Familiar Phobia~倒錯のすゝめ~ 作:友井架月
BLタグを挿れようか迷いましたが、兄弟が恋愛関係に発展することはないのでこのままでイキます。
お兄ちゃんはさ、まさか自分がまともだなんて思っていたの?
◇古神一真
古神一真は取り立てて述べることのない、どこにでもいる普通の大学一年生である。それは誰からも同意されなくとも、彼自信が一番自分のことを理解していた。古神優馬という怪物と比較するまでもなく、古神一真という人間は救いようがないほど凡人なのだと、とうの昔から分かっていたことだ。もっとも、あんなバケモノと比べられるなんて虫酸が走るというものだ。凡人は凡人らしく、何の変哲もない平和な日常を謳歌していればいい。だというのに、同じ屋根の下にヤツが棲んでいるというだけで、彼の人生は耐え難き苦痛の連続だった。一真にとって優馬という存在は、治ることのない病巣のようなものだった。
弟が生まれてくるまでの一真は、両親の愛情を一身に受けた恵まれた子供だった。決して何か飛び抜けた才能があったわけではないが、病気や怪我といったものには無縁で、すくすくと元気に成長していった。思い返せば、この時が一番自分にとって幸福な時期だったかもしれない。両親は共に一真のことばかり気にかけてくれたし、まるで自分が世界の中心にいるかのような錯覚をしていた。しかしそれも無理からぬことであろう。子供にとって親との生活が世界のすべてであり、その子の人格を形成する上で重要な要因になっているからだ。
一真にとって不幸中の幸いは、彼が長男として産まれ弟が生まれてくるまでの数年間、親の愛情を受けてまともな人格を形成できたということだろうか。彼にそんなことを言っても、なんの慰めにもならないだろうが。
過ぎたことに文句を言っても意味のないことではあるが、それでも古神一真は思わずにはいられない。あいつさえ、あの悪魔さえ産まれてこなければ、自分はこうならずに済んだのに。
弟ができてからの一真の生活は、語らずとも想像できるだろう。今まで長男に注がれていた両親の愛情は、すべて弟の優馬に向けられるようになったのだ。この時味わった孤独と嫉妬心を、一真は今でもよく覚えている。それまで愛されてきた実感があるだけに、その後見向きもされなくなってからは余計に見限られた気分になったのだ。
何がいけなかったのだろう。家事の手伝いを忘れて母に叱られたからだろうか。日が暮れるまで外で遊んでいて父に叱られたからだろうか。自分に特別な才能がなかったからだろうか。別に一真に落ち度があったわけではない。自分が悪いわけではないのは分かっているのに、あの時ああしていればという後悔はいつも心の中にある。そんな虚しい感情も、ヤツの前では無意味だというのに。
少年期の一真は、両親から少しでも気に入られようと必死の思いで努力した。好きでもない勉強を毎日毎日頑張り、学年でも上位の成績を収めたこともある。それでも両親の視線は優馬に釘付けだった。兄が全速力で走っているところを、弟は緩やかな歩調で軽々と追い抜いていくのだ。どの分野でも遥か頭上に奴の存在がちらつき、どんな努力も徒労に終わった。何をしても弟の優馬には勝てっこない。嫉妬の炎が諦観に変わるのに、そう時間はかからなかった。
大学一年生の現在の古神一真は、未来への希望も家族への執着も失い、ただ惰性で生きるだけの毎日を送っていた。少しでも早く自立して忌々しい家族から脱却したいという願望はあるものの、具体的な進路は考えておらず、なるようになれと半ば自暴自棄になっている状態だ。どれだけ努力しようが弟には勝てないのは分かりきっている。ならば、自分をこれ以上傷つけないように浅くぬるく生きるだけだ。無理はしない。高望みはしない。自分の身の程を理解し、理想は低めに、ちょっとしたハードルを跨ぐだけの人生が気楽でいい。
そう思っていた一真だったが、優馬に劣情を抱いてしまい予想外の転機が訪れる。それは彼の運命を大きく変える結果になるのだが、この時の一真はそんなこと微塵も考えていなかったのだ。
◇翌朝
「おはようございます、お父さん、お母さん」
優馬に手コキでイカされた翌朝、古神兄弟は何事もなかったかのように朝食の席についていた。
両親は深夜遅くに帰宅したので、当然兄弟に何があったのかを知らない。一真は自分の痴態を親に報告する気は更々ないので、後は優馬が話題にするかどうかだ。万が一あの悪魔が両親に兄の愚行をチクった場合は、ただでさえ底辺に這いつくばっている一真の家庭内カーストが、地面の下まで突き抜けかねない。彼は固唾を呑んで弟の行動を監視していた。
「昨日はお前を置いて出かけて悪かったな。次はちゃんと優馬の予定を聞いてから誘うよう気をつけるからな」
「そんな、気にする必要はないよ。お父さんにはお父さんの都合があるんだから、いちいち気を使うことないってば。それよりも、昨日の接待はうまくいったの?」
