Familiar Phobia~倒錯のすゝめ~ 作:友井架月
この世界は嘘や偽りで溢れている。
愛妻家と評判の温和な旦那さんは、裏では妻の悪口ばかり言っている。
誰にでも優しい人気者の彼女は、実は周囲の人間全てを見下している。
何が嘘偽りない本音で、何がその人の本性なのか。
そんなものは時と場合、周囲の人間環境によって変わってくるものだ。
普段は取り繕っている人間が、酒で酔った勢いとともに吐いた言葉が本音とは限らない。
人生や命がかかった状況で浮き彫りになった表情が、必ずしも本性とは限らないのだ。
人の世に一定の形がないように、人の心などその時その時で別人のように千変万化する。
そのような信じるに値しない不確かな浮世で、一体何が人の真実を表すのか。
それは抗いようのない苦痛と恐怖。理不尽に怯える負の感情にこそ価値がある。
身を滅ぼす痛みのこそ、人間の輝きが垣間見えるのだと私は信奉している。
◇
一真は自他ともに認める平民の凡人で、対する白雪は超が付くほどの良家のお嬢様だ。
フィクションでは定番の格差恋愛だが、現実では物語のように上手くいくものではない。
彼らには多くの困難が待っている。そればかりか、相手にはれっきとした許婚がいるのだ。
親同士が決めた結婚相手でちゃんと交際しているわけではないが、彼女との関係は不倫も同然だ。
もしこのことが発覚すれば大変なことになるだろう。
庶民出で凡人の一真はまだマシだ。元々失うものが少ないので、身の程知らずの若造が高嶺の花に手を出して痛い目にあうだけで済むからだ。
しかし白雪の場合は違う。由緒正しき須納家に生まれた彼女には、家柄に恥じない振る舞いをする責任がある。許婚がいる白雪がどこの馬の骨とも知らない男と不倫に興じた。その事実が明るみになれば、彼女が須納家を追い出されるのは必定だ。
今の立場や将来得られるであろう富を鑑みれば、たかが一時の享楽で全てを棒に振るのは愚行に思われるだろう。
一真自身も、自分たちが行っているのは社会的にも倫理的にも危ういことだと自覚はしているつもりだ。
さりとて、それでもなお抗えない衝動というものが存在するのだ。
それは男としての欲求、生物として刻まれた本能のようなもの。
彼女のように魅力的な存在が、自分に通じる趣味を持っている。
他人には言えないアブノーマルな性欲を満たせる相手というのは、どうしても運命的に惹かれるものだ。そして一度でもそういう相手と関係を持ってしまえば、手放すのを惜しいと思ってしまうのも人情である。
古神一真は今、人生の分岐点に立っている。
白雪の隣に立つか、彼女と別れるかの選択だ。
どちらの道が正しいか、今の一真には判断がつかない。
のらりくらりと選択を先延ばしにしても、現実は都合よく待ってくれない。
いずれ選択を迫られる日が必ずやってくる。
来年か、来月か、来週か、あるいは今日か。
「深雪、元気かしら?」
「お邪魔します……」
ある日の午後、一真は白雪に誘われるままに深雪のお見舞いにきていた。
正直彼女の妹と会うのは気まずいのだが、白雪に頼まれたら断れなかった。
白雪の隣に居られるのは嬉しい一方で、清らかな関係ではないので深雪に後ろめたさを感じての二度目の訪問。彼は自分よりも年下の少女の顔をまともに見ることができなかった。
「姉さん、また来たの? 姉さんは忙しいんだから、そんな頻繁に来なくてもいいのに」
「深雪の顔が見たくて、つい」
「……? 変な姉さん」
妹に向けたいつもの微笑。その些細な変化に深雪は気づく。
他者には何の変哲もない微笑みに見えるだろう。妹の深雪だからこそ分かる、白雪の表情に影を差した迷いや躊躇いを。
その理由は何となく察することができる。姉が連れてきた冴えない男が原因だろう。
どうやら彼に好意を寄せているらしい姉は、自分の立場やら許婚のことを気にして踏ん切りがつかないようなのだ。
彼女の気持ちは理解できる。けれど、躊躇しつつも気になる男性をちゃっかりお見舞いに連れてきているのは理解に苦しむ。
本音を言うと、彼氏を見せびらかしに来ているようでイラッとするのだ。妹として。
だから深雪は、困っている姉に助け舟を出さずに沈黙していた。自分でも意地が悪いとは思うけれど、何か困ったことがあればすぐ自分に頼ろうとする姉への罰なのだ、これは。
「…………」
「…………」
「…………」
