「う~ん」
俺はしっぽ亭の2階、借りている部屋で魔力を練りながら悩む
「どうしたの?」
隣で目を閉じて魔力を練っていたミアが聞いてくる
「いやな、俺の雷魔法についてなんだが」
「うん」
「いまいちイメージが掴めないんだ」
俺の攻撃に使える魔法は火と雷の2種類だ。
火はわかりやすい、魔力を練って温度と規模を調節すればそれなりに形になる。
だが雷は・・・
「何をどうすればいいのかわからん」
イメージがつかめない場合、他の魔法使いの魔法を見せてもらうか自然現象からヒントを得るという手段がある
火ならお袋から教わったし、そうでなくても何かを燃やして手でも突っ込んでみればおのずと体が理解するだろう。火はこういうものなのだと
しかし雷はそうはいかない。使える魔法使いなんて俺以外に見たことないしなぁ
「ミアの氷魔法のイメージは何処からきたんだ?」
「私は・・・故郷が寒い所だったから・・・」
「そうか・・・」
悪いことを聞いてしまったな
「いいの。今は幸せだから。それに氷は魔道具で作れる・・・氷を手に乗せて温度を感じてイメージを作ってる」
ミアは嬉しそうに身を寄せながら話してくれる
「やっぱり直に感じてみるが一番いいよなぁ」
ミアの肩に手を乗せて胸元に引き込む
「あっ・・・」
小さく呻くミアの唇を塞ぐ
「ん・・・アル待って、まだ鍛錬が」
もう終わる所だったはずだが
「いいだろう?」
「・・・ばか」
そのままベッドの上にミアを運ぶ
「最近えっちしてばっかり・・・」
「嫌か?」
服を脱がせながら話をする
「ううん。嬉しい・・・今日もいっぱい・・・愛して」
「任せろ」
今夜もミアは可愛く鳴き続けた
行為を終え、胸の中で満足そうな顔をして寝ているミアの頭を撫でながら考える
雷か・・・
俺が強くなるには刀剣術を極めていけばいい。だが折角才能があるんだ、伸ばさない手はないだろう
強くなりたい。俺自身もミアも・・・複雑だがあのオークの姫のような人を、周りの人間だけでも助けられるくらいの・・・力を。
「・・・一度、打たれてみるか」
胸の中のミアが小さく震えた気がした
それから三日後の夜、都合よく嵐の日となった。ミアを必要以上に責め立て、意識を飛ばさせると装備をつけて外に出る
まさか、雷に打れてくるなんて言えないしな。
しっぽ亭の外に出るともの凄い雨と風に曝される。空は幾度も光り、まるで天が怒っているように見える
俺は嵐の中街の外に出ると平原を進んでいく。平原の至る所には木が生えており、その中で一番大きなものの上によじ登る。
確か雷は大きな木に落ちる可能性が高く、更に金属に引き寄せられるとお袋から聞いたことがある。俺は天辺近くの足場で刀を引き抜き、木を両断してその断面の上に立つ。
さて、ここからは運次第になるわけだが・・・
俺は天に向かって刀を突き上げた姿勢でなんとなく雷の魔力を練り上げながらその時を待ち続ける。
雷を伴った雲が、すぐ近くまで迫っていた。
「ん・・・」
肌寒さを感じて私は目を覚ます
「あぅ・・・また出てきた」
大好きな彼の精が私の中から溢れ出す。その感触を愛おしく感じていると異変に気付いた
「アル・・・?」
彼が居なかった。彼が居たはずの隣からは既に温もりが消え失せていて、周りを見渡してみると彼の装備がない
「アル!?」
彼が居ない・・・それだけで泣きそうになるほど心が締め付けられる
こんな嵐の夜に何処に行ったの・・・
雨と風が激しく窓を叩き、近くの空で雷が光っている。
「雷・・・?」
瞬間、本当に雷に打たれたかの様に体が硬直した
"やっぱり直に感じてみるが一番いいよなぁ"
「まさか・・・」
ここ数日、彼は雷魔法のイメージについて悩んでいた。本当なら師から現象についての説明を聞き、実演を受けてイメージを固めるのだが・・・
彼の雷魔法については師が居なかった。師がいなければ、私の様に"経験でイメージを掴む"しかない。
「ッ!ばか!」
私は急いで装備をつけるとしっぽ亭を飛び出す。誰よりも力を求めるアルのことだ。
彼なら本当に"実際に雷に打たれてイメージを掴む"くらいやりかねない!
「ぐす・・・一体何処に!」
流れる涙を拭うこともせずに街の外を目指して走り続ける
ディレスの領地で木に雷が落ちたのを見たことがある。あんなものに打たれたら・・・
「あるが・・・死んじゃうよぉ・・・」
それだけは嫌だ!