優馬は兄のことなど眼中にないようで、父と熱心に話をしていた。これなら奴が両親に告げ口するような真似はしなさそうだ。昨夜のことが気がかりで一睡もできなかった一真はほっと胸をなでおろす。
元より、基本的に優馬は一真に興味などなかったはずなのだ。昨日の出来事は突発的な異常事態であり、それを利用して兄を操り人形にするのではと危惧していたが、案外ただの気まぐれなのかもしれない。一真はそんな安易なことを考えていた。悪魔が企んでいるようなことなど、凡人の彼には推測すらできないということだろうか。
奴は兄の存在を視界の外に追いやって会話を続ける。一真には興味のない話ではあるが、この場にいる以上嫌でも耳に入ってくる。
「次の日曜日は空いてるんだけど、お父さんはどう?」
「次の日曜は……すまない、父さんは外せない用事があるんだ。せっかくの優馬からの誘いなのに悪いんだが……」
「良いって良いって。お父さんは忙しいんだから仕方ないよ。休日のデートはまた今度ってことで。……お母さんは次の日曜は空いてるのかな?」
そう言って、優馬は話を母に振る。それまで珍しく二人の会話に入ってこなかった母親は、息子に話しかけられ表情を強張らせた。日曜の予定を聞かれて、何かマズイことでもあるのだろうか。母は取り繕うように慌てて声を作る。
「次の日曜……ね。ごめんなさい、お母さんも予定があって無理なの。埋め合わせは次の機会に必ずするから、許してね……」
「分かってるよ、お母さん。僕たちは家族じゃないか。これくらいのことで二人を嫌いになったりはしないよ」
優馬は両親にニッコリと微笑みかけ、お決まりの言葉で二人を安心させる。古神家で何度となく繰り広げられてきた茶番だが、今日のはどことなく違和感があるような気がした。会話を聞き流していたので確証はないが、横で聞いていた一真にはなんとなく腑に落ちないものがあったのだ。
とは言え、優馬たちの事情などに興味のない一真にはどうでもいい話だ。さっさと朝食を食べ終えた一真は、大学へ行く準備をするため部屋に戻る。
その背後では、相変わらず頭が痛くなる会話が続いている。これも古神家では定番の家族の語らいである。
ただ、なんとなく……そう、なんとなくではあるのだが、優馬と両親の間に亀裂のようなものが見えた気がしたのだ。
◇束の間の平穏
一真たちが住む
朝から憂鬱な気分で始まった月曜の午後、一真は友人たちと喫茶亜璃亜を訪れていた。とある理由で中学時代からこの店に通っている彼らは、今では老夫婦とも顔馴染みの立派な常連客になっていた。時代の流れに逆行した古めかしい喫茶店に居つく若者は珍しいので、他の常連客からも顔と名前を覚えられるくらいに一真たちは入り浸っているというわけだ。
大学に入学したばかりの未来ある男たちは、今日も今日とていつもの席である店内最奥の四人がけのテーブル席に陣取り、ダラダラと無駄な時間を過ごしている。だがこの一見無意味に思える日常の一コマが、一真にとっては何よりも大切なひとときなのだ。息苦しい古神家から解放され、本来の自分を取り戻すための心の洗濯といったところだろうか。
「あーあ、せっかくの大学デビューだってのに、出会いのひとつもないなんて世知辛いですなー」
一真がコーヒーを飲みながら心を落ち着かせていると、対面の席にいる男が退屈そうにため息を付いていた。せっかくの癒やしタイムを邪魔する不届き者の彼は、一真の友人のひとり
心荒んだ友人をなだめるために、一真はぽっと頭に思い浮かんだ適当な言葉を口に出す。
「出会いならたくさんあっただろ。サッカー部の藤島とか、図書委員の畦倉とか、オタク仲間の小林とか、校長室の花瓶をふざけて割って退学にされそうになったところをお前が得意の口八丁で助けた板垣とかさ」
「全っ員っ、同じ高校の顔見知りでしょーがーっ! 俺が言いたいのはっ、新しい環境で新しい出会いが欲しいっていうこと! 何が悲しくて、卒業式で涙の別れを果たした連中と翌月に同じ大学で普通に顔を合わせなきゃならんのだ! 感動の涙を返せちくしょー!!」
甲太の言いたいこともなんとなく分かるが、何も泣くことはないだろう。涙を返してほしいなんて思うのなら、まずは無駄な涙を流すんじゃない。
「地元の大学なんだから、知り合いが多いに決まってんだろ。髪まで染めて大学デビュー気取りなんて、夢見過ぎなんじゃないか? 完全に滑ってるぞ」
「辛辣ぅ! 腐れ縁だからって言って良いことと悪いことがあるじゃないっすか!? 激辛コメント過ぎて、翌日のトイレでお尻が痛くなるやつじゃないですかーやだもー!!」
相変わらずノリと勢いだけで生きているような男だな……。甲太の話に真面目に付き合っていると疲れるので、適当にあしらうのが長続きのコツである。いい感じに場も温まってきたので、ココらへんで彼との会話は切り上げることにしよう。
