2人共風邪でダウンした3日後、俺とミアは訓練場で汗を流していた
病み上がりの癖に俺の調子はすこぶるいい
ミアの剣を受け流すのも簡単なものだ。彼女の斬撃は決して気を抜いていいものじゃない・・・はずなのだが
「はぁ・・・はぁ・・・アル・・・今日は・・・どうしたの・・・」
ミアにもわかったようだ
「全く当たる気が・・・しない。余裕で受け流されてる・・・」
俺はもしやと思い、自分のスキルレベルを確認してみる
「刀剣術・・・7・・・か」
とうとうここまできた。一握りの天才しか到達できない、上級者と言われるレベルに・・・
「凄い・・・まだ12歳なのに・・・」
俺もちょっと自分が怖くなってきた
「親父以外じゃ・・・このレベルは見たことないよなぁ」
恐らく、ここまでくることができれば・・・鍛錬を積んでいけばいずれ至るだろう。
「剣の頂・・・か」
あの親父の剣の域にまた一歩近づいた、それが嬉しくて堪らない
「なんで突然?アルの刀剣術は半年以上変わらなかったのに」
呼吸を整えたミアが聞いてくる
「恐らくだが・・・レッサーデーモンとの一騎打ちだろうな」
あれは本物の化け物だった。一対一で勝てる人間なんて早々いないのではないだろうか
「浮気以外にも収穫があった・・・」
ミアの言葉が突き刺さる
「悪かったよ」
「いい。でもたまにこうやって思い出させる」
ミアはあの一件から調子を取り戻し・・・いや、ちょっと強くなった。いい傾向であると思いたい
「ミアもそろそろ刀剣術のレベルが上がってもいい頃なのにな」
話を変えて誤魔化す・・・彼女も天才だ、何れ相当な所まで来るだろう
「私はこれでも十分早いほう。アルがおかしいだけ」
まぁそうなのだが
「私は魔法の方が得意、私達はバランスがとれてる」
確かにな、嬉しいのでちょっと調子にのってみよう
「お前が俺の子を孕んだら、とんでもない子ができそうだ」
ミアは顔を赤くする
「・・・ばか」
彼女もとても嬉しそうだ
汗を拭っていると俺を呼ぶ声がした
「アル、朝から精がでるな!」
急いでズボンを確認する
「アル・・・」
ミアが愚か者を見る目をしている
「・・・なにやってんだ?」
その声は・・・
「カイムか」
「おう、3日振りだな」
そこに居たのは先日、俺と臨時でパーティを組んで依頼をこなしたカイムだった
「いや~お前の戦いを見てから体が疼いちまってな。あれから毎朝鍛えてんだ!」
「そうか」
良いことだな
「それよりお前・・・隣の子がミアちゃんか?」
カイムが俺の隣に視線を向ける
「ああ、俺の相棒のミアだ」
「・・・よろしく」
ミアはとりあえず挨拶したがまるで興味なさそうだ・・・
「おう、よろしくな!・・・しっかし、アルが言ってた以上に可愛いじゃねーか・・・」
カイムはミアをまじまじと見つめている・・・俺のミアだからあげないぞ
「そんなつもりはねーが・・・こりゃアミカの勝率は低そうだな・・・」
後半は何を言っているか聞こえなかったが、そのつもりがないならいいだろう
「そうだアル、ちょっと俺の鍛錬に付き合ってくれねーか?」
構わないが・・・
「それに他の2人ももうすぐ来るんだ、あいつらもあれからやる気に燃えてるぞ」
彼女達も毎日訓練場に足を運んでいるのだという
ミアがピクっと反応する
「お、来たみたいだ」
ギルドの本館と訓練場を繋ぐ扉からでてきたのは2人の女性だ
「カイムはもう来てたのね・・・ってアルじゃない!」
「え、アルさんもいるんですか?」
「よう」
手を挙げて挨拶すると二人は嬉しそうにこちらに歩いてくる
「アル、3日振りね!」
先に声をかけてきたのはアミカだ。赤髪に綺麗な赤い眼をした推定Dカップの剣士で・・・
「・・・」
ミア、俺は胸なんて見てないぞ
「アルさん、朝からお疲れ様です!」
次に声をかけてきたのが治癒魔法を使うマリアだ。青い髪に碧眼の巨乳ちゃんで・・・
「アル?」
ミア、違うんだ
「なんだか久しぶりな感じがするね・・・隣の子は・・・?」
