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第5話 御偉いさんも通う学校
「なぜ、なぜだ……どうしてっ!?」
残り僅かで満月に成ろうとしている白く淡い輝きの下で、それに照らされた白銀の髪を持つ少年が強く嘆いていた。
彼の声には悔しさが相当帯びており、握りしめている拳には爪が手の甲へと食い込んでいた。
この場所は山奥という言葉が当てはまるほど樹木が周囲に立ち並んでいるが、彼のいるこの空間だけは僅かに少女を乗せた石壇と共に空いていた。
「……良質で、強力な、魔力を宿した魂じゃ……なかったのか?」
彼は目を瞑り、熟考に浸る。
――あの家の血縁の者は「この術」に適する力があるはずだ。
――なら何故、アイツには無かったのか……。
「いや、もう拘ってられない」
――俺の命日まで残り6日。そして満月まで残り5日。
「少なくても、どんなにちっぽけでも」
彼は石の台座に仰向けで寝かされ、両手を胸の前に置かれている少女を見やった。
「必ず、生き返らせてみせる。絶対にだ」
同じ髪色で同じ肌色を持ち、寝息も立てずに眠っている彼女に彼は声をかけ、その場を立ち去ろうと振り返る。
この森から去る際に、近くに置いていたらしい銀の棒を拾い上げた。
「すまないが……また、頼むぞ」
「Yes,sir」
彼の声に美しく低い機械音声のこの棒は、彼がコレを掲げると白く輝き出す。
そしてそれは――
「先ずは、近場に見つけたアレからだ」
彼の身長を優に超えた白銀の大剣となって発現した――
◇◆『御偉いさんも通う学校』◆◇
卒園を迎えた同年の4月に入った。桜は大分散り始めていて、花見をしている人達も後1週間少しで見えなくなるだろう。
この俺も今の家族皆でピクニックという名の花見をつい3日前位に行っている。
まぁ花見の事はこのぐらいにしておいて、俺となのはがこれから通うことになる小学校について昨日士郎さんから話をすると聞いたが、翠屋の方がハードで俺となのはが先に寝入ってしまったからこの件については今日に回った。
「昨日はお疲れ様、二人共」
「うん、まさか夕方越えるとは予想しなかったよ」
「昨日は近くのスポーツ大会が結構あったからな〜」
「あっ、だからお姉ちゃんが応援に出掛けるとか言ってたんだね」
「なるほどね」
俺は詳しく知らなかったが、ここの地区大会が幾つかあったらしく、それの打ち上げ的な形で翠屋を利用しにお客さん方が殺到したようだ。
「何の大会だったのかな?」
「確か……野球とかだったかな?」
ここの付近で野球を出来るほどのスペースは無いから、バスで数駅先の所にあるのだろう。
と、そう言えばまだバスを使っての遠い移動はそんなにしていない気がする。
「やきゅーとか良いからさ、私達のいくとこってどこなの?」
「あー、すまんすまん。えっと、家の近くのバスから移動した先にある小学校だ」
「あれ、そこって……」
「あぁ、大学っていう所までずーっと、一緒のとこだな」
「じゃあ、アキくんとずっと一緒だねっ!」
「お、おう」
そうとも言えるが、その学校に通っていそうな人と一度対話したことがある気がする。
確か、その人の話的に結構なエリート学校っぽいらしい。んでその人の服装から制服制度の学校だったかと思う。
「制服制度のあるとこ……だっけ?」
「お、そうだ。知ってるのか?」
「いや、以前翠屋のお客さんと会話したときにそこの人みたいな人がいて」
「なるほどな」
「制服って?」
「制服っていうのは、その学校が決めたお洋服のことだよ」
よく分かっていないなのはに、士郎さんがそう説明した。
この後も、その学校について説明されある程度は認識できた。
俺達が登校するようになる学校は「私立聖祥大学付属小学校」という名で、この名から先ほど士郎さんから説明されたとおり、大学までエスカレーター式に一直線なので確かに「一緒」という認識なのは間違ってないかもしれない。そしてこの学校、結構なレベルらしい。
というか、そう感じた。
理由は、説明された後士郎さんに車で見学という形で行ったからである。
――――
時刻は夕方頃で多くの学生が下校時間となっている頃合だ。今頃、桃子さんと恭兄、美由希さんが翠屋で来店してくる学生のお客さんや御持ち帰りを頼むお客さんなどの対応をしている所であろう。
そんで俺達は、士郎さんの運転する車に乗車して聖祥付近へとやってきていた。
「おぉ~~。でかいねぇ~~」
「大学付属ということもあるからかな、大分広いな」
「あぁ、ここは一応俺の知り合いの子も通うらしいから、もし会えたら父さん的には仲良くなってもらいたいな」
