色々と好きなものを詰め込んでいます。
トリップヒロインは素の世界に帰るという選択はありません。
新章として書き始めるつもりでしだか、色々な要素を詰め込むかもしれないので、あえてファンフィクションという形で更新upしました。
夏コミで出すつもりですが、大人向け要素ありです。
まったく、いったいどこに行ったんだ、少年は必死になって街中を走り回りながら、たった一人の妹のコゼットを捜していた。
今日の夕方には父親のバルジャンがイタリアから帰ってくるのだ、仕事で久し振りに帰ったくるというので父親もだがコゼットも楽しみ似している筈だ、それなのに、朝食を食べるのも慌てたようにすませると、屋敷を飛び出したのだ、理由は分かっている、数日前に街で拾った猫、アイシャを探しに行ったのだ、昨夜は雨が降って風も強かった。
猫は屋敷に来てずっと眠っているばかりで大人しかったのに、何故か、窓の外を見て外に出ようとする姿にコゼットは驚いていた。
だか、それは自分もだ、猫は水が嫌いで、雨が苦手だと思っていたのに。
「坊ちゃま、あの猫、長くないかもしれません」
マリウスは思い出した、猫は屋敷に来てから殆ど何も食べずにいたのだが、子供の頃、猫を飼っていたという召使いが、こっそりと教えてくれたのだ、体調がよくない死期が迫っていると姿を見られないように、こっそり姿を隠すのだ、猫のことなど詳しくはないので不安になった。
大人の猫だ、年は幾つなのか、もしかして誰かに飼われていたのかもしれない、だが、コゼットは猫をとても可愛がっている、もう十日ほどもたつのに懐く様子もないのにだ。
アイシャとい名前も特別なものらしくて、理由を聞いても教えてはくれなかった、自分に。舞台教えてくれた言葉を思い出すと、もしかしてと思ってしまう。
少女は十歳の誕生日を迎えたばかりだ、母親はいないが兄のマリウス父親のバルジャンがいる、そして、この半月ほど前に出会った猫を屋敷に連れ帰り、世話を始めた。
パリの街で野良猫はいくらでもいるし、珍しくはない、だが、この猫は違っていた、今まで見たことのない毛の色をしていたのだ。
目が離せなかった、声をかけて、もし逃げ出さないなら家に連れて帰って、そんなことを思ったのだ。
「おじさまも猫を飼っていたのね」
仮面の男は子供の頃にねと言いながら、隣を歩く少女を見た、街中で浮浪者にかこまれているところを見かねて声をかけたのだ。
自分を助けてくれた男を初めて見たとき、少女は驚いて、あなたはミスター・ワイ、マジシャンでしょうと声をあげた。
「先週、あなたの舞台を観たんです」
服装や言葉づかいから良家、金持ちの娘だと思ったが、一人で、こんな小さな子が、何かあったらどうするんだと男が驚いた。
少し話をすると少女は家族に黙って家を出てきたのだという、それも数日前に拾った猫を捜しているのだと聞いて男は驚いた。
「それにしても内緒で出てきたのはよくないな、きっと君の猫は家に戻っているんじゃないか」
数日前に拾った猫なら少女に懐いているとは思えない、きっとどこか勝手にうろついているのかもしれない。
「教会にいるの、でもどこかわからなくて」
「ふーむ、教会ね」
「アイシャが教えてくれたの」
少女の話しかける顔は、ひどく真面目だ、作り話にしては違和感を感じる、そんな気持ちを感じたのかもしれない。
「夢の中でお話したの、自分の名前はアイシャ、彼女は待ってるの、ずっと待ってるの」
突然、少女は足を止めた、あそこはなんて教会と男に尋ねた。
ノートルダム寺院だよと男が答えると少女は、あそこにいるかもしれないと走り出した。
扉を開けて中に入ると、寺院の中は薄暗く、空気までも冷たく感じられたが、少女は中へとずんずんと入って行く、そして立ち止まった。
ここで自分が知らないふりをするのもいかがなものかと男も後を追い、声をかけようとした。
少女は祭壇の近くで立ち止まり、じっと見ていた、何をと思い近づいた男もその光景に驚いた。
そこには白いドレスの女性が座っていたのだ、膝には猫を抱いていた。
不思議なことに少女が呼びかけても、猫はぴくりとも動こうとしない、まるで死んだように眠っている。
少女と男の気配に女が顔を上げた、同時にかぶっていた白いベールが落ち、顔が見えた。
「あなたは、異国の天使、歌を唄う人ですか」
少女は驚いたように尋ねた、女の髪も目の色も明らかに、この国の人間でないのは一目で明らかだったからだ。
「な、泣かないで」
少女は驚いた、女が突然、涙を流しはじめたからだ。
「アイシャ」
猫の頭を撫でて名前を呼んだことに少女は驚いた、女に話しかけようとしても、どんな言葉をかければいいのかわからず迷っていると、突然、女の口から聞こえてきたのは言葉だった、聞いたことのない響きだ、外国の歌だろうか。
そして少女の後ろで男は、まるで魅入られたかのように歌を、女の姿をただ、じっと見つめていた。
女の着ていた白いドレスは飾りらしきものはなく、とてもシンプルなものだった、それが花嫁衣装だと気づくのは後になってからのことだ。