アミカがミアを見る・・・ミアは睨み返していた
「相棒のミアだ」
アミカの目も鋭くなった・・・何か視線で電撃が飛んでいるような気がする・・・
「へぇ・・・あなたがミアちゃん・・・私はアミカ・・・よろしくね?」
「"アルの恋人"のミア・・・よろしく」
ミアが俺の腕を取って抱きしめながら言う
ピシリっと空気が固まった・・・気がする。・・・何故だろう、物凄く胃が痛い。
ミアの唇が小さく動く
「泥棒猫が・・・」
怖すぎる・・・
次にマリアが自己紹介するがミアに睨まれると「ひぃ!」っと怯えてしまう
そこにカイムが割って入った
「まぁまぁ、俺達は腕を磨きにきたんだ。ケンカしにきたんじゃねぇ、そうだろ?」
意外とリーダーシップがあった
「意外とは余計だが・・・アル、稽古をつけてくれよ」
そうだな
俺は木剣を、カイムは木剣と盾を持って距離をとる。女性陣は観戦するようだ
「いくぜ!」
木剣と盾を持ったカイムが一直線に突っ込んでくる
「ふっ!」
左手の盾で体をカバーしつつ、そのまま俺に肉薄すると右手に持った木剣を上から振り下ろしてくる
「まぁまぁだな」
俺は左側に避けつつ振り下ろされる木剣に上から合わせるように自分の木剣を被せる
「おわっ!」
勢いよく振り下ろした木剣にさらに上からの圧力が加わった為、カイムは木剣を強かに地面に打ちつけてしまう
その隙に足を払って首に木剣を突き付ける
「まずは1本だ」
「・・・強いとは思っていたがここまで差があるのか」
年季が違うからな
「まぁ確かに剣を握ったのは2年位前だが・・・しかしお前のは12歳の技量じゃねーよ・・・」
よく言われるよ
カイムに手を貸して地面から起こさせる
「ありがとよ」
「構わないさ・・・それよりカイム、お前の刀剣術こないだより上がったろ?」
誰が聞いているかわからない、耳元でカイムに囁くように尋ねると驚いているようだ
「よくわかったな。あの依頼が終わった後に確認したら3になってたぞ」
カイムも小声で答えてくれる・・・やっぱりな
「あの時とは剣の速度がまるで違ったからな」
「良く見てるもんだなぁ」
カイムは苦笑しつつ離れて剣を構える
「さぁ、もう一回やらしてくれ」
「勿論だ、一回と言わず満足するまで付き合おう」
ふと横を見ると女性陣が固まっていた
「あぁ・・・男同士なのに・・・耳元で囁き合ってる・・・」
「もう一回ヤラしてくれ?満足するまで突き合おう?・・・そんな・・・」
「アル・・・衆道は・・・絶対だめ・・・」
何故だ・・・
その後何度もカイムは地面を転がった
「いやぁ!まじですげぇなアルは!これでもちっとは自信があったんだぜ!」
確かに・・・16歳で刀剣術3はかなり才能があるほうだと思う
「そうか?お前に言われるとなぁ・・・」
それは俺も何も言えん
「アル、次は私に稽古つけてよ」
いいでしょ?とアミカが聞いてくる
そこにミアが割り込んだ
「あなたの相手は私」
「私はアルにお願いしたんだけど?」
「あなた程度がアルと打ちあっても時間の無駄」
ミアが挑発する
「言ってくれるわね・・・」
アミカも乗ってしまったようだ
「アル、この女は私が始末する」
始末しちゃダメんじゃないかな・・・
「アル、そこで見ていて。私もあの時よりは強くなったんだから!」
流石に一朝一夕ではミアに勝てないと思うんだが・・・
女の戦いが始まった
「好きに打ち込んできて」
「・・・随分と余裕ね。あなたアルと同い年なんでしょ?お子様に譲るわよ」
「お子様に熱をあげてる癖に。年上は尊重する」
「!!ほんと言ってくれるわね!」
彼女たちの口撃は既に始まっていた
「それじゃあお言葉に甘えるわよ!」
アミカが剣を片手にミアに襲い掛かる
ミアはつまらなそうに右手の木剣を遊ばせつつ、もう左手の木剣で受け流す
その後何度か打ちあうもミアは左手で全て受け流していた
「おいおい、お前から聞いてはいたが・・・ミアちゃんもとんでもない使い手じゃないか」
