※この作品はR-18です。

迫り来るMANABUシステムの恐怖   作:間宮卓郎

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05 不注意操車

 地下鉄を下車し、雨島拓志は駐輪場へと向かった。自分の自転車に跨がり、街に出た帰りにいつも寄るコンビニへと――いや、そこは素通りし、真っ直ぐに自宅へと漕いでゆく。

 途次(みちすがら)、拓志はずっと、頭の中でこれまでの出来事を整理していた。 

 三隈真尋がMANABUシステムを初めて使用したのはいつか?

 それは、2年と2ヵ月ほど前のことだった。

 購入者の約70パーセントがそうであるように、真尋も最初は、学力向上を目的として用いるつもりだった。

 発売元の会社社長の娘でありながら、今世紀最大と謳われるヒット商品に触ってもないというのは奇異な気がしたし、なにより個人的な興味を抑えられなかったのだ。

 両親からは、なぜかMANABUシステムを使うことを強く反対されていて、わりと高い機械だったが真尋はこっそりと現金(キャッシュ)で買って、真夜中に内緒で使用したという。

 MANABUシステムは、そもそもが睡眠学習装置という前提の商品だ。よって、それには「勉強部屋」なるアプリケーションがプリインストールされていた。

 夢想空間の部屋の中で、何時間も集中して勉強するためのアプリだ。

 他のアプリは、この部屋の拡張機能として、後付けで設置された「扉」を通ることにより利用できる仕組みだ――ったのだが、あの監禁事件以来、その扉は消えてしまっている。

 はじめは、真尋も「勉強部屋」だけを利用し、予定通り勉強するためだけに、MANABUシステムを使っていた。だが、1ヵ月を過ぎたあたりで、友人に勧められた夢想SNSのアプリにはまり、そんなお決まりのルートを辿って夢想凌辱目当ての男たちに騙され、夢想輪姦レイプされる――ところだった。

 それを、すんでのところで、ある男によって助けられる。

 南郷だった。

 両親が勝手に決めた許婚で、性格も顔もまったく好みでない男だったが、その時だけはさすがに、真尋は助けられたことに感謝し、素直に感涙した。

 泣きむせぶ真尋とそんな彼女に優しく慰めの言葉をかける南郷――夢想空間の中、ふたりは抱き締め合い、やがて口づけを交わし合った。すぐに、それは舌を絡め合う激しいディープキスへと変わり、いつの間にか、真尋は胸元をはだけられ、乳首を吸われていた。

 真尋は、そんな大胆すぎる責めを加えてくる南郷の頭を両手で抱き、彼の行為に迎合することになると承知で、その後頭部を指先で撫でて可愛がり、右の乳首責めに飽きると左にスイッチさせるなどした。

 辛くて涙が止まらなくなる、激しい興奮と身体の熱さ……気死寸前の息苦しさ。

 その最中で、真尋はかろうじて、異変を感じた、なんとか感じることができた。気持ちに、歯止めがかからなくなっていることに。

 感謝の気持ちが親しみに、そして、熱情へ、さらには獣のように貪り狂う情欲へ――

 エスカレート、止められない。

 身の危険を察した。真尋は助かってなどいなかった。しかも、これ以上にない危機が迫ってきているというのに、意識は欲情に煙り抵抗すら出来ないという絶望。

 真尋は、気づかないうちに、輪姦されかけた夢想街の裏通りの一角から、ログハウスのような木組みの家屋の一室に移動させられていた。

 ふたりはベッドの上で全裸だった。そこで真尋は南郷のすべてを求め、そして彼女のすべてを彼に与えた。

 南郷は真尋の全身を舐め回した。頭部から首筋、乳房、背筋、臍、脇腹ときて、やがて真尋に股間を大きく開くよう命じ、女性器を丹念に舐め啜った。

 良い具合に濡れそぼると、南郷は彼女の膣内に挿(はい)り込んだ。

 夢想空間内とはいえ、それは真尋にとって初めての体験、処女を失うセックス――ただし、血も出なければ、痛くもなかった。

 その頃になると、南郷は様々なことを打ち明けはじめるようになった。

「あの輪姦レイパーたちは、僕が雇ったんだよ」

「そもそも、君にあのSNSアプリを勧めたあの娘だって、僕の手駒の1つなのさ」

「君はこれから徹底的に躾けることにするよ。リアルの方で僕が、君の扱いに困らないようにね」

 真尋は、レイプ地獄の脅威を回避してなどなかったのだ。むしろ、さらに巧妙悪質的な罠に陥り、凌辱の限りを尽くされる羽目になってしまっていた。

 MANABUシステムの開発者である南郷は、この機械を開発する当初から、すでに自分を嫌う婚約者である真尋を隷従させる目論見を抱いていた。

 そして、どんな手段で真尋に装着させようかと思案していたが、幸いにも真尋自身が密かに購入し、使用していることを知った。それで、すでに堕として隷従させた真尋の友人を使ってSNSアプリを使うよう誘導し、まんまと謀略に成功したのだ。

