーっと!

 

ネフティスの棲家に、アタシを助けに来てくれてから。

アタシを空に連れ出して、広い世界を教えてくれたアイツが。

バカみたいに強くて、優しくて、なんでもできるクセにヘンに鈍くて。

アタシがどんなにアピールしてもゼンゼン振り向いてくれなくて。

恥ずかしいくらいに空回るアタシを、ずっと側で見守ってくれるアイツが。

 

グランという男の子が――

 

「――好きだよぅ、バカぁ……!」

 

口に出したとたん、次から次に涙が溢れてくる。

とうとう認めてしまった、自分の偽らざる本心。

 

「なんで、ほっといてくれないかなぁ……!」

 

ずっと、一生知らないふりをしているつもりだったのだ。

 

幼い頃、ただ近くにいた、頼れる幼なじみだったスタンを好きになった。

大きくなるにつれ、スタンが決して頼れるヤツでも、カッコいい男の子でもないと分かっても、幼い頃の思いを裏切りたくなくて、自分はずっとスタンのコトが好きなんだって言い聞かせていた。

 

そんな自分の前に現れた、本当に強くて頼れるカッコいい男の子、グラン。

恋に恋するバカな女の子だったアタシは、アッサリそのコに恋をして――

 

その思いに、重くて固いフタをした。

アタシは怖かったのだ。

 

ずっとスタンのコトが好きだと思い込んでいたのに、こんなに簡単に会ったばかりの男の子を好きになってしまうなんて。

大切にしていた自分の思いが、酷く軽い、薄っぺらいモノになってしまう気がして。

 

だってそうでしょ?

おとぎ話のお姫様は、王子様だけに恋をするんでしょ?

 

自分はスタンに恋をしたんだから。

将来スタンとケッコンするって決めたんだから。

ゼッタイ他のヒトなんて好きになっちゃいけないのだ。

 

バカなアタシは、何年も自分にそう思い込ませていたばっかりに、理想の恋と本当の恋の区別もつかなくなっていた。

恋ってこういうモノなんだ。

そう言い聞かせて、まるでそれが義務であるかのようにスタンへの幼い頃の思いを貫こうとするアタシは、まさしく恋に恋する大バカ女だった。

 

「グスッ…………ハァ…………ズズッ……」

 

溢れて止まらない涙が胸元から服に染み込んでゆく。

肌にグッショリとへばりついて、気持ち悪い。

 

いつでも、アタシを助けて、守ってくれるグラン。

アタシを鍛えて、更なる高みへ連れてってくれるグラン。

みんなに慕われているグラン。

アタシのワガママを笑って許してくれるグラン。

アタシをからかうグラン。

カッコいいグラン。

カッコ悪いグラン。

 

グラン。

 

アタシが本気で、好きになったヒト。

 

「はは……グスッ……、ママが反対するワケだ……」

 

きっとママには、お見通しだったのだろう。

いつの間にか、自分が必死に押さえつけてもあふれでてしまうくらいに膨らんでいた、この想いに。

 

何度も涙をぬぐったリストバンドは、ずっしりと重くなってしまった。

服はもうお腹の所までびしょびしょだ。

 

「ズズッ………………っ、はぁ~~~……スタンに、なんて言おう……今は付き合ってるワケじゃないけど、一応約束しちゃってるしなぁ……っていうか、たった三日で帰ってくるってナニよ! 普通に船に乗ってる方が多いじゃん、バカスタン! もうっ……」

 

アリーザの全身から、ボウッ……と陽炎が立ちのぼる。

一瞬で練り上げられた魔力が炎の力を纏って身体をおおい、服をあっと言う間に乾かした。

 

「ん……ふぅっ……反省、終わりっ! クヨクヨしてても仕方ないっ! アタシはグランが好きっ! 大、大、大、大、大好きっ!! もう自分のキモチにウソはつかないっ、コレからのコトを考えなきゃね!」

 

さしあたって……。

アリーザは考えた。

 

「まずは、マリーからエロ本取り返さなきゃ。あっ! あとアレだっ! シェロさんは内緒って言ってたけど、あのエッチなカタログがどういうコトか聞かないとっ! 内緒ってくらいだから、グランは知らないのかもしれないけど……本人監修とか、団のエンブレムとか、じっ、じっ、実物型どりってどういうコトなのか問い詰めなきゃっ!」

 

 

 

 

 

おー! と、夜空に向かって気合いを入れるアリーザ。

フロンティア号の気球の側面に張り付いて、ひょっこりと首だけを出して下を見下ろすメドゥーサは、そんなアリーザを気味の悪いモノでも見るかのような目で見ていた。

 

「な、ナニよアレ……突然赤くなったり、スッゴい泣いたり笑ったり……やっぱりニンゲンってヘンよね、メドゥシアナ」

 

「シューーッ、シューッ」

 

「? ナニよ、そんなコトより上って? 一番高く飛んでるのはこの船じゃない。上になんてナニも――――」

 

後頭部をガブガブと噛みつくメドゥシアナに促され、めんどくさそうに上を見るメドゥーサ。

 

「ない――――」

 

「――――♪ ――――」

 

「お前ティアマトっ、シルヴァさんとイイ感じの雰囲気だったのにオマエーーーっ!!」

 

「じゃなっ――ちょっ!?」

 

ドスッ!! ドスッ!!!

