巨根なグラン君が色んな女の子にいいようにされたりしたりする話 作:空使い
息抜き小説にこんな時間かけちゃイカンね
エロシーンは次話から
『特Ⅱ型艇についてのアンケート』
大きな字でそう書かれた薄っぺらい紙から顔を上げ、ニオは肺に溜まったよどんだ空気を大きく吐き出した。
グランサイファーの船尾で夕焼けにたなびく細い積雲を眺めながら、薄紫の長い髪を風に遊ばせて心の耳朶を打つわずかな雑音に目を細める。
十天衆が一人、夢幻の魔奏者ことハーヴィン族のニオ。
彼女がグラン君率いる騎空団の戦列に加わってそこそこの月日が流れた。
万象の奏でる旋律を聞き取り操ることさえできるという割とトンでも設定を持つ彼女は、ある伝説的な竪琴をめぐるアレやソレですったもんだあったあげく、旋律が聞こえなくなったり治ったりとなんやかんやあって最終的に元サヤで、ついでにグランにホの字になった。
具体的に言えば『……抱っこ』だ。
いわく、『こうしたいの、あなただけなの』。
十天衆(ガチ恋勢)。
しかし、そんなそこはかとなくポンコツ臭漂うニオたそ(20才)がグランサイファーの船尾で最高にカッチョイイ雰囲気をかもしつつ、ノアの作った子供団員でも分かりやすいイラスト入りアンケート用紙をこれ見よがしに物憂げに眺めているのは、珍しくグランがらみではなかった。
「――――と、そう言う訳でして~。こちらの依頼をぜひニオさんにお手伝いして頂きたく思うのですが~……」
そう言って、お馴染みシェロカルテがグランの騎空団に厄介な依頼を持ち込んだのが、おおよそひと月前だったか。
人の心を操るという怪しげな魔術を使う魔術結社による、とある商業国家の乗っ取り疑惑の検証と、黒であれば解決という、なるほどニオにうってつけの依頼であったのだが……。
「……団長は」
「すみません~、団長さんには、別件で星晶獣同士の喧嘩の仲裁をお願いしていまして~……今回はニオさんと、潜入に長けた団員さんを何人かを選んで頂いて――」
「嫌よ」
「――チームを……あの~?」
「嫌。団長と一緒じゃないなら」
「ええとですね~…………本当に、ニオさんだけが頼りで~……」
「……無理。その依頼の手紙、酷い不協和音を感じる。……あの旋律が近くにないと不安なの」
「そ、そこをなんとか~」
「………………」
ゴネて殻に閉じこもったニオをグランがなんとか説得して、やっと依頼に送り出したのだった。
抱っこして、胸に耳を当てさせ、髪をすきながらニオだけが頼りなんだと小一時間説得する様を目の前でまざまざと見せつけられたシェロちゃんは、その晩久しぶりにお酒を飲んだ。
そしてベアトリクスら仲間たちとの1ヶ月に及ぶ潜入調査の末、見事洗脳魔法を使って国を裏から操っていた首魁を突き止め、操られていた人々を全員解放して黒幕一味を一網打尽。
無事団に帰還したのがつい先日……という訳なのだが。
依頼の報告を仲間に任せて騎空艇に帰って来たニオがまず最初に行ったのが団長であるグランの所。
今回の依頼がいかに長く困難であったか、どれだけ嫌な音に耐えて頑張ったかを訴え、わずかに残っている耳鳴りを静めたいとまたもちゃっかり抱っこを要求し、労を目一杯ねぎらってもらった。
