※この作品はR-18です。

Familiar Phobia~倒錯のすゝめ~   作:友井架月

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当初は優馬の年齢や小学生等の表現をぼやかそうかとも思ったんですが、伏せたら作品コンセプトの意味が無いのでそのままにしました。
当小説は全七章構成で、第一章は五話で完結する予定です。


第三話 背徳は蜜の味

 今までの日常に戻ろうとしても、もう遅い。

 坂道を転がりはじめたボールは際限なくどこまでも堕ちていく。

 

 ◇揺れ動く日常

 

 弟の優馬と交わったことで、一真の人生に大きな転機が訪れた。それまではパッとしない平凡な日常を過ごしていたのだが、今朝の予期せぬ交合を経て、彼の運命は思わぬ方向へと転がり落ちていく。それは決して彼が自ら望んだことではない。できれば遭遇したくなかった突発的な事故のようなものだった。しかしながら、その忌まわしい出来事が結果的に一真の今後に大きな意味をもたらすことになろうとは、この時点では兄はおろか諸悪の根源の優馬でさえも気にしてはいなかったのだ。

 

「それでね、昴くんが僕に言うんだよ。『もういっそのこと、優馬くんが先生をやればいいのに』って。いくら僕でも、同級生を相手に授業をする気はないよ。それは教師の役目だし、流石の僕も自分が勉強するのと他人に教えるのとでは勝手が違うしね」

 優馬とアナルセックスをした日の夕飯、一真は最低の居心地で自分の席についていた。弟に逆レイプされるという恥辱だけでも死んでしまいそうなのに、そいつと晩御飯を共にするなんて拷問にも等しい屈辱である。だが家族の団欒をボイコットすれば、奴があの惨事を両親に告げ口しかねない。最悪の事態を想定し弟の監視の意味も含めて、一真は嫌々ながら地獄の晩餐に参加しなければならなかった。

 表面上は和やかな雰囲気の食事でも内心穏やかではない一真だったが、今のところは何の変哲もない見慣れた食卓だった。何を考えているのか理解できないとはいえ、あいつは一応家庭内では優等生なのだ。自分が築いてきた城をぶち壊しかねない兄との不祥事を、彼の信者である親に告白するはずがなかったか。自分の心配が杞憂に終わるだろうと知り、弟の隣で長男が胸を撫で下ろしていた。

「優馬は秀才だから、他人に教えるのもきっと上手いはずだぞ。どうだ、将来は学校の先生になるというのは」

「優馬ほどの才能なら、教師なんて凡庸な仕事は似合わないんじゃないかしら。貴方はお歌も上手だから、歌って踊れる俳優なんてどう? それとも国内は狭すぎるから、海外で活動するのもいいわね」

 愛しの我が子の目の前で、バカ親二人が彼の未来像を妄想し好き勝手に語っていた。自分たちが奴の下僕でしかないという事実に気づかず、偉そうに保護者ヅラしているのだから始末に負えない。

 両親は大事なことを失念している。彼らは奴がまだ親の庇護下にある未成年だから構ってもらっているのにすぎないのだ。優馬は二人が思っている以上に賢い。あいつがその気になれば、今すぐにでも家を捨てひとりで生きていくことも可能だろう。

 だが奴がそうしないのは、本人は一人前のつもりでも、世間様は彼のことを子供と認識してしまうからだ。どんなに自立した人間でも二十歳になるまで法律上成人と認められないように、社会では『年齢』による上下関係や差別意識はどうしても付きまとう。誰だって賢すぎる小学生とは一緒に仕事がしづらいだろう。彼は年齢によるハンディキャップを理解しているため、その枷がなくなるまで暇つぶしで親の相手をしているのにすぎない。

 断言してもいい。優馬が成長し大人になった暁には、きっと両親は捨てられるだろう。興味の無くなった玩具をゴミ箱に捨てるように。兄をオモチャにして遊ぶ悪魔に、肉親の情などあろうはずがない。目に見えない家族愛など、奴にとっては絵に描いた餅にも等しい無意味な存在なのだ。

「二人とも、僕はまだ小学生なんだから、勝手に将来を決めないでよね。僕はまだやりたいことなんてないんだから」

「ははっ、すまないな。でも、優馬ならどんな職業にだって就けると思うぞ」

「そうね、優馬は天才なんだもの。貴方は就きたい職業につけばいいのよ」

 両親は保護者らしいセリフを吐いて、優馬のことを過剰に持ち上げる。息子のご機嫌取りに必死な二人だが、彼らは自分たちの存在意義が段々と薄れていくのに気づいていないのだ。悪魔は肉親からの愛情を養分にして年々力をつけている。すでに両親の手には負えない領域に達している奴だが、その内話しかけることすらおこがましい雲の上の存在になるかもしれない。

 我々は家という狭すぎる檻の中で猛獣を飼っている。一真が食事中に生きた心地がしないのは、隣に得体の知れないバケモノが座っているからだ。今もこうして不測の事態に備えて神経をすり減らしているわけだが、夕飯時に彼が兄のことを話題に出したことはこれまでないため、今回も結局無意味な気苦労になるのだろうか。そう長男がビクビクと怯えていたその時、古神家の食卓でちょっとした事件が起こった。

「……そういえば、お兄ちゃんはこの春から大学生になったけど、大学で何か面白いことでもあったかな?」

 一真が黙々と食事を続けていると、なんと優馬がこちらに話を振ってきた。奴が夕飯中に話しかけてくるなんて、これまでの経験上ありえないことだ。古神家の長男は、この場において空気のように存在感がないのが定位置のはずだった。両親と弟が会話に花を咲かせる食卓に、無能な異物は必要ない。昨日までは、そのはずだったのに……。