「それで、敬二は大学の感想とかどうだ?」
ひとりで漫才を始めた甲太を置いて、一真はもうひとりの友人に話しかける。
うるさい甲太の隣で静かに玄米茶を飲んでいた
渋い男が好みの女子にはたまらない男だが、軟派な甲太と違って堅物な敬二は、その手の浮いた話がほとんどなかった。昔気質のお堅い人間なので、女性の方が気後れしてしまうのだろう。言動はぶっきらぼうで冷たく感じることもあるが、義理人情に厚い気持ちのよい男なのは確かだ。
「どうだって別に普通だろ。中学から高校に上がった時と大差ない。少し環境が変わっただけだ」
「お前らしいな。その落ち着きを分けるために、爪の垢を煎じて甲太に飲ませたいくらいだ」
「野郎の爪なんて飲みたかないですー! 美少女の爪だったらベロベロ舐めるんですけどね!」
甲太が変態性癖を告白するのにも慣れている二人は、彼の言葉を華麗にスルーして飲み物を啜る。趣味や性格はバラバラな三人だが、なぜか気が合うのかこうして長い付き合いになっている。人生とは何が起こるかわからないものだ。家族とは冷え切った関係だとしても、こうして得難い仲間を手に入れられたりもする。一真が不良にならなかったのも、二人の存在が大きかったからだ。
「まさか全員同じ大学に進学するとはな。敬二は就職するって言ってなかったか?」
「最初はそのつもりだったんだがな。母さんが大学くらいは行けってうるさくてな」
敬二の家は母子家庭で、父親はとある事情で不在だった。彼は高校卒業を機に就職し家庭を支えるつもりだったのだが、母親に勧められ渋々大学に進学したようだ。彼にも思うところがあるのかその話をあまりしたがらないので、一真たちも深くは聞かないようにしている。親しき仲にも礼儀ありと言うように、大切なのはお互いの距離感だ。相手の地雷を踏み抜かないようにするのが長続きのコツである。
「甲太は進学とか興味なかったよな? てっきりニートコースだと思っていたけど」
「誰がニート予備軍だ! 進路はどうしようか迷ったんだけどね……妹に押し切られましてはい」
甲太は甲太で家庭が複雑で説明しづらいのだが……彼の妹がその、結構な地雷だった。その件については甲太の名誉のためにも発言を控えるが、誰にだって事情があるということだ。
「そう言う一真だって、都内の大学へ行くって言ってたじゃないですかー! 地元の大学なんてつまらねー妥協しやがってこのやろー!!」
「仕方ないだろ。近所の大学じゃないと学費を出さないって親に言われたんだから」
「それならそれで、奨学金とかバイトするとか色々選択肢はあるだろー。そうしなかったのは、結局家を出るっていう覚悟が足りなかったんじゃねーの?」
甲太にしては珍しく、こちらの事情に深く突っ込んでくる。いつも彼のことをイジって遊んでいる腹いせだろうか。だがその挑発に乗るつもりは毛頭ない。そんな無益なことをしなくても、たった一言で彼のことを黙らせることができるからだ。
「うるせーお前の妹に隠してるエロ本の場所全部バラすぞ」
「妹を持ち出すのは止めてくださいお願いですから! あいつにエロ本がバレると実践されるからマジでヤバイの!!」
彼の言葉に少々意味深な内容が含まれていたのはスルーしよう。何事も引き際が肝心なのだ。
「はいはいわかったわかった。……それで、本当にあの大学には夢も希望もないのか? お前はそれでいいのか? 甲太の四年間は何の出会いもなく灰色に終わるのか?」
一真は冷めたコーヒーを口に含み、話を大学のことに戻す。せっかくのキャンパスライフを無駄に過ごしてはもったいない。如何にこの四年間を有意義に送るかは、三人の至上命令のようなものだ。大学について情報を共有するのは義務と言っても差し支えないだろう。
友人の質問に、自称愛の為に生きる男こと屋代甲太は、瞳を輝かせて声高らかに宣言した。
「……希望なら、ある! あるんですよ奥さん! とびっきりの希望があるんです! なんと、なんとですよ、あの白雪姫が同じ大学に通っているんですよ!!」
見当がつかずうんうん唸っている一真に業を煮やしたのか、甲太は語気を強めて正解を答える。
「んまぁっ、九十九市民とあろう者が、天下の
「あぁ、須納家ねぇ……」
流石の一真も、名字を聞いてピンときた。須納家とは、市内にその名を轟かせる地元の名家である。古くは江戸時代から続く士族の家計なのだが、現在は資本家として多数の地元企業に出資しているため、九十九市では絶対的な影響力を持っているのだ。
その須納家のご令嬢が同じ大学に通っている。それは確かにちょっとしたニュースではあるが、一真たち庶民にとっては雲の上のような存在である。恋人はおろか知り合うことでさえ難しいと思うのだが……。
「お前が興奮するのも分からなくはないが、俺たちじゃ遠巻きに眺めることくらいしかできないんじゃないか? それとも、いきなり告白してみるか?」