そしてできあがる、三者三様の気まずい雰囲気。完全に巻き込まれ事故の彼には申し訳ないけれど、自慢の姉とくっつこうとしている男への意地悪でもあるのだ。
そんな深雪の嫉妬とも皮肉ともつかぬ感情をぶつけられていると知らない一真は、二度目の対面であろうと変わらぬ居心地の悪さをひしひしと感じていた。
別に付き合っているわけではない大学の先輩、その妹さんの見舞いに行く。冷静に考えても意味が分からない。意味も分からずのこのこ付いていく自分にも非はあるのだが、それにしても放置は無くないか、と無言の嘆きを吐いている一真なのであった。
無言の時間は現実ではたった十数秒だけだったが、本人たちにとっては無限にも思えたことだろう。
沈黙に耐えきれず最初に動いたのは白雪だった。
「……あっ、深雪何か飲みたいものある? 一真さんも喉が渇きましたよね?」
「えっ、飲み物なら俺が買ってきますよ?」
「いえ、私が買ってきますので、一真さんはここで待っててください」
戸惑う一真に有無を言わせず、白雪は足早に病室から出ていってしまう。
「…………嘘だろ」
そして病室に取り残される一真と深雪。
ぶっちゃけ勘弁してほしいと一真は心の中で叫んだ。
三人の時点で気まずかったのに、先輩の妹さんと二人きりとか沈黙で死んでしまうではないか。
どうしたものかと困り果てる一真に救いの手を差し伸べたのは、意外なことに深雪だった。
「……一真さん、でしたっけ。ちょっとお話いいですか?」
「話……?」
深雪に話しかけられ一真は困惑する。彼女とはろくに会話もしたことないのだ。いきなり話しかけられれば驚きもする。そして一真は小学生の少女との会話に花を咲かせられるほど対人能力が高くないので、情けないことに黙って頷くことしかできなかった。
「話って、なんだい……?」
「姉さんのことです。はっきり言いますと、姉さんは一真さんのことが好きなようです」
「なっ……!?」
深雪の発言に一真は面食らう。当たり前だ。彼女との初めての会話がこうなるとは誰が予想できるのか。
あまりに予想外の展開に動揺が顔に出てしまい上手く反応できない。表情を取り繕うことすらできないのはよほどのことだ。
そして一度動揺してしまった以上、口から出てくる言葉にどうしても白々しさが滲んでしまう。
「へぇ、そうだったんだ……」
「一真さんも気づいてるはずです。姉さんの好意が。一真さんは姉さんのことをどう思ってるんですか?」
「俺が、白雪先輩のことを……?」
未だ困惑で冷静な思考ができない一真に、深雪が間髪入れずに二の矢を放つ。そんな豪速球のストレートを打つ技術は一真にない。
それでは彼女の質問を適当にはぐらかせばいいのか? しかし真面目な顔で聞いてくる少女に不誠実なのはいけないと、一真の良心が訴えかけてくるのだ。
「実のところ、二人は付き合ってるんじゃないですか?」
「つっ、付き合ってはいないよ。それは間違いない」
セックスフレンドという、下手に付き合っているより不潔な関係ではあるが。
「それじゃあ、姉さんのことは何とも思っていないんですか?」
「先輩のことは……尊敬しているよ」
「異性としては意識していないと?」
「それは……」
これじゃあほとんど誘導尋問ではないか。
どう答えても角が立ってしまうので、一真は慎重に言葉を選ぶ。
「あんなに魅力的な女性だから、異性として意識するなというのは無理がある。けれど、彼女はお嬢様だし俺ではとても手が届かない高嶺の花だよ」
白雪のことを尊重しつつ下心を見せない程度に自分の意志を示す。我ながら打算的で女々しいとは思う。それでも少女が信じる姉を傷つけたくはない。そういう気持ちも、結局は自分可愛さによる言い訳でしかないのだろうか。
「私は……」
一真の言葉を聞いた深雪は、どこか憂いを帯びた物悲しい表情だった。
彼女は何を思い、白雪と一真のことを見ているのか。胸の内に秘めた感情が溢れ出してきたのか、深雪は神妙な面持ちで言葉を紡ぐ。
「私は二人が両思いなら付き合っていいと思ってます。家のこととか抜きにして」
「……良いのかい? だって先輩には許婚が」
「
「深雪ちゃん……」
彼女は自分のことを良くは思っていないだろう。一真のその考えは間違っていた。
少女は誰よりも姉のためを思っていた。突然現れた見ず知らずの男に大事な姉を託すくらいに深雪は白雪のことを信頼しているのだろう。
