※この作品はR-18です。

翠色の魔術師 A√   作:レジスタ_001

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大分遅れた上に、変なクオリティになってると思います……


第15話 アツサにご注意

見慣れた視界に気怠さも無く、目覚めよく起きれたんだなと、無意識に感じた。

 

上下共にオレンジ色がメインカラーの寝間着で就寝していたアタシは、着崩れが無いか確認する。

 

「……よし」

 

変にズレてたりはしてなかったけれど、ベッドから降りて一応服を正しておく。

 

そしたら、自室にある己の机に向かい、昨夜就寝前に置いていた髪留め用のゴムを取って、いつもの後ろで二つ結う髪型にしていく。

 

「いいとこ、見せなきゃ」

 

いつもの聖祥の白い制服ではなく、この日だけは体育着登校とされているのが恒例なようで、アタシもそれに倣い自分のを着服する。勿論、上着は着るけれど。

 

――コンコン

 

「はーい、いいわよー」

 

自室の扉を軽く叩くノック音に向かってそう答えて、入室してきた者が鮫島であることを目視で確認する。

 

「お嬢様、朝食の準備ができました」

 

「ありがとう、わかったわ」

 

彼に礼を伝えて、朝御飯が用意されている食卓へと向かった。

 

自分の中に秘める「熱」に気づかずに……。

 

 

 

◇◆『アツサにご注意』◆◇

 

 

 

月曜日のクラスごとの練習を乗り超え体育祭当日となった本日。当然だが、この昨日に全体の予行みたいな形で学年での練習も行い、練習量的には疎らだがそこそこ出来たかと思う。

 

「アキくん! 別チームだけど、お互い頑張ろうね!」

 

「おう、そりゃあね」

 

今日はアリサとすずかと共に登校してきた訳ではなく、俺となのはという二人での組み合わせだ。

 

久々の彼女との家以外での二人きりであるが、彼女からの行動はアリサやすずかがいようといなかろうと、変わらないので何か特殊な事が起こったとかはない。

……周囲から見たら、余程特殊な状況にあったことは間違いないだろうが。

 

それで、普段クラスが違うこともあって見慣れない彼女の体操着は少し新鮮味を感じつつある。

 

バス内の彼女の密着行為でこの間のアリサを思い出してしまったのは、彼女にもアリサにも少し申し訳なさを感じてしまったが。

 

「あ、おはようアキラ」

 

「おう、湧屋」

 

自分のクラスに入るために扉に手を掛けようとしたところで、丁度それが開くと共に彼が現れた。

 

「どしたん?」

 

「いや、お手洗いにね」

 

「あぁ、すまんね」

 

「いやいや、構わないさ。では、あとで」

 

「おう」

 

彼と挨拶程度の会話をし便所に向かっていく足音を聞き届けながら、俺は教室へと入室していく。

 

流石の聖祥という事もあってか、昨年同様に喧騒が広がっている事はない。だがもう直、開始されるということもあって、興奮やら活力が向上していて静寂という言葉が似合う程でもない。

 

そんな雰囲気を纏わせた教室にある自分の席へと移動していき、荷物をそこに降ろす。

 

「おはよう、アキラ」

 

「おう、おはようアリサ」

 

昨日まで俺的に過度なまでに張り切っていた彼女は、当日となった今日では更に目つきは燦然とし、これから行われる競技に向けての意気は天を衝く勢いのように感じられる。

 

「大分張り切ってる感じだね」

 

「そりゃそうよ、頑張って来たんだもの」

 

「そうさな。でも、今日も暑いみたいだし、そこは気をつけないと」

 

「……そうね」

 

彼女はそう応答しながら、己の胸に自分の右手を添えて何かを感じている様子だった。

 

その様子に少し不思議に思いつつも、彼女と会話しながら自席に座り、黒板の上にある時計を一瞬見やる。

 

示されている時刻からして、担任がそろそろ入ってくる頃合いだろうか。

 

席から離れて会話していた者達が各々の自席へと戻っていく最中、ガララっと扉が開く音がし、担任が中へと入ってきた。

 

彼女が教壇の場所に立ち、いつもの挨拶、去年と同じような説明を口にして、彼女の校庭への出発の合図から俺達は列になって向かった。

 

 

 

――――

 

 

 

予想というか登校中にも今日の天候による熱気は肌に直接痛感していたから、どのくらいの熱さなのかは分かっていたのだが……。

 

「知ってても、あちぃもんはあつい……」

 

「そうだね。僕なんか、もう動いただけでへバりそうだよ……」

 

「まだ、始まってすらいないんだが」

 

湧屋と並びながら校庭で背順として列になっている俺達。毎年恒例、何処の小中学校でもあるような朝礼的な朝の挨拶をやるのだ。これに対しては、年々変わらなかったのか……。

 

段の上に立っていく校長的存在が視界に入ると、直ぐ様ざわつきは嘘みたいに消滅する。

 

そして彼のお言葉、体育教師による注意事項、選手宣誓的なモノなどなど……。

それらが終了して、俺ら生徒御一行は待機席へと移動していく。

 

