※この作品はR-18です。

Familiar Phobia~倒錯のすゝめ~   作:友井架月

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お久しぶりです。おまたせして申し訳ございません。
同人制作のほうが忙しく中断しておりました。
同人の方は依然として製作中なのですが、気分転換がてら短編とキャラプロフィールと蛇足の第一章あとがきのようなものを書きました。
本編の続きは頑張って来月には…と言いたいところですが、同人シナリオのほうがクライマックス最中で断言はできません。間に合わなさそうならまたお茶濁しで何か上げるかもしれませんが…。
もうひとつ重要なことですが、来月本編上げるとしても挿絵は付きません。挿絵担当の相方が同じく同人の原画で忙しいので…。申し訳ありませんが、文章のみでお楽しみください。


断章1:古神優馬の初体験

 この世界に何十億という人間が生きているが、誰一人として同一の存在はいない。ひとりひとりに異なる個性があり、それぞれの価値観を持ち、自分だけの人生を歩いている。どれだけ気の合う仲間でも、根っこの部分は赤の他人。分かり合うことはできても、相手のことを真に理解することは不可能だ。

 それは血の繋がった家族であっても同じこと。例え愛情を持って育てようと、ひとつ屋根の下で暮らそうと、必ずしも両親が望むような子供に成長するとは限らない。我が子であっても所詮は他人。飼い犬を躾けるのとは訳が違う。子は親の意思に反して独自の人格を作り上げていく。周囲の総合的な環境の結果どのような大人になるかは、それこそ神のみぞ知るといったところだろうか。

 

 古神家の次男、古神優馬の一番の趣味は人間観察である。人間観察が趣味と言う人はたまにいるが、優馬の場合は次元が違う。彼は文字通り人間の生態を“観察”しているのである。

「はぁ……今日も暗いニュースばかりだな……」

 優馬の父は毎朝新聞を読むことを日課としている。彼が新聞を読み始めたのは社会人になってからであり、上司や取引先との話のタネにするためというのが発端らしい。暇な時に上司から勧められた本を読むこともあるが、彼自身はあまり活字が好きではないようだ。大学受験の時に嫌というほど教科書や参考書に埋もれたのが原因らしい。それでも必要に迫られて文字を読んでいるところは根が勤勉なせいだろう。その結果優馬の助けもあり仕事の方は順調で業績は右肩上がりなのだが、中々出世できないのが悩みの種であった。

 その仕事で溜まったストレスを、父は不倫で発散していた。決して褒められたことではないが、彼も魔が差したのだろう。本来は一夜限りの関係だったはずだが、ズルズルと交際を続けて今日に至っている。そのことを優馬は把握しているものの、本人には言わずに黙っている。いざという時の脅しの材料にするためか、それともこれからどのような結末を迎えるか見守るためなのか。優馬の内心を理解している者は誰もいない。実の父親である彼ですら、息子の思考を計りかねているのだから。

 父子の関係は表面上良好である。毎日和やかに談笑する働き者の父とあらゆる分野で優秀な息子は、他人からは理想的な親子に映るかもしれない。しかしその実態は、いつ壊れるかも分からない薄氷に立つ歪な関係だった。

 父には子の心が分からない。彼にとって、息子の優馬の頭脳は理解の範疇を越えていたからだ。さりとて父の複雑な心境も無理からぬことである。優馬がもし他よりも利口な少年、というだけだったならここまで悩まずに済んだだろう。優馬がもし凡庸な天才であったのなら、彼は神様から授けられた祝福を素直に喜んだであろう。

 優馬という人間の器から逸脱した存在は、彼ら小市民には荷が重すぎたのだ。子供ながらに常軌を逸した言動を振りまく美少年の皮を被った悪魔が、自分の直ぐ側で生活している。それはまるで、猛獣と同じ檻の中に入れられているような気分だろう。彼はいつも怯えている。自分よりもずっと頭が良いはずの少年が、なぜ父親を見下さないのかを。彼はいつも恐れている。表面上は友好的な息子が牙を見せるその時を。

 

