9つの甘味と酸味を求めて 作:TeoMR
私はずっとこの家に住んでいる。
パパがいた時も、このオンボロアパートの一部屋に3人で慎ましく暮らしていた。
アイドルを目指すと志した時もここだった。
その日はパパの足の上でテレビを見ていた。何気ない日常だった。けど、画面上の輝きに心身共に奪われてしまったのを覚えている。彼女らの一挙一動に目が離せなかった。テレビを見終わった後、自分の夢を父に伝えた。身体中から湧き上がってくる熱意を少しでもいいから発散したかったのだ。すると父が自分のことの様に喜んでくれたのだ。この事を私は生涯忘れないだろう。
私がお姉ちゃんとして過ごし始めたのもここだ。
可愛い双子の妹達が家族に加わった事で、私に構ってくれなかった事もあった。それを不満に思ったのを察したのか、パパとママは私の頭を撫でて微笑んだ。その日はパパとママにいっぱい甘え、次の日から大好きな家族が望む自分であろうとした。家族は勿論、大好きな人全てに笑顔を与えたいと、本気でそう思えた。今思えばこの時期が1番幸せだった
そしてこの頃から幸せが崩れ始めた。
パパが仕事を辞めて寝てばっかになった。
朝学校に行く時も、家に帰っても、この家の寝室に敷いてあった布団の上で寝そべっていた。友達の父親がせっせと働く中、自分の家には寝てばっか。パパが心底嫌になった。
その日は、珍しくパパとママと夕食をとった。ママは仕事を始めたばかりで、いつも夜も遅くに帰ってきていた。パパは日が沈む前に寝ていたので、その日は本当に久しぶりに3人で1つの鍋に箸を突っ込みあった。
鍋の中身が乏しくなる頃、お母さんが私に弟ができると伝えて来た。その事に舞い上がってて、私は両親の顔が曇っているのに気づかなかったんだ。
お父さんが家でニット帽をかぶり始めた。
当時の私は、アイドルのレッスンに熱中していて全く気に留めていなかった。と言うか、パパと私の間に深い溝が出来ていたのだ。
ただ、あの一瞬だけは許せなかった。
家に帰るとビール缶を10個近く積み上げ、うずくまる父の姿が目に入った。自分の妻が仕事で四苦八苦している中でだ。
何かが弾ける音がした。
パパの事大声で呼び、顔を上げたと同時に数分間に及ぶ罵倒を吐いた。
『なんでお仕事してないのっ!』
『お母さんが頑張ってるのにパパは何やってるのよっ!』
『仕事しないでこんなビール飲んで何考えてるのよっ!』
『パパなんて大っ嫌いっ!!』
次の瞬間、パパに抱きつかれた。
その一瞬、以前と比べ物にならないくらい力強く弱弱しい抱擁に動揺してしまった。
抵抗は勿論した。だが首染み渡る水っ気が、私に強い違和感と罪悪感を与えたのだ。私はこの出来事に反抗する気力を失い、パパに為すがままにされ呆けていた。
ふと視線をパパの体に移すと、信じがたい光景が目に焼き付いた。数え切れないほどの毛が散乱していたのだ。訳もわからず周りを見ると、抱きついた拍子に取れたのか、内側に髪の毛が詰まっているニット帽が落ちていた。
頃合いを見計らったかの様な妙なタイミングで、私の方を掴み自分から離して抱擁から解放させた。
パパ見つめ合う形になる。久々に見たパパの顔は、不健康に青白く以前より痩せ細っていた。
パパがどんな状態か、幼稚だった私でも理解した。本当は知りたくなかった。現実から目をそらしたい。認めたくない。今すぐ顔を枕に埋めて泣き叫びたい。
でもパパの力強い眼差しはそうはさせてくれなかった。
.....嫌だ
『
.....逃げたい。
『パパはもうダメなんだ』
......認めたくない。
『もうパパの力だけじゃあ、どんなに頑張ってもにこ達を笑顔にできない、幸せにできないんだよ』
.........戻りたい。
『だからにこ。お前に頼みたい事があるんだ。とっても辛くて大変かもしれない。でもまだお前にしか頼めないんだ。約束してくれ』
.........あの幸せな時に
『パパとサヨナラをする前には思う存分泣いてくれ。だがその後は、パパが教えたその魔法の言葉で_______
次の言葉を聞いて、
______みんなを、にこが笑顔にしてやってくれ』
涙が溢れた。
パパとサヨナラしたのもこの家だった。
そんな思い出深いこの場所で、今にこに人生の転換期が訪れているのであった。
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「.........え?....え?は?ママ今なんて言ったの?」
にこはとっても混乱している。
机を挟んだの向かい側に、さっき訳のわからないことを口にしたママと、ママの隣に黒髪で長髪の美少女が座っている。
勿論、にこの口ぶりから分かる様に、全く、全然、これッッッッぽっちも面識がない。
さっきから気になってたんだけど、この人表情どころか座ってから全く姿勢を崩さない。て言うか動かない。え、寝てる?目を開けて寝てるの?それか人形なの?にこがこんなくだらないことを考えるくらい、微動だにしない。
この女の子も問題だが、今のお母さんの方が問題ね。
「だからね、にこ。私、再婚するのっ!」
「へ、へー。そっ、そうなんだ。おめでとう?」
聞き直したところで、さっきと変わらない返事が虚しく来ただけ。いつも通りにっこにこのママである。流石にこのママ!いつでもにっこにっこにーだねっ!