彼女にここまで言われて引き下がるのは男ではない。情けない小市民なりの、これはなけなしの矜持である。
「分かったよ。先輩の隣に立つには分不相応な身だけど、できる限り先輩の力になるよ」
「よろしくお願いします……」
深雪は丁寧に、そして深く礼をした。
小学生の女の子に頭を下げられて気恥ずかしいものの、彼女の期待には応えなければならない。
「姉さんが遅いので、迎えに行ってもらえますか?」
「分かった」
一真は深雪に一旦別れを告げて病室を出る。
その足取りに迷いはなかった。
◇たったひとりの
自分は一体何をしているのだろう。
白雪は何をするでもなく自販機の前で立ち尽くしていた。
自分の意思で一真を連れてきたというのに、彼を病室に置いて逃げてしまったのだ。
なんて情けない恥ずべき行為をしてしまったのか。今更になって胸の内に後悔が押し寄せてくる。
本当は一真を交えて妹と談笑がしたかったのに。頭の中で思い描いた理想は、現実のプレッシャーの前で容易く崩れ去ってしまう。
もうちょっと私に勇気があれば。あと一歩足を踏み出していれば。
私の目に映る世界は、もう少しだけ輝いて見えたかもしれない。
白雪は思うようにいかない歯がゆさで唇を噛み締めていた。
彼女が出口の見えない自己嫌悪に陥ってると……。
「白雪先輩っ……!」
「一真、さん……?」
白雪の前に一真が現れた。彼は速歩きで白雪の傍まで来ると、所在なさげに縮こまっている彼女の肩に手を触れた。
「中々帰ってこないから心配しましたよ。何をしていたんですか?」
「いえ、私は何も……」
自分の不甲斐なさに嫌気が差していたなんて言えるはずもなく、白雪は申し訳無さそうに言い淀む。
「白雪先輩……」
彼女の反応から繊細な心の機微を感じ取った一真は、その場から動かない白雪の手を優しく引いいた。
「一真さん、何を……?」
「白雪先輩に元気がないようなので、俺の元気を分けるんです。付いてきてください」
いつになく積極的な一真に促されるまま、白雪は彼の後を歩いていく。
「えっ、ここは……」
白雪は驚きのあまり声を上げる。それもそのはず。彼女が連れてこられたのは、あろうことか病院のトイレだったのだ。
それも男子トイレの前である。一真は白雪から手を離して一旦トイレに入ると、中の様子を確認してすぐに戻ってきた。
「一真さん、何をするんですか……?」
困惑する白雪に、一真は微笑を浮かべながら事もなげに答える。
「これからトイレでエッチするんです」
「そっ、そんなっ……!?」
「しっ、声が大きいです。中に誰もいませんでしたから、さっと行けばバレませんよ」
許婚や妹がいる病院で、そんな不謹慎なことはできない。
理性や常識では分かりきってるのに、どうしても足が踏ん張れない。
今の自分は心のどこかで一真に期待しているのだ。
彼が自分の望む退廃的で淫猥な行為に誘ってくれることを。
だから白雪は、大した抵抗をせず一真に手を引かれて男子トイレに入っていく。
これから行われるであろう悪戯に、どうしようもなく胸を高鳴らせて。
白雪は生まれて初めて男子トイレに足を踏み込んだ。
男子トイレには小便器が3つ。個室が2つあった。
トイレで行為に及ぶには人目につくのを避けねばならない。一真は迷わず個室に白雪を連れ込んだ。
大病院のトイレなだけあって、多目的トイレでなくても個室にはある程度ゆったりとしたスペースが確保されている。とはいえ、トイレの個室は複数人で利用するために作られていない。大の大人が二人も入れば窮屈だ。しかしそれが、よりイケないことをしているという背徳感を助長し情事の雰囲気を盛り上げていた。
「白雪先輩、いきなりすみません。迷惑でしたか?」
「びっくりはしましたけど、今はエッチな気分でドキドキしています」
「はは、先輩も随分エッチに正直になりましたね」
「もう、一真さんのせいですからね」
白雪は蠱惑的な笑みを浮かべながら一真の股間をいやらしい手つきで撫でる。見た目は清楚な箱入りお嬢様が妖艶な仕草で迫ってくるのだ。こんなの興奮しないほうがどうかしている。愚息は瞬間的に硬くなりズボンを突き上げテントを張っていた。
「一真さんのおちんちん、辛そうですね。今楽にしてあげますから」
白雪は慣れた動作で男根を露出させる。陰茎は外気に触れるとブルンと躍動し、これから行われるプレイを想像し期待に魔羅を膨らませていた。
