コンドームを着けさせるように銀子に言い聞かせている鋼介を残して鬼沢は部屋をから出ていく。開けたままのドアから銀子が着いてくる。
階段を昇り、薄暗い廊下を歩く。北向きに窓が嵌められていて太陽の明かりが一切入ってこない。昼の明るさのおかげで歩くには全く問題ないが、天井から吊るされている電灯が点いていないせいで冷たい雰囲気がある。
廊下の中間にある部屋のドアの前で立ち止まった鬼沢が後ろを振り返る。階段を昇り切ろうとしていた銀子は足をすくませて、上げ掛けた左足を戻した。
「こっちこっち」
鬼沢はドアを開いて悠々と手招きする。銀子は招かれるまま部屋に入った。
ひんやりとした廊下とは打って変わって、窓から眩しいほどの光を取り込んでいる部屋の中はポカポカと暖かい。全体を照らすには至らないが、白い天井も相まって廊下とは比較にならないほど明るかった。
備え付けられている家具はシンプルな引き出し付きの白木の机とセミダブルサイズのベッドだけだ。部屋の広さに対して数が極端に少なかったが、すっきりしていて飾らないのはある意味でこの洋館によく似合っている。
机の上には綴じられていない紙山が無造作に散乱している。紙面には小説のアイデアと思われる単語や文章が走り書きされていた。
「よいしょ、っと」
ベッドに腰掛けた鬼沢は隣を叩いて、銀子に座るように指示する。
ドアを跨いだところで立ち尽くしていた銀子はのろのろと歩いて鬼沢の横に腰を下ろした。
「なにするか解ってる?」
「うん」
感情の感じられない声で銀子が答える。
「ならええ」
鬼沢は立ち上がると机に向かい、一番下段の引き出しを開けて、無骨なデザインのデジタルカメラを手に取る。
慣れた様子で容量と電力の残量を確認すると、銀子にレンズを向けた。
突然被写体にされた銀子は身体を強張らせる。しかし、すぐにレンズから目を外してカメラを拒絶する。
シャッターが切られる音だけが部屋の中に響く。要望を出すわけでもなく、鬼沢は素人の横好きと判る手つきで銀子をカメラに収めた。
不機嫌な顔をしていた銀子も、顔の筋肉が疲れてきたのか少し表情が緩む。
不機嫌顔をもう一度作るのが億劫なのか、いつもの澄まし顔をしている。相変わらず感心なさげにカメラから視線を外している。
「下着を撮りたいから服脱いでくれ」
コートのボタンに手を掛けた銀子だったが、そのまま動かず、外そうとしない。鬼沢が声を掛けても顔を険しくするだけだ。
やがて、上から順にゆっくりとボタンを外しコートがはだけると、躊躇っていた理由がわかった。
「こりゃ、なかなか派手に汚しとるなぁ」
カメラを机に置いた鬼沢は白い生地に暗褐色のシミの付いたワンピースを見て呟いた。
「家に来る途中でやらかしたんか?」
頷いた銀子に鬼沢は歩み寄る。身体を固くして警戒した銀子だったが、ベッドから立ち上がることはせず、ワンピースに付いたシミを触る鬼沢の手を払うこともなく、首を横にして外に視線を向けている。
「何を溢したん?」
「……ビーフシチュー」
「そりゃあまた、災難やったな。でも、それとこれとは話は別や」
服から手を放した鬼沢は、慰めるように落胆している銀子に声を掛ける。
運が悪かったとは思うが、全くの他人の不幸なのでこれ以上言える事はない。
それよりも、ここに連れ込んだ目的を果たす方が鬼沢にとって重要だった。
下着姿になった銀子をベッドの中央に割り座に座らせる。厚手の生地だったおかげか、白いシャツにはどこにも染みている箇所はなかった。
鬼沢は再びカメラを構える。
カシャッ、カシャッ。
規則的にシャッターが切られる音が鳴り響く。決して大きくはなかったが、静寂の中ではひどく耳に残った。
「じゃあ、裸になってくれるか」
構えたカメラを下ろしながら、至って当たり前のような口調で鬼沢は促す。
ベッドの上で黙って写真に収められていた銀子は、やや不機嫌気味に顔を強張らせて下着を脱いでいく。
ビスクドールのような滑らかな肌と、限りなく平坦な乳房にぽつんと浮き立つ二つの小島。白い凪の中に微かに赤みを帯びて盛り上がる姿はいっそ神々しすらあった。
きれいなタテスジが入った股は一際色白で、白磁のような気品が感じられる。
カシャッ、カシャッ。
先程と同様にシャッター音が部屋の中に鳴り響く。
身に着けていた布を全て失った銀子は、手で胸と股を隠す。いかにもいかがわしく、かえって扇情的な姿をカメラに収めていく。途中、いくらかポーズに注文をつけると、嫌々といった感じで銀子は指示に従っていた。
「次は寝てもらってええか?」
ベッド横に移動して、言われた通りに寝そべった銀子を写真に収める。足を開かせてタテスジにカメラを寄せる。
カシャッ、カシャッ。
ひとしきり写真を撮った鬼沢は、液晶画面で今しがた収めた銀子の恥態を確認する。最初は服を着てむすっとしていた銀子が、写真が流れるにつれて薄着になっていき、最後は裸の映像で終わる。
表情一つ変えずに見ていた鬼沢は、銀子に視線を戻すと、彼女の胸を指先で撫でた。
くすぐったかったのか銀子は身動ぎして逃げる。固い表情の銀子はますます人形めいてきていた。
ベッドに膝を着く。
「とりあえず、キスしようか」
返答を聞く前に鬼沢は唇を合わせた。口を開けて舌を受け入れようとする銀子を無視して、歯の側面を舐めていく。銀子は鬼沢の胸に手をやって押し退けたが、首の後ろに手を回されて離せない。
執拗に口内を這いずり回っている内に胸に掛かる力が弱まる。鬼沢は空いている方の手で胸にある銀子の手を取り、彼女を引っ張り起こした。
逸物を露出させ、銀子に握らせる。銀子は慣れた様子で逸物を両手で包むと、たらりと滴らせた涎を塗り込むように擦り始める。
片手で竿を刺激しながら、もう片方の掌で鈴口を撫で回す。柔らかな手のぬくもりと感触が心地よく、加齢で精機能が衰えていなかったら達していただろう。
しかし、冷静になってくると、光景は過激そのものだが、手の使い方がぎこちなく、リズムよく上下させるだけだ。もちろんそれだけでも十分に気持ちいいが。
銀子を覆い被さるように組みし抱いた鬼沢は逸物を膣口にあてがった。先走りを塗りたくるようにゆるゆると腰を振って逸物と気分を昂らせていく。
「あの」
「ん?」
言葉をつなげるのを気後れしているのか、鬼沢を見上げる銀子は指を組んで言いにくそうにしている。
何を言いたいのか鬼沢には解っていたが、構わず腰をくねらせる。
「……コンドーム、して」
「嫌、って言うたらどうする?」
「師匠に言う」
押せば黙るかと思っていたが、そうもいかないようだ。
言ってみただけで、にべもなく拒否されるのは想定の範囲内だった。強要してこれきりになっては意味がない。長い付き合いにしていくつもりなのでここは引き下がっておく。
コンドームを着けた鬼沢は裸になると、銀子の隣に寝転がる。視点が逆転した銀子は、怪しく薄笑いを浮かべる鬼沢の真意を探るように怪訝な顔で見下ろしている。そして、思案の末に鬼沢に寄り添うように横になる。
「それも嬉しいんやけど、今回は間違いやな」
鬼沢は自身の逸物を指した。勃起したそれは鋼介のよりも小さかったが、先端に向かって垂になっている。
視線を下に向けた銀子は、呆然とした顔で鬼沢を見返す。
「もしかして、上になったこと無いんか?」
「上?」
とぼけているでもない様子に鬼沢は確信する。この子は騎乗位をしたことがない。
「いつもどういう風にしてるんや?」
「……師匠が勝手にしてる」
答え難そうに目を逸らした銀子は、沈黙に耐えられなかったのかぽつりと呟いた。
「そりゃまた」
鬼沢は顎に手を当てて場面を想像した。年端も行かない幼女を犯すのはさぞ楽しいだろう。だが、彼女の師匠と同じようにしては面白みに欠ける。
幸いというべきか、これからさせようとしていることを銀子は経験したことはないようだし、図らずも先んじれたことを喜んでおく。
「ワシの腹の上に跨ってくれるか」
へその辺りに尻を乗せた銀子を更に下に押しやり、腰を浮かせる。逸物を握らせ、膣口にあてがわせる。
膝上の長さが足りず、ベッドに膝立ちが出来ない銀子は全体重を鬼沢に圧し掛ける。
「そのまま腰を落として」
銀子が恐る恐るといった様子で、ゆっくりと逸物を呑みこんでいく。半分が膣内に納まったところで逸物から手を離させた鬼沢は、腕を前に出させ、手を組み合う。
前屈みになった銀子の身体を揺らす。バランスを崩した銀子は腰が落ち、逸物が子宮を押し上げると苦しそうに目を強く閉じた。
きれいな顔の眉間に皺が寄る。
膣は自身から溢れる愛液だけで十分に濡れていて、ローションを使う必要はなさそうだ。
持ち主の態度とは裏腹に貪欲に逸物を貪る膣肉に、年甲斐もなく情欲を掻き立てられる。
そうとは気付かれないように鬼沢は銀子の頬に手を当て、自分の方に顔を向けさせる。
「いつも動かれてばっかりみたいやし。たまには動いてみるのもええもんやぞ?」
逸物で下から突き上げる。緩慢な動作でも、普段との違いに戸惑うように鬼沢の手を強く握った。
身体全体が鬼沢の動きに付き従っている。鬼沢の腰が浮けば銀子の身体も浮き、腰が落ちれば追いかけるように彼女の身体も落ちる。
更に動きを緩めた鬼沢は、握ってくる銀子の手を握り返した。唐突な返事に虚ろげにしていた銀子は息を吹き返すように鬼沢を見下ろす。
動くのを止めた鬼沢は下腹部を目で指した。銀子の視線も後を追い、逸物を差していることが判ると、さっきまでの一連の意味を悟ったのか、体勢を整える。
手を鬼沢の腰の辺りに着くと、呼吸を整えるように息をして、ゆっくりと腰を浮かせた。
「んっ」
小さな身体が落ちると同時に、愛らしい声が漏れる。
動かれることと動くことでは感じ方も違うらしく、もう一度腰を上げるのを躊躇っている。
腹を置かれた手には力が込められず、もう終わりにしたいと目で言っている。
「っ!」
鬼沢は銀子の細過ぎる腰に手を回すと、無遠慮に逸物を膣に突き立てる。
いきなりの刺激に驚いたのか、力なくしていた銀子の身体がぴんと伸びる。
「疲れたなら仕方ないな。銀子ちゃんはいつもみたいに力抜いとってええよ」
鬼沢はさっきまでの教え込むような動きを辞めて、攻め立てることに注力している。銀子の身体を引き寄せ抱きつく。そして、全力で突き放して来る前に彼女のいつもの体勢、正常位になるように身体を回転させ場所を入れ替えた。