聖祥の校庭は地面が砂利や砂のような形状ではなく、塗装された小石が敷き詰められたものである。

 

そのため、しゃがんだ時や腰を下ろした時に、臀部に汚れがつくことはない。

 

「最初なんだっけ」

 

「5,6年生方の徒競走じゃなかったかい?」

 

「あー、そだっけか」

 

湧屋と最初に行われる種目について会話しながら待機していくと、彼の言葉通り5,6年の方々が入場の場所に待機しているのが目に見えた。

 

その列は、校長や放送を行う委員が着席している本部の隣にある吹奏楽隊的なのが演奏すると同時に動き出した。

 

去年もこんなふうな入退場であったが、随分豪華なものを用意したものだと思っている。いやまぁ、金銭面的とかそういうメンツのいるような場所だからだと思うんすけど……。

 

その吹奏楽を行っているメンバーは、そこそこ有名所のものらしく、湧屋曰くスケジュール詰め詰めなんだとか。

 

俺的には至極無関係であり、そもそも音楽自体に深い興味を持ったことはないため、知識は浅薄だ。

 

「あの人、去年そこそこ早い位置にいたよね」

 

「そうなのかい? よく覚えてるね」

 

「結構目立ってた気がするんだけど……」

 

「そう言われてみれば……」

 

彼の忘れ気味っぽい感じに、貴族的組の業界の自分のイメージを伝える。

 

「目立ってたり注目浴びてる人は、注意しておいた方が良いんじゃないの?」

 

「名前ぐらいは知っておいてもいいかもしれないけど、そこまで注意する必要はないよ」

 

「なるほど」

 

「ただ、いつもの性格とか行動が逸脱してる場合とかだと注意は必要だけどね」

 

「そこは、庶民感覚の俺も同じだわな」

 

確かに校内でのいつもの行動が“異常”と取れるようなものだったりするのなら、俺も注視するし警戒する。

 

迅みたいに、ほぼ無言な奴の場合は……スルーかな。本来的にはあんな感じの人って、そんなに行動起こさないと思うし、あいつが特殊だっただけだわ。

 

まぁ、前世の親友の話はさておき、話を戻すとする。

 

「じゃ、あの人が何かしらババっとやらかしたら注意ってことで?」

 

「うん、そういうことだね」

 

「おけおけ。にしても……B組辺りつよかねぇかね」

 

「確かに、1位のとこ見ると殆どそうだもんね」

 

競争が終わった者達は1,2,3の順位ごとの3列で並んでおり、その1位が居座れる列にはB組を示す青のハチマキがよく見える。

 

「これは、頑張らないきませんな」

 

「ふふ、そうだね」

 

彼の含み笑いを一瞥して、俺は次の選手の動きを見続けた。

 

 

 

――――

 

 

 

天候が荒れることも大沙汰になる程の怪我人がことも無く順調に、競技は進んでいき、我が学年である2年のリレー戦が開始しようとしていた。

 

「さぁ、勝つわよ!」

 

「「「おーーっ!!」」」

 

アリサの掛け声で集まっていた俺達はそう声を出し、士気を上げていく。

 

先日から先導して頑張っていた彼女は、うちのクラスでは割と支持率が高く人気も高い。

男子も女子も彼女のことを“親分”的存在に見ている子は多数で、他クラスには無いうちのクラスの特徴の一つでもある。

湧屋の方も、最初の頃は芳しく思ってはいなかったようだが、今年の色々と頑張っている姿を見て、その思いは幾分変わっているようである。

 

俺としては一人の友人という立場で若干贔屓目が含まれるかもしれないが、彼女の働きは素晴らしいものだったと誇れる。

 

ただ彼女が前を向きすぎて後を視界に入れてないように感じるのはどこか複雑な気分だ。

 

そう思考に入っている間に他クラスも我がクラスの行動に惹かれ、意気込みによる掛け声が起こっている。

 

色々心の準備を終えた我が学年一行は、早速第一走者がトラックに並び始める。

 

「位置について! よーい、ドン!」

 

徒競走における決まり文句を合図に試合は開始された。

 

第一走者は自分達のも含めどのクラスも早めな人を用意しているようだった。

 

よくある放送の発言的な内容でしか示せない内容ではあるが、事実その通り極端に差がある訳ではなく、並びそうな位ではある。

 

次の者にバトンが渡る頃には当然ながら内側に移動している。

 

その後は、流石に個々の能力の差もあって差は広がったり縮まったりと変化はあったが、順位的に言うと我々のクラスはなのはやすずかのいるクラスと1位争いをしていた。

 

我々のクラスも他クラスも、昨年のすずかの馬力に思い知らされているため、彼女と同じ順にいる者は相応なのであろうと推測している。その位置の自分のクラスはというと俺であり、そこそこ速度に関しては前世ほどの本調子ではない(そもそも未だアレが使えない)にしろ、彼女より速いと思っている。

 

それが誠なのかどうか、これを決定するのがこの試合で勝負だ。まぁ、勝っても負けても速度上げやら何やらに努めるのは変わりはないのだが。

 