ここまでは(ニオ的には)問題無かった。
問題は、グランにひとしきり甘えた後、次になにかと一緒にいることが多いハーヴィン仲間の所に帰還の報告がてらお土産を引っ提げて向かった時の事だ。
言葉少なく帰還の報告をするニオに、みんな温かな返事を返してはくれたのだが、その時、ニオは一部の友人達から僅かな違和感を感じ取った。
もちろん、そこそこ長い付き合いになる仲間たちだ。
決して悪意や、拒絶のような感情から来るものではない……の、だが――
『ただいま。これ、お土産』
『わあ、こんなに! 好きなのを持ってってイイんですか? ミラー! ルナールさーん!』
『何、リャオ、そんな大きな声出さなくても……あら、ニオ。帰ってたのね。お疲れ様……メリッサとアルルメイヤさんはなにしてるの?』
『りゃ、リャオさん、私ちょっと寝不足で頭がガンガンしてるんで大声で呼ばれると響いてぇ……メリッサぁ、アルルメイヤさん……ありがとぅ……』
『ルナール先生がふらふらしてたから支えてるの。ニオ、お帰りなさい』
『まったく、夢中になるのはいいが、夜更かしは程々にしないといけないよ? ニオ、おかえり。キミは元気そうで何よりだ』
『ニオ君、お仕事お疲れ様ですうほ。お土産もどもですうほ。ちょうどシェロ君も来てますうほ』
『……うほ? 後、メリッサの髪……』
『おや~、ニオさん、先程ユーステスさん達から報告は受けましたが、本当にありがとうございました~♪ 今ちょうど先生に完成品のドリンクをお渡しに来たところだったんですが~……』
『うん。ルナール先生は大丈夫みたいだけど、私とマキラにはまだ副作用が強いみたい』
『う~ん……未成年には向かないのかもしれないですね~。ミラオルさんはいかがですか~?』
『……わ、私は遠慮しておくわ……』
『………………』
……なんというか、疎外感、というのだろうか?
自分がいない間に、ナゼか友達同士が前より仲良くなっているような、妙な結束感が芽生えているような、そんな旋律を感じるのだ。
例えるなら、自分の友達同士が自分抜きの魔導ライングループを作っていて、知らない間にカラオケとかバーベキューとか行って楽しんでるのを魔導フェイスブックで見つけちゃった時の「え、なにそれ聞いてないんだけど?」な感覚に近い。
ヘコんだ。
コミュ障であるコトを自他共に認めるニオたそ(20)は大層ヘコんだ。
なんか自分に対しての態度が前と変わらず温ったかいのが逆にキツい。
「…………部屋、替えて貰おうかな……」
船団に並走するカー・オン(でっかいクジラ)の背中で夕焼けを観賞しているサテュロスと子供団員達を眺めながら、ニオは割と本気でそう思った。
なんか最近、魔導LINEグループ『ハーヴィンっ娘友の会』が過疎り気味だなぁと思っていたのだ。
任務中もヒマを見てはせっせと薄型魔導通信端末(略称・魔導スマホ)で近況を報告しては、既読が付くの遅いなぁと思っていたが、まさか友達だと思っていたみんなに煙たがられていたなんて……!
クールキャラって同姓から見たらやっぱりウザいのかなぁ?
