「D級昇格試験?」
朝の鍛錬を終え、ギルドに戻るとエミリアから声をかけられた
「はい、アルさんとミアはまだ子供ながらにギルドへの貢献著しいとのことでD級の昇格試験を受けていただきます」
シルバート兄に会ってから更に1月程立った。あれからも依頼では特に大きな問題も無く日々を過ごしていた。変わったことといえばミアの武器を更新したことか
鋼鉄製の忍者刀2本を鍛冶屋に注文したのだ。
武器は意外と高い、1振り銀貨50枚もした。
ミアは最初全部自分で出すと聞かなかったがなんとか説得して俺と折半した。
1人で支払ったら今まで依頼で稼いだ分を半分以上持っていかれてしまうのだ。それではミアの好きな甘い物や服飾品などが気兼ねなく買えなくなってしまうだろう。
「本当はゴブリン討伐の際に昇格の話も出ていたのですが・・・お二人はまだ子供ですし他の依頼に対する実績などもわかりませんでしたので保留となっていました。ですが、ここ2か月の実績を見るに十分すぎる程の成果を出して頂きましたので、晴れて昇格試験を受けて頂く運びとなりました。」
エミリアはあれからちょくちょく俺を誘うような言動を繰り返す。
ミアがいつも隣で唸っていて怖いからやめて欲しいんだが・・・
「で、試験の内容は?」
「はい。本来ならば冒険者の中から試験官を用意して対人での戦闘力を測る試験を行うのですが・・・これは護衛依頼が基本的にDランク以上の依頼で、想定されるのが野盗との戦闘だからです。それを試験を通して調べる予定が・・・」
成程、理にかなっている。だが歯切れが悪いな
「予定が?」
「誰も試験官を引き受けてくれなくてですね・・・」
「は?」
「・・・お二人のゴブリン退治や訓練場での噂が広がっておりまして・・・その・・・」
「成程、よくわかった」
つまり、子供の俺達にボコボコにされて先輩としての威厳がなくなるの嫌だという訳か
「なんとも情けない話だな・・・」
「はい。本当に申し訳ないです・・・」
「それで?じゃあ何もしないで昇格させてしまおうとはならなかったんだろう?」
「はい・・・ギルド上層部では特例で昇格させてしまえとの話もあったのですが。一応そこは規則ということで代替案がでました」
「それは?」
「Dランクモンスター"オーク"の討伐です。オークならゴブリンより強いですし対人戦闘力を測るのにも似たようなものなので丁度いいという結論になりました。」
「成程、オークね・・・」
オークは身長2m程の豚の顔をした二足歩行のモンスターだ。ゴブリンと同じく知能は低いが小規模の群れを成す。何処からか拾ってきたのか武器を持ち、大きな体を活かして他種族から略奪を行う嫌われ者だ。また、人間の女性を攫うことがままある。攫われた女性がどうなるかは想像に難しくないだろう
「アル、勉強の成果が出てる」
ミア先生のおかげだよ
「それで、何時何処に退治しに行けばいいんだ?」
「はい。ミルスティン南の森深くで3頭のオークが確認されています。そちらを探し出して討伐をお願いします。期限は2週間以内で報酬は1頭当たり金貨1枚になります。」
時間制限付きなのね
ギルドを出てしっぽ亭に朝食を食べに戻る
「さて、じゃあ準備をして・・・出発は明日からでいいか」
「それがいい」
「しかし試験官相手のほうが楽でよかったのになぁ」
「うん・・・」
それなら危険もないし
「誰も試験官になりたがらないとは・・・」
「私達・・・厄介者?」
・・・考えたくないな
準備をしてミルスティンを出発した俺達は、森に入って2日後にオークを発見することができた。だが・・・
「なぁミア」
「なに?アル」
「オークは確かにいた」
「うん」
「確か3頭だったよな」
「そう聞いた」
「じゃあなんで20頭近くいるんだ?」
「・・・わからない」
もうすぐ日が暮れるという中、俺達は草陰に隠れてオーク達の様子を見ていた。ミア先生の教え通りだ。確かに豚面に2mくらいの身長で武装している。だが20頭いるなんて聞いてないぞ・・・
オークの群れは焚火を熾し、よくわからない言語で意思疎通をかわしながら野うさぎやゴブリンの丸焼きを食べていた。ゴブリンって食べられるんだな・・・
そしてオークの群れの後ろには檻のようなものがある。あれは・・・
「どうしようか・・・」
「・・・一時撤退」
「だな」