 真尋は、そんな話をぬけぬけと聞かされても、「頼もしい」「そこまでしてくれるなんて、女冥利に尽きる」としか思えず、さらなる激しい欲望をもって南郷を求め、甘え、誘うことに夢中になるしかなかった。

 それが、MANABUシステムの機能なのだ。真尋は、南郷との性行為に没頭するよう設定をいじられ、為す術もなく躾けられてゆくしかない状態だった。

「生まれてはじめてエッチしたいと思った男はどんな奴だった?」

「オナニーは何日ごとにしてる?」

「赤ちゃんを孕めるエッチと、孕めないエッチ、どっちがいい?」

 真尋の膣内に射精するとき、南郷はこういったいやらしい質問をしてくるようになった。性器を接合させたまま、真尋が答えるまで動かそうともしない。

「んと……父親、かな?」

「…………てか、毎日……?」

「孕めるのが、いい」

 すると、真尋の口がほとんど自動的にそんな答えを都度に返す。真実ではない、だが「南郷が望みそうな」答え。

 それを聞くと、南郷は決まって――

「本当はどうなんだい?」

 と再び訊いてきた。

「分からない……とにかく、運命を感じた人としたいって、なんとなく……です」

「……3日に1度くらい……です。たぶん……」

「…………知らない。そんなこと、訊かれても……」

 真尋が答えなおすと、そこで南郷は腰を振りたくり、婚約者の女子高生に、たっぷりと中出しした。疲れを知らないのか、夢の中のためか、射精しても彼の肉棒はすぐに回復し、真尋の膣内で硬く、太く、熱くなる。

 様々な体位で真尋は犯され続けた。

 何十時間も、いや、連続で何日も……何日も……時間の経過は体感頼みで、すぐに分からなくなってしまった。 

 その部屋に窓は1つあり、常に開いていたが、見える光景はいつも夜で真っ暗な中、遠くの火山が噴火していて溶岩が噴き出しているという非現実的なものだった。

 質問に答えた内容は、その間の行為の一部始終とともにすべて記録されていると知らされても、真尋自身の肉欲も冷めず、南郷の、男としての欲望を受け止めていった。

 ときには、「孕ませて! 早く!」などと叫んでしまうくらいに興奮することもあった。

 もちろん、現実での真尋はその時、自室のベッドでひとりで寝ていたのだから妊娠はありえない。しかし、そのときの真尋は、南郷の子を自分の子宮の中に孕ませることしか考えていなかった。

 それだけを渇望し、南郷に甘えて悦ばされ、また悦ばせた。淫猥なテクニックを仕込まれればすぐに覚え、用い、心の底から自分のすべてが南郷に凌辱され尽くされることを固く信じ、願っていた……

 ――以上が、拓志が真尋から聞かされた、ふたりが夢想空間の中で出会う直前の彼女が置かれた状況だった。

 カウンセリングも兼ねて、夜のベッドの上などで拓志が訊くと、真尋は実に詳細に経緯を語るのだった。

 抗う気持ちすら抱くことが許されず、ただ凌辱者に体を与え、隷属の悦びを植え付けられてゆく――夢を見続けて眠っていた真尋の1年間。そんな日々から前触れもなく、拓志のハッキングによって彼女は救われることになる。

 真尋はそのとき、目の前に突然顕れた拓志にひどく狼狽し、混乱した。

「な、何!? 誰、あの人はどこにいったの?」

 拓志から与えられた毛布で身を隠しながら、そんなことを何度も喚く真尋を、彼は宥めるように説明した。

「南郷はいない。今は、リアルの方で外出……出勤している」

 怯えた様子を見せる真尋と目を合わせ、ゆっくりと穏やかな声で言った。

「……私、ずっと、あの…男に、南郷に……だって、今の今まで、たしかにいたのに、いきなり、ぱっと消えて」

 虚ろな声で、たどたどしく呟くように、真尋が言葉を垂れ流してゆく。その病み憑かれたかに見える様子に、拓志は痛々しさを感じた。

「南郷は基本、君をスリープモードにセットしているんだ」

 拓志は、彼がそこに訪れたとき、真尋がベッドの上で完全に静止した状態だったことをまず説明した。夢想空間内では人の思考を凍結させる方法があり、それはスリープモードと呼ばれていた。

