※この作品はR-18です。

オペラ座 Fan Fiction」   作:木桜 春雨

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オペラ座 fan fiction 4

 声をかけた瞬間、振り返った相手の顔を見た、女の顔を見て、瞬間、探偵の方が驚いてしまった、だが、こんな夕暮れなら無理もないだろうと思いなおして、僕ですよと帽子を取った。

 「ああ、探偵さん」

 女が、ほっとしたように笑顔になったので、探偵は、ええと小さく頷いた。

 「お帰りですか、よろしければ」

 女の荷物を見ながら手を差し出した、半ば強引にだ、そして歩き出した。

 「日も暮れかけている、あまり遅くなると」

 少し迷いながら探偵は言葉を続けた、ここ最近、倫敦の夜は危険だ、日が暮れると悪人が我が物顔で通りを歩いている、窃盗だけでなく、殺人まで平気で行われる、朝一番で新聞配達員が死体と遭遇することもある。

 「少し、店に長居をしすぎてしまって、駄目ですね」

 自分の言葉が伝わったことに探偵は、ほっとしながら隣を見た、こうして見ると、どうしてと思わずにいられない、初めて会ったとき、あの人に似ているなどと。

 

 「突然、こんなことを言い出すと驚かれると思いますが」

 この数日、自分の中で考えて出した答えを口にするなら今しかない、そう思って探偵は尋ねた。

 「何かって、困ったことですか、いえ、別に」

 立ち止まり、不思議そうに自分を見る視線と表情に、探偵は内心しまったと思った、彼女は気づいてはいないのだと、この数日アパート付近、通りに見える、あの影を。

 「事件でもあったんですか」

 探偵は何か言い訳を考えなければと思った、こんな時、相棒の医者なら楽しい話題で気をそらすことができるのだが、自分の場合は、それが得意というほどではない。

 

 

 

 「それで、ホームズ」

 続きをと促す相棒の言葉に探偵は少し困った顔をした。

 「君は昨日、彼女を夕食に招待したんだ、そして夜中、近くまで彼女を自分の部屋に引き止めたというわけだね、珍しいことあるものだ、いや、実に珍しい」

 「ワトスン、その言い方は」

 「わかっているよ、だが、それで関係のない女性が危ない目に遭ったらどうするんだい」

 すると探偵は首を振った。

 「昨日まではわからなかった、だがね、ワトスン、結論が出たよ、狙われているのは僕ではない」

 医師は驚きの声をあけだ。

 「彼女の部屋に誰かが、こっそりと入った形跡がある、詳しく調べようとしたが、そこまでの時間がなくてね」

 「どういうことだい、ホームズ」

 医者が驚いたのも無理はない、彼女は知っているのかいと尋ねると、返事はすぐに返ってきた。

 部屋の中はしんとなった、無理もない。

 「ホームズ、彼女は」

 「物取り、泥棒でないことは確かだ、それだけに不要な心配はさせたくなくてね」

 「だからといって、自分の部屋に誰かがこっそりと」

 「わかっているよ、ワトスン、だがね、彼女の知っている人間だったらどうする」

 「知り合い、いや、もしそうなら事を荒立てて」

 自分の捜査を批判されなくて良かったと言わんばかりに探偵は、ほっとした顔つきになった

 「家族、いや、それなら、もしかして以前つきあっていた相手が」

 ホームズと呼びかけたが、続く言葉を医者は飲み込んだ。

 「どうしたんだい、ワトスン」

 「い、いいや」

 慌てて医者は首を振り、僕にできることはあるかいと誤魔化すように言葉を続けた。

 

 

 

 二つの影が窓から見えた、あそこに居るのは自分ではなかったか、なのに、今知らない男がいる、彼女の隣に、どうしてだと聞きたい。

 パリを出た彼女の後を追いかけた、人を雇い調べさせて、ようやく住んでいるところを突き止めたのはいい、だが、それから先、どうすればいいのか、男は迷っていた。

 彼女はプリマドンナになどなりたくなかった、自分から逃げたのだ、そう思っていた。

 それなのに、彼女の部屋には自分の痕跡があった、彼女の為に作った曲、楽譜があったのだ。

 プリマドンナにならないなら、音楽を捨てるなら、もう必要ないものだろう、なのに。

 

 答えてほしい、アイリーナ。

 

 

 

 

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