オークの群れに見つからないようにその場を後にした
「なんつーか、ゴブリンの時もそうだけどなんで俺達って重要なとこでツイてないんだろうな」
初依頼しかり昇格試験しかりだ。
「・・・わからない」
ミアは頭を抱えている
「やれないことはないけど・・・」
「だが、危険でもある。普通ならエミリアに報告してギルドの指示を仰ぐべきだろう」
ミアが頷く
「・・・けど、オーク達の後ろを見たか?」
「・・・見た。誰か捕まってた」
それが問題だ
「助けないと・・・まずいよなぁ」
恐らく捕まっているのは女性だ。一度報告してからでは戻ってきた時には取り返しのつかないことになっているだろう。オークの群れもあのままあそこに留まり続けるとは思えない。
「ミア・・・お前を危険な目に合わせて申し訳ないと思う。だが・・・」
「わかってる。アルはそう言うと思ってた。私のこともそうやって助けてくれたから・・・」
すまないな
「いい。それでこそアルだと思う」
ありがとう
「じゃあ作戦を立てるか・・・」
「私が「駄目だ」・・・まだ何も言っていない」
「"囮になる"だろ?駄目に決まってんだろ。確かにミアのほうが俺より瞬発力は高いさ。囮になって逃げ回るのもうまくいく可能性が高い」
「なら・・・」
「だがそれだけ危険だ。俺のわがままに付き合ってもらうんだ、囮は勿論俺がやる」
「・・・わかった」
それでいい
「ミアはアタッカーだ。見つからないように魔法の準備をして待機だな。なにかいい魔法はあるか?」
「・・・風の範囲魔法は以前使った魔法くらいしか知らない。それに制御できないとアルはまだしも捕まっている人達まで巻き添えになる」
そうだよなぁ・・・
「今回は氷魔法を使う。今の私では範囲魔法で20頭全部を氷漬けにはできない。だから足を凍らせて私とアルで直接処理する」
「だが範囲に魔法を使うのはかなりの魔力が必要だぞ。大丈夫なのか?」
「私はアルより魔力が多い。それにこの間の風魔法の件でかなり範囲魔法の制御に慣れた。勝算は高い」
確かにな、最近のミアは簡単な魔法なら日に3回は使えるようになっていた。ここは彼女に頼るしかなさそうだ。
「なら俺はオーク共を集める係だな。オークの前に姿を現して・・・精々ど真ん中で暴れてやるさ」
「無理はしないで」
ミアはとても心配そうだ
「大丈夫だ。お前の恋人を信じろ」
ミアは頬を染めながらもこくりと頷く。可愛いやつめ
「日が暮れたら行動開始だ」
日が暮れた頃を見計らって先程隠れていた草陰に戻る
オークの群れはまだ食事をしているようだ。どんだけ食欲旺盛なんだよ・・・
「ミア、魔法を使う時は声をかけてくれ」
既に魔法の準備を始めているミアに声をかける
「わかってる」
「じゃあ、いくぞ」
ミアが見つからないように場所を移動し、俺に背を向けて座っているオークの首を刀で撥ねる
突然のことに動揺しているオーク達を無視して続け様に2頭の首を撥ねる
そこでやっと立ち直ったオーク達が奇声をあげながら武器を手に取る
「よし、こい!」
俺は刀を肩に担ぐと片手でかかってこいと挑発してオーク達を待ち構える
先陣を切って突進してきたオークを躱し、でっぷりとした腹を斬りつける
「ブヒィィィ!」
腹を裂かれたオークは流れ出てくる臓物を押させつけるように腹に手を当て、怒りのこもった眼でこちらを見据える・・・大した生命力だ
流石に両断とはいかないか・・・
身長差も相まって立っているオークの首を撥ねることも難しいだろう、今は手傷を負わせることに専念しよう
振り下ろしてくる斧を躱し、足を斬り飛ばす
横なぎに振ってくる剣を絶妙なタイミングで受け流し、体を泳がせると武器を持った手を両断する
後ろから突進してきたオークをひらりと躱すとケツを蹴り飛ばして他のオークにぶつける
オークの体から繰り出される攻撃は遅いが非常に重い。刀で受けようものなら刀ごと吹き飛ばされてしまうだろう、攻撃はすべていなすか避けなければならない。その作業にいつも以上の疲れを感じる
いい勉強になるな・・・などと思いつつ向かってくるオークの斧の柄を斬り飛ばし、返す刀で腹を一文字に斬りつける
全てのオークの視線は俺に注がれ、俺を取り囲むように陣取っていた。
ミア・・・そろそろいいぞ
そう考えた時、愛しい少女の声が聞こえた
「アル、退いて!」
おう!
タイミングはどんぴしゃりだな!