「あっ、なっ……」

 あまりに突然の出来事に、一真は言葉が出てこなかった。食事中弟に話しかけられたくらいで動揺するなんて、まるで自分が引きこもりの根暗みたいではないか。一真が何も答えられずに口を半開きにしていると、優馬は兄の反応など気にせず話を続ける。

「新しく始まった大学生活は楽しめているのかな? 新しい友達はできた? 講義にはちゃんとついていけてる? 何か困ったことはない? 悩みがあるなら僕が聞くし、お父さんやお母さんもいるんだから、ひとりで考え込まずに相談しなよ。だって僕らは家族なんだから」

「あ、あぁ……そうだな。優馬の言うとおりだ」

「そっ、そうね。私たちは家族ですものね」

 コイツは一体何を言っているのか。あまりに突拍子のない話に、両親ですら困惑してるじゃないか。唯でさえ予測不可能な思考の持ち主だが、今晩は輪をかけて意味がわからない。こいつは呆気にとられる家族を見て楽しんでいるだけではないのか。悪魔の悪戯に翻弄される我々は、笑いものにしかならない滑稽な道化でしかなかった。

「順調に行けば、これが最後の学生生活になるからね。決して悔いが残らないようにしなくちゃ。いい加減、そろそろ恋人のひとりでも作ったらどう? いつまでも年齢=彼女いない歴だと悲しいよ? きっと大学に素敵な女性が居るはずだから頑張って見つけてね」

 お前は俺の保護者か何かなのか。大して真心を込めずに上辺だけの心配をする優馬に、段々と腹が立ってきた。しかしここで激昂しては奴の思う壺だ。あいつはきっと一真が耐えきれず怒り出すのを待っているのだ。そうなれば、両親がいる前で小学生の弟にキレる大人げない兄になってしまう。一真は耐える。テーブルの下で拳を握り必死になって耐えている。

 しばらくすると、せっかく話題の中心にしているというのに何の反応もないのでつまらなくなったのか、優馬は話をそらし両親の方へと視線を戻す。

「そういえば、確かお父さんとお母さんも大学で知り合ったんだよね。今でも夫婦仲が良いようで僕は嬉しいよ。恋愛は学生生活の華だねぇ。大丈夫大丈夫、そう不安そうな顔をしないでよ。お兄ちゃんもきっと運命の人と出会えるよ」

「あ、あぁ……」

 優馬は無責任な笑顔で兄のことを応援する。彼の勢いに圧倒されるしかない一真は、情けない声で返事することしかできなかった。

 

「くそっ、あのクソガキ! 俺のことをバカにしやがって!」

 その夜、一真は自室で声を荒げていた。夕飯の時に受けた屈辱で頭がいっぱいだったのだ。ただ大きな声を出すと隣の部屋の優馬に聞こえてしまう恐れがあるため、できるだけ声を潜めて怒りを心の中に閉じ込めていた。我ながら無様だと思うものの、悪魔相手では仕方がないと諦めている部分もあった。

 しかし今日の優馬はどこかがおかしい。変哲なのはアイツの専売特許のようなものなのだが、今夜は異様に脈絡がなかった。まるで状況の変化にこちらがどう対応するか観察しているかのような、実験めいた意思すら感じる。ただの考え過ぎのような気もするが、あの悪魔が何の考えももっていないはずがないのだ。夕餉での出来事も、必ず裏があるはずだ。だがいくら思考を巡らせようと、一真に奴の真意を見抜けるわけもなく、鬱屈した気分に陥るだけだった。

「……やめだやめ。オナニーでもして寝よう」

 そんな気持ちの悪さを払拭するため、彼はパソコンのお気に入りフォルダを開きエロ画像をオカズに自慰をすることに。抜くものを抜けば、その日の嫌気など彼方へ吹っ飛ぶものだ。悪魔のことなど忘れて、今は目前の女性の裸体に意識を集中しよう。

「あっ、あれ? どうして……」

 しかしなぜだろう。いつもなら興奮して勃起するはずのペニスが、今日に限ってはうんともすんとも言わないのだ。今朝に二発も弟に搾り取られたからだろうか。それにしては、愚息の反応が静か過ぎる。

 これではまるで、普通のエロ画像では満足できなくなったみたいではないか。自分は朝の惨事のような、異常なプレイでしか欲情できなくなったのか? そんなはずはない。あの悪魔と同じ領域に足を踏み入れたというのか。

「くそっ!」

 拭いきれない苛立ちをぶつけることもできず、一真は悶々とした気分のままベッドに入る。

 自分は優馬のせいで変わってしまったのだろうか。

 この時はまだ、自分の中に眠る素質に彼は気づいていなかった。

 

 ◇悪魔の誘惑

 

 古神一真の日常は、少しずつ狂い始めていた。

 遅効性の毒が体内を徐々に犯していくように、現実は彼の本意から次第に乖離していく。

 悪魔の誘惑は、常に彼の周りに満ちている。

 一真が完全に弟の手に落ちるのは、時間の問題なのかもしれない。

 

「あっ」

「わあぁっ!?」

 翌日、一真が用を足すためトイレに入ると、すでに先客が便座に座っていた。弟はスカートと下着を下ろしチョロチョロと気持ちよさそうに排尿している。いくら同じ家で長い間生活を共にしているとはいえ、この時ばかりはお互い気まずいものがある。