「おはよう優馬。優馬が元気そうでお母さん嬉しいわ」

 優馬の母はどこにでもいるような普通の専業主婦である。実家が裕福で何不自由なく生きてきたため、多少世間知らずな傾向にある。親から過保護に育てられた典型的な箱入り娘であり、大学時代に父と出会い初めての恋に落ちる。恋に夢見るお嬢様は当時真面目な好青年だった父に一目惚れし、二人は若い衝動のままに交わり妊娠したのを契機に結婚することになる。それが彼女の運命を大きく歪ませる結果になることを、その時の彼女は思いもしなかった。

 当初二人の夫婦生活は円満だった。初めての育児は苦労したものの、新鮮な日常は彼女の心を豊かにした。働き者の夫に可愛い息子がいる生活に、何の不満があるだろうか。めでたく二人目の子供も妊娠し、彼女の人生は順風満帆かに思えた。次男の優馬が生まれてくるまでは。

 優馬が生まれて最初の頃は、あまりに手のかからない彼の優秀さに驚いたものだった。初めての子供ということもあり長男の世話には散々手を焼いたものだったが、次男の場合苦労という苦労はしなかったのだ。自分が育児に慣れてきたというのもあるだろう。しかし優馬は一真の時とは明らかに違っていた。彼は赤ちゃんでありながら泣くことを知らず、すでに言葉が分かっているかのように親の言うことをよく聞いた。始めは手間が省けて子育てが楽としか考えていなかった彼女も、次第に次男の異質さに気づくようになる。私が育てている息子は、本当に人間の子なのだろうかと。

 優馬が小学校に上がる頃には、古神家は彼の意のままに動く傀儡一家と成り果てていた。息子の尋常ならざる急激な成長に、母親としての陳腐な体裁など崩れ去っていた。彼女は温室育ちということもあり、元々精神が強い方ではない。途轍もなく優秀すぎる息子の優馬は、正常な彼女の瞳には得体の知れない恐ろしい存在として映ったはずである。彼の輝かしい瘴気に毒され、次第に彼女の心は病んでいく。優馬という悪魔じみた病魔が、平凡だが平穏だったはずの家庭を侵蝕していく。

 あまりの心労で精神安定剤を服用するようになった彼女は、常に息子の脅威に悩まされていた。優馬の才能は誰の目から見ても明らかであり、将来の成功は約束されている。だがいつ彼に見限られ捨てられるかも分からない。それが彼女には恐ろしかった。眼の前に金のなる木が育っているのに、肉親の自分が甘い汁を吸えないなんてありえない。だから彼女は必死になって媚びを売る。どれだけ醜くなろうとも、一時の苦痛と耐え忍ぶ。崩壊しかけた家庭の未来に、人並みの幸福なんてあるはずがないというのに。

 

 不気味に笑う悪魔の傍らで、愚かな人間たちが慌てふためき無様に踊る。その様子を観察し、果たして優馬は何を思うのか。自分よりも低能な人間を見下し嘲笑っているのかというと、そうでもない。彼は人に興味を抱いている。彼らのことを観察し理解しようとさえ思っている。少々歪んだ思想ではあるが、彼は彼なりに自分の人生を謳歌している。これは悪魔のような少年が様々な業を背負った人間たちと出会い、交流を深めていく物語である。

 

 

「ふーんふーんふふふーん、ふーんふふふ~ん♪」

 その日古神優馬は上機嫌であった。柄にもなく呑気に鼻歌を歌っているほどだった。こんな姿を両親に目撃されれば変な目で見られるだろうが、現在周囲に誰もいないので問題ない。それに見られたところで彼らに何ができるわけでもないので、優馬にとっては小さなことである。それよりも今は、もっと重要なことがある。

「お兄ちゃん、お邪魔しまーす」

 優馬は不在の兄に断って部屋に入る。本人は気づいていないだろが、兄の部屋に侵入するのはこれが初めてではない。前に何度か出入りし、盗聴器やら監視カメラやら物騒なものを取り付け兄の生態を観察していたのだ。

 優馬の兄である古神一真は、取り立てて述べることもない平凡な青年である。優秀な弟と比べられることの多い彼は、日陰者として寂しい日常を過ごしていた。優馬がいなければ、彼はそこそこ幸せな人生を送れたことだろう。だがしかし、そんな仮定に意味などない。古神家の長男として生まれてこなかった一真など別人に他ならない。一真が兄であることも、優馬が弟であることも、覆しようのない必然なのだ。彼らが兄弟として生まれてきたことには必ず意味がある。兄がそのことに気づくのは果たしていつなのか、それは彼の今後の成長次第だろう。