って違うっ!!
落ち着いて状況を整理しよう。
ママが結婚。
相手は誰?
隣に見知らぬ少女。
ほんと誰?
考えても訳がわからないし、情報量も少ないからもう1つの問題を解決しよう。決してニコがバカだからじゃない。
「で、その子は、誰?」
「あっ、この子?紹介するわね。藍原芽衣ちゃんよ。あっ!これからは
「へー、......へっ!?」
今聞き捨てならないことを聞いてしまった様な....
まさかママって....
「.....レズビアン?」
「?.........あっ!何言ってるのよにこ、この歳になってまでレズビアンな訳ないじゃない!この子は再婚相手の子供よ貴方の妹になるんだからっ!」
あははは、流石にそうよね。レズだったらパパと結婚してない。ちなみにレズって蔑称らしい.........わ........え?
あれ?今こんな歳になってまでって言った?
....聞かなかったことにしよう。
親の性癖なんて知りたくもない
んんっとワザとらしく咳き込み、話が一向に進まない状況を見かねてか藍原芽衣こと矢澤芽衣こと芽衣ちゃんが注目を集める。
「藍原芽衣です。明日を持って、特待生として音ノ木坂女学院に転入することになりました。姉さんと1歳差ですので高等部2年生です。矢澤芽衣として、これから矢澤家の一員として精進していきたいと思っております。どうぞ末永くよろしくお願い申し上げます」
と息継ぎもせず、おおよそ必要な情報は、粗方自己紹介も兼ねて伝えてくる。深々と下げてきた頭に、自分の所属する部活の鬼教官の面影を感じた。
堅物さは断然に芽衣ちゃんの方が上ね。だって海未、最近ポンコツだもの.....
顔を上げてきたタイミングで今回はにこが自己紹介をする。
「貴方のハートににっこにっこに〜♡笑顔届ける矢澤にこニコ〜♡にこにーって呼んでラブニコッ♡」
....ふっふー!
我ながら完璧だったわね!
「よろしくにこっ!芽衣ちゃんっ」
「.....」
「にこ?」
「........」
あ、あれー?なんでさっきから冷たい視線を向けてくるの?にこ、わかんな〜い♡
「笑顔が足りないぞぉ〜?にっこにっこにーだよ?芽衣ちゃん♡」
「........恥ずかしくないんですか?(ボソ」
「え、えー芽衣ちゃん今なんか言ったぁ〜?にこわかんなぁーい♡」
「.........」
「もうっ!女の子が眉間にシワ寄せちゃダメよっ。女の子なんだから♡にこと一緒ににっこにっこにーだよ♡」
「お断りします」
「ぬぁんでよっ!!」
思わず素が出ちゃった...
「にこ、落ち着いてー」
「むふーっ!むふー...」
どうどうと言わんばかりに私を落ち着かせるママ。
....にこは馬じゃないわよママ。....ん?でも嬉しい時にスキップしてどんな場所だって鼻歌歌うし。信頼している家族にすっごく甘えるし。にこの馬系女子疑惑が浮上する。実際に未開封の伝伝伝が手に入った日に路上で喜びまくった。後者は言うまでもない。にこはママに甘々なのだ!内なるマキちゃんが『確かににこちゃんのツインテール、馬の尻尾に見えるものね。にこちゃんのそれも感情の起伏が現れるし』って余計なこと言ってる。マキちゃん可愛いかきくけこ。
....なんかすっごい時間を無駄にした気がする。
「....お義母さん、落ち着いたと思ったら姉さんが百面相しているのですが」
「ごめんなさいね芽衣ちゃん。にこ最近情緒不安定なの....」
「そうですか。心中お察しします」
「にこが参加してないところでにこを異常みたいに言わないでよっ!」
野獣の如くガオーと遠吠えをあげるにこ。
どうもはじめまして。
TeoMRです。
にこちゃんの誕生日という事で、この小説の連載を始めました。まぁ、にこちゃんがメッチャ好きで、citrusにハマってしまった作者の妄想が爆発して速攻書き上げたものです。
書き始めて数分、藍原芽衣ちゃんじゃなくてもいいんじゃね?と思ってしまったが湧き上がる妄想の中で差別化出来たのでそのままにしました。大人な皆さんは突っ込みませんよね?( ゚д゚)و グッ! 勘弁してくださいお願いしますよorz
それと重要事項です。
残り2話分溜まっています。
編集していないので恐らく誤字脱字、文法ミスのオンパレードでしょう。
なので、二カ月に1話投稿します( *˙ω˙*)و グッ!
.........
おっそとか言わないでくださいよ?
私立理系志望の受験生で、自分のレベルより高い大学を狙ってるんです。ご了承ください。
よろしければ感想、高評価をお願いします。
完結までよろしくお願いいたします。