「あっ、悪ぃ……」

 相手が憎き悪魔と言えど、居たたまれない空気から一真は素直に謝罪をしてドアを閉めようとした。すると、

「いいよ、入っても」

 優馬が兄の手を引っ張り、トイレの中へと引き込んだ。咄嗟のことで反応が遅れた一真は、悪魔の手に導かれるままに同じ空間へと足を踏み入れる。

 狭い個室に二人きり。目の前に無防備な男の娘がいるという事実に、一真の声が裏返る。

「おいっ、お前何をっ……!」

「分かってるよ。お兄ちゃん興奮してるでしょ。弟がおしっこしている姿に欲情しちゃうなんて、お兄ちゃんは悪い人だなぁ」

「うっ……!」

 奴は微笑みながら手を伸ばし、一真の膨らんだ股間を優しく擦る。そこはすでに破裂しそうなほど硬くなっており、救済の時を今か今かと待っていた。優馬は慣れた手つきでチャックを下ろし、男根の封印を解く。中から現れたのは見事なまでに勃起した逸物である。兄の愚息は弟の痴態で興奮し、今にも爆発しそうになっていた。

「お兄ちゃんを欲情させちゃったのは僕のせいだから、その責任を取るね。待ってて、すぐにイカせてあげるから」

 そう言って、優馬はビンビンに腫れあがったペニスを口に含む。流れるような動きでフェラチオに移行し、兄の陰茎を口内で攻め立てる。前回のことで要領は掴んだのだろう。彼の口腔は口マンコと呼ぶに相応しい気持ち良さであり、一真の意識は一瞬で悪魔の口淫の虜になってしまったのだ。

「うっ、あっ、こんなところでっ……!」

「っじゅぶっ、んぶっ……らって、ここで抜いとかないとムラムラしたままで気持ち悪いでしょ。だから……んちゅっ、ちゅぷる、んぐっ……お兄ちゃん思いの僕がイカせてあげるんだよ」

 お兄ちゃん思い? お前が? 凡人が慌てふためくのを見て楽しんでるだけじゃないのか?

 悪戯好きの小悪魔は、上目遣いで兄の反応を見ながら舌でペニスを弄ぶ。カリの部分を舌先で引っ掛けて擦ったり、尿道口を突いたり、亀頭を舐め回したりとやりたい放題だ。その全てが一真の快楽中枢に直撃し、得も言われぬ快感が彼を襲う。こうなってしまっては、後は弟の意のまま思うがまま、良いようにイカされるだけのまな板の上の鯉だった。

「じゅっ、んじゅうっ、ちゅぷっ、じゅじゅっ……! んんっ、んはぁっ、大きいっ……んあっ、れちゅ、んちゅう、ちゅうちゅう……ふふっ、先っぽからカウパーが垂れてきたよ。僕のフェラチオで感じているんだね。んちゅうっ……!」

 尿道口から滲み出てきた我慢汁を、優馬は美味しそうに吸っていた。腰が抜けそうな脅威の吸引力で、尿道のカウパーを吸い取っていくのだ。こんな刺激的な愛撫をされたら気持ちいいに決まってるじゃないか。兄の弱点を知り尽くした弟は、彼の感じる部分を徹底的に突いていく。頬を竿に擦りつけながら肉棒の匂いを嗅ぎ、玉袋まで揉んで奉仕をしている。そんな知識までどこで覚えたのか、優馬は熟練の娼婦のように一真を追い詰めていった。

「あっ、うあっ、もうイクっ……!」

 このままではまた優馬にイカされてしまう。内心で兄としての尊厳と劣情が戦っていたその時、あるハプニングが訪れる。

 コンコン。トイレのドアがノックされたのだ。

「あっ、入ってるよ」

「あら、優馬。ごめんなさい、邪魔しちゃったわね」

 トイレにやってきたのは母だった。同じ家に住んでいるのだ、こういうのはよくあることだ。だが今回ばかりはタイミングが悪い。自室でオナニー中に母が部屋に入ってきたかのような間の悪さがある。実際はそれ以上に最悪な状況である。見られたら確実に家族会議で吊し上げの刑だろう。

 流石の優馬も母にトイレ前で待機されるのはマズイと思ったのだろう。やんわりとトイレの傍から離れるように指示を出す。

「あっ、お母さん。悪いんだけど、少し時間がかかるから夕飯の準備を進めておいてよ」

「……そうね、お母さんの前でおトイレしづらいでしょうからね」

 信者の母は優馬には逆らわない。彼女がドアの前から去っていく音が聞こえ、一真も一安心である。これでトイレから兄弟が一緒に出てくるのを見られずにすむ。

「邪魔が入ったけど……先を続けるね」

 一度緩んだ欲求のほつれを、彼はすぐさま縫い合わせてくる。クールタイムで若干余裕を取り戻した男根を、お得意の亀頭攻めで再加熱。欲情の炎はメラメラと燃え盛り、射精欲求があっという間に高まっていく。

「じゅる、んじゅじゅっ……もうイッちゃうの? んくちゅっ、ちゅぷっ……いいよ、僕のお口にお兄ちゃんの白いおしっこ、いっぱいだしてね……じゅじゅ、んぐちゅうっ……!」

 射精まで秒読み段階に入ったペニスを、奴は更に激しさを増してしゃぶり尽くす。じゅるじゅるといやらしい水音を立てながら、逞しい肉棒を淫らに啜っているのだ。小学生にはとても見えない官能的な表情に、欲望の猛りが沸々と煮えたぎってきた。

 その瞬間はすぐそこまで迫っている。魔羅が射精の準備で膨張しているのを感じ取った優馬は、渾身のイラマチオで攻め落としにかかった。喉奥で亀頭が圧迫されるのがたまらなく心地良い。柔らかな雲の上に浮かんでいるようだ。脳が沸騰するほどの快楽の津波に押され、一真の限界はとうとう臨界点を超えた。