「やっぱ無理っすかねぇ……。すっごい美人で頭脳明晰、社交的で性格もいいらしいし、友達から初めてワンチャン恋人とか……」
「ねぇよ、ねぇ……」
どこからその自信が湧いてくるのか、甲太のポジティブな性格が羨ましくなってくる。超がつくお嬢様と恋人関係? 夢物語にも程がある。まだ宝くじで数億円当てるほうが現実味があるくらいだ。何事も身の程を知るのが肝心であり、我々庶民は高すぎる山には登ろうとせず地道に一歩一歩前へ進むのが懸命というもの。高嶺の花というのは遠巻きに愛でるからこそ美しいのだ。
「絶世の美女が近くに居るというのに、会話のひとつもできないなんて世知辛いっすねー」
本日二度目の溜息が、喫茶亜璃亜に響き渡る。だが今回に限っては、甲太に文句を言う気は一真にはなかった。
夢と希望に溢れた大学生活なんてのは絵空事だ。現実はもっと過酷で容赦がない。四年もあると油断していると、何もせずにあっという間に過ぎてしまうだろう。将来どんな職業につき、どのような人間になりたいのか。一真は自分の理想像なんてものはない空虚な人間だった。ただ惰性で入学した大学だが、何か目標をもって生活しないと、本当に無意味な四年間になってしまう。
古神一真という若人は、一体どこへ向かおうとしているのか。ただこうやって気の合う仲間とダラダラと適当に生きてて良いのだろうか。空っぽな彼に答えが出せるはずもなく、飲み干したコーヒーカップの底を見つめることしかできなかった。
こうして一真の日常は、何事もなく平和に過ぎていく。この無味乾燥な人生から脱却することはできるのだろうか。彼の切実な願いは、彼の意に反した方向から突然やってくる。
背徳的な悪魔の誘いはすでに始まっている。どこにでも居る普遍的な青年である古神一真の半身は、底のない闇の中へと浸かっているのだから。
◇喪失
「ふぅ……」
その日の夕飯を終え、一真はベッドに寝転がり身体を休めていた。今日の食卓も両親がひたすら優馬に媚びへつらうという惨憺たるものだった。醜悪な夕餉に嫌気が差した一真は、さっさと食事を終えて自分の部屋へと逃げ込んだ。これも何度となく繰り広げられてきた光景なのだが、いまだに慣れず心の傷は広がっていくばかりだ。悪夢のような晩餐は終わらない。弟の姿をした悪魔が一真の傍で嗤っている限り。
「やめやめ、考えるのは止めて寝よ」
家族のことで悩むのは時間の無駄だ。そう思い至った一真は、問題を全て明日に丸投げして、そのまま身体を休めることにした。昨日まともに眠れなかったので、睡魔はすぐにやってきて、彼を安らかな眠りへと導いていく。
明日は何か変わるだろうか。自分の人生は果たしてこのままで良いのだろうか。そんな不安は微睡みの彼方へ消えていき、後には何も残らない。
一真の日常は、この日を境に一変する。
否、古神一真という人間の人生は、ここからようやく始まるのだ。
「……ぃ、ちゃん……お兄ちゃん……きて……」
「んん、んー……」
明くる朝、一真は誰かに呼ばれる声で目を覚ます。
母親の声ではない。母は優馬が生まれてから長男のことを起こさなくなったからだ。ならば、この声の正体は一体誰なのか。彼は重いまぶたをこじ開けて、声のする方へと視線を動かす。
「あっ、お兄ちゃんやっと起きたー。せっかく弟が起こしにきたのに、ねぼすけなんてイケないんだぁ」
「なっ!?」
一真を起こしにきたのは、あろうことか優馬だった。言うまでもないことだが、こんなことは生まれて初めての経験である。しかも彼は何がしたいのか、一真の下半身に陣取っているではないか。これでは身体を起こしたくても起こせない。悪魔がとうとう寝込みを襲いに来たのだろうか。
「おっ、お前っ! 何しにきやがった!!」
「何しにって、見ての通りお兄ちゃんのことを起こしにきたんだよ。そんなにビックリすることないじゃないか。……それともお兄ちゃんは、弟に起こされてナニかマズイことでもあるのかな?」
そう言って、優馬は兄の下半身の膨らみに手を伸ばす。一真の股間は、健全な青少年として当然の生理現象が起こっていた。朝から立派に張ったテントを見やり、優馬は蠱惑的な笑みを浮かべる。ズボンの上から硬く漲った男根を触り、布越しに伝わる熱を感じ取っていた。
「あはは、お兄ちゃんのおちんちん、とっても硬くなってるね。エッチな夢でも見てたのかな? それとも、僕の手コキを思い出しているのかな?」
「ばかっ、それはただの朝勃ちだろうがっ!」
「ふふ、知ってるよそれくらい。でも、このままじゃ苦しそうだね。僕がお兄ちゃんの朝勃ちを鎮めてあげるよ」
言うが早いか、優馬はズボンを下ろし下着を脱がし逞しくそそり立った勃起ペニスを露出させる。その間、一真は弟の蛮行を止めることができなかった。寝起きの思考で身体が即座に反応できなかったというわけではない。弟の悪魔的な眼差しで射抜かれ、身体が金縛りにあったかのように動かなくなったのだ。これはヤツの超能力なのかどうなのか、一真は悪魔の動向を黙って見ていることしかできなかった。