二十才でまだ人見知りってイタいよねやっぱり……。
と、夕暮れの生暖かい湿った風を顔に感じながら、欄干にもたれ掛かってグッタリとうなだれるニオたそ。
長い髪が風にあおられてチラチラのぞくうなじがまぶしいぞ。
「あ、ニオだ」
「……団長」
そんな絶賛タソガレ中のニオの耳に、今一番聞きたかった声と旋律が流れてくる。
いつも通り、大きくて、優しくて、温かくて――――
「やあ、ニオ、なんか今エルモートにチビッ子達がまた危ない遊びしてるって聞いてね……なるほど、ティアマト禁止の次はクジラか(うーんやっぱ髪の長いハーヴィンっていいよなぁ。膝の上に乗っけてちんぽ突っ込みつつ髪のニオイ嗅ぎたい)」
――とびきりエッチな旋律だった。
素朴ながら精悍な顔に、いかにも慈愛と余裕が溢れていますと言わんばかりの外行きスマイルを張り付けた、チンコの擬人化ことムッツリグラン君。
ニオは、団長のコトを立派な騎空士と思い込んでいる団員ばかりの中にあって、グランの『本当』の姿を知り、知ってなおグランを慕う珍しい団員だった。
ニオの、相手の心の内が分かるという能力は、どう考えても性根の芯までスケベでクズなグランの天敵に思える。
実際、ニオが初めてグランに出会ったときなど、いかにも人畜無害そうに穏やかに微笑みながら、凄まじくイヤらしい旋律(『おっほ……エロい格好のメスハーヴィンだなぁ……スライムローションまみれのシェロさんと向かい合わせてぽんぽんサンドイッチの間にちんぽ突っ込みてぇなぁ……』)を奏でるグランに一瞬で赤面し、思わず全力攻撃をしかけた程だ。
正直残当である。
なまじ無駄に強かったせいで仕留めきれなかったのが悔やまれる。
そもそもニオの聴覚は基本的に、相手の感情――楽しいとか、怒っているとかの感情、こうしたい、したくない、といった思考の向きが分かったり、嘘とホントを見抜けたりといった、ざっくりとした旋律しか聞き取れないものだ。
それなのに、思考の内容がこうまでハッキリと聞き取れるのは、それだけ強く、そして詳細に、鮮明に考えているという事で……つまりグランはどうしようもなくヘンタイと言うことだ。
知ってた。
当然、最初の印象は最悪と言ってよかった。
しかし、どういうワケだか伝説の天星器である九界琴に好かれているらしいグランとは、最強を義務付けられる十天衆としてその後も何度も顔を合わせるコトになってしまう。
そしてイヤイヤながら何度か顔を合わす内に……
(う……また、あのエッチな旋律…………)
(また……今度はそんなコトまで……)
(また、あの子の旋律……次はどんなエッチなコトを……)
……ニオは段々と、グランのどうしようもなくスケベな旋律を聞くのが楽しみになっていった。
そう、ニオもまたムッツリスケベだったのだ!
なんせ、幼い頃から周囲の人々の口に出せないアレやコレを、旋律という形で鮮明に聞き取れてしまったのだから大変だ。
その中には、当然アハン(死語)でウフン(死語)なチョメチョメ(死語)事情も含まれていて、幼いニオちゃんは毎晩そこかしこから聴こえてくるピンクい旋律にモンモンさせられてきたのだ。
自然、そういったコトに興味は沸いたし、幸いにもハーヴィンの中ではかなりの美人な部類であったニオは、その気になれば実践相手なぞ幾らでも選べた。
しかしそこで障害になるのはやはりニオの特異な聴覚だ。
一見誠実そうに見える人の、周囲や内面のドロドロや、自分に向けられた劣情や悪意がはっきりと聞き取れてしまうニオは、どうしても他者を信頼できず、結果特別な誰かを作れなかった。
特に、ハーヴィンである自分に対してエロい旋律を奏でている人間は大抵ろくでもない危険人物だった。
そうして巡り巡って行き着いた先の十天衆でも、ニオは他の凡百とは一線を画した仲間たちに一定の信頼を寄せつつ、それでも心を開ききれないでいたのだ。