「くっ、イクっ……!」

 イク瞬間、一真は本能的に優馬の頭を両手で掴んで固定し、男根を喉奥に突き入れ彼の胃袋目掛けて大量の精の塊を解き放った。

「んぐっ、んぶぶっ、んんーっ!? んじゅるっ、んぐっ、んうっ、ちゅじゅううっ……!」

 優馬の口内に、ドロドロの熱い精子が一斉に流れ込む。蜂蜜のように粘度の高い白濁の迸りを、彼は何の躊躇もなく喉を鳴らして飲み込んでいく。二回目ともなれば迷うこともないだろう。弟はこれまた美味しそうに兄チンポミルクを胃に収めていく。

「うぅっ、くぅっ……搾り取られるっ……!」

 認めたくはないが、奴のバキュームフェラは筆舌に尽くしがたいほど気持ちがいい。今までやってきたオナニーが、まるで子供のお遊びに思えてくる。これが本当の快楽、これが悪魔の享楽というやつなのか。

 一真がフェラに圧倒されているうちに、弟は尿道に残った精液まで一滴残らず飲み干してしまった。名残惜しそうに亀頭を吸い、空っぽになった口を開けてこちらにアピールしてくる。

「ちゅうっ、んじゅじゅっ、んんっ……んはぁ、ごちそうさま。お兄ちゃんのザーメンは今日も濃くて美味しかったよ♡」

 コイツは本気でそんなことを言っているのか、それとも兄をからかっているだけなのか。どちらにしても酔狂なやつではある。それに付き合う一真もすでに道を踏み外しているのは確かだった。

「もっ、もういいだろ。俺はその、小便をしにきたんだ。だからそこをどけよ」

 別の意味でスッキリした一真は、続いて本来の目的である排泄行為をすることに。性欲を発散したことで尿意がぶり返してきたのだ。このままではトイレに居るのに漏らしてしまう。

 だというのに、なぜか優馬はペニスから手を離さないのだ。奴はニヤリと悪魔の表情で笑い、俺に狂気的な提案を勧める。

「そうだ……どうせなら、僕の口の中におしっこしてみない?」

「はぁっ!?」

元々おかしなやつだったが、ついに気でも狂ったのか。一真は驚愕の眼差しで優馬を見るが、彼はいつも通り不敵に微笑むだけだった。奴が男根を握ってる以上、一真に選択権はない。尿意はなおも股間を襲い、早く排尿しろと急かしてくる。

「ほうら、あやふあやふ」

「うっ、くそっ……!」

 ペニスを咥え準備万端の優馬に促され、観念した一真は愚息の我慢を解放する。

 チョロチョロチョロ……。

「んんっ、んくっ、んぐっ……んじゅうっ、むぐっ、じゅぶっ、んんんーっ……!」

 口内に流れ込んでくる兄の尿を、優馬は黙々と飲んでいく。よく他人の尿なんて汚らわしいものを躊躇なく飲めるものだ。奴のぶっ飛んだ神経には、時々呆れを通り越して感心するものがある。真似してみたいとは一切思わないものの、奴なりの信念があるのだろう。

 放尿すること十数秒。精液に続き兄の尿を飲み干した優馬は、満足そうに喉を鳴らした。

「んっ、んむっ、んんっ……ぷはぁ、おしっこって変な味がするんだね。これだけ飲んだらお腹いっぱいだよ。うーん、夕飯食べられるかなぁ」

 まるで三時のおやつを食べすぎたとでも言うような気軽さでとんでもないことをやってのける奴を見ていると、これが普通の反応なのかと錯覚してしまう。そんなはずはない。正気なのは自分で、おかしいのは優馬の方なのだ。

 なのになぜ、こうも心が落ち着かないのか。

 奴がいる場所が、なぜか魅力的に見えるのだ。

 一真の精神は徐々にだが、平凡さからはかけ離れた所に寄っていく。

 彼はすでに、悪魔の術中にハマっているのだ。

 

 ◇転がり落ちて

 

 悪魔の奸計は一真の脳を侵食し、次第に近親姦への抵抗力をなくしていった。

 あれだけ嫌悪していた弟との性行為に、彼は段々と慣れていく。

 それが罪深いことと知っていながら、性的欲求が理性を軽々と上回るのだ。

 背徳の甘露を知った彼に、もはや抗う力はどこにもなかった。

 ただ本能の赴くままに、今日も倒錯した遊びに興じるだけだった。

 

「お兄ちゃん、入ってる?」

 更に翌日、一真が夜半お風呂に入っていると、脱衣所から弟の声が聞こえてきた。誰が入浴しているかなんて、服を見れば一目瞭然だろうに。奴は別に兄のお風呂を急かしにきたわけではないだろう。ならば優馬は何が目的なのか。その答えは、衣擦れの音の後にすぐ明かされた。

「それじゃ、僕も一緒に入るね」

「なっ!?」

 一真が返事をしないのを肯定と取ったのか、奴は服を脱いで風呂場に入ってきた。彼は弟と一緒にお風呂に入った経験がなかったので、優馬の裸を見るのはこれが初めてとなる。

 初めて目にする優馬の裸は、そのまま絵画のモデルになりそうなほど美しかった。唯でさえ少女のような美貌を持つのに、それに追加して若さゆえの柔肌が非常に艶めかしいオーラを放っている。天は二物を与えずとは言うが、こいつには一体どれだけの才能があるというのか。アレか、奴は人間じゃなくて悪魔だからセーフ理論か。なんだそりゃ。