「や、め……ろ……」
「そんなこと言って、本当は興奮してるんでしょ? 僕が直接触ったら、ビクンって反応したからね。ふふ、態度では嫌がっていても、おちんちんは正直なんだからぁ」
一真が抵抗しないことを良いことに、優馬は慣れた手つきで手コキを始める。自分はまた弟にイカされてしまうのだろうか。そう思った矢先に、奴は手コキの手を止める。どうしたのだろう。一真が不思議に思って奴を見ると、悪魔は歪な笑みを浮かべ何かを企んでいる様子だった。
「また手コキじゃあ芸もないし、お兄ちゃんも飽きたよね。……そうだ、次はおちんちんを咥えてあげようか。あむっ……!」
「なっ、ちょっ……まっ……!?」
一真が制止の声をかける間もなく、優馬は大きく口を開けてペニスを咥える。マジかよこいつ本気でやりやがった! 手コキだけでも十分アレだが、男同士でしかも兄弟なのに、兄のチンコを何の躊躇もなく咥えられるものなのか? 弟の考えが全く読めない。奴は悪魔なのだから凡人に思考がわからないのは仕方ないのかもしれないが、それにしても突飛過ぎだろう。
「うっ、ぐぅっ……やめ、ろっ……!」
「んちゅっ、ちゅうちゅう、やぁらよ……んくっ、んんっ、ぷはぁっ。お兄ちゃんのおちんちん、思っていたより大きいね。奥まで咥えると顎が外れちゃいそうだ。初めてのフェラチオだから下手かもしれないけど、童貞のお兄ちゃんをイカせるのには十分だと思うよ。あむっ」
だっ、誰が童貞だ! そんな反論すら受け付けない優馬の口淫は、とても初めてとは思えないほど滑らかな動きだった。もっとも、一真は童貞故にフェラチオをされた経験もないので、他人と比較することはできないのだが。
優馬は小さな口でペニスを咥えると、舌で亀頭を愛撫しはじめた。外見は少女でもあいつも立派な男なので、同性の弱点をよく知っているのだろう。とは言えまだ小学生のクソガキに、どうしてこんなテクニックがあるのだろうか。アダルトビデオで見た仕草そのものの優馬のフェラ顔に、一真の心拍数もどんどん上がっていく。
「んんっ、んじゅる、んちゅう、ちゅぷっ……どう、僕のフェラチオ? って聞くまでもないかぁ。お兄ちゃんったら、そんなマヌケ顔で感じてるんだもん。ふふっ、弟のフェラで気持ちよくなるなんて変態なお兄ちゃんだなぁ。そんなイケないお兄ちゃんは、僕のお口で無様にイクがいいよ」
男根から口を離した優馬は、続いてアイスキャンディーを舐めるようにペロペロと肉棒に舌を這わせる。ザラザラとした何とも言えない感触が竿に走り、得も言われる快感が全身を駆け巡る。フェラチオとは本番前の『前戯』なんだろ? たかが前座でこんなにも気持ちいいものなのか。童貞の一真に衝撃走る。前戯と思って侮るなかれ。このまま優馬に舐められたままでは、我慢するまでもなく簡単にイッてしまうではないか。
初体験のフェラチオに一真が圧倒される中、優馬は美味しそうにペニスの味を楽しんでいた。こいつはこいつで、なぜ男のモノを舐めるのに一切の躊躇がないのか? それも不服ながら血の繋がった兄の男根をフェラできるのか。女装姿で兄の男根を咥える優馬が変態なのは間違いないが、女装弟に欲情している一真が言えたものではない。ぐうの音も出ないとはこのことか。本心はともかくとして、奴の口淫が予想以上に上手かったのは確かだった。
「んちゅっ、れろ、れら、ぴちゅっ……ふふ、お兄ちゃんも僕のフェラを楽しんでいるようだね。いいよ、このままイカせてあげるから。存分に気持ちよくなってね……じゅじゅうぅっ!」
兄の肉棒を自分の唾液でコーティングした後、次に優馬は本腰を入れて一真をイカせにかかる。彼は喉奥まで一気に男根を咥えると、口をすぼめ口内を圧迫し竿全体に刺激を与えてくるのだ。逃げ場のない快感が一真の快楽中枢に轟いた。思わず腰を浮かせ、より深く優馬の喉奥にペニスを突き立ててしまうほどである。抵抗の意思などどこかへ吹き飛び、後は何もできずに悪魔の遊びに甘えるだけだった。
「んじゅっ、ちゅぷぅ、んぐっ、んんむ、じゅじゅうぅっ……んぶぅ、んちゅる、ちゅぷっ、れろぬちゅうっ……んんっ、んぐうぅ、んあっ、あぁん、んはあぁ……」
ジュブジュブと淫猥な水音を立てながら、優馬は顔を前後に動かしフェラを続ける。素人ではとても真似のできないディープスロートを、奴は天性の技量で使いこなしていた。あらゆる分野に秀でた神童は、性技においても突出した才能を持っているようだ。己の舌をまるでひとつの生き物のように操り、ペニスに快感を与えていた。その姿はさながら熟練の娼婦が如く。翻弄される一真を尻目に、マイペースな悪魔は思うがままに口淫を楽しんでいた。
亀頭を口腔内に擦りつけたり、尿道口を舌で弄ったりして、ペニスを玩具のようにして遊んでいた。あいつからすれば、一真自体遊び道具も同然だが、気のせいかいつもよりはしゃいでいるように見えた。フェラチオで子供心を見せなくても良いものを、奴の手のひらの上ならぬ口内で弄ばれている一真がナニかを言う権利はない。飴玉のごとく舌の上で肉棒を転がされ、一真もそろそろイキたくなってきた。
「うっ、あっ、やめっ……もうっ、出るっ……!」
「じゅぶっ、んぶっ、んぐっ……お兄ちゃん、イキそうなの? いいよ、好きなだけイカせてあげるから、僕の口の中にたくさん出してね。……んじゅっ、じゅじゅじゅっ!」
兄の射精の予兆を目聡く察知すると、優馬は更に勢いを増してブラザーチンポを攻め立てる。荒波に揉まれる小魚のようにペニスは口内でもみくちゃにされ、気持ちよすぎてナニがなんだか分からない。快楽の濁流に飲み込まれた哀れな生贄は、このまま為す術もなく無様にイキ果てるしかないのか。
「んじゅっ、じゅじゅう、んぐちゅっ、んぶぅっ……お兄ちゃん、イッてぇっ……んぐっ、じゅぶっ、んんっ……お兄ちゃんのせーえき、口の中にらしてぇっ……!」
「あぁっ、もうだめだっ……イクっ!」
快感の高まりが最高潮に達し、一真は堪えきれず優馬の口にザーメンを吐き出してしまう。大量の白濁液が小さな口内に流れ込み、彼の腹の中を犯していく。予想を遥かに超える射精の勢いに、優馬は目を見開いて驚いていた。
「んぐっ、んんっ……! んじゅっ、んぐうぅっ、んぶっ、んぐぐうぅっ……!!」
さりとて、想定外の射精量だろうと、それで慌てふためく優馬ではない。彼はすぐさま口腔に飛び込んでくる大量の精の塊を、休むことなく次々と飲み込んで胃に収めていく。躊躇していたら窒息してしまうのだから当たり前だが、その対応力は流石は天才児といったところだろうか。量と勢いに対して彼の口が小さいため、口の端から飲みきれなかったザーメンをこぼしているものの、それでも十歳にしてこのフェラチオの技術は並外れているであろう。そもそも、この歳でこんなことをしている時点で犯罪ではあるのだが……。
兄の精液を一滴残さず吸い上げるため、優馬は渾身のバキュームフェラでペニスを刺激する。その衝撃たるや、そのまま魂までも抜け出てしまいそうだった。オナニーとは比べ物にならないほどの快感が一真を襲う。女性と付き合ったこともない童貞には、悪魔的なフェラは刺激が強すぎた。
ものの十数秒で起き抜けの朝一番搾りはあっという間に飲み干され、射精後の程よい疲労感だけが肉体に残る。まさか弟のフェラチオでイカされてしまうとは……。手コキの件といい、こいつは一体何が目的でこんなことをしたんだ。
「うっ、あぁ……くっ……」
「んぐっ、んんっ、んじゅじゅっ……ぷはぁ、精液って思っていたより苦いんだね。でもまぁ、我慢すれば飲めなくはないかな。ごちそうさま、お兄ちゃん♪」
初めて精液を飲んだ優馬は、口の端に垂れた白濁を舐め取りニコリと笑う。無邪気な子供のような表情で。その仮面の奥にどんな本心を隠しているのか。奴の顔から事の真意を読み取ることはできない。人間に悪魔の何がわかるというのか。地べたを這いずる虫を見て嘲笑っているだけではないのか。
「うぅっ、はぁ……もう、いいだろ。起こしにきたんなら、用は済んだろさっさと帰れ」
「お兄ちゃんはつれないなぁ。せっかく可愛い弟が朝から一発抜いてあげたのに、その態度はないんじゃない? そんなんじゃあ、いつまでたっても彼女ができないよ?」
うるさい黙れ。兄のペニスを何の抵抗もなく舐める弟が居てたまるか。それと彼女は関係ないだろ。そう叫びたいのに、言葉が喉から出てこない。奴がまだ男根を握っているからだ。男性の急所を人質に取られ、一真は何もすることができなかった。
「ふふ、お兄ちゃんのおちんちん、まだ硬いね。一回抜いたくらいじゃあ性欲が治まらないのかな。しょうがないなぁ。家族思いのこの僕が、お兄ちゃんのために一肌脱いであげるよ」
「おっ、おい何をっ……!?」
一真が驚愕の眼差しで見つめる中、優馬は下着を脱いで下半身を露出させる。スカートの間から弟の小ぶりなペニスがチラリと見える。こいつに羞恥心という感情はないのか。兄に性器を見せつけて反応を楽しんでいるのか、奴は今まで見たこともないほど上機嫌だった。
「どう? まだお兄ちゃんみたいな大人のおちんちんじゃないけど、女の子からペニスが生えているみたいで興奮するでしょ?」
「そっ、そんなことは……」
一真はしどろもどろに答えるが、愚息がビンビンに勃起しているため何の説得力もなかった。
奴は下半身に跨ると、そそり立つ肉棒を自分の尻穴に密着させる。おいおいまさか、こいつマジか。正気の沙汰とは思えない優馬の行動に、一真は度肝を抜かれる。前戯を終えてやることと言えばひとつしかないが、本気でやる気か!?
