---千葉エリカ---
鬼と九尾の狐の兄妹…想像出来ない組み合わせである。
「幹比古、持って来てくれたか?」
達也君の言葉で、幹比古は古文書を数冊、机の上に置いた。
「『星の守護神』関連の物だ。俺も見たけど、敵にしちゃダメな部類だと思うぞ」
「どうして?」
ビビる幹比古に言葉で迫る達也君。
「相手は守護神と呼ばれた者だ。信奉者がたくさん居る。アレを敵にするって、それらも敵にするんだぞ。分かっているのか?なぁ、達也…」
空気の質が変わった。ドンヨリと重たい気がする。
「う~ん…忠告したよな、達也!死に急ぐなと♪」
気怠いような声のした方向へ振り返ると、先生が私の背後にいた。
「凄まじい破壊力の魔法持ちであっても、所詮は人間なんだよ、君はねぇ♪」
『マテリアル・バースト』
達也君は手にしたCADで、魔法を先生に撃ち込んだ。しかし、何も起きなかった。唖然とする達也君。
「満足か?僕に一矢報えてさぁ♪」
平然としている先生。
「くそっ!」
レオが手にした剣状のCADで斬り掛かった。
『フルカウンター』
吹き飛ばされ、壁に壊れるくらいの勢いで激突したレオ。先生の前には、達也君に似た男子生徒が立っていた。
「ネギ、付いて来たのか?」
「うん♪僕、師匠のガードだから♪」
彼も先生の弟子なのか…
「で、その陰陽師の卵はどうする?」
雪姫さんが先生の肩に寄り添っている。彼女も弟子なのか?
「うん?こいつは弟子では無いよ。禁酒くらいしか指導していないし」
読心術…九重ちゃんと同じか…
「九重と同じっていうより、読心術、念話術が使えない者は、連れ歩かないよ。って、いうか、気配が読めない時点で、お前達は詰んでいると思うけど」
私達を取り囲むように現れた先生の弟子らしき人達。
「どうするんだ?なぁ、達也君♪」
達也君が格闘術で襲い掛かった。
『百鬼夜行』
九重ちゃんが術を発動したようだ。達也君は見えない敵にボコられている。何者かに殴られ、顔にアザ…皮膚は裂け出血をし始めた。
「止めて下さい!」
美月が叫んだ。
「九重、止めてあげろよ」
「だって、お兄様に殴りかかろうとしたんだよ~」
先生が九重ちゃんの頭を優しく撫でると、達也君はリンチから解放され、床に倒れ込んだ。
「美月!願いを叶えた、供物は何だ?」
「えっ?供物?」
美月が驚いたような顔をした。
「おいおい、供物も無しに、願いを言ったのか?無信心な世代なのか?まぁ、いいや。達也から奪った物を供物としてもらうから♪」
何かを奪い取ったのか?まさか…
「達也君の命?」
「はぁ?エリカ、身体が幼児体型の上、オツムも幼児並なのか?」
とっても失礼な事を言う先生。
「出るところは出ているわよ~」
「はいはい。で、ソイツの命は僕があげた物だ。奪っても価値は無い」
命をあげた…はぁ?
「耳も幼児並なのか?ソイツは一度死んで、僕が蘇生したんだよ♪」
「…」
絶句すろ私、美月、幹比古。蘇生した?
「まぁ、そんな感じだ。僕を倒すことより、スキルアップを考えろよ♪うん、じゃな~」
先生と弟子達が消え去った。
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達也君、レオは緊急搬送され、入院となった。連絡をしたので、達也君の妹の深雪さんが病院にやってきた。
「お兄様はどうして…」
経緯を説明してあげた。
「あの方に?なんで、ケンカをふっかけるのかな…」
「それよりも、なんで、先生に憧れているんだ?」
疑問を訊いてみた。正体不明の冴えない男である。そんなのに憧れるって、興味がある。
「あの方は、私のヒーローなんです。私の願いを聞き入れてくれ、願いを叶えてくれましたから」
「願いって?」
「お兄様、お母様、穂波さんを助けて下さい。目の前の敵を消し去ってくださいって願ったんです。お兄様達は必死に戦い、命を落とされてしまいましたから…」
その時か、達也君が死んだのは…
「供物に私を差しだしたんですよ。でも、もっと良い女にならないと、供物にならないっていわれて…」
で、良い女になる為に頑張っているのか…供物になる為に…
「供物にならないって選択肢は無いのか?」
「無いですよ。私は、あの時に決めたのです。目の前の艦隊を一瞬で消し去り、私達を八王子の自宅まで送り届けてくれた、あの方の厚意に報いたいんです」
艦隊を消し去り?何時の話だ…まさか、沖縄侵攻時に大亜の艦隊が消失したアレか?達也君…相手が悪すぎると思う…
---シュウ---
リビングで教材を作っている。何人、受講するのだ?ゼロでは無いのが救いではある。と、言っても、九重とネギ、めっちん程度であるが…
「文字種からですか?」
九重が唸っている。文字系が苦手手有るから。九重は妖術系な為、イメージした物を撃ち出す感じなのだった。
「簡単な大系による魔法陣の違い程度はしないとな」
「う~ん…」