「お前っ、何しにきたんだよっ!」

 弟に見惚れていたのを隠すため、一真は無理して声を荒げる。

「何って、一緒にお風呂入るって言ったじゃない。兄弟でお風呂なんて、別段おかしくもないでしょ? 憧れてたんだぁ、兄弟で仲良く入浴するの」

 本心なのか口から出任せを言ってるのか、彼は身体を洗うために座っている兄の背後に立つ。狭い浴室に逃げ場などない。入り口側を陣取られた一真は、ただ黙って事の成り行きを見守ることしかできなかった。

「そうだ、丁度いいし僕がお兄ちゃんの身体を洗ってあげるよ。お父さんの背中は洗ったことあるけど、お兄ちゃんはなかったんだよねぇ」

 そう言って、弟は楽しそうに兄の背中を洗い始める。他人から見れば微笑ましい兄弟模様に見えるかもしれないが、何をされるかわからない状況に一真は戦々恐々である。いきなり命は取られないだろうが、どんなイタズラを仕掛けてくるか予測もできない。奔放な優馬に大人しく従っている一真だが、万が一のためにいつでも動けるように用心しておくべきだろう。

「ふんふん~♪ ふふふ~んふ~ん♪」

 兄の心境を知ってか知らずか、優馬は呑気な鼻歌を歌いながら兄の背中を洗う。その無邪気な様子だけを見れば、尋常ならざる天才児にも腹黒い悪魔にも思えない、極々普通のこどもに見える。いくつもの顔を使い分ける彼の本心とは、一体どのようなものなのだろうか。

 一真が思案に耽けている間も、優馬の奉仕は続く。背中を洗い終えた彼は、次に兄の前面を洗おうとする。後ろから抱きついて手を回し、兄の愚息に手をかける。急に男根を握られ、一真は驚きの声を上げる。

「うおっ……!?」

「お兄ちゃんはちゃんと毎日おちんちんを洗ってるかな? 不衛生な男は女性にモテないよ。せっかくの機会だし、おちんちんも僕が綺麗にしてあげるね」

 一真が狼狽しているのを良いことに、優馬は意気揚々と兄の股間を洗い始める。それもスポンジ等を使わず、手にボディーソープを付けて竿を擦りだしたのだ。これはもうほとんど風俗のソープみたいなものではないか。

 弟のいやらしい手の動きにより、一真の愚息は見る見るうちに硬く大きくなっていった。

「うっ、あっ、これはっ……!」

「ふふふ、おちんちんが勃起してきたね。僕としては洗いやすくて助かるんだけど、お兄ちゃんとしてはこのまま一発抜いたほうが気が楽だよね。うん、お風呂に入る前にこっちも一旦スッキリしようか」

 新しい遊びを見つけた優馬は、器用にも背中越しに手コキを始める。ボディーソープがローション代わりとなり、ヌルヌルとした新鮮な感触が気持ちいい。奴のすべすべした肌が背中に当たり劣情を煽るのだ。獣の欲望を呼び覚ます巧みな扱きで、心臓の鼓動が早くなっていく。自分はお風呂に入りにきたはずだ。それがなぜこんなことに。そんな理性など吹っ飛ぶくらいに刺激的な優馬の手コキで、一真の精神は昂ぶっていく。

 何の変哲もない家の風呂場はたちまちソープランドへと早変わりし、魔性の男の娘が献身にも兄の性欲を発散させようと頑張っていた。自分でオナニーするのとは別次元に気持ちいい優馬の手コキにより、一真の射精欲求はあっという間に満ちていく。この際人の尊厳などかなぐり捨ててもいいくらいの快楽で、イカされることへの抵抗心など雲散霧消してしまったのだ。

「うおっ、くぅっ……それはヤバイっ……!」

「はは、もうすぐイキそうなんでしょ。僕も段々とお兄ちゃんの反応がわかるようになってきたよ。これって以心伝心なのかな? まぁそれはいいとして、イキたいならいつでもイッていいからね。お兄ちゃんの精液を、僕の手で受け止めてあげるから」

 聖母のように優しい声音に導かれ、亀頭は赤黒く染まり今にも爆発してしまいそうだった。一真は己の性欲を解放し、濃厚な子種を勢いよく発射する。

「くっ、イクっ……!」

 極上の手コキで解き放たれた精液は、亀頭の先で待ち構えていた優馬の掌にビチャビチャと飛散する。瞬く間に彼の手は白濁液でコーティングされ、ボディーソープと絡み合い泡立っていた。射精したてホヤホヤの兄の熱い迸りを、優馬はうっとりとした視線で見つめていた。

「あはっ、これまた盛大にイッたね。昨日もあんなにたくさん射精してたし、お兄ちゃんって実は絶倫なんじゃない? 若いっていいねぇ」

 そんな達観したセリフを吐きながら、優馬は手についた精液ごと名残惜しそうにシャワーで汚れを流す。そのまま他の場所も手早く洗い、前戯の汗を落としていく。表面上は真面目な優等生の優馬は、風呂場の本来の用途も忘れてはいない。不潔な肉体では皆の信頼は得られないのだ。

「身体も洗ったことだし、そろそろお風呂に入ろうよ。もちろん一緒にね」

 優馬の提案に、今更拒否などできない一真だった。煮るなり焼くなり好きにしてくれ、と半ばヤケクソ気味の不甲斐ない兄であったが、この後の展開に薄々感づき期待しているのもまた事実であった。奴の思想に染まってきたのだろうか。だとしたら、自分の人格が変容しつつあるのだろうか。悪魔が望む、人道から外れた邪なる領域へと。

 

