「どうする?」
しっぽ亭から出たミアがこちらを見ながら呟く
「ん~どうすっかぁ、もう昼だしなぁ。とりあえずギルドに行くだけ行ってみよう」
「わかった」
最近ではミアが予定を決めることが多いのだが、朝のやり取りでよくわからん負い目があるのだろう、特に何も言ってこなかった。ミアの手を取るとゆっくりギルドへ向かって歩いていく。
季節は春で、これから夏に向けて暑くなっていくのだろうが今はとても過ごしやすいといえる。
ギルドにつくと、受付娘のエミリアが何やら冒険者であろう女の子と話しをしていた。
エミリアはこちらを見ると嬉しそうに手を振っていたが、邪魔しては悪いとだろうと軽く手を挙げ、挨拶だけしてカウンターの前を通り過ぎる。
ミアと共に依頼掲示板を眺めてみるが、めぼしいものはやはりない。
冒険者のランクはE級~A級にわかれている。モンスターや依頼のランクと=だと思ってもらっていい。
冒険者ギルドの依頼は早い者勝ちだ
勿論、ランクや能力が著しく足りない冒険者は受付ではじかれるが、そんなものをうければ怪我をしたり、最悪の場合には死んでしまう可能性があるので無理して受ける冒険者は少ない
ランク分けされたものを確認するが、もちろんAランクの依頼なんてない。Aランクに指定される討伐依頼などは、ほぼ災害級モンスターの討伐依頼みたいなものだ
近隣に出現するだけで軍隊が動いたり、多数のC級冒険者(上級冒険者)以上を集めて討伐するようなイカれたモンスターを相手にするわけだ
頻繁に依頼なんてくるはずがない。もし来ていたら、国なんてもう跡形もないだろう
例え人類最強と呼ばれるA級冒険者といえど、いつもいつも危険な依頼ばかりを受けているわけではないのだ
それ以外にも常駐依頼として、ポーション用の薬草採取や昨日行った野うさぎ狩りのような必需品の狩猟依頼などがある
これらは需要があるため、いつでもギルドは納品を受け付けている
俺とミアも基本的にはこの辺りの依頼とCランクからBランクの討伐依頼を受注し、日銭を稼いでいるというわけだ
もうひとつ、ダンジョンというものがこの世界には存在する
ダンジョンはミルスティン周辺にはないが、バレシア王国内では俺達が1年ほど前まで居た[迷宮都市マルト]にあるダンジョンを含め、計3か所存在している。
ミルスティンに戻ってくるまで俺たちは迷宮都市マルトで毎日のようにダンジョンへ潜っていた。
ダンジョンには財宝が眠っている。何処から出てくるのかはわからないがダンジョンには時間経過でランダムな場所に出現する宝箱があり、そのなかには強力な装備品や多額の金銭が入っていることがある
また、ダンジョンに出てくるモンスターを討伐するとモンスターの死体は消えてしまうかわりに"魔石"というものを落とす
魔石はこの世界での営みにