風呂上がり。鋼介は頭を拭いたタオルを肩に掛けて、約束の蜂蜜ミルクを作る為に冷蔵庫から牛乳を取り出した。
よく冷えた牛乳を湯飲みに注ぐ。吸い込まれるような白色が容器の七割ほどを満たす。
次に暗所から蜂蜜を入れたガラス瓶を取り出し、蓋を開ける。とても濃い飴色で味も濃厚なその品は地方に指導に行った時に貰った物で、後で値段を調べるとかなりの高級品だった。
銀子と八一には開封した日の朝にメープルシロップ代わりに口にしたきりだ。セコいと思われても、子供の感覚で消費されてはあまりにもったいない。そう思わせる一品だ。
白い寝間着に着替えて髪を拭いている銀子も、苦労した末の対価にどこか嬉しそうだ。髪を叩き拭きする手が心なしか弾んで見える。
スプーンを琥珀色の液体に差し込む。救い上げる量以上の重量を感じながら持ち上げると、先端の窪みに瓶に入っていた時よりも光沢のある蜜が乗っていた。溢れる蜜も滴になることはなく、良く粘っていて、瓶に糸を落としている。
窪みを返し、ミルクに蜂蜜を投入する。トロリとした液体が穏やかな波紋を立てて白色の中に消えると、スプーンをマドラーにして混ぜた。
ふと、コンロが目に入る。どうせならレンジで作るよりも、火に掛けたほうが美味しそうだ。
戸棚から小さな鍋をコンロに置いてミルクを移すと、湯飲みのだけでは少なくなそうなので、適当にミルクを足して火に掛ける。ついでに蜂蜜も追加しておく。
甘い香りが広がる。中火で温めつつ、蜂蜜がきれいに溶けているか鍋を傾けながら確かめる。
どこにも琥珀色の固形物が残っていないのを確認して鋼介は湯飲みにミルクを戻す。もう一つ、自分の分を用意しても、鍋にはまだ一杯分くらいは残っていた。
「ほい」
湯飲みを銀子に手渡す。両手で受け取った銀子は水面を見た後、湯飲みを傾けてちびちびと飲む。
銀子の後ろに回って髪の仕上げ拭きをする。これもいつもは桂香がやっているので、鋼介もそれに倣った。
「どや?」
「おいしい」
表情は見えないが、リラックスした声に、鋼介は肩の力が抜けるような気持ちになる。浴室の一件の余韻が残っていたのか、自覚しない内に気を張っていたようだ。
まだ奥に水気の残っている髪を梳るようにタオルで撫でていく。細い髪質は水分を拭き取りやすく、普段はする機会のない鋼介でもすんなりと乾かせた。
ゆっくりと味わって飲んでいた銀子だったが、途中からは湯飲みの角度が鋭くなる。a
「飲んだか」
「うん」
一人言のつもりだったが銀子に返事をされる。見れば、銀子の顔がもう一つの、鋼介の湯飲みを捉えていた。一杯では足りないようだ。
「飲むか?」
「うん」
ついでに用意した物なので、渡すのは構わない。
ただ、ここで好きなだけ飲ませても良いものだろうか。アメの量はよく考えなくてはならない。
そう思うと、股間に血液が集まるのを感じた。考えるより先に答えは出ている。
「ええけど、こっちのお願いも聞いてくれるか?」
「…………うん」
鋼介が隣に立ったことで「お願い」がどんなものか察したのだろう。長い沈黙に幼いなりの葛藤があったことが窺える。
「脱がせてくれ」
着物をはだけさせて、トランクスを露出させて銀子に迫った。臨戦態勢の逸物が幕を張っている。
鋼介の方を向いた銀子は膝立ちになると、トランクスに手を掛けてのそのそと下ろす。が、
「下りない」
逸物に引っ掛かると早々に諦める。
「もう少し頑張ってみようか」
鋼介に手を取られ、銀子の両手が再びトランクスを掴む。今度は鋼介の補助でゆっくりと下ろしていく。
「っ!?」
飛び出してきた逸物に銀子は驚いたように瞬いて、腰を落として割座に座った。
「何ビックリしとるんや。さっき見たやろ?」
浴室のときと同様に逸物を銀子の目の前に出して迫る。しかし、さんざん渋った末にすんなりと受け入れた先程と違って、払い除けて拒否する。
「どうした? さっきみたいにくわえるだけやぞ」
銀子は逸物… の根元に伸びる陰毛を指差した。
「それ」
「毛?」
陰毛を摘まむ鋼介の指を銀子は真剣な顔で見る。
「汚い」
「汚いって、さっき風呂場で洗ったばっかりやぞ」
「それでも汚い」