「すごく大きくなってますね……」
「先輩、咥えてもらえますか?」
「はい、分かりました……あむっ」
白雪は一真の指示通りに躊躇なく剛直を口に含む。生粋のお嬢様によるフェラチオの始まりだ。
「じゅぶっ、んんっ、ちゅうっ……んくっ、じゅう、んじゅうぅっ……!」
「おぉっ、先輩の口内熱いっ……!」
白雪がフェラチオをするのは二回目だが、物覚えが良い彼女は既に口淫のテクニックをマスターしていた。白雪はそそり勃つ怒張を根本まで咥えると、顔を前後に動かし竿を扱き始める。
慣れてなければ呼吸のタイミングを掴めず息苦しくなってしまうところを、彼女は顔を引いた瞬間に息継ぎしプレイを止めることなく滑らかな口淫を続ける。
まるで熟練の娼婦のようだ。一真はフェラの簡単なやり方は教えたものの、ここまで上手くなっているとは予想できなかった。裏でコッソリ練習でもしていたのだろうか。勉強熱心で優秀な彼女らしい。進化を続ける白雪のフェラに、一真は嬉しい悲鳴を上げていた。
「じゅぶっ、んぐっ、じゅるるっ、ちゅぷぅっ……一真さん、私のフェラはどうですか?」
「くぅっ……前より上手くなってたんで正直驚いてます。練習でもしましたか?」
「はい、書物や映像でちょっとだけ。一真さんに喜んでほしいので……女性がエッチな本を読んだりしてて幻滅しましたか?」
「いえ、そんなことは。俺のためにそこまでしてくれて感無量です」
「それなら良かったです。一真さん、私のお口でもっと気持ちよくなってくださいね……じゅぶっ、んぐっ、じゅぶうぅっ!!」
一真の感謝の気持ちを受け取った白雪は、更に激しく男根を攻め立てた。
口内に唾液を溜めて、グチュグチュと淫らな水音を立てながら竿を扱く。舌先でカリ首を引っ掛けたり、尿道口をつついて刺激する。そして口を窄めたバキュームフェラで啜られたら、まともな神経など宇宙の彼方へ吹っ飛んでしまう。
白雪の絶品フェラに情欲を刺激され、一真の悪戯心にスイッチが入る。彼は気がつくと彼女の頭を掴み乱暴に腰を打ち付けていた。
「んぐっ、んじゅっ、ぐっぽ、ぐぶうぅっ!?」
「先輩っ、すみませんっ……! 腰が勝手に動いてしまうんですっ……!」
「んんっ、じゅぶっ、んんんぅっ……じゅっぷ、ぬぷっ、ぐぷっ、じゅぷうぅっ……!」
突然始まったイラマチオを、白雪は怒ることなくあっさりと受け入れた。
それどころか聖母の如き慈愛のこもった表情で一真のピストンを受け止めているではないか。
白雪の懐の深さに感謝しつつ、一真は欲求の赴くままに喉奥を突く。性器と遜色のない口マンコの快感で、青年の射精欲求は瞬く間に上昇する。
「先輩っ、俺もうイキそうですっ……!」
「じゅぐっ、んんんっ、じゅるるっ、うぐうぅっ……!」
口内に射精していい。言葉には出さずとも白雪の瞳はそう言っていた。
一真は白雪に背中を押されて必死に腰を振る。そして限界が頂点に達した瞬間、彼女の喉奥に大量の精液を解き放った。
「くぅっ、射精るっ……!」
「んぐっ、んぐぶっ、ぶふうぅっ……!!」
お嬢様の喉奥めがけて大勢の精子たちが殺到する。
素人ならすぐにむせてしまうような白濁の奔流を、白雪は吐き出すことなく胃袋に収めていく。
「じゅずっ、ずずずっ、んぐぶっ、じゅるるるぅっ!!」
「先輩っ、すごい吸引ですっ……!」
掃除機のようなバキュームで尿道に残った子種を一滴まで絞り出す。そんな気概を見せる白雪に一真は心の中で万雷の拍手を送っていた。普通は他人のためにここまで尽くせるものではない。
全ては一真に気持ちよくなってもらうために。彼女の心遣いが伝わってくるようなフェラだった。
「んぐっ、んくっ、んふぅ……」
「ふぅ……気持ちよかった」
長い射精を終えた一真は、熱い息を吐いて脱力する。
思った以上に疲労して気が抜けたせいか、性欲とは別の衝動が湧いてきた。
それは尿意だ。場所がトイレのせいもあるだろう。そして白雪がまだ男根を咥えているので、とっさに離すことができなかった。
「あぁっ。先輩っ、すみませんっ……出ますっ!」
「んんっ……んぐぐっ、んんんうぅっ!?」
白濁液に続いて口内に吐き出される黄金水。
予想外だったであろう放尿を、しかし白雪は驚きつつも受け止める。
身も心も便器になっているのか、彼女は恍惚とした表情でおしっこを飲み込んでいく。
「そんな、先輩っ、そんなことまでっ……!」
