※この作品はR-18です。

恋人たちに足して一   作:木桜 春雨

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「やっぱり鍋は皆で食べるに限るよね」

 雪生の言葉に、そうだねえっと信子は頷きながら、もう少しと呟いた。

 「大きい鍋が欲しいわね、三人だとちょっと足りないでしょ、あとカセット

コンロでなくてIHのコンロにして、土鍋でご飯を炊くと美味しいかも」

 「おっ、いいな、それ」

 頷いた洋司だが、ほんの一瞬、いいんだろうかという迷い顔になったのも無

理はない。

 「何、もしかして、遠慮してんの、あっ、新しい部屋、見つかったとか」

 二人の男が無言になったのも無理はない、だが、言い出した当人はあのねえ

と、あっけらかんとした調子で言葉を続けた。

 「二人とも、普通の人間はとっくに、出て行ってるんじゃない、まあいい

わ、それより、雪生君」

 信子は鞄の中から一冊の雑誌を取り出し、大きくページを開いた、それを見

た雪生は、あっと小さな声をあげた。

 「買ったの、信子さん」

 「ファッション雑誌なんて久しぶりに見たけど、いや、かっこよく写ってる

じゃない、ねえ、洋司、あんたが羨ましいわ」

 褒められて悪い気のする人間はいない、二人は顔を見合わせて照れた笑いを

浮かべた。

 「ところで、明日は日曜だけど二人とも休みでしょ、よかったら、モーニン

グを食べに行かない」

 

 翌朝、三人が出かけたのは電車で少し離れた場所にある店だった。

 白を基調とした、外国をイメージしたような店構えに男、二人は少し緊張し

た顔つきになった、こういう店だと女性客が多いのではないだろうかと。

 夜の居酒屋、チェーン店なら男二人でも別に不思議はないし、変な目で見ら

れることはない。

 だが、洒落た感じの喫茶や甘味処だと女性客の視線が気になるのだ。

 「サンドウィッチやパンケーキが食べられるのよ」

 「もしかして人気のある店なの」

 不思議そうに雪生が尋ねた、一時の流行かと思われたが、雑誌やネット、イ

ンスタ、ブログでもパンケーキなどは注目されているからだ。

 「最近、できた店みたいで、あたし、食べたことないのよ、パンケーキは

ね、でも、ホットケーキは食べてたことあるわよ」

 「違うのか、そんなに、パンケーキとホット、いや」

 洋司の言葉に信子は笑った。

 「一人より皆で食べた方が美味しいに決まってるじゃない、それに男二人と

一緒になんて、ちょっといいでしょ」

 「はあ、そんなもんか」

 自分と違って雪生と二人ならカップルに見えて、いい気分かもしれないが、

いかつい風貌の男が一緒だと色ものではないだろうか。

 

 店の中に入ると数人の女性客がいた、そしてカウンターの奥から顔を出した

のは一人の男だ。

 

 三人は窓際の席に腰掛けた。

 信子はサンドイッチのセット、男二人はふわふわ、天使のパンケーキという

ネーミングのクリームとフルーツがたっぷりとのったものを注文した。

 

 「初めてだけど旨い、こんなにふわふわしてるなんて」

 ナイフとフォークで切り分けようとした洋司は感心というより、驚いた顔で

口に運んだ。

 「本当だ、俺も初めてだよ」

 雪生も頷きながら口に運ぶとサンドウィッチを食べている信子に一口食べて

みると声をかけた。

 「はい、口、開けて」

 「んっ、本当だ、ふわふわだわ」

 「おいしいね、当たりだよ、このパンケーキ」

 「じゃ、二週間後に食べに来る、三人で」

 「メニューが変わるみたいだな」

 そう言って洋司はテーブルの上のメニューを見た。

 

 デザートのコーヒーと紅茶が運ばれてきたとき、あれっと、雪生が目の前の

カップを見た。

 「信子さんの紅茶、それクリームが浮いてるの」

 すると運んで来た男性が、女性にはサービスでクリーム・オ・レにできるん

ですと説明した。

 「ふーん、いいね」

 頷く雪生だったが、隣の洋司はチラリと視線をカウンターの奥へと向けた、

そして、いつもとは少し違う口調と声音で、こう言った。

 

 「信子、おまえ、ここ、よく来るのか」

 

 

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