私は何度も転び、泥まみれになりながらアルを探した
「そろそろかな?」
雷を伴った雲がもう真上まできている。運が良ければ・・・いや、運が悪ければ今すぐにでも雷が落ちてくるだろう
「やべ、ちょっと怖いな」
考えなしでここまで来てしまったが怖くなってきた。雷が木に落ちたのは見たことがある。強大な樹木を打ち砕き、炎上させる程の現象
「死ぬかも・・・」
しかしミアを残して死ぬ訳にはいかない。気合で耐えて回復魔法を使えばなんとかなるだろう・・・多分。
その時、愛しい少女の声が聞こえた気がした
「・・・・・・・ㇽ!・・・・・ア・!・・・ル・・・・・!アル!何処!?」
彼女の声が近づいてくる
「アル!アル!アルバート!何処!?何処にいるの!?返事を・・・して!」
彼女は雨に濡れ、泥だらけになりながらこちらに駆け寄ってくる
「ミア!」
「アル!?何をしているの!早く降りてきてっ!!」
「ミア!危ないから離れてろ!」
「ばかっ!何を考えているの!」
う~む、確かにバカの考えることだ。何も言い返せん・・・
「いいからっ!早く降りて!刀を収めて!何時までもそんな所にいたらあぶなっ!」
瞬間、世界が光に包まれる
ミアが最後まで言う前に、鼓膜が破れる程の轟音が世界に響き渡る
天より落ちてきた雷が、俺の刀に引き寄せられたのだ
「!?ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
雷は感電したもの全てを、俺の全身をも焼き尽くし、巨大な樹木を真ん中からへし折った。ミアは落雷の衝撃で吹き飛ばされてしまった
なんつー・・・破壊力だ・・・
もはや指の一本すら動かせず、ゆっくりと折れた木が地面に向かって倒れていく。俺は天辺から投げだされ、体を地面に強く打ちつけた。
「がはっ!」
吐いた息には血が混じり、全身に至る火傷が俺の命が短いことを知らせる
まずったな・・・これは
治癒の魔力を練ろうとするが意識が霞んで集中できない。このままでは本当にまずい・・・
火傷で引き攣った皮が痛いなんて生易しいくらいの感覚を俺に与える、何処もかしこもひどいことになってるだろう
「くっそ・・・折角のイケメンが台無しだな・・・」
ミアは大丈夫だろうか・・・
馬鹿なことをしてしまった。ミアを巻き込んでしまった・・・
「うぅ・・・はっ!アル!アルバート!何処!?」
ミアが俺を探している・・・どうやら彼女は無事なようだ
「ミア・・・ごふっ・・・俺はここだ・・・」
血を吐きながら震える声でミアに告げる
「アル!」
ミアが駆け寄ってくる音が聞こえる。走れるくらいには元気か・・・
「アル!・・・え・・・」
彼女は俺の焼け爛れた姿を見てしまったようだ
「・・・・うそ・・・こんな・・・こんな・・・ああ・・・あああああああああああ!」
ミアは雨に打たれながら天を見上げて咆哮する
「ははっ、すまない・・・お前の褒めてくれた・・・顔が台無しだな・・・」
お前を巻き込んでしまって・・・本当にすまない
「ミア・・・は・・・だいじょうぶ・・・か?どこも・・・いたくない・・・か?」
ミアが崩れ落ちるように膝をつく
「ばかぁ!こんなになっても・・・うぅ・・私のことばっかり!ぐすっ今治す・・・から!」
ミアの治癒魔法が俺の体を包み込む。
ゆっくりと体から痛みが消えていくが・・・
「無理を・・・するな」
ミアは全開で魔力を使ってしまっている。これでは幾分も持つまい。
「黙って!!体力を消耗しちゃう・・・あぁ・・・ばか・・・こんな怪我見たことない・・・死んじゃうよぉ・・・」
そんなにひどいのだろうか。首が動かせないから見ることはできないが
少しするとミアの治癒魔法の光がどんどん薄くなっていく、やはり足りないか・・・
「嘘・・・まだ全然治ってないのに・・・魔力が・・・」
「ミア・・・無理をするな・・・自業自得だ・・・」
「お願い!私はどうなってもいいから!アルだけは・・・アルを・・・助けさせてよぉ・・・」
ミアは振り絞る様にして治癒魔法を続ける
「やめろ!お前が死んでしまう・・・」
「うるさい!黙ってろばか!」
ミアが本気で怒っている・・・こんなことを言われたのは初めてだな
「アルもくだらないことを言っている暇があったらどうしたらいいか考えて!あぁ・・・だめ・・・魔力が足りない・・・このままじゃ・・・」