 閑話休題。優馬が兄の部屋に出入りをしているのには理由がある。彼は両親にそうしたように、兄の一真にも興味を抱いていた。凡人を絵に描いたような特徴のない兄ではあるが、性根の部分に自分と同じ匂いを感じ取ったのだ。パッとしない兄は何か良からぬ本性を隠し持っている。そう直感した優馬は、こっそりと一真を観察し動向を調査することにした。とは言え外での活動を逐一尾行することはできないので専ら家の中、具体的には自室で何をしているのかを探ることに。

 自分の部屋はその人にとって一番プライベートな空間である。自室と言えど親と一緒に住んでいるためあまり趣味趣向をオープンにしていないものの、彼がひた隠しにしている趣味は優馬も把握している。一真は所謂隠れオタクに分類される人間であり、二次元の同人誌等を隠し持っていたりパソコンの中に他人には見せられないデータが詰まっていた。彼もモテない若者なので行き場のない性欲を持て余しているのだろう。人の心は分からなくても多少の良識はある優馬は、このことについて両親に黙っておくことにした。もちろん、兄の尊厳を守るためにではなく自分の楽しみを優先してのことではあるが。

「あはは、お兄ちゃんったらまた過激なAVを借りてるよー」

 監視カメラの映像から兄のPCのパスワードを知っている優馬は、一真の性癖について深く掘り下げていく。彼の性癖は犯罪臭の漂うものが多く、弟として兄の将来が心配であった。虚構と現実を一緒くたにして考えるのは愚かな行為ではあるものの、一真の場合は危ない予感がするのだ。何かの間違いで人の道を踏み外してしまいそうな、そんな危うい傾向が。

「……あれ、エッチなビデオを見てたら勃起してきちゃった」

 兄の秘蔵コレクションを物色していると、股間がムクムクと大きくなってきた。女性の裸体を見て屹立するとは、優馬もちゃんとした男の子であるようだ。さりとて、雄の本能で興奮してきたわけではないようだった。優馬には優馬の、彼独自の性的な本性がある。

「ふふ、お兄ちゃんはこれを見ながらオナニーしてるんだろうなぁ。本物の性行為を知らずに一人寂しく慰めて……お兄ちゃんってば可哀想に。顔は普通だし性格も決して悪くはないんだから彼女のひとりくらい居てもおかしくないんだけど、どうしてなんだろうねぇ」

 気づくと、優馬は性器を露出し自慰をしていた。初めてのオナニーであるがその動きに迷いはなく、淀みない動作で手を上下させていく。皮を被ったペニスはまだまだ成長途中ではあるものの、しっかりと男性の機能を果たそうとしていた。生殖器を扱いて快感を得られるのなら、自分は生物として落第ではないのだろう。日頃から自分は本当に人間なのかと自問自答する優馬にとって、それは自身に人間味を感じる貴重な経験でもあった。

「はは、オナニーって案外気持ちのいいものだね。お兄ちゃんが取り憑かれたように励んでいたのも理解できるよ」

 優馬は兄の心情について想像を膨らませる。兄はどういう心境で自慰をしていたのか。その性のあり方、衝動の発散のさせ方は、優馬に新しい好奇心を生み出した。自分にはまだまだ未体験の領域がある。知らない世界がたくさんある。人の本質をつまびらかに知るには、隠された性的素養にも目を向けてみよう。

「いい、気持ちいいよ……何か出そう、精液かな。うくっ……くるっ、きちゃうっ……!」

 射精の予兆を感じ、自然と手の動きが早くなる。抑えられぬ性衝動、欲望の猛りを、優馬は自身の中に感じ取っていた。これが性の目覚めなのかは分からない。人並みの感覚からは外れている優馬には、もっと別の価値観が生まれているのかもしれない。ただひとつ確実なのは、彼が性に興味を抱いたということだろう。

「くぅっ……イクっ、イッちゃうっ……あぁっ、射精るっ……!!」

 女の子のような嬌声とともに優馬の男根から白濁の精が迸る。勢いよく飛び出た精子は床を白く汚し、独特の臭気が周囲に充満した。手にもかなりのザーメンがかかり、予想以上の射精量に優馬自身驚いていた。