「んくっ、んんっ、んじゅるっ、ずずぅっ……!」
白雪は精液に続いて尿を美味しそうに喉を鳴らして飲み干した。
一真としては、背徳感で興奮するやら申し訳ないやら複雑な心境だった。
「先輩、すみません……おしっこなんて飲ませて」
「いえ、良いんです。私が勝手に飲んだので。ふふ、変な味でしたけど面白いですね」
情事の白雪は普段の姿からは想像できないほど変態だ。
濃厚な口淫で情欲に火が点いたのか、彼女の瞳は興奮で揺れていた。
「先輩。俺はまだできますけど、アナルセックスしますか?」
「はい、お願いします」
本番に移行するために、白雪は便器の方に向きお尻を突き出した。
一真はスカートや下着を下ろして股間を露出させる。フェラチオで興奮したのだろう。肉壷からは愛液が染み出し光り輝いていた。
そちらも非常に美味しそうだが、これから堪能するのは上の穴だ。一真は肛門に指を挿れて具合を確かめる。
「……これなら挿れられそうですね」
「はいっ……一真さんのおちんちんをお尻の穴に挿れてくださいっ!」
エッチ大好きなお嬢様のアナルを満足させてあげよう。
一真は腰にぐっと力を入れて逸物を尻穴に突っ込んだ。
「ぐぅっ、締まるっ……!」
「うあっ、んあぁっ、一真さんのおちんちんがお尻の中にぃっ……!」
相変わらず白雪の腸内は締まりが良い。何度目かの挿入も、アナルは異物の侵入を拒むかのように圧迫してくる。スキを見せれば容易く噛みちぎってきそうな好戦的な尻穴を、一真は愚息を最大まで硬化させて迎え撃つ。
「先輩、動きますね」
「どうぞ、一真さんの好きなようにお尻を犯してくださいっ……!」
病院のトイレで禁断のアナルセックスが始まった。
こんなところで女性と交わるなんて決して褒められた行為ではない。
それでも一真は迷うことなくアナルを穿つ。それが彼女のためになると思ったからだ。
「どうっ、ですかっ。先輩、おれのチンポの感触はっ……?」
「むぐっ、んんっ、んあぁっ……とっても激しくてっ、お尻が壊れちゃいそうですっ……!」
活きの良い乙女の尻穴を一真は一心不乱に突いていく。突けば突くほど味わい深い腸内は、陰茎を咥えこんで離そうとしないのだ。全身をこの上ない快感が突き抜け、思考を介せず腰が勝手に動いてしまう。今の一真はセックスのためだけに動くロボットのようなものだった。
「先輩のアナル、チンポに吸い付いて気持ちいいですっ! 先輩は気持ちいいですか?」
「んあっ、ふあぁっ、うぐっ、はいっ……一真さんのおちんちんがぁっ、お尻の中を抉って感じちゃいますぅっ……!」
燃え盛る情動に任せて無我夢中になって交わる両者。
しかし二人は忘れている。ここが公共の場であるということを。
「ふい~、漏れるとこだったぜ」
「バカ、お前は飲み過ぎなんだよ」
「っ……!?」
男子トイレに二人の男性が入ってきた。
個室で若い男女が盛っているとも知らずに、二人は小便器の前に立つ。
「ぅぐっ、んっ、ぅぅっ……!」
万が一トイレでエッチしていることバレたら大変なことになるのに、一真はピストンを止めなかった。極限の状況でヤッているという事実が危険なスパイスとなり、彼の腰を動かしていたのだ。
「ぅっ、かずまさ……んっ、くぅっ……!」
白雪は口に手を当てて必死に喘ぐのを堪えていた。我慢しようとするが、尻穴を突かれてどうしても声は出てしまう。どうか気づきませんようにと神に祈りながら、インモラルな快感に浸っていた。
「ん……何か声しなかったか?」
「気のせいだろ? 幻聴でも聞こえたなら医者に診てもらえよ。せっかく病院にいるんだし」
「バカ言え。唯でさえ身体中ボロボロなのに耳まで悪くなってたまるか」
白雪が口を抑えたおかげで、どうにか気づかれずに済んだようだ。
二人は排尿を済ませて個室から遠ざかる。
「そういや相部屋の伊坂さん。病状回復して退院寸前だったのに、容態が急変して亡くなったそうだ」
「親御さんも可哀想に。俺にも年の近い息子がいるから他人事だと思えんよ」
バタン。トイレのドアが閉められ、再び二人きりとなる。
危ないところだったが、見つからなかったので良しとしよう。
「一真さん……」
「先輩、ごめんなさい……。でも、興奮したでしょう?」
「うぅ、そんなことありませんっ」
拗ねる白雪も可愛いものだ。そんな顔を見せられたらもっとイジメたくなってしまう。
「お詫びと言ってはなんですけど、先輩を最高に気持ちよくしますね」