そんなニオのもとに颯爽と現れたドを越したヘンタイ。
それがグラン君である。
完璧に取り繕った笑顔の下で、思わず引く程のドスケベ妄想を展開するグランは、しかしニオにとってとても興味深い男の子になってゆく。
グランは実に不思議な旋律の持ち主だった。
純朴で穏やかながら、まるで何百何千もの女性を抱いてきた性豪のような雄々しく色っぽい旋律を持ち、それなのに異性を知らない童貞としか思えないピュアな音色を感じさせる。
年相応に子供っぽく、相応以上に大人っぽくもあり、そして並外れてエッチながら、強靭極まる理性がそれを律しているのが分かる。
なにより、グランにはおよそ悪意と呼べるモノが全くなかった。
ただただ純粋にスケベで、そしてアホだった。
何十、何百、何千万と耳にしてきた様々な音色の中にあって、一際面白い旋律だ。
どうしようもなくヘンタイで、またそれを現実に出来るだけの腕力、権力、財力、魅力を備えていて、しかも色んな女の子(や男の子)に心から慕われているというのに、自身のエロさを隠そうと必死になるあまりそれらに全く気づく様子のないちょっと……いやかなりアレな男の子。
いつしかニオは、グランのドスケベな旋律を聞くのが楽しみになっていた。
ムッツリスケベなニオにとって、凄まじくエロいのに全く無害なグランは、安心してこっそり観賞できる過激なポルノ劇場のようなモノだった。
初めこそ驚き真っ赤になってしまったニオだったが、どうやら危険は無さそうだとわかってからはむしろ積極的にグランの旋律に耳を傾けるようになった。
自分を対象にしたヘンタイプレイの数々は、まるでほんとうにシているような微にいり細に穿ったねちっこくエロい旋律で、ニオをヒドくドキドキさせた。
向かい合って目を合わせ、全然関係ない話をしながら、頭の中では濃厚な行為にふける。
ほとんど疑似セックスだ。
旋律だけでイッたのは初めてだった。
その後、催眠旋律ニーに目覚めたニオが普通のオナニーじゃ満足出来なくなり、テキトウな理由をつけてグランの騎空団に転がりこんで来るまでそれほど時間は掛からなかった。
そして同じ団でこっそり催眠旋律ニーにふけりつつ、一緒にいくつもの冒険を乗り越えて、グランの意外と頼れる部分を何度も見せつけられ、いつの間にか割とホンキでグランの事が好きになってしまったのだった。
場面は夕暮れの甲板に戻る。
カー・オンの背中で仲良く肩を寄せあっている子供団員達に視線をやり、ニオがグランに応える。
「……今回は命綱も一緒みたい」
「サテュロスね……まあ、調子乗りのティアマトと比べればカー・オンならだいぶ安全か。後は見張りの大人にちゃんと一言断ってからにしてくれれば……ニオは、アンケートでお悩み?」
ニオの手で風にはためくアンケート用紙に気づいたグランが、特に何の気なしにそう問いかけると――
「……………………団長。私、この団に居て良いのかな?」
「いや、何があったのさ!?」
殻にこもってイジけてしまったニオに詳しい事情を聞いたグランは、なんだそんな事かと胸を撫で下ろした。
「…………」
「いや、ゴメンって、別に軽んじてるワケじゃなくってね!?」
また閉じこもりそうになったニオをなだめて、さてどう説明した物かと思い悩むグラン君。
団員の相談に乗るのも団長としての立派なお仕事だ。
その相手が、最近段々仲良くなれてきた可愛いハーヴィンのお姉さんならなおさらだ。
ここいらで更に好感度を稼いでおいて、ゆくゆくはベッドの上で濃厚なコミュニケーションを取れるようになりたい。
そう考えるグランは、本気で悩んでいる様子のニオにかける言葉を慎重に吟味する。
(要するに自分がいない間に、例の耽美本の見本市の件でルナール達が前より仲良くなっちゃって疎外感を感じてるってコトなんだろうけど……さーて、あのお耽美なゲイポルノ絵物語についてなんて言やあイイんだ……?)