士郎さんがそう希望を俺達に伝えつつ、近場の駐車場に車を停め俺達を降ろした。
「知り合いって?」
「以前の仕事で知り合った仲でさ、今は……そんなに連絡してないけど、元気にはしてると思うよ」
「あね」
「あ、今日は中までは入らないから。中を見回るのは明日とかでどうかな?」
「いいと思うよ」
「なのははアキくんに同じで!」
「じゃ、そういう事で」
士郎さんを先頭に俺はなのはに右腕を絡められつつ、この聖祥の周囲を散歩のような気分で歩いていく。
下校をしている学生達が多く見え、校庭の方からは部活動を努める者達の声が聞えてくる。
なのはは校庭から聞える声に反応したようでそちらを見ているが、対して俺は校門を抜けて下校している学生達を観察していた。
どの学生も白のベースカラーに黒い線が入り、胸元に赤いリボンを結んでいる制服を着服している。
男女割合は女子生徒の方が多いのか、それとも自分の視界に入っていないだけかは分からないが現状女子生徒の方が多いように見える。
そして、日本人と思われる黒髪または茶髪の娘達もいるがブロンド髪の娘も見えた。
んで、どの娘も制服を着崩している者はおらずしっかりとしている雰囲気が見られる。落ち着きのある子と活発気味の子、もしくはその中間辺りか。これは性格によって人様々なところがあって色々見られたが。
「……ん?」
少し驚いたことを発見した。
「あれ、自家用……?」
「あぁ、そうだよ。この学校は結構なお金持ちの人達も通ってるらしいから……」
「おえらいさん?」
「そうとも言えるけど……同年齢なんだし、そんなに気負わなくていいと思うよ」
自分の独り言のような疑問に士郎さんがそう答え、続けてなのはの問いにも答えた。
彼の発言から金持ちの子……大企業の娘さんとかその辺りを予測するが、そんくらいのレベルの子がいるらしい。
立場の違いがあるからって、関係を隔てるような事はする必要もない事は士郎さんも言っているし、自分でもそう感じてもいるので問題はない。まぁ、当人がそうだと言わなければ誰も分からないから、その時点で無問題だと思うけど。
そう思案した後、再度車で帰宅する生徒を見やる。
……あの人は、明らか金持ち娘だな。うん。
車のサイズがおかしい。というか、あの黒くて大分高そうな車両は前世で貴族とかそこらのヤツが使ってるのを見たことあるし、実際乗ったことあるし。
なんか話題にしてたけど、というかしてたからこそか。直ぐだわ、直ぐ。
「あ、でも一人とか二人とかじゃないんだね~」
――ファッ!?
無意識に脳がそう反応し口にまで出さないように何とか耐え、士郎さんの方にゆっくりと顔を向ける。
「……言ったろ?」
「う、うん。で、もしかしてこの学校……めっさレベル高いすかね?」
「…………まぁまぁかな」
「……」
なのはは「おーすごーい」と一人はしゃいでいて、こちらの小声会話に気付いていない。そして、その謎の空間はなんですかね、士郎さん。
「まぁ、後で言おうと思ってたんだけど」
「うん」
「塾行きであるのは、確定」
「あー、なるほど」
「塾って……?」
「あ、あぁ。それは――」
そのなのはの質問に士郎さんが答えている間、ちょっとした放心気分に浸った。
大分お高いレベルの学校であるらしい、この聖祥。というか「付属」ってついてる所って結構ハードル高いようなイメージしかない。幸いなのは入試が無かったことか。
ここの入試制度は中学以降の外部入学者にはあるようだったので、初っ端から入試があると言う感じに遭遇しなくて幸運であった。ちなみに、一年後には導入されたらしい。まじ奇跡。
――――
聖祥付近にいって知ったことや気付いたことが多々あることで色々感じて、俺達は自宅へと帰ってきた。
先に帰ってきていた美由希さんに出迎えられ、士郎さんが先に入浴をした。
「そっか~、あと一週間少しでなのはと明良は小学生か~」
「うんっ! せーしょうってところでね! アキくんと一緒なの!」
「う、うん? なのは、今どこって?」
「せーしょうだよ! 結構大きかったの!」
「あ、あー。そ、そうなんだ……」
「……」
おう、その苦笑はなんだ。その苦笑は。
俺はコップに入れた緑茶を一口飲みながら彼女達の会話を見ていた。
「でも、なのはも明良だけじゃなくいっぱい友達作らないとねっ」
「……できるかな?」
「できるよ。なのはなら」
少し悩んだ表情のなのはにそう美由希さんが答えた。俺はそのキリの良い所でTVをつけた。
「今度の満月はスーパームーンと呼ばれるもので――」
「満月か」
「しかも、スーパームーンだって。結構珍しいようなものじゃなかったっけ」