「えっ……」
一真はピストンを続けながら右手を股間の前に回し、クリトリスを指で摘んだ。
「ふあっ、んあぁっ、はあぁんっ! 一真さんっ、そこはイジっちゃダメですぅっ!!」
アナルとクリトリスの二点攻めで、白雪のリビドーは臨界に達しようとしていた。
白雪が感じていることを良いことに、一真は残る体力を振り絞って全力で攻め立てる。
「ひあっ、んんっ、んあぁっ! 一真さんっ、私イッちゃいそうですぅっ……!!」
「くぅっ、俺もイキそうなんで一緒にイキましょうっ!」
このアブノーマルな交わりもラストスパートに突入した。
一真は腸壁を抉るように突きまくり白雪を絶頂へと導く。激しいピストンで自分も射精感がこみ上げており、フィニッシュは間近まで迫っていた。お嬢様の腸内を白濁に染めるべく、怒涛の連続突きでトドメを刺した。
「くぅっ、射精るっ……!」
「あぁっ、んんっ、イクっ、イキますぅっ、いっくううぅぅっ$$」
精子が尿道を勢いよく駆け上がり、白雪のアナルにドバっと迸る。
「んあぁっ、出てるぅっ、一真さんの精液がお尻にいっぱい出てますぅっ……!」
白雪は腸内に流れるザーメンの感触を味わいながら絶頂の快感に浸っている。お嬢様とは思えないほど下品なアクメ顔を晒しながら肛門性交の愉悦に酔うとは、なんて変態的な女性なのだ。一真は彼女の清々しいイキっぷりを眼下に収めながら心地よい射精に身を委ねていた。
「ふぅ……先輩のアナル最高に気持ちよかったですよ」
「んあっ、あぁっ、ひゃいぃ……一真しゃんのおちんぽも良かったれすぅ……」
アクメの衝撃で呂律が回らなくなっている白雪も可愛いものだ。長い射精を終えた一真は、スッキリした気分で男根をアナルから引き抜いた。
「んあぁっ、精液漏れちゃいますぅっ……!」
「まだ漏らさないでくださいよ。先輩、便器の上にしゃがんでもらえます?」
「はいっ……こうですか?」
彼女の排泄姿が見たくなったので、白雪に洋式便器の便座にがに股でしゃがませる。びしょ濡れの肉壷とヒクつくアナルが見えてかなり淫猥な光景である。
「あうっ……お腹がゴロゴロいってます。一真さん、もう出してもいいですか?」
「良いですよ。先輩の恥ずかしいところを見せてください」
「はい、それじゃあ……んんっ!」
一真が見守る中、白雪は肛門を緩めてザーメンを排泄する。まずはプスプスと放屁が響いた後、ドバっと勢いよくドロドロの白濁液が噴出する。白雪のような美人が下品な排泄をする様は言葉では言い表せないほど背徳的であり、顔が硬直したかのように視線が釘付けになっていた。
「先輩、とってもエッチですよ」
「顔から火が出るほど恥ずかしいです……」
中出ししたザーメンを全て排出し、これで情事も終了……かと思いきや。
白雪の様子がおかしい。腰を震わせながら何かを耐えようとしていた。
「先輩、どうしましたか?」
「それが……あっちの方も出そうなんです」
「あっち……?」
言うのを躊躇っている彼女の顔ですぐに察しが付いた。
白雪は大きい方をしたくなったのだろう。お尻にザーメン浣腸をしたのだ。催しても仕方ない。今回は突発的なアナルセックスだったし、そういうこともあるだろう。
「先輩、このまましていいですよ」
「良いんですか? そんなはしたないことをして。私のことを嫌いにならないですか?」
「嫌いになんてならないですよ。俺から先輩に頼んでるんで。先輩のことをもっとよく知りたいんです」
「分かりました、出しますね……」
白雪は顔を真っ赤に染めながら肛門に力を入れる。
肛門がゆっくりと盛り上がり、先端から茶色い物体が顔を覗かせる。
それは彼女の大便だ。どんな美女だってウンチはするのだ。夢見る少年に現実を突きつけるような強烈な臭気が一真の鼻孔を襲う。そして黒々とした健康的な糞便がモリモリと菊門から飛び出した。
「うぅ……羞恥心で死んじゃいそうです……」
「恥ずかしがってる先輩も可愛いですよ」
随分溜め込んでいたのか、次々とウンチが飛び出てはボトボトと着水する。その汚らしくも神秘的な光景に、一真は興奮が治まらなかった。彼女の尊厳にも関わる痴態を目にしているからだろうか。彼は性的快感とはまた違った満足感を得ていた。
時間にしてみれば一分ほどの出来事だったが、一真にとっては永遠にも等しい至福のひと時であった。
「はぁ、んはぁ……全部出しちゃいましたぁ……」