「あー、えっとね、ルナール達は、ちょうどニオが依頼でいなかった時にその……なんて言ったらいいのか……」
いかにもエロに免疫の無さそう(に見える)なニオを前に、口ごもるグラン。
ニオはそこからぼんやりと、隠し事や後ろめたさを思わせる旋律を感じた。
「…………団長もバーベキューしたの?」
「ゴメン何の話?」
ニオの中では、彼氏のいないハーヴィン仲間とカッコ良くてスケベなグランが根暗な自分を仲間外れにして川原で一緒にバーベキューしたりキャンプで花火してウェーイしたりしてたコトになっているらしい。
いつも通り表情には乏しいが、割と本気で泣きそうなニオに慌てて説明を続けるグラン。
「いや、そうじゃなくて……ニオは、あー、ルナールがナニ描いてるかは知ってたよね?」
「……耽美物」
「それがどんなのかは?」
「…………言わせないで」
少し恥じらいながらそう答えるニオを見て、グランはわかっているなら話が早いと胸を撫で下ろした。
「関係あるの?」
「え?」
「…………耽美物」
空の水平線に日が沈みかけ、空が藍と紅のグラデーションを作るころになって、ニオが小さな声でそう訊ねてきた。
「もちろん。ニオがいなかった間に、スフィリアで絵物語の見本市って言って、色んな作家がまだ世に出ない色んな絵物語を展示販売するお祭りがあったんだ。ルナールはそれに耽美物を出展して……で、ニオの言うミラ達はそれの手伝いとして1ヶ月程協力してたんだよ」
カンヅメする! と意気込んで現地の宿にこもったルナール達を、依頼の合間を縫って何度か訪ねたグランだったが、確かに彼女達からはなにか独特の一体感のようなモノを感じた。
宿の部屋の中にぷにロリハーヴィンばっかり五人も詰め込んでるなんて、なんかイイ匂いしそう! とかなりアホなコトを考えて突入したグランだったが、最後の追い込みのピリッとした雰囲気など、見ていて思わず感心してしまった程だ。
あととってもイイニオイだった。
インク臭かったけど。
「…………やってなかったんだ。バーベキュー」
グランの旋律から嘘を言っていないと判断したニオは、ホッと胸を撫で下ろした。
自分抜きの魔導LINEグループなんて無かったんや。
よかったね。
「……妙にこだわるねバーベキュー。ニオ騒がしいの嫌いじゃん……ミラ達が仲良さげなのは、エロどう……耽美物って言う特別なモノを一緒に作り上げたからだと思うよ。……タブン」
「……でも、どうしよう?」
一応事情は理解して納得した様子のニオだったが、だからといって自分が仲間外れなのが変わった訳ではない。
どうしたらこのつま弾き感を解消出来るのかと困った顔でグランを見る。
「ルナール達なら、次はアウギュステの見本市に新刊出すんだー! ってまた絵物語描いてるみたいだし、混ぜてもらえばいいんじゃないかな」
「…………」
「……そこでこもられても」
「……だって無理、そんなの」
若干めんどくさくなってきたグランだが、もちろんそんなコトはおくびにも出さずに提案する。
「あー、じゃあせめて作った耽美物を見せてもらったら? それだけでもだいぶマシなんじゃ……」
「…………エッチなの、無理。……恥ずかしい、し」
いったいどうしろと言うのか。
これまで自分のムッツリスケベを完璧に隠し通して生きてきたニオ。
突然、エロ本見せて♪ と持ちかけて、積み上げてきた自分のクールなイメージを崩すわけにはいかない。
たとえそのせいで自分抜きの魔導LINEグループが作られちゃったとしてもだ。
(……もうシェロさんかリャオに頼んで無理矢理巻き込んで貰えばいいか……)
そう思ったグランは、さっさと話を切り上げるべく、ごく自然な調子で冗談を言ってみた。
それは今までの童貞グラン君だったらまず言えないようなジョークだったが、最近少しずつデキる男の余裕を持ち始めたグランは、このとき少し気が大きくなっていたのだ。
つまりだいぶ調子に乗っていた。
「じゃあ、俺ので予習でもしとく?」
ニオは、一瞬ナニを言われたのかわからなかった。
耽美物のエロ絵物語を見る見ないの話から、『俺の』で予習――
(え……それって、そういうコトなの?)