俺はオーク共の囲いで薄い所を見つけると、そこに向かって一目散に駆け出した。
一頭のオークが立ちはだかり、斧を振り下ろしてくるが横に避けてすれ違い様に足を斬りつける
「ミア!いいぞ!」
オークの包囲を抜けた俺はミアに向かって叫ぶ
「ッ!"アイスエイジ"」
瞬間、周りの温度が急激に下がった。オーク達を取り囲むように地面が氷ついていき、範囲を狭めながらオーク達の下半身を氷漬けにする。
なんて魔法だ!ミアには魔法じゃ敵わないな・・・
俺は魔法の発動を見届けるとすぐさまとって返し、凍ったオークを斬り捨てていく。ミアも急激に魔力を失った代償でふらつきながらもオークの上半身から繰り出される攻撃を躱し、オークの命を奪っていく
オークの群れが全滅するまで2分とかからなかった
「ミア、よくやった」
ふらつくミアを抱きしめながら称賛する。
「あぅ・・・アルのおかげ。アルがしっかり囮の役割をしてくれた。何処も怪我してない?」
ぺたぺたと体を触ってくる
「大丈夫だよ。お前こそ大丈夫か?囚われた人達は俺が見てくるからお前は休んでろ」
「わかった。正直限界、後はお願いする・・・」
ふらつくミアを近くの大きめな石の上に座らせる
檻の周りは暗いのでオークが熾していた焚火に持ってきた松明をいれて明かりを作る
松明を片手に、檻は離れたところに2つあったので左の方から近づいていく
松明を前に出すと檻の中には14歳くらいの人族の女の子2人が猿轡をされて檻の中で倒れていた。どうやら意識を失っているようだ
俺は刀で檻を斬り飛ばして入口を作り、2人を肩に担ぐとミアの待っている方へ歩いていく
どうやらこの2人は凌辱されずに済んだようだ。服も着ているし異臭も特にない。
「その子達?」
「あぁ、意識を失っているようだ。この2人を頼む。もう1つ檻があったから俺はそちらを見てくる」
「わかった」
2人の世話をミアに頼み俺はもう片方の檻に向かって行く。
・・・何やら異臭がする。嫌な予感がした俺は急いで檻に辿り着く
「ッ!くそ!」
中には16歳くらいだろうか、人族の女性が一人倒れていた。既に意識はないようだ。服は着ておらず全身に暴行の跡があり、秘所からは今もドロドロとした白い液体と血が混じったものが流れ出ていた。
間に合わなかったか・・・
怒りに任せて檻を斬り捨て、急いで彼女を担ぎ上げる。
どうしようもない憤りと悔しさを感じながらミアの元へ歩いて行った。
「!?アル・・・その人・・・」
「あぁ、間に合わなかったみたいだ」
「そんな・・・」
ミアが口に手を当てて泣き出してしまう
「まずはここを離れよう、血の臭いが濃すぎる。他のモンスターを呼び寄せてしまうだろう」
「・・・わかった。討伐証明の耳は集めておいた」
気が利くやつだ
「そうか、ありがとう。そっちの女の子を一人頼めるか?俺はこの女性ともう一人の女の子を運ぶ」
ミアも魔力が枯渇しかかっていて大変だと思うが頼む
「任せて」
ミアはぐしぐしと涙を拭って女の子を背負う
俺は女性と女の子を肩に担ぐがふらついてしまう
「アル、平気?」
「平気だ、行こう」
なんとか気合で担ぎなおすとゆっくりと歩いていく
「畜生・・・俺がもっと大きければ」
鍛錬を積んでいるとはいえ、まだ子供の俺だ。俺がもっと年を重ねて大きければ問題なく担げるのに・・・
「もっと強ければ・・・」
成長した俺であれば一度目にオーク達を見つけた時に倒し、女性を助けることができたかもしれない・・・
「二度とこんな思いはごめんだ」
誰よりも・・・ミアも、助けを求める人々も全てを守り切れるくらい!
「強く、なってやる!」
俺は涙を流しながら暗い森の中で慟哭した
ミアはそんな俺を見ながら悲しそうに、静かに涙を流しながら金色の瞳を揺らしていた
アルバート・ディレス 12歳 身長 158cm
スキル:刀剣術:6 火魔法:3 雷魔法:3 治癒魔法:3
装備 :上質な鋼の刀 変異リザードマンの革鎧セット
所持金:金貨3枚 銀貨85枚
ミア 12歳 身長 156→157cm Cカップ
スキル:刀剣術:4 風魔法:4 氷魔法:3→4 治癒魔法:3
装備 :鋼の忍者刀×2 変異リザードマンの革鎧セット
所持金:金貨3枚 銀貨103枚