「ふふふーん♪ ふんふんふ~ん♪」

 入浴中、優馬の機嫌はすこぶる良好だった。兄と一緒に入浴するのがそんなに楽しいのだろうか。一真としては、浴槽が狭くなるので二人で入るのは勘弁願いたいのだが。

「おい、もうちょっと足をどけろよ。狭いだろ」

「この狭さが良いんじゃないか。お互いの肌が触れ合い、心の距離まで近くなったみたいでしょ。うん、これが兄弟のスキンシップなんだね」

 そんなわけあるか。奴の脳内の理想とする兄弟関係がわからなくなってくる。優馬に初手コキをされて以来、彼はろくに接してこなかった兄との人間関係を強引に深めようとしている風に思える。ただ単に一真の弱みを握ったので、それを利用し遊んでいるだけなのかもしれないが、あの悪魔なら他に裏があってもおかしくない。奴は何を思い、何を画策しているのか。その本音までは読み取ることはできないが、この数日で一真なりに分かってきたことがある。

 それまでは機械のように感情のないやつだとは思っていたが、決してそうでもないということだ。両親に見せる表情は上辺だけのもので本心ではないとは思うが、悪魔なりの感情は持ち合わせているのだろう。それが自分たちに害を為すような悪しきものだったとしても、感情があるなら何かの隙に裏をかけるかもしれない。一度も優勢になったことのない情けない我が身であるが、希望だけは捨てずに持ち続けておこう。

 一真がそう新たな決意に燃えていたところに、水を差す者がいた。それは他でもない優馬ではあるのだが、奴は足を伸ばしこちらの陰茎を弄っている。お前は気になるものに飛びつく猫かよ。

「おい、お前何を……」

「お兄ちゃん、僕は分かってるよ。お兄ちゃんがさっきの射精で満足はしていないってことが。それを証明するように、僕に足で弄られたくらいでまた勃起しているじゃないか」

 優馬の言うように、愚息はいつの間にか立派に屹立しているではないか。一度の射精では物足りないのか、弟の足コキで簡単に再勃起してしまうとは、自分は発情期の獣か何かなのか。弟の思うがままに手懐けられている息子の軟弱さに呆れる一真だが、勃ってしまったものは言い訳のしようがない。そして、一度その気になってしまったら中々萎えないのが男の欲望である。

「こっ、これはだな……」

「良いんだよ、お兄ちゃん。おちんちんを勝手に弄った僕にも原因があるから、その責任は僕が取るよ。前戯の後は本番だよね。うん、前みたいに僕のお尻で気持ちよくなってね」

 なぜかヤル気満々の優馬は、自分から率先して勃起したペニスを握り、その上に尻穴を宛てがった。対面座位の状態だが、湯船の中なので安定性に欠ける。うまい具合に位置を調整しながら、弟は男根をアナルへと挿入する。

「うわっ、きっつ……!」

「んっ、あっ……挿入ったよ……!」

 優馬の尻穴に硬く屹立した肉棒が突き刺さる。菊門の締め付けにも負けることなくズブリとアナルに侵入を果たした男根は、湯船のお湯を引き連れて腸内を荒らしにかかる。唯でさえ温かい腸内が、湯の熱も加わり灼熱地獄のような有様になっていた。

「アナルの中、あつっ……!」

「んあっ、これすごいっ……! お尻の中にお湯が入って変な感じがするよっ。あぐっ、んんっ……んはぁ、ちょっと動きづらいけど、僕がなんとかしてみせるよ。あぁんっ……!」

 優馬は不安定な姿勢から懸命に腰を動かしピストン運動を開始する。アナルセックスはこれで二度目のはずだが、その腰使いはすでに熟練の娼婦の域に達していた。同じく先日童貞を不本意ながらに捨てたばかりの一真であるが、弟の技術がずば抜けているのは文字通り肌で感じていた。勉強やスポーツだけが彼の才能を測る尺度ではない。性技ですら奴のテリトリーなのだ。悪魔じみた天才児というのは伊達ではないということか。お風呂の中であろうと彼の腰振りに揺るぎはなく、巧みな腰捌きで一真を天上の快楽へと誘っていく。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あっ、くっ、んんっ、はあぁっ、あぁんっ……どう、お兄ちゃん……上手く動けているかな? お尻の中のお湯でお腹が苦しいけど、んあっ……お兄ちゃんは気持ちいいかな?」

 奴は蠱惑的な表情で問うてくるが、そんなこと聞かずとも分かるだろう。優馬の腸内は極上の性器であり、ペニスを楽しませるために生まれてきたオナホールのようだ。一度挿れればその快感に目覚め、二度挿れれば禁断の快楽の虜となるだろう。一真はすでに奴が提供する魅惑の遊戯に囚われ、性を貪るだけのケモノになってしまったのだ。

 見るがいい、欲にまみれた己の姿を。恥も理性も捨て去った、哀れな人間の末路がこれか。そこにいるのは、弟に唆され醜い欲望を晒した愚かな兄である。憎き存在だったはずの優馬にむざむざと屈服し、更には射精管理までされて屈辱の極みだろうに、それでも本能的な情欲には逆らえずこうして優馬と肛門性交するハメになっているのだ。それだけ弟のアナルには男を惹きつける魔力があるのだろう。

「んあっ、あうっ、んんっ、いいっ、気持ちいいよっ! あぁっ、お兄ちゃんのおちんちん、僕のアナルをズンズン突いてっ……全身に衝撃が響いてくるっ……んあぁっ!」

 アナルセックスにハマったのは優馬もまた同じだった。彼は妖艶な動きで腰をくねらせ、腸内全体でペニスの感触を味わっている。男根の感覚をアナルに刻み込むため腸壁に亀頭を擦りつけ、マーキングでもしているようだ。それなら一真の逸物は奴の所有物ということだろうか。事ここに至っては、あながち否定できないのは辛いところである。