ニオが条件反射的にグランの内心を読んでみると、
(やべ、ちょっと今のは無かったかな? いくらなんでもちんぽ見てみる? はセクハラだろ……どうしよ、なーんてな! って言って誤魔化すか? ニオってそこまでハッキリ思考が読めるワケじゃ無いらしいしバレねぇだろ。 あ~、でもニオにチンポ見せつけたいなぁ……スベスベのお腹の上にチンポ乗っけて『ココまで入っちゃうんだよ』ってやりてぇなぁ俺もなー)
……この駄々漏れである。
(ちょっとはホンキだったんだ……団長のオチンチン……私に……)
一瞬、見せて貰うだけならチャンスかも、と思ったニオだったが、そんなコトを言ってグランにムッツリがバレるのは恥ずかしい。
はしたない女と思われるのは嫌だし、テキトウにちょっとだけ怒ったフリをして誤魔化そうと思った所で、続けて心の声が――
(おっといけないいけない、エロいコト考えたらバレるかもだし落ち着こう……そういやシェロさん来てるんだっけか……あのディルドのコトとか一回詳しく聞きがてらまたお口で抜いて貰おうかなぁ。今日こそ上手いコト下のお口にお邪魔出来たらいいんだけど……ダメだったらまた他のコに頼も)
「――まって。ちょっと待って」
「なーんちゃっ――――え、何?」
衝撃に思わず制止の言葉を口走って、グランを遮るニオ。
生温い風が二人の間を吹き抜け、子供団員達が甲板に降りてキャイキャイ騒ぐ音が遠くにうっすらと聞こえる。
(え? え? 今……シェロカルテ……また? 『また』って? 他のコ? どういう意味……?)
「え、えっと……ゴメン、今のはちょっとしたジョークって言うか、その、セクハラっぽかったよね、ゴメンなさ――」
「団長」
ニオに見上げられて、声をつまらせるグラン。
ナゼかヒドく真剣な顔をしているニオに、思わず頬がピクッとヒクつく。
ナゼか首筋に冷たいモノを感じながら、ゆっくりと口を開くニオの唇を見つめる。
「団長って……………………………………童貞?」
「」
(読まれてたーーーーーーーーーーーーっっっ!!?)
ニオのまさかの童貞審問に、笑顔のまま固まるグラン。
いったいどこまで読まれてしまったのかと、脳内に嵐が吹き荒れる。
(え!? どこ!? ドコまで読まれてた!? 単に俺がレベルの低いセクハラかましたから? ムッツリがバレただけ? それとも、最近色んなコとヤりまくって我が世の春を謳歌し始めたコトまでお見通し!? いやでもそんなまさかニオにそこまで具体的な読心能力なんて――)
だから駄々漏れだって。
グランの荒れ狂う内心を聞いてしまったニオは、ショックでフラッと(器用にも浮かんだままグランの胸元に)倒れこんだ。
「………………そんな……いつの間に…………」
じわっと目元に涙を浮かべるニオ。
どうやら自分が留守の間に手癖の悪いドロボー猫に油揚げをかっさらわれてしまったようだった。
この大きく温かい旋律は自分が独り占め出来るかもと思っていたのに、自分がちょっと目を離した隙に尻と頭の軽い女団員達と毎晩ベッドの上で湿ったロックミュージックを奏でていたなんて……!