「気にしすぎや」
「汚い」
「なら下を使うか?」
「っ!」
秘所を鋼介は足の指で触ると、挿入された時の痛みを思い出したのか銀子は顔を曇らせた。
鋼介は棚からハサミを持ち出す。銀子の正面に腰を下ろして陰毛を切り、ちぢれ毛をティッシュに乗せる。
「ん?」
視線を感じて鋼介は顔を上げると、銀子が慌てた様子で顔を背けた。自分にはまだ生えていない部位の体毛に興味があるのかもしれない。
「やってみるか?」
鋼介の差し出したハサミを受け取った銀子は、恐る恐るとした調子で陰毛を切っていく。完全に任せるのは不安なので、手を添えて補助する。
銀子は、剪定しているのとは逆の手で縮れ毛を摘まんでいる。ハサミで切り離されたそれを、鋼介の真似をするようにティッシュに乗せていった。
「もうええやろ」
幼女に剃毛を手伝わせるという行動は、暴力的なまでの性衝動を視覚に訴える。
斑に刈られた股間を払った鋼介は、銀子の頭を掴むと股座に引き寄せた。
「これで咥えてくれるな?」
身体を反らせて逃げようとした銀子だったが、やはり大人の腕力には抗い切れない。要領はしっかりと身に付いているらしく、口内に逸物が侵入してくると、食い縛っていた歯を開いて迎える。
小さな口の中を逸物が前後する。
鋼介は短くなった陰毛に触れる。伸びていたときにあった弾力がなくなり、プラスチックの芝生のような触り心地だ。
銀子の方も、毎回ではないが、深くくわえる時に毛先が鼻先を突いていて、どこか不快そうだ。それでも、浴室のときよりも深く呑み込めている。動き事態は鋼介の腕からの指示に任せているので本人は気付いて無さそうだが。
喉を突いてみたいという悪辣な誘惑を突っぱねる。さすがにそこまでハードなプレイを今の彼女に強いるのは酷というものである。
浴室の時と同じく、自分の手を使ってフィニッシュを迎える。
「銀子っ、口開けっ」
銀子は顔に飛んでくるのが嫌なのか、浴室の時より大きく口を開ける。
逸物から精液が吐き出される。銀子の要望通り、すべて彼女の口の中に。
「ちょい待ち」
当たり前のように精飲しようとした銀子の喉を鋼介はそっと掴んだ。飲み込む様子がないのがわかるとすぐさま手を放す。
「せっかく甘いもんがあるんやから、口ん中思いっきりまずくしてみんか?」
銀子は首を横に振る。鋼介の言わんとしていることが理解しているようだ。
鋼介は構わず話を続ける。
「何も難しいこと無いぞ。ただ、うがいするだけや」
先程よりも銀子は激しく首を振る。しかし、精液で膨らむ頬袋は萎むことはない。
「してくれたら吐き出してええから。な、頼む」
真剣に頼むと意固地になって断られるかもしれない。そうなると後から同じように頼んだ時に意固地になった時の感情を思い出して拒否される可能性があり、それは非常に面倒だ。
両手を合わせて鋼介は、断っても構わないといった感じで軽い調子で頼む。
「せやけど、ワシはすごく見たいっていうんは忘れんとってくれな」
「……」
悲壮感に満ちた雰囲気で銀子はゆっくりとした動きで精液で口の中をゆすいでいく。浴室での発言を証明するように今にも泣きそうな顔をしていた。
「もっと音が出るように。空気とよく混ぜてうがいするんや」
銀子は頬を左右交互に大きく膨らませてグチュグチュと下品な音が響かせる。
「もうええかな。そしたら口ん中見せてくれるか」
銀子の口内には大きさの異なる泡が白濁液に浮いている。早く吐き出したいのか、視線でティッシュを差して鋼介を急かした。
「よう泡立っとるな。せっかくやし、飲むか?」
口を開けたまま、銀子は首を横に振る。嫌悪しながらも、溢さないように気を付けているのか、小刻みに動くので口の中の精液が左右に波を立てた。約束と違うと言っているような気がした。
「……」
「な?」
膠着した空気の中、鋼介は銀子の両の肩を叩く。ここで拒否することを許さないと言外に圧力を掛けながら。
口を閉じた銀子は瞳を泳がせて試案している。居間から逃げたいのか、鋼介から離れようとしたが、肩をしっかりと拘束されている為に不可能だった。