「先輩、お疲れさまです。排泄している先輩も素敵でしたよ」
今回のプレイで彼女とより親密になれた気がした。
これからのことは分からないが、二人でならきっと乗り越えられる。そんな確信が湧いてくる行為だった。
「先輩のことも、妹さんのことも、俺と一緒に頑張ればなんとかなりますよ。だから勇気出して妹さんのところへ行きましょう」
「一真さん……」
プレイの後始末をし二人はトイレから出る。
彼女の表情からは、暗い影のようなものが消え去っていた。
「先輩は先に病室へ戻ってください。二人一緒に戻るとまた気まずくなるかもしれませんから」
「分かりました」
一旦白雪を見送り、一真は気づかれないよう溜息をつく。
二人一緒に戻って気まずいのは一真の本心だ。白雪と病院でエッチした直後に深雪と顔を合わせる度胸がなかったからだ。
自分は情けない男だな。自嘲しながら病室へと戻ろうとする一真に声をかける者がいた。
「古神さん、でしたよね?」
「はい?」
振り返る。そこに居たのは、一真に想定はできても彼の予想外の人物だった。
「えぇと、
「はい、院善京介です」
白雪の許婚である院善京介が話しかけてきた。
なぜ自分なんかに? 困惑する一真に、京介は安らかな微笑を浮かべて言う。
「時間がありましたら、ちょっとお話よろしいですか?」
◇急変
「…………」
自分の身に何が起こっているのか正しく理解できていなかった。
状況だけなら把握している。ここは病院の外にあるベンチで、話がしたいという院善京介と横並びに座っていた。
なぜ彼が自分と話を。思い当たるフシに好材料がない一真は恐々とするしかない。
白雪と肉体関係を結んだことがバレたのではないか。そうでなくても許婚に近づく男なんて気分がいいものではないだろう。
まるで悪戯がバレて親に叱られる子供のように小さくなっている一真に対し、京介は柔和な笑みを浮かべて話しかける。
「古神さんは白雪さんと仲良くされていらっしゃるようですね」
「あっ、はいっ、まぁ……」
いきなりド直球が投げ込まれ、一真は無様に狼狽する。こんな露骨に動揺したら悪く思われそうなものなのに、ごまかしようがないので口ごもることしかできなかった。
「仲良くだなんてそんな……白雪さんは優しいですから、俺のような人間でも親しくしてくれるんですよ」
「そう謙遜しないでください。幼少の頃から彼女を知っている私には分かります。白雪さんは穏和で繊細な方です。相手のことを気遣うあまり今まで親しい友人を作れないでいた。それも妹に会わせるほどの友人は、一真さん以外で見たことがありません」
京介の口調は決して一真を糾弾するようなものでなく、むしろ友好的な雰囲気でさえあった。
彼の意外な反応に一真は困惑する。てっきり非難されると思っていたので拍子抜けしたのだ。ぽかんと口を開けた間抜け面をする一真の横で、京介は真剣な表情で話を続ける。
「私は許婚でありながら、彼女の心を癒やすことができなかった。だから古神さんのような方が白雪さんの友人で居てくれて非常に助かっているのです。彼女を救ってくれて本当にありがとうございます」
「いえ、俺は別に……」
いきなり京介に頭を下げられ、一真は気まずそうに頭を掻く。
自分は別に褒められるようなことはしていない。
むしろ、蔑まれても文句は言えないのだ。
彼がやったこととは、白雪の弱みに付け込んで己の歪んだ性欲をぶつけているだけなのだから。
それが利害の一致に繋がり結果的に彼女が救われたのだとしても、一真は素直に喜べる気にはならなかった。
こんな下劣な方法を取らなくても、彼女を救うことはできたかも知れないからだ。
彼女のインモラルな欲求を発散させることで飢えを満たす。高貴な女性を悪の道に導いてるようで、どうしても罪悪感が残るのだ。だから京介の感謝も正面から受け取れなかった。
「先輩を救うだなんて大層なことはしてませんよ。俺がやってるのは彼女の話し相手になるくらいのことで。……それに俺が何もしなくても、許婚の貴方ならそのうち解決したはずです」
「そうだといいんですけど……。見ての通り何分忙しい身ですので、恥ずかしいことに彼女のためにあまり時間を取ってあげられないのです。白雪さんにはいつも申し訳ないと思っています」
「お医者さんですもんね。仕方ありませんよ」
「古神さんにそう言っていただけると助かります」