魔力か・・・そういえばお袋が何か言っていたような・・・
「そうだ! ミア、俺にキスしろ」
ぶっつけ本番だがなんとかなるはずだ。俺とミアなら条件は満たしている・・・と思いたい
「え・・・?」
「いいから!」
「・・・ちゅ」
ミアが俺に口づけをする。俺は幾分か治った体でミアに魔力をゆっくりと流していく
「ん・・・これは?アルの・・・魔力?」
「あぁ・・・お前に渡した。お袋が前に言っていた・・・心を通わせた者同士なら・・・魔力の質が似てくるんだそうだ。だからお前に・・・」
流すまではできたが治癒魔法を使うために練るまでは無理だった
「それで、頼む・・・」
「っ!わかった!」
ミアは俺から渡された魔力を自分の中で練り上げ、治癒魔法を再開する
痛みが引いていく・・・外傷はよくなったが雷は俺の全身を焼いたのだ。臓腑もかなり傷ついているはずだ
「うぅ・・・外の傷は良くなったけど・・・まだ中を治療できてない・・・魔力が足りないよぉ・・・あるが・・・しんじゃう・・・」
ミアは俺から渡された魔力を使い果たしてしまったようだ
「ミア、いい。よくここまで治してくれた」
俺はゆっくりと体を起こす
「起きちゃだめ!」
「大丈夫だ」
「大丈夫じゃない!中はまだ治せてない!」
「いや、本当に大丈夫だ」
立ち上がって体を動かしてみる・・・ふむ。若干痺れが残っているがそれ以外は特に問題がなさそうだ
「嘘・・・?」
特に体の中が痛いということもない
「な、なんで?外傷しか治してないのに・・・」
何故だろうかと考えていると・・・ふと思いついた
「雷の魔力か・・・」
確か雷に打たれる前から雷の魔力を練っていたはずだ・・・なんとなくこの魔力を纏っていれば多少は被害が少なくなるんじゃないかと考えて・・・
「お、思いつきに助けられたな」
恐らく雷の魔力が俺の体の内側を保護してくれたのだろう
ミアが優しく俺の体を触っていく
「ほんとう・・・?本当にもう大丈夫・・・?アル・・・死なない?」
「あぁ、お前のおかげだ。本当に助かったよ」
ミアは目尻に涙を浮かべて俺に抱き着いてくる
「ばか!ほんとにばか!信じらないくらいばか!何を考えているの!」
すまない
「うぅ・・・私が起きた時、隣にアルが居なくてどれだけ寂しかったか・・・アルが雷に打たれて倒れてる姿を見た時・・・どれだけ心配したか・・・」
本当にすまない
「もう!馬鹿なアルは何か思いついたら先に私に相談して!」
わかったよ・・・
「うぅ・・・でもよかった。アルが生きてて・・・本当によかったよぉ」
「ああ、おまえのおかげだよ。それに収穫もあった。悪いことばかりじゃなかったぞ」
雷に打たれた時の感覚、嫌というほど思い知った。イメージが焼き付いて忘れたくても忘れられないだろう
「ぐすっ・・・大丈夫なら帰ろ?・・・少し休憩したらまた治癒魔法かけるから」
ああ、ありがとう
「・・・でも、見つからないように帰ろう。アルが捕まってしまう」
なんのことだ?
「・・・何も着ていない」
言われて全身を確かめてみると俺は全裸だった。装備品も服も、全て吹き飛んだか焼けてしまったのだろう
「そういえば刀もないな・・・溶けちまったか」
刀は直接雷を引き寄せていた。恐らく熱で溶けてしまったのだ
「まぁ、また買えばいいさ」
正直ショックだったが自分の仕出かしたことだ。何も言えない
「よし、ミア!見つからないように帰るぞ!」
「当たり前」
雨は既に上がっていた。日も昇り始めており、空には虹がかかっている
馬鹿なことをしてしまったがミアのおかげでなんとか生き残れた
ミアに感謝しつつ雨で澄んだうまい空気を吸い、俺達はミルスティンへ戻る
被害もでかかったが成果もあった。万々歳だろう
だが帰りに起きてきた住民に発見され、結局衛兵に捕まってしまった
子供ということもあり、すぐに釈放されたが取り調べをしたガイエンは大笑いだった
これからは自分の行動が招く結果も見据えて生きていくことにしよう。
アルバート・ディレス 12歳 身長 158cm
スキル:刀剣術:6 火魔法:3 雷魔法:3→4 治癒魔法:3
装備 :全裸
所持金:金貨18枚 銀貨78枚
ミア 12歳 身長 157cm Cカップ
スキル:刀剣術:4 風魔法:4 氷魔法:4 治癒魔法:3→4
装備 :鋼の忍者刀×2 変異リザードマンの革鎧セット
所持金:金貨18枚 銀貨103枚