「スーパームーンって、どういうの?」
「いつもの満月より大きいく見える満月。見たほうが分かりやすいかもね」
「へぇ~。じゃあ、見てみたいね!」
「そうだね~。何時ぐらいなんだっけ?」
「あと、三週間少しってとこかな。三週間前から報道するってのも珍しいけど」
「まぁ、そんな時もあるよ」
今月はスーパームーンの満月が見れるようで、その日は三週間後と少し先だ。
普通の月だったり星は、満点の星空と共に士郎さんや恭兄と一緒に裏山で見れたりするので慣れてたりする。
だが、なのはや桃子さんは裏山なんて行く頻度は少ないし、そこで見られれば大分良い景色が見れると思う。
「ならその日は裏山に行くと良いな」
「あ、父さん」
いつの間にか浴場から上がっていたのか士郎さんがそう俺達に告げる。
「でも、そうかもね。あそこで見たらとても良いと思うよ」
「じゃ、そこで」
「お~~。良く見えるといいね!」
「おっそうだな」
その後俺は(結局)なのはと風呂に入ることになり無心で洗浄をする時間となったのはいつものことである。
――――
約一週間後である4月6日の入学式となった。
外から見学した日は士郎さんに車で連れて行ってもらったが、その日以降は彼の仕事もあるためバス移動となった。
バス停が自宅前付近ということもあって、逃すことはないからその点は安心できる。
校内案内も事前にされているので大体は把握出来ているが、やっぱり広いので覚えるのには大変そうだった。
また、これから用にということで教材やその他の荷物を入れるための鞄も買ってもらった。今日はそれを背中に背負っている。
「うぅ~~。離れたくないよ~~。」
「そうは言ってもな……。」
クラス分けの看板を見つけた俺達は、別々であったのでこうもなのはが呻いている。だが、そうしたままじゃ動けないのでなんとか彼女をどうにかならん。こういう時はいつもので――。
「ちょっと! 見たならどきなさいよ!」
「おっと、ごめん」
「あっ、ごめんなさい……」
「ふんっ!」
対応しようとする前に、俺達の後ろから金髪の少女がそう強く言い放ち、俺らとその周囲に集まっていた入学生徒達を退けていった。
気が強そうというか、なんというか。貴族の子によく見られるようなモノと若干類似していた。
「あれが、お金持ちの子かなぁ~」
「あんまり口にはださんといて」
「そうなの?」
「今は、という感じだけどね」
「ふーん」
先ほどうじうじしていた感じは無くなったのか、なのはは先程の金髪少女に意識を向けている。
「じゃ、行くぞ」
「はーい」
別々のクラスにはなったが、途中までは一緒なので俺達2人は教室までの道を歩いていった。
――――
「出席番号順なのは、変わらんか」
自分の教室に入ると何人かは既に入室していたようで、その彼らは早速談話をしていた。
俺は黒板上に貼られてあった座席表を元に自分の席を探し、そこへと向かった。
「あ、おはよー。ここ君?」
「あぁ、そうだよ」
「じゃあ、席がそこそこ近いね。これからよろしく。」
「おう、こっちこそ」
黒髪の男子生徒に声を掛けられ、自席に荷物を降ろしながらそう応答する。
「あ、君にも聞こうかな」
「ん? どうした……?」
俺は彼の呟きに反応しながら席に座り、彼のほうへと向いた。
「翠屋ってとこ、美味しいって聞くんだけどさ。どのくらいなの?」
「言葉ではきっと表せない偉大さがある」
「お、おう」
無意識で即答してしまった。すまない。
毎度毎度作る人の料理を食べているし、自分の手伝っている店でもあるからね。
だが、この表現はきっと間違ってはいないと思うのだよ。
「じゃあ、今度いってみようかな」
「一応喫茶店だけど、ね」
「あ、そうなんだ」
そう彼と話をこの後も弾ませていると、教室の扉が開いた音がしてそちらの方を見ると、先程遭遇した金髪の少女がいた。
「……」
「どうしたの?知り合い?」
「いや、言うほどじゃないけど。何でもないよ。ただ見てたってだけ」
「ふーん。でも、結構綺麗な子ではあるね」
「そうみたいだね」
「あ、こっち来たけど、席ここ付近なのかね」
「……そうじゃね?」
と半ばそうであって欲しくないと思いつつその言葉を口にした直後に、直ぐ右隣で鞄をバサっと置いた音を耳にした。
「何よ……」
「いや別に」
「そう」
短い会話で終了したが、これが俺と彼女との初めての対話と言える。
そして、その後は空席だった席がどんどん埋まっていき担任教師も現れ、その教師の指示のもと室内ホールへと列で移動した。そこで行われた前世での小中学校とあまり変わらない入学式も無事に終えて、なのはと共に徒歩で自宅へと帰宅した。