やがて、覚悟した人間がする真剣な表情を作ると、一息に飲み下した。浴室でちびちびと飲んでいたが、やはり一気の方がが本人も楽なようだ。
口をもごもごと動かしている。おそらく口内の精液の余韻を唾で洗い流しているのだろう。しかし、そう簡単にこびりついた精の味が落ちるとは思えない。舌に馴染んだ分は味覚こそは麻痺すると思うが、息を吐いた時には容赦なく精臭が嗅覚を刺激するだろう。栗の花と形容する人もいれば、イカ臭いと愚痴を溢す人もいる。銀子はどちらだろう。
「鼻で深呼吸してみ?」
銀子は深くゆっくりと深呼吸すると顔をしかめた。息を吸うときはそうでもなさそうだったが、吐くときに胃から漂う悪臭が鼻腔を通った事が原因だろう。どうやら彼女の感覚は後者を選んだようだ。早く飲ませろと目が訴えている。
「よう頑張ったな」
銀子は労いの言葉と共に差し出したミルクを口に含むと、口内をすいでから飲み込んだ。本当は吐き出してしまいたいのだろうが、鋼介がどんな無理難題を言ってくるのか分からない以上、さっさと体内へ入れてしまった方がいいと彼女も理解しているのかもしれない。
「もう一杯飲むか?」
「飲む」
ノータイムで返ってきた答えに鋼介は腰を上げた。
「おはようさん」
居間でテレビを見ていた八一に挨拶した鋼介は朝食の支度を始める。桂香に頼れないので食事は自分で作らなくてはならない。小さい弟子たちに自炊を強いるのは大人としても、内弟子を持つ師匠の面子としても許せなかった。
寝不足で重い体で台所に向かう。昨夜ホットミルクを作った鍋が目に入る。怪しまれないように、あの後すぐに洗っていたのを思い出す。これほどに用心深い行動を取っているのには自分でも驚きだったが、露見すれば全てを失うのだ。可能性は積極的に潰していく。
銀子の姿が見えなかったので、彼女の分の茶碗は用意しなかった。遅くまで起こしていたのでまだ寝てるのだろう。
「八一、もう道場行くんか?」
鋼介は食べ終えた食器を洗いながら、居間で靴下を履いている八一に声を掛ける。
「うん」
「誰もおらんのやないか? っていうか開いとるんか?」
現在の時刻は朝の八時半を回った所だ。いくら休日で人が集まりやすいとは言っても、こんな時間から道場が空いているのか疑問だ。
今の道場の営業時間を鋼介は知らなかった。
「テキトーに探すから平気。行ってきます」
そう言うと、元気よく玄関に向かう。冬だというのに薄手の長袖だけで出かけようした八一にパーカーを渡して鋼介は見送った。
「大丈夫か?」
楽天的な言葉に若干の心配を口にした鋼介だったが、物怖じしない八一の性格に親の笑みを浮かべた。
「さてと」
洗い物を終えた鋼介は一室の前に立った。
扉をノックする。
「銀子、朝やぞ。いつまででも寝てたら牛になるぞ」
返事はない。それどころか反応した様子すらなかった。
「入るで」
ドアを開けて部屋に入る。机とタンス、それに桂香が買ったクッションくらいしか家具がない。女の子の部屋とは思えない殺風景さだ。暖房の入っていない室内はひんやりとしている。
布団に潜っている銀子の横を歩いて、カーテンに開く。太陽の明かりが部屋を照らし、鋼介の体をほんの少しだけ温めた。
「もう八一は道場に行ってもうたぞ。お前は行かんのか?」
行くことを強要しているわけではない。普段から八一と張り合っているので起こすにはこう言うのが一番効果的だという経験則だ。寝坊助を起こすのは、朝は時間のある鋼介の仕事だった。
尚も銀子は微動だにしない。普段なら眠そうに目を擦りながら布団から出てくるだけに珍しい。
「銀子大丈夫、っか?」
中から押さえられているのか布団が剥げない。
「ええ加減起きんとあか「ダメっ」」
上からは無理そうなので、足元から布団を捲ると、銀子が切羽詰まったような声を上げる。見ると布団の真ん中に地図が書かれていた。そういえば寝る前にトイレに行かせた記憶がない。
「あれだけ飲んでたら漏らすわな」
「……ごめんなさい」
布団の隅に正座している銀子は恥ずかしそうに視線を逸らす。逸物を扱うのは平気でも、おねしょは恥ずかしいというちぐはぐさに鋼介は思わず笑ってしまった。それもまた親の笑みだった。