 

「ぐえ゛っ゛!?」

 

肉を壁に叩きつけたような鈍い音が二回と、カエルを潰したような声。

 

メドゥーサが上を見た瞬間、高速で船の間を飛び交っていたティアマトが狙い済ましたような鋭さでメドゥーサの背中に頭から突っ込み、そのティアマトの背中にグランが両足で追撃を入れた音と、それでメドゥーサが潰された声だ。

 

フロンティア号の気球が、グニュン、と大きくたわみ、ボヨンッ、と跳ね返った。

船がその衝撃に大きく揺れる。

 

「きゃあっ!?」

 

甲板の端に立っていたアリーザは、慌てて欄干に掴まった。

船内への扉がバァンと勢い良く開き、中からライアンとエルモートがそれぞれフライパンとモップを手に飛び出してきて、「敵襲かっ!?」「何事だァ……!?」と、キョロキョロと周囲を見渡す。

 

と、

 

「よっ、と」

 

「――、――♪」

 

「あ゛うっ」

 

スタッ、スイッ、ビターーンッ! と、甲板にグラン、ティアマト、メドゥーサが降りて(墜落して)来た。

 

それ(主にメドゥーサ)を見て目を白黒させるアリーザ達の耳に、魔導放送によるソーンの声が響いてきた。

 

『あっ、あー、テスト、テスト……夜間哨戒より、フロンティア号に連絡です。ただいまの揺れは、団長さんとティアマトさんと、メドゥーサちゃんのイタズラです。何も問題無いので、皆さん、安心してお休み下さい♪ ……三人共、こんな夜中にイタズラしちゃダメよ?』

 

「……あ、あたし、ナニもしてな……」

 

ブツっ、と船内放送が切れる音を聞いて、またか、という顔をしたライアンとエルモートが頭をかきながら船内に戻って行くと、甲板にはグランと星晶獣二人、そして呆けた顔のアリーザだけが残された。

 

「…………」

 

「……メドゥーサ、大丈夫か?」

 

「うっ……うぅっ…………! ぐ、グランのバカァ! あんたなんか大っキライなんだからっ!! メドゥシアナぁーっ!!」

 

そう言って、メドゥーサは泣きながら特型艇の方へと飛び去って行った。

それに続いて、ティアマトもなに食わぬ顔で飛び立とうとして、

 

「逃がすかコイツめ」

 

「――――!?」

 

グランによって、ニア、エル、ゼルの三匹の竜を素早く三つ編みにされて、そこから首だけ出るように本体を編み込まれて転がされた。

この上なく無駄な技術である。

 

ジタバタもがくティアマトをゲシゲシと足で隅まで追いやる(ナゼかティアマトは若干楽しそうだった)と、グランはやっとアリーザに気付いたようで、気さくに手を上げて近寄って行く。

 

「あっ、アリーザ……ゴメンね、揺らしちゃって。見ての通り悪は滅んだから……アリーザはこんな夜中に、修行? 遅めの夕涼み?」

 

そう言って笑うグランに、アリーザはすぐに何かを言い返そうとして、

 

(……! や、ヤバい、なんかあっけにとられちゃって忘れてたけど、いざ意識すると……! っていうか、なんてタイミングで来るのよ!)

 

首から徐々に熱が上がってくるのを感じる。

目線をキョロキョロと落ち着きなく動かして、ようやく口に出来たのは、

 

「……まあ、そんなトコ」

 

(~~~~っ! き、昨日までゼンゼン普通にしゃべれてたのに~! どっ、どうしよう、ええと、何が言いたかったんだっけ……!)

 

「ふうん……じゃあ、俺はまたグランサイファーに――」

 

「あっ、え、えーっと……! 修行のコトとかで、だ、団長に聞きたいコトがあるんだけどっ! ちょっ、ちょっとイイ!?」

 

欄干に足をかけようとするグランに、慌てて声をかけ引き留めるアリーザ。

口に出してしまった以上、もう止められない。

 

ゴクリ、と唾を飲み込む。

 

「へ? ああ、いいけど」

 

「ホントにっ!? ……ここじゃアレだからさっ、とりあえずあた、アタシの部屋に来て欲しいんだけど……」

 

「?? ……! ああ、勿論、いいよ」

 

「! ――――、――!」

 

下を向いてモジモジとするアリーザに、一瞬怪訝な顔をしたあと、何かに気付いたような顔をしたグランが、キリッとした顔でそれを了承した。

甲板の端に転がされた三つ編みティアマトが、またジタバタともがき始めた。

 

「う、うん、アリガト……じゃあ、コッチね……ついてきて」

 

そう言って、足早に船内に入ってゆくアリーザを追いかけながら、グランはコッソリとゲスゥい笑みを浮かべた。

 

(なんだか知らないけど、シルヴァさんのかわりにアリーザフラグが立ったのか……!? 期待してイイんですよね? ね?)

 

バタン、と、船内への扉が閉まる。

 

甲板の端で、ティアマトが焦ったようにジタバタともがいている音が、夜空に延々と響いていた。

 

 

 

 

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