「お前、何を……」
「何って、お兄ちゃんだってわかってるくせに。これからお兄ちゃんの童貞を頂こうとしてるんだよ。弟で童貞卒業なんて、滅多にできる経験じゃないよ」
弟とヤるなんて、そんな経験したくなかった。一真の複雑な心境をよそに、優馬は己の尻穴に亀頭を押し込み、性交を知らない童貞チンポを腸内へと招待した。
「僕だってお尻の穴は処女なんだからお兄ちゃんと一緒だね。一応準備はしてきたけど、まぁなるようになるさ。それじゃあ、挿れるよっ……んんっ、あぁんっ!」
何人も侵入したことのない優馬の初物アナルに、一真の十八年物の童貞ペニスが埋没する。ゴリゴリと肉をかき分ける感覚とともに、鋼のように硬くなった肉棒が腸内を突き進む。天に向かってそびえ勃つ摩天楼に覆いかぶさるように、優馬の身体が重力に従って重なっていく。血の繋がった兄弟は今まさに肉体をひとつにしようとしていた。
「ぐぅっ、きっつっ……!」
「んあっ、あぁっ、すごっ、これはっ……! 僕のお腹の中にっ、お兄ちゃんのおちんちんが入ってくるぅっ! はあぁっ、んんっ、苦し……あぐうぅっ、んああぁっ……!」
準備はしてきたと言っても、アナル初挿入は優馬であっても苦しいようだった。悪魔は珍しく表情を歪め、腸内に異物が入ってくる苦痛に耐えていた。しかしながら、弱音を吐いたり途中でやめたりしないのは大したものだ。己の痛みすらも愉悦に変えているのか、彼は楽しそうに腰を沈めていた。
メリメリという音が聞こえてきそうなほど男根がアナルの中へと深く深くめり込み、とうとう根本まですっぽりと飲み込まれてしまった。小さな穴に対して大きすぎるペニスを腹に収め、優馬はご満悦の様子だった。
「んぐっ、んんっ……はぁ、んはぁ……お兄ちゃんのおちんちん、全部挿入ったよ。どう、かな……気持ちいいかな? って、表情を見れば一目瞭然だね。はは、余裕なさそうな顔をしてるよ」
気持ちいいかどうかなんてレベルの話ではない。今の今まで童貞だった一真にとって、アナルの締め付けは刺激が強すぎた。気を抜くと今すぐにでもイッてしまいそうだ。挿入直後に射精しては恥の上塗りになってしまう。それだけは回避せねばと、謎の意地で必死に我慢する。それすらも優馬の想定内なのか、彼は意地悪な微笑で兄を見下ろす。
「あぐっ、んあっ、きっつ……!」
「そうそう、簡単にイッちゃヤだよ。今度は僕も楽しませてもらわないとね。……痛みも治まってきたから、そろそろ動くね。んしょっ、と……」
挿入の苦痛も引いて本来の調子を取り戻した優馬は、腰を上下に動かしピストン運動を開始した。ゆっくりとねっとりと焦らすように、情事を長く続けるための大人しい出だしだが、それでもとてつもない快感が男根を経由し全身に走る。これが性行為、これがアナルセックスというものなのか。思わぬ形で脱童貞を果たした一真だったが、想像を絶する快楽に頭がおかしくなってしまいそうだった。
奴の腸内がまるで一真を射精させるために結託し、ひとつの意思のもとに蠢いているかのようだ。キツキツの腸圧で自由自在に揉みしだかれる感覚など、まさに天にも昇る心地よさだった。これが弟アナルの底知れぬ実力だというのか。あまりに度を越した衝撃に、一真は言葉を発することすらできないでいた。
「んんっ、あくっ、ふあぁっ……どう、僕のアナルは気持ちいいでしょ? そのままっ……あぁっ、イカせてあげるからね。んっ、あっ、くぅっ……僕も段々感じてきたから、一緒にイケそうかな……んくっ、先にイッちゃダメだからね、お兄ちゃん♡」
兄の身体に乗って腰を振ることにも慣れてきたのか、優馬は絶妙な力加減でピストン運動を続ける。男根に食らいつこうとするアナルの吸引力は凄まじく、腰を引く度に竿が根本から千切れてしまいそうだった。大きく口を開いた肛門はちゅうちゅうと亀頭に吸い付き、その驚異的な締まりで手荒い歓迎をしてくれている。男を落とす素質を天性の才能で備える魔性の尻穴は、兄の元童貞チンポを陥落させようと最後の追い込みをかけてきた。
怒涛のように押し寄せてくる快感の連続で、一真の我慢は限界に達しようとしていた。我を忘れてしまいそうな新鮮なアナルセックスで、フェラチオによって搾り取られたはずの精液が急遽供給されていくのが実感できる。彼の尻穴に子種を送り込むべく、熱々の援軍が到着した。
「あぁっ、ダメだっ……イキそう、だっ……!」
「ああぁっ、んぐっ、はぁんっ! んんっ、そろそろイキそうなんだねっ……んあっ、僕もイキそうだからっ……はぁっ、うくぅっ、一緒にぃっ……あっあっ、んあぁんっ!」
発射間近で肉棒が膨張したのを感じ取ったのか、奴の尻穴は更にきつく締め付け射精をサポートしてくる。ペニスが抜けないよう菊門ががっちりと男根を咥え込み、何があっても逃さないという強い意志を感じるのだ。こんな魅惑の穴に囚われては、男性器などただのザーメン供給機に早変わりしてしまうだろう。愚息もすでに弟アナルに完落ちし、後は精液を吐き出すのみとなっている。
トドメとばかりに腸内がうねりにうねり、陰茎を無茶苦茶に扱きまくる。これはマジでヤバイ。腸内の体温とピストンの摩擦熱でペニスが燃えてしまいそうだ。極楽の灼熱地獄で脳まで沸騰し、滾る欲望が爆発する。射精欲求の解放をついに堪えられなくなった一真は、煮えたぎったザーメンを優馬のアナルに解き放つ。
「うあぁっ……イクっ……!」
「あうっ、んんっ、ひゃあっ、出してぇっ! お兄ちゃんのせーえき、中に出してぇっ……!」
ドロドロの熱い白濁液が優馬の腸内に勢いよく流れ込む。二度目の射精とは思えない濃厚な精液の迸りに、弟も驚いているようだ。彼は腹の中が精液で満ちる感覚に酔いしれていた。
「あぁっ、いいっ、気持ちいいっ……お兄ちゃんのザーメンが、こんなにいっぱいっ……んあぁっ、僕も、イクうぅっ……おちんちんから白いおしっこ出ちゃううぅっ!」
アナル中出しの感触で達したのだろう。優馬は小さなペニスの先から純白の粘液を放出した。初めての肛門性交で射精までイケるとは、神童らしい飲み込みの速さである。すっかり騎乗位が板についた妖艶なる男の娘は、射精中の兄チンコに肛門をグリグリと押し付けて、残り汁を啜っていた。己の射精と合わせて白濁まみれになった優馬は、事後の賢者タイムを嬉しそうに味わっているようだった。
「はぁ、んんっ、んはぁ……気持ちよかったね、お兄ちゃん。弟のお尻にこんなにいっぱい射精しちゃって、変態でいけないお兄ちゃんなんだから。でもまぁ、兄弟のスキンシップってことで、朝食前のいい運動になったんじゃない?」
「……こんなことして、お前は何が目的なんだよ」
「目的って、僕はお兄ちゃんの為を思ってヤったまでだよ。……僕、知ってるよ。お兄ちゃんは男の娘モノの同人誌を隠し持ってるでしょ?」
「んなっ!?」
なぜ優馬がそのことを。こいつにだけはバレないようにと、厳重に隠しておいたのに。
「ふふ、本当は男の娘とエッチな事したかったんでしょ? 夢が叶って良かったね、お兄ちゃん」
弟に趣味がバレて青ざめる兄を見下ろし、優馬は不気味に笑うのだった。
本人は警戒していたつもりでも、一真はすでに悪魔の掌の上だったのだ。
彼の今後の命運は、悪魔の意のままと言ってもいいだろう。
優馬は家族内で孤立していた兄を取り込み、一体何を企んでいるのか。
奴の思惑を推し量ることができる人間は、果たしてこの世にいるのだろうか。
尋常ならざる悪魔的な弟は、今日もひとり不敵な笑みを浮かべている。
優馬が何を考え、何をしようとしているかを一真が知るのは、これよりもう少し先の話である。