「くぅっ……優馬のアナル、すげー締まるっ……!」

「あくっ、うっ、あっ、んんぅっ……おちんちんすごいっ、お尻の奥まできてるぅっ……!」

 二人が一心不乱に腰を触り合い、入浴中の交尾に夢中になっているときだった。

「……優馬、お風呂か? おや、今日は珍しく一真と一緒に入っているのか」

「……っ!?」

 脱衣所に父が入ってきた。家族なのだから日常的な光景ではあるのだが、こんな時に現れなくてもいいものを。兄弟仲良く入浴しているだけならともかく、交合しているところを見られたら弁解の余地がない。快楽で精神が緩んでいた所に冷水を浴びせられ、一真の心臓が早鐘を打っている。

 父が風呂場を覗く前にアナルからペニスを抜くべきではないか。そう思い至り実行しようとするが、陰茎が尻穴に深く食い込み抜けそうにない。優馬のやつ、わざと行為を中断させないように肛門を締め付けているようだ。

 あの悪魔はこんな危機的状況を楽しんでいるようだった。奴はピストンを止めるどころか激しく腰を振り、一真のことを挑発していた。

「兄弟の交流はいいことだな。どうだ、お父さんも一緒に入っていいか?」

「う~ん、そうしたいのは山々なんだけど、どうしようかなぁ。流石に三人入るには、このお風呂は狭すぎるからなぁ……」

 優馬はニヤリと不気味に笑い、こちらの表情を確認する。奴の気分次第では、父を風呂場に招き入れ兄弟の濡れ場を目撃させるぞ、という意思表示だろうか。そんな最悪の事態は御免被りたい一真は、首をブンブン振って否定の合図を送る。しかしそれが逆に彼の嗜虐心を煽り、結果として兄の精神を更に追い詰めていくことになるのだ。

 脊髄に響く強烈なピストンから一転して、奴はゆっくりと焦らすように腰を回し、じわじわとしたもどかしい刺激を与えてくるのだ。あぁ、できることなら我を忘れるくらいにガンガン腰を打ち付け快楽を貪りたい。だがそうすると、父に弟との行為がバレてしまう。それだけは、それだけはなんとしても回避せねば。

 一真が理性と性的欲求の間で揺れ動いている様子を、眼前の悪魔は愉悦に浸りながら眺めていた。兄の痴態を眺めて何が楽しいのか。頭のネジが吹っ飛んでいるのをいよいよ隠さなくなってきたドSな弟は、しばらく愚兄の逼迫した状況を楽しむと、本気で風呂場に乱入してきそうな父にようやく釘を刺す。

「お父さん、ごめんなさい。やっぱり今日はお兄ちゃんと二人で入るよ。お父さんはまた今度ね」

「そうか、優馬がそう言うなら仕方ないな。まぁ二人とも仲良くするんだぞ」

 息子に諭され、父は素直に退散する。もとより冗談半分で一緒に入浴すると言ったのだろうが、優馬がその気だったなら父は迷わず入ってくるだろう。奴のさじ加減ひとつで一真の運命は決まってしまうのだ。あぁ、なんておぞましい弟なんだろうか。奴の存在のせいで、自分の人生はメチャクチャだ。奴さえいなければ、こんな惨めな思いを味わわずにすんだのに。

「ふぅ……」

 父が脱衣所から去る音を聞き、ようやく一安心し息を吐く。こいつの気まぐれのせいで、この数分間だけで寿命が三年は縮んだ気がする。まったく、この悪魔のしでかすことに毎回翻弄されっぱなしだ。

 一難去って心に余裕ができたからか、一真は精一杯の努力で優馬のことを睨みつける。まるでライオン相手に凄むシマウマだが、残念ながら何の威嚇にもなっていないのが悲しいところだ。

「おい、お前のせいで危うく親父にバレるところだったじゃないか」

「お兄ちゃん、ごめんごめん。……でも、実はお兄ちゃんも興奮してたでしょ。僕分かるんだぁ。お父さんに見つかるかもしれないって時に、さっきよりおちんちん硬くなってたもん」

「っ……!?」

 アナルを突いていた優馬に図星を突かれ、一真の顔に動揺が走る。自分の心理を的確に見透かされて内心穏やかにいられるはずがない。心臓も凍りつく悪魔の囁きは、彼の耳から侵入し脳内でけたたましく鳴っている。

 肉体の表面を覆っていたヒトとしての体裁は綺麗に剥がされ、中から見るも無残な醜い素顔が現れたのだ。

「気にすることないよ、お兄ちゃん。人間は誰だって背徳的なことが大好きなんだ。そりゃあ社会として集団で生活する以上、倫理的に生きるのが大切なのは皆が知っているはずだ。でも、人として正しく生きるってことは、同時に自己中心的な欲望を殺すってことでもある。他者を尊重しつつ如何に自分の欲望を満たすか……それはこの世に生きる誰しもが考える永遠のテーマでもある。お兄ちゃんは今、ようやく自分の人生について考え始めたんだ。血の繋がった弟と交わるという背徳と、それによって得られる快楽との狭間で、自分は何に従うべきか迷っている。それはお兄ちゃんの今後を左右する重要な分岐点になるはずだ」

 優馬は肛門を締め付けながら、そんな哲学的なことを諭してくる。たかが十年しか生きていないくせに、何を人生の先輩のように語っているのか。バカバカしくて怒りを通り越して呆れてくる。