ネギが唸っている。ネギの場合は、『八重奏』にセットされているのを撃ち出すだけで良いので、魔法陣を特に覚えることはしなくても良い。あぁ、転移陣だけは覚えて貰わないとダメかな。
今日は日曜日。雪姫は、掛けた術を解除して大人化している。そして、めっちん、チェインと酒盛り中である。日曜だけは働肝日にしたいと懇願されたのだ。
「久しぶり~五臓六腑に浸み渡るなぁ~♪」
チェインが美味しそうに飲んでいる。とっても幸せそうな飲んべえトリオ。ラムレムがツマミを作り、飲まない組はおやつ代わりに食べているし。
「シュウ、枝豆よ!」
ラムがてんこ持ちの枝豆を茹でて持って来てくれた。
「サンキュー、ラム♪」
誉められて嬉しそうなラム。平和が一番だよな~。
---七草真由美---
日曜日の生徒会室。新学期の行事の計画を、生徒会として立案しているのだ。でも、十文字君が凹んでいる。師族会議中に、魔力をロストしたそうだ。先生にケンカなんか売るから。
「ソイツは何者なんですか?」
はんぞー君に訊かれた。
「一高の教師よ。頼むからケンカを売らないでね」
「教師?十文字先輩を凹ませるくらい強いんですか?」
彼の魔力ロストの件は、私しか知らない。その事実は混乱を招くから。そう、魔法師の学校の教師が魔力を奪えるなんて、洒落にならない。
「強いわよ。昨日も、ケンカを売った生徒を、二名病院送りにしているわ。警告したのに…今年の新入生は血の気が多いのかしらね?」
「専門分野は?」
「古式魔法よ」
女体調教なんて、言え無い…
「古式魔法師ですか。お手合わせしてもらおうかな?」
「はんぞー君!洒落にならないことを言わないでね。CAD無しだから、オーバースペックを撃ち込まれるわよ」
学生仕様のCADは、安全装置で危険なレベル、所謂オーバースペックには、ならないようにしてある。
「接近戦は?」
「瞬動術が使えるみたいよ」
瞬間に移動出来るスキルだそうだ。短距離なら、この方が瞬時に移動でき便利だと言う。
「会長、詳しいですね」
「新任の先生とは面談済みですからね」
躾、調教済みとは言いたく無い。結局、摩利も供物の一部となり、私、響子さんと共に躾と調教をされている。九島老師の意向は、ほぼ絶対なのだった。
「代理の校長が九島老師とは驚きですよね」
って、あーちゃん。
「確かにそうね。表舞台には出ない方だと思っていたのに」
総てはあの爺のせいで始まった。大量のジェネレーターを引き連れて、先生に戦いを挑んだ末に惨敗…星を人質に取られ、やりたい放題されているし。
「新入生の部活への勧誘戦争が最初のヤマ場ね」
強引な勧誘が毎年問題になっている。校内ではCADの使用を制限しているが、中には悪用する者達が出てくるのだ。男ばかりの部に女性を引き込む為、抵抗出来無いようにして…犯罪である。
「戦力が足りないわね…十文字君がこれでは…」
生徒会の見回り要員は、それなりの強者で無いと、相手を制圧できない。
「真由美、先生に頼んだら?」
って、摩利。
「死者が出ちゃうって…」
「そうだよね…先生の弟子達は?」
「先生以外の指示はスルーするから、先生よりタチが悪いわよ」
「七草先輩!俺にまかせてくださいよ」
教師推薦枠で生徒会入りした、新入生の森崎君が名乗りを上げた。『早撃ち』の二つ名を持つ、優秀な一科生である。差別思想さえなければ…
「はんぞー君、彼の暴走には気を付けてね」
「はい…」
---シュウ---
月曜日…午後から選択科目である。指定された教室に、教材と共に待つ…ネギと九重とめっちん、明日奈、アスナが現れた。これだけか…家でやっても支障が無い気がする。
「先生!私達も受けます♪」
エリカと美月が教室に入ってきた。
「間に合いましたか?」
深雪が雫とほのかを連れて来た。
「無茶しないように監視役です」
って、真由美とあーちゃんが入って来た。そこそこ集まったかな。
「じゃ、始めようか…九重、教材を配ってくれ」
「はい、お兄様♪」
萌え系の妹を使いぱしりに使う。
「今日は文字についてだ。どんな文字を知っている?」
弟子達には質問しないように言ってある。知っていて当然のことだから。
「英語とかフランス語ってことか?」
エリカが声を上げた。
「それは人間の言葉だから違う。っていうか古式魔法術の授業だぞ!英語は有り得るとしてフランス語はどうかな…って、人間の言葉は、魔法大系の進化形である」
「なんで?」
エリカしか質問しない。
「例えば、エルフを考えてみろよ。この国にはいない種族だ。でも、エルフの魔法大系はある。コイツらは詠唱系であるから、流暢な言葉で歌い上げるように唱えるんだよ」
「なるほど…」
美月が頷いて聞いている。
「現代魔法師の場合は数式主体だろ?CADに組み込む呪文と呼ばれる物は、プログラミングに近いからな」
「魔法大系が分かれる背景には、言葉の問題があるんだ。例えば、エリカ、エスペランド語を呼んでみろ」
教材に短文を掲載してある。エリカはローマ時読みで対応した。まぁ、そこそこではある。