「はぁ、はぁ……いけない、そのまま出しちゃった。いよいよ射精するぞってなると、他のことに気が回らないものなんだね。いい勉強になったよ」

 そう言って、優馬は手についた精液を興味本位で舐めてみる。苦くてあまり美味しいものではなかったが、なんとなく気になる味だった。

「……いけないいけない。いつまでも余韻に浸ってないで後片付けししなきゃ。これがお兄ちゃんにバレたら……まぁ、これくらいバレても大丈夫かな」

 ささっとティッシュで床を拭き、パソコンの電源を落とし部屋を出る。飛ぶ鳥跡を濁さず。きっと一真は弟が部屋に入ったなどと考えもしないだろう。何事もない日常の裏で、弟が不穏なことを企んでいるとも知らずに。

「……ふふ、機会があったらお兄ちゃんで遊んでみようかな」

 優馬は脳裏で思案を巡らせる。普段は面白みに欠ける兄ではあるが、料理のしようによっては面白くなりそうだ。

 この日の出来事が古神優馬の初めての性体験であり、兄との行為に及ぶきっかけでもあった。

 

×××

 

登場人物紹介

 

・古神優馬(ふるがみゆうま)

年齢:10歳(物語冒頭時点)

誕生日:7月7日

血液型:A型

身長:140センチ

髪型:髪にかかるくらいのセミロング

髪色:黒

瞳の色:真紅

服装:学校に通っているときは私立の制服。特例で女子生徒の制服を着用している。普段着も女物。スカートが好き。勘違いしてはいけないのは、彼は別に性同一性障害というわけではなく、ただ単に可愛いものが好きで、自分の容姿が可愛いことを自覚しているためそれを利用するために女装しているのである。

 

古神家次男。一真の弟。市内の私立小学校に通う小学5年生。10歳。

中性的な容姿をした少年。女装をすると女の子にしか見えない。自分の容姿が可愛いことを自覚している彼は、普段から好んで女装をして周囲の視線を集めている。スカートが好き。下着もちゃんと女物を穿いている。

成績優秀、眉目秀麗。あらゆる分野に秀でた天才児。子供にしては達観した思考を持ち、度を越して大人びている。特に話術と人心掌握術に長けており、同級生はおろか両親からも畏怖、または依存されている。その並外れた才覚を振りかざし、実質的に古神家を支配していた。

ありふれた日常を嫌い、異質なもの……特に倫理や道徳から外れたものを好む。自分が他人とは違う価値観をもっていることを自覚しており、特殊な人間は凡人の人生を歩めないという持論で自分と同じく倒錯した嗜好を持つ人間の人生を蒐集しようと企む。

 

 

【挿絵表示】

 

 

:蛇足解説

本作品の主人公のひとりです。

物語の案内人であり、最重要人物でもあります。

メタ的な話をしますと、こういう利口で積極的に話を進めるキャラクターは書いてて非常に助かります。あまり彼頼りになるといけませんが、彼の対になる人物が頑張ってくれるのでなんとかなるでしょう(実は既に登場しています)。

よく「作者自身より頭のいいキャラクターは書けない」と言われますが、優馬は確実に作者より頭が良いので、良い反証になってくれることでしょう。

彼の成長と人間への理解が物語のテーマに直結しますので、ストーリーの行く末に優馬はどのような答えを得るのか、これからの展開にご期待下さい。

 

第一章の解説:蛇足の蛇足

第一章はとある歪な家族の日常と、兄弟の交流を描いています。

傍から見ると理想の家庭、だけど中身は崩壊寸前の家族となっております。人には本音と建前があり、内面にどす黒い本性が隠れているかもしれません。それは血を分けた家族であっても同じこと、むしろ親しい人間にこそ言えないこともある。古神家の事情は優馬に問題があるものの、両親にも同等以上の責任があります。優馬がああいう性格に育ったのも、やはり家庭環境が一因していたのでしょう。

これから様々な家族、家庭、幼少時の環境が登場します。その人物がなぜそのような人格になったのか。人間の性格の大部分は子供の頃の環境に起因していると思うので、そこを重点的に書いていくでしょう。この作品に登場するキャラクターはどのような過去を辿りどのような未来に行き着くのか、短くない道のりですができるだけ頑張っていきたいと思います。

 

 

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