「すずか、今年は負けないよ」

 

「うん、私も」

 

前の走者がほぼ同時に俺たち二人の元にやって来る。

彼らの手にしたバトンはクラスごとで色は異なるものであるが、走り順が終わった者たちの懸命な頑張りが引き継がれていく棒と捉えると、同じようなものであるし活力が湧出してきた気がした。

 

そして彼らから渡されるバトン(貢献の証)を受け取り、駆け出す。

 

駆け始めはほぼ同時であった。

だが、やはりすずかの身体能力は侮れるものでは相当なかった。

風の力は扱ってはいないが、男であることとこれまで恭兄や士郎さんとの鍛錬で培ってきた能力はそれなりだと自負をし自信があっても、やっとの勢い。

 

観客側からすれば、俺たちの速度が早いせいか、何かを表したり口にしたり、そんな暇や余裕も無く次の走者へとバトンを渡すことになる。

 

なのはは既に走り終わった後でそちらの列に並んでいて、すずかの渡す相手は別の者である。

 

対して俺の渡す相手は、今日に向けて成果を上げるために練習に励み、クラス全体の士気を上げたり、現在も応援を一切怠らなかったりと、頑張ってきた者だ。

 

「アリサッ!――」

 

「――はい!」

 

俺の呼ぶ声に反応して、練習を生かしたタイミングの良いバントのキャッチに成功する。

己の腕を降ろし終える間にすずかの渡した次の走者も駆け出したが、アリサの方が幾分素早く駆け抜けていったように思えた。

 

彼女達がアンカーというわけでは無いけれど、後半戦というのは確かではある。

このままアリサがぶっちぎって次の走者に渡し、上手くいけば……勝てるッ。

 

「がんばれーーっ!」

 

「いいよっ! いいよーーっ!」

 

自分達のクラスも、他クラスも、皆同様に走者を応援し結果を見届けた。

 

 

 

   ――――

 

 

 

リレー戦の結果は――――優勝に収めた。

最終走者となった者達は、どのクラスも速いものが選出されたためそこそこ速かったが、俺とすずかの時に3位以降と2位を大きく差を開けており、1,2位争いと3〜ケツ争いとに別れていた。

 

体育祭としては、もう直前半部分が終わるという頃合いだ。

 

現在行われている競技は選択種目の一つで、アリサがリレー線から続けて出場している。

 

勿論、彼女たち以外にも出場している生徒はいるし、こちらのクラスからだって彼女を含めて5人ほどだ。

 

この種目で午前の部が終了し、昼休憩に入るというのがスケジュールだ。

 

次が昼休憩であるとしても、彼女は連続出場に近いほどの運動量をしていて、少し心配にはなる。

 

そう思慮している内に列が並び終わり、第一走目である彼女も位置についていた。

例の号令で、位置についた選手たちが姿勢を変えていく。

 

――パンッ!

 

そして雷管が発砲されると同時に選手たちは動き出した。

 

この競技は100m走だ。短距離の部類に入る種目で、小学生としては丁度いい長さの距離と感じるであろう。

 

この校庭のトラックが一周で約100mと丁度一周分走ればいいコースとなっている。

 

ちなみに、100m走競技は最初の方にもあったが、それは上の学年の人たちが行うものであった。

 

自分の身内環境からか彼等が良いスピードであったとは中々思えなかったが、絶賛されてる中でそれを言うのは雰囲気ブチ壊しになりかねなかったのでやめておいた。

 

さて、そんなこんな思考している内に第一走者のアリサを含む彼等は半分を切り、後少しである。

 

地面を蹴って前へと突き進み、ゴールの白い線へと猛進する姿に観客席の応援の声が強まる。

 

そして、そのゴールラインを踏み抜いた一番手は、アリサであった。

 

 

 

第二走者以降の流れになり、多少の凹凸はあったものの、この種目も俺のクラスの成績は良好といえる形で終えただろう。

 

校庭に見る壇上に立った担当であろう生徒が退場の指示を出し、順位に並列した彼等がまとまって動いていく。

 

別に、退場云々で何があるという訳ではないがアリサの貢献さに誇りを感じていた俺は、彼女がこちらに戻ってくるのを見守っていた。

 

「お疲れ」

 

「うん、ありがと。アキ――」

 

そう、俺の名を呼び終えないまま彼女は突如として体勢を崩した。

それは意識的に行ったものとは、到底判断できないもので。

 

「お、おい!」

 

「あ、あれ……だ、大丈夫。大丈夫だから」

 

「んなわけ……っ」

 

大丈夫そうとは絶対に思えるはずがない状態で、周囲にいた他の生徒も流れるように保険医を呼びに行き、俺は彼女を抱えた。

 

「あ、アリサちゃん!?」

 

「大丈夫なの!?」

 

「よくない、だから今から保健室直行だ」

 

俺はこちらを見て声をかけたすずかとなのはにそう返答しつつ、彼女を半ば強引的に保健室へと“お姫様だっこ”で直行した。

 

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