最近ちょっとずつ仲良くなってきたし、自然(ニオ基準)なボディタッチも増やせてきたから、この調子で一年くらいかけて仲を深めていずれはエッチなコトに挑戦できたら……と気の長いコトを考えていたのに、こんなのってないよと嘆くニオたそ(20)。
傷は深い。
グランはグランで、うっかり思考を読まれて陥ってしまったこの窮地に身体が崩れ落ちそうだった。
なんせ今まで散々エロいコトを考えてもニオにバレなかった(と本人は思い込んでいる)ので、油断しきっていた所にコレである。
ニオとは最近イイ雰囲気だったし、うまく行けばイケちゃうんじゃね? なんて思っていたら、一転、秩序の危機だ。
(コレで俺は団員に手を出しまくったエロ団長として通報、屈強なオスドラフにケツを狙われながらバルツの炭坑で死ぬまで強制労働か……こんなコトならメルゥと二十四時間耐久セックスでもしとくんだった……ハーヴィンにも一度くらい挿入したかったなぁ……)
ニオのイイ匂いのするつむじを見下ろしながら、この期に及んで考えるコトがコレである。
イイぞー、捕まってしまえー。
しかし、そんなつくづくスケベなグランの旋律、その最後の部分にニオの耳がピクリと動いた。
「……ハーヴィンは、まだ……」
「ああ、さようなら俺の騎空団――なんか言った?」
ニオは遠い目をしたグランのシャツに涙を擦り付けると、腫れぼったい目でグランを見上げてそのとぼけた顔をじっと見つめた。
(ハーヴィンとは、まだセックスしたことないんだ……)
こんな状況でもスケベな旋律の鳴り止まないグランの顔を見つめながら、ニオは考える。
(…………団長の童貞は取られちゃったけど……別に誰かの恋人になったって感じでもないみたい。 それに、ハーヴィンとセックスした事ないってことは、ハーヴィン童貞ってこと、だよね? つまり、実質童貞。団長はまだ童貞。恋人もいない。…………今ならまだ間に合うかもしれない)
いやその理屈はどうかと思うよ?
頭の中でぐるぐると思考を巡らせながら、死刑宣告でも待ってるみたいな顔でだらだらと汗を流しているグランのシャツを、きゅっ、と握るニオ。
グランは、うっすら顔の赤いニオを見下ろして、いよいよかと身構える。
ニオがゆっくりと唇を開く。
「……あなたが、教えてくれるなら…………その、お願い」
「スンマセンやっぱり通報だけはカンベンしてくだっ――――なんて?」
プイ、と顔を反らしたニオに思わず聞き返す。
「…………耽美物。予習、させてくれるんでしょ? …………あなたので」
いつもの平坦な声をわずかに震えさせながらそう言うニオに、思わず面食らうグラン。
自分で言っておいて一瞬意味が分からなかったグランだが、遅れてじわじわと脳に情報が流れ込んでくる。
耽美物。
エロシーン。
予習――
「えっ、イイの?」
まさかの展開に、驚きが隠せないグラン。
最近ツイてるツイてるとは思っていたが、こんなにツイててイイんだろうか?
間抜け面で自分を見下ろしながら、またスケベなコトを考え始めたグランを見上げて、ニオは頬が熱くなってくるのを感じながら小さくうなずいた。
「団長が言ったのよ。…………エッチなのは無理…………だけど、団長ばっかり他のコとエッチなコトして、ズルい。……わ、私も。私にも、教えて………………その、エッチなコト」
潤んだ藤色の瞳でグランを見つめ、そう言い切るニオ。
緊張からか、僅かに震えているのが伝わってくる。
「え、あ、教えてって……!?」
(マジで!? イイの!!? ニオにエッチなコト教えちゃってイイの!!? 教えちゃうよ! めっちゃエロいコト教えこんじゃうよ!!?)
スーパー可愛い二十才児ハーヴィンにエッチのレッスンをおねだりされて、チンポに電撃が走ったグランが興奮のあまりにそんなアホなコトを考えて鼻息を荒くしていると、ニオはまた少し頬の朱を濃くして「イイの」と呟き続けた。
「男のヒトは、怖いわ。ヒドい事を考えてるのが、聴こえてしまうから……でもあなたは違う。団長はエッチだけど、私にヒドい事なんてしない」
だから――、と続ける。
「私とエチュード、しよ?」
頭に魔導付けといたら何出したってイイと聞いた