「意味は?」
「わかりません」
「読めても意味が分からないと、呪文は作動しないんだよ」
「先生はどのくらいの言葉が分かるのですか?」
雫から質問をされた。
「聖魔光闇禁神系はほぼ総て分かる」
現代魔法師では光系統しか再現出来無いらしい。
「現代魔法師との違いは、そこですか?」
ほのかが質問をしてきた。
「そうだな。物理化学で現象メカニズムがわからないと、現代魔法師の魔法にはならない。だから、聖魔闇禁神に関しては、物理化学では証明もメカニズムも判明していないので、再現が出来無いことになる」
「禁ってなんですか?」
深雪が訊いてきた。
「禁断の魔術と言う禁術系のことだ。これに関しては文字は存在しない。口伝での伝授であるから」
「文字が無いのに、術式に書けるのですか?」
「あぁ、文字が無いから、口伝を受けた者が文字に置き換えるんだよ。古来、サンスクリット語の教典を貰って来た仏教の高僧達もそうやって、教典を作っている。頭にある南無という文字が共通なのは、そこだけ共通に聞き取れたに過ぎない。だから口伝系は、同じ術でも何通りも術式が存在するんだよ」
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一日目から、結構働いたと思う。2時間なんか、あっという間である。
「先生♪先生のお部屋で、質問しても良いでしょか?」
恥ずかしそうに深雪が訊いてきた。
「先生、女生徒と二人っきりはダメですよ。私も付いて行きます」
って…真由美…
「信用が無いのか?」
「有ると思っているんですか?」
心外だ…深雪には手を出さないと思う…既に二人いるし。
そして、僕の部屋…『古式魔法研究室』に、弟子以外の生徒達が集まってきた。調教道具はしまってあるので、見付からないはずだ♪
「研究室って言う割りには殺風景だな」
って、エリカ。本棚には本が無い。机の上には書類も無い。天蓋付きのダブルベッドが目立つように置かれている。
「で、このベッドは何?女生徒を連れ込んで…まさか…」
「まさか…僕の昼寝用だよ。連れ込むって心外だな…そんなマネを妹が許すと思うか?」
「そうですよ、お兄様♪許しませんよ~。こんなにかわいい妹がいるのに、違う女性を連れ込むって、どうなんですか?!」
笑顔で怒りのオーラ…スルーしておこう…
「で、深雪、質問って何だ?」
「あの時、何をされたんですか?」
「深雪、何かをされたのか?」
雫が深雪に問うた。
「私がされたのでは無いです。私は助けてもらった。先生に…」
大亜の艦船相手にか…
「『ダイヤモンドダスト』を撃ち込んでからの『地獄の業火』だけど…」
「それはどう言った魔法ですか?」
魔法の説明か?う~ん…現代魔法では再現出来無いと思うけど…
「ダイヤモンドの微粒子を光速で撃ち出して、艦船を破壊して、地獄の炎地獄で使われている業火で焼き尽くしただけだよ」
これを再現するには、創造系が無ければ出来無い。いや、人工的に光速で撃ち出せないから、無理だな。
「先生って地獄を知っているんですか?」
美月に訊かれた。正体がモロバレになるんですが…
「行く?」
「はぁい?」
目が点になる生徒達。まぁ、普通そうだよなぁ。好き好んで地獄へ行き人間はいないはずだ。
「行けるんですか?」
「確か、出入り禁止にはなっていないから…」
この前、解除されたはずだ…
「地獄に出禁って、何?」
って、あーちゃん。生徒達と地獄へ転移した。
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生徒達は身震いして、しゃがみ込んでいる。殺意のオーラに飲み込まれたかな?生徒達を結界でガードして、オーラから護って上げる。
「ここが炎地獄の最前線だよ」
目の前で、全身を紫の炎で燃やされている罪人達。
「って、ここって…地獄…」
震えているエリカに訊かれた。
「そうだよ。今回は特別に社会科見学だな」
いろいろなアトラクションに連れて行き、説明をしていく。
「ここが有名な針山地獄だ。あっちに見える池みたいなのが血の池地獄だよ」
生徒達は無口で周囲を見ている。血の臭いが立ち込めている。
「体調でも悪いのか?じゃ、気分転換で、ここと対称的な場所も見ておくか?」
生徒達と転移した。今度は、湖のある草原である。
「まさか…ここって…」
真由美が固まっている。深雪と雫もだ。この風景を知っているのか?
「まさか、エデンの園?」
「真由美、正解だよ。ここでの昼寝は最高なんだよ~♪」
唖然としている生徒達。
「今日は、やたらに大勢連れ込みましたね」
大天使であるミカエルがやって来て、声を掛けてきた。
「今回は、違うって。生徒達と社会科見学だよ」
「いいですね。見つけ次第、出禁ですからね。まったく、コリてくださいよ」
ミカエルが苦笑いしている。一応、毎回、反省はしているんだけね。