こうして話してみるとより鮮明になるが、やはり院善京介という男は物腰の丁寧なナイスガイである。同性の一真から見ても好印象を受けるのだから、白雪の結婚相手としてはこれ以上の男性など居ないだろう。
だからこそ疑問に思うことがある。
それは彼が一真の存在を半ば公認していることだ。
いくら表向きには友人とはいえ、年若い男が許婚の周りをうろちょろしているのは面白くないはずだ。
それなのに京介は不愉快な素振りは見せず、それどころか喜んでさえいた。
自分に都合の良い展開だが、だからこそ一真は例えようのない気味の悪さを感じずにはいられなかった。
「院善さんは、俺なんかが白雪先輩と一緒にいても怒らないんですか? 自分で言うのもなんですけど、箱入り娘のお嬢様の風評に悪影響を及ぼすかも知れないんですよ?」
「はは、それはもしかして犯行予告か何かのつもりですか?」
「いえっ、そうじゃないですけど……周りの目というものがあるじゃないですか」
既に彼女とは一線を越えた仲だとは口が裂けても言えない。
目の前の男が許婚と浮気しているとは夢にも思ってないだろう京介は、一真の発言を冗談と受け取ったらしい。邪気のない笑顔で言葉を返す。
「白雪さんは分別を弁えてますから、そのあたりは心配いりませんよ。彼女は須納家のご令嬢です。その聡明な判断に間違いはありませんよ」
「そうですね……」
彼は白雪の性癖について知らない。
そのことについて、一真は京介に対して優越感を抱いてるわけではない。
ただ、彼の視点では白雪はどのような存在として映っているのか気になったのだ。
須納白雪は非の打ち所のない完璧なお嬢様として周囲には見られている。
彼女の本性を知っているのは、一真と後は
京介は白雪のことをどう思っているのだろうか。
不意に頭をよぎった疑問が、思考を介せず自然と口に出ていた。
「院善さんは白雪先輩のことをどう思っていますか?」
「彼女のことは一人の女性として好きですし尊敬していますよ。私の誇らしい許婚です」
まるであらかじめ決めていたかのような、一切の淀みのない模範的な回答だ。
一真は院善京介という人間を計りかねていた。
表面上は呆れるほど善良なお医者さんである。彼ほど話して印象のいい人間を見たことがない。
しかしながら、こうやって話していても彼の底が全く見えないのだ。
彼の一挙手一投足に隙がなく、憎たらしいほど完璧な人柄に見える。
しかしそんなことがあるのだろうか。
腹の中に黒いものを抱えていない、無垢なまでの善人などこの世にいるのだろうか。
もちろん世の中には色んな人が居る。中には混じりっ気のない純粋な人もいるかも知れない。
しかし、しかしだ。
目の前の京介からは、言葉にできない違和感のようなものを感じ取ったのだ。
まるで意図的に善人を装っているかのような、拭いきれない異物感だけが心に残る。
「院善さん、俺は……」
「はい?」
京介の素顔が見えないので、一真は彼の真意を探ろうと会話を続けようとして……。
「京介さんっ……!!」
彼らの会話を第三者の声が中断した。
「白雪先輩っ……?」
この声は紛れもなく白雪のものだった。
しかしいつもと違う。一真が一瞬判断を遅らせたのは、それが今まで聞いたことのない彼女の声音だったからだ。
まるで恐怖と混乱に我を忘れているかのような、緊迫した叫びだった。
「白雪先輩っ……!」
「白雪さん……?」
二人は声が聞こえた方向へ視線を向ける。
そこには、急いで走ってきたのだろう呼吸を乱して駆け寄ってくる白雪の姿があった。
その表情だけで、何か良からぬことが起こったことを察する。
「白雪先輩、どうしたんですか……?」
二人のところまで駆け寄ってきた白雪に、一真は心配の声をかける。
白雪は顔面蒼白で、今にも倒れてしまいそうなほど血の気を失っていた。
彼女がそれほど動揺している理由。そんなものこの場にひとつしかない。
白雪は叫ぶ。一真の隣りにいる京介に向けて。
「京介さんっ! 深雪が、深雪がっ……!?」
望むと望まざるとに関わらず変化は訪れる。
それは小市民の一真であっても、お嬢様の白雪であっても変わらないこの世の真理だ。
矮小な自分たちにできることは、不条理な選択を迫られた時に少しでもマシな方を選ぶことだけだ。
そして当然のことだが、選んだ先が正解だとは限らない。
一真と白雪が選ぶ、それぞれの人生がかかった運命の選択とは。