 スリープモードにされた人間は、まるで時間が停止したかのように動かなくなり、またその時、自分が止まっていることに気づくこともない。

 南郷は真尋を夢中監禁する際、このスリープモードを彼女に設定し、彼女を弄び愉しむときにだけそれを解除していたのだ。

 真尋は南郷とのセックスに集中するようにも設定されていたため、スリープモードのオン・オフによって生じていたはずの僅かな状況変化――一瞬で南郷の位置が変わったりするなど――にも気づかなかった。

「MANABUシステムをうまく使えば、そういうことも可能なんだ。俺がさっき、その状態を無効にしたから、もう大丈夫だよ」

「そんな……」

 拓志が一通り説明し終わると、真尋は改めて怒りを感じたようだった。自分が、まるでゲーム機か何かのように扱われていたことに。

 だが、真尋が南郷に囚われてから、すでに1年近くが経過している事実を知ると彼女は愕然となり、深く悲嘆に暮れてしまった。

 南郷が脅迫か享楽のために記録していたと思われる、真尋の恥辱的な姿を収めた動画ファイルをすべて完全消去したと伝えると、それで少しは安心できたのか、やっと落ち着いてきた。

「さあ、もうここを出よう。あいつが戻ってくるうちに。いや、会社のPCからこの個人サーバーにアクセスしてくる可能性もあるし、急がないと」

 拓志はモニターとキーボードを出現させると、それを操作し、ふたりのMANABUシステムがネットを介してアクセスしている先のサーバーを、南郷所有のものから拓志所有のものに変更する処理をはじめた。

「!? み、三隈さん……」

 その背中に、真尋が抱きつく。

「はあ……はぁ……んん……はぁは、あ……ぁ……」

 息荒く、強く抱き締めてくる……毛布も放り投げ、一糸纏わぬ姿で。その両手は、拓志の上着やシャツの裾をたくし上げ、衣服の内側へと忍び入ってきた。

「ねえ、私、もしかして、まだレイプモードにされてる?」

 真尋がかすれ声で拓志に訊く。レイプモードとは、俗に夢想空間内の女を、レイパーが積極的にセックスに応じるように設定してしまうことを指す、隠語(スラング)。

「いや、だから、そういうのは……」

 すでに解除してるから、と言いかけた拓志の言葉は、そこで途切れた。真尋の手が、彼の胸元や脇腹を直に撫ではじめたのだ。

「はぁ、はぁ……私のこと、知ってるの?」

「……南郷霞杦は、長い間、俺の憧れで、目標だった。だから、その婚約者の君のことも――三隈さん」

 真尋の手に、穿いているジーンズのファスナーを下げられ、拓志は硬い声を出した。

「……もう駄目……ぅあ……嫌…かもしれないけど……少しだけ、つき合って」

 真尋の手が、穿いているトランクス越しに拓志の熱(いき)り勃つものの、硬さや大きさを確かめてゆく。

「時間が無いんだ!」

 悲鳴のような声。実際、その時の拓志に心の余裕はなかった。そんな彼を、真尋はベッドに押し倒した。

「ごめんなさい……これだけ、させて」

 そう言って、真尋はトランクスの中へ手を入れ、もう片方の手で拓志の頭を掬い持ち、彼の下唇を軽く噛んだ。それから、欲情で上気しトロンとなった自分の顔をしっかり見せつけてから激しく唇を奪い、舌を搦めていった。すでに、彼の陰茎をトランクスから引き出し、しごき始めている。

 勿論、真尋はそれをしゃぶった――キスを充分に満喫すると、そのまま顔を滑らせて拓志の胸に頰を擦りつけ、臍を舐めてから、指先で愉しんでいた彼の熱く怒張したモノの先端を舌で何度も刺激し、やがて深々と口に含んだ。

「うっ…………!」

 拓志は思わず呻いた。その時の、焦燥の中の驚愕と歓喜を、今も彼は鮮明に思い出すことができる。

 淫靡な心を持つ蛇に、襲われているかのようだった。湿った、熱い、細い、小さな生き物が、拓志の股間で勃起したところを、その中でも特に弱い部分をすぐに探り当て、何度も何度も執拗に絡みつき、擦りつけてくる。

 南郷によって躾けられた技術の限りを、真尋は拓志に施してきた。だが、彼女の口と舌技によって、拓志が達することはなかった。

 彼の方から真尋が咥え込む肉棒を強引に引き抜き、彼女の性器に挿し直したからだった。

「三隈、さん、俺…南郷の、婚約者の、貴女のことも……はぁ、はぁ……すごく、あ、憧れてて――」

 などと、言い訳のように口にしながら、拓志は真尋を突きまくった。

 堪えることなどできなかった。拓志は文字通り、夢中で中出しした。南郷と同じくらい憧れていた、真尋の膣内に――

 などと回想しているうちに、彼の乗る自転車は自宅の門の前に着いていた。




次回、「06 婚約者」
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