「ああ、ミアも俺と小さい頃から一緒に鍛えてきたからな」
「はぅ・・・ミアちゃん凄いです・・・」
ミアはため息を吐きながら呟く
「そんなもの?」
「くっ!」
ミアが遊ばせていた右手でアミカを襲う
それからアミカは防戦一方になった
「その程度で・・・アルの傍に居たいと言うの?」
「ううう!」
アミカはなんとか鍔迫り合いに持ち込むが・・・
「鍛錬も経験も足りない」
ミアは思いきり力を入れて押し込んだ後にふっと脱力する
それだけでアミカは木剣を泳がせてしまう
アミカの右腕を打ち据えて木剣を落とさせると、残った木剣をぴたりと首筋で止める
「うう・・・!」
「私はどちらかというと魔法の方が得意。それでも、アルの足手纏いになりたくないから剣を鍛えた」
薄々感づいてはいたがそうだったのか・・・
ミアは呆然としているアミカの耳元で何かを囁く。その後マリアをチラリと見るが、アミカは驚いた様な顔でミアを見ていた
ミアはそれを気にも止めずにこちらに戻ってくると俺の腕を取る
「お腹すいた。アル、もう帰ろ?」
ミアがぐいぐい引っ張る
「おいおい、わかったよ。だからそんな引っ張るなって。・・・3人とも、悪かったな。また一緒に稽古をしよう
」
それだけ言うと俺は引っ張られるがままに訓練場を出る
「さっきアミカに何を言ったんだ?」
「内緒」
む、気になるがミアが俺に隠すということはそれだけ聞かれたくないことなのだろう
先日の負い目もあるしここは大人しく引き下がろう
「飯を食ったら依頼を受けような」
「病み上がりだから安全なもの」
「わかったよ」
俺に抱かれている腕の感触を愛おしく思いつつ、しっぽ亭へと帰って行った。
あの子・・・
アルとミアが去って行った方を向きながら考える
「どういうつもりなの・・・?」
ミアにとっては私もマリアも邪魔な存在のはず・・・
なのに・・・
「おい、どうした?腕が痛いのか?」
「治癒魔法を使いましょうか?」
二人が心配してくれる
「いえ、大丈夫、手加減されたから・・・」
それも悔しいが先程の言葉の意図がわからず私は困惑してしまう
彼女はこう言ったのだ
『今のアルは私のもの。でも、アルはきっとこれから大きな出来事に巻き込まれていく。だから剣でも魔法でもいい、アルを支えられるくらい強くなって。そうしたら"私は"認める、あの女にもそう伝えて。後は、アルの気持ち次第だから・・・』
アルが大きな出来事に巻き込まれるというのはなんとなくわかる
あの年であれ程の才を発揮しているんだ。本人の意思に関わらず厄介ごとに関わっていくことになるんだろう
「だから・・・その時にアルを支えられる人が欲しい・・・ってことなのかな」
私なら・・・そんなことを恋敵になりそうな人になんてとても言えない
「ミアは・・・本当に・・・アルのことを愛してるのね」
彼のことを一番に想っているからこその言葉だ
「勝てないよ・・・そんなの・・・」
ミアに剣も魔法も・・・そしてアルを想う気持ちも・・・
私は胸を締め付けられるような痛みに蹲ってしまう
だけど・・・諦めたくない・・・アルへの想いを・・・忘れることなんてできない・・・だから・・・
「やるしかないよね」
元々、強くなってミアからアルを奪うつもりだったんだ
「マリア、強くなるわよ!」
「え?・・・いえ、勿論です!」
マリアもアルに憧れている、さっきの彼女の言葉を聞かせてあげよう
「ミアとも・・・いつか友達になれそう」
彼女と仲良くなってアルを支えていく、それも一つの幸せの形じゃないかと感じていた
アルバート・ディレス 12歳 身長 158cm
スキル:刀剣術:7 火魔法:3 雷魔法:4 治癒魔法:3
装備 :上質な鋼の刀 変異リザードマンの革鎧セット
所持金:金貨5枚 銀貨78枚
ミア 12歳 身長 157cm Cカップ
スキル:刀剣術:4 風魔法:4 氷魔法:4 治癒魔法:4
装備 :鋼の忍者刀×2 変異リザードマンの革鎧セット
所持金:金貨18枚 銀貨103枚