 ……ただ、奴の長広舌は腹立たしいくらいに的を射ていた。この身を支配する快楽は、ただアナルセックスによる快感だけでは説明がつかない。弟との近親相姦という目を覆いたくなる事実が、過激なスパイスとなって神経を麻痺させているのだ。

「どう、深みにハマれば身を滅ぼしかねない背徳の味は? 脳みそが沸騰しそうなくらいに気持ちいいでしょ? それが動物にはなくて人間だけが持つ、禁忌的な行いで快感を得るこの世で最も罪深い感情だよ」

 あぁ、もはや認めざるをえないだろう。自分は優馬とのセックスを純粋に楽しんでいる。この罪深い交わりに、心の底から完全にハマっているのだ。

「うっ、あ……気持ち、いいっ……!」

「うんうん、いいよ。気持ちいいよね、最高だよね。あぁっ……そんなに激しく突いたら、お尻が裂けちゃうって。あぁっ、んんっ、すごいよっ……お兄ちゃんのおちんちんっ……ふあぁっ、いいっ……僕もすごく気持ちいいよっ……んあぁっ!」

 己の奥底に眠る獣性を解放し、一真は下からガンガン尻穴を突き上げる。灼熱にも思える湯船の中、滝のような汗を流し脱水症状になりかけながら二人は力強く腰を振る。これまでの退屈な人生がウソのようだ。これ以上の悦楽は今まで味わったことがない。そう断言できるほどの強烈な快感により、彼のペニスは限界を迎えようとしていた。

「うあぁ……ダメだ、もうイクっ……!」

「あっ、んあっ、僕もイキそうだからっ……一緒にイこうねっ……ふああぁっ! んんっ、すごっ……お尻の中が焼けちゃうぅっ……はあぁっ、あぁんっ!」

 この狂気の性交も終盤に差し掛かり、二人とも余力を残すまいと全力でピストンを続ける。一日の疲れを取るための入浴で疲労を蓄積させるのは本末転倒のような気もするが、そんなこと考える余裕が無いほど行為に熱中しているのだ。これぞ正しく禁忌に満ちた極上の快楽の味だった。

 永遠にも感じる抽送の果てに、いよいよ射精の瞬間が間近に迫る。一真は最後に優馬の腸奥を一突きし、彼の腸内に汚れた欲望を注ぎ込む。

「うあぁっ、射精るっ……!」

「あっ、んあっ、イクっ、お兄ちゃんちんぽでイクぅっ、僕もおちんぽミルク射精しちゃうぅ!」

 腸内に兄の精子が怒涛の如く流れ込んでくる感覚を、優馬は得も言われぬ恍惚とした表情で味わっていた。一真の射精の衝撃で自分も達したのか、小さなペニスの先端から粘ついた白濁液が飛び出した。小学生の活き活きとした純白のザーメンが宙を舞う。

「うぐっ、あぁ……すげー気持ちいいっ……!」

「はうっ、んあぁ……お兄ちゃんのせーえきが腸内に射精てるぅ……んあっ、いいよっ……気持ちよすぎて射精が止まらないぃっ……あぁっ、んはぁっ……!」

 優馬の射精の余波で腸内が急激に締まり、一真はたまらず追加の子種を弟アナルにお届けする。唯でさえ白濁まみれの尻穴に追加発注精液を納品され、優馬も快感のあまり連続射精に至っていた。これぞ兄弟が織りなす白濁無限ループである。

 陰嚢に貯蔵されていたザーメンをすべて出し終え、性も根も尽き果てた二人はぐったりと浴槽の縁に身体を預けていた。こんな夜中に激しい運動をしてしまったが、なぜか気分の悪い疲労ではなかった。

「はぁ、んはぁ、ふぅ……」

「んんっ、あぁ……いっぱい射精したね、お兄ちゃん。お腹がパンパンでお尻からザーメンが溢れてるよ……はは、お風呂のお湯が精液で汚れちゃったよ。ふふ、このままじゃお父さんたちにナニをしていたかバレちゃうね♡」

 倒錯的な欲求を吐き出し疲弊している一真を見て、魔性の弟は色っぽい意味深な笑みを浮かべていた。これが彼の望む兄弟の関係なのだろうか。あまりにも道徳からかけ離れた犯罪的な悪魔の所業に、一真は言葉を失っていた。

 それは優馬の常軌を逸した思想に拒絶反応を示したからではない。己の内なる心に芽生えた新たな感情に困惑していたからだ。両親に隠れて弟と危ない遊びに興じることが、こんなにも烈々たる快楽を生むものなのかと驚愕していたのだ。

 これは果たして受け入れてもいい衝動なのだろうか。一度ハマってしまえば二度と抜け出せない底なし沼に足を踏み入れた気分になる。まだ自分の意識の変化についていけていない一真に、優馬は慈愛に満ちた優しい声音で語りかける。

「大丈夫だよお兄ちゃん。これから僕が色んな人生の楽しみ方を教えてあげるから。お兄ちゃんは本能の赴くままに楽しめばいいんだよ。そうすれば、きっと自分の進むべき道が見つかるはずさ」

 

 あれほど鬱陶しかった奴の声が、今では自然と脳内に入ってくるのだ。

 自分も両親と同じように洗脳されたのだろうか。

 このままではいけないと思いつつも、なぜか逆らう気は湧いてこなかった。

 奴との性行為で背徳の味を覚えてしまったからだろうか。

 脳まで蕩ける甘い蜜は、一真の全身を侵し支配していく。

 後はどこまでもどこまでも転がり落ちていくだけだ。

 先の見えない暗闇の只中へ、傍らで手を引く悪魔の誘うままに一真は堕ちていく。

 一真の行く先を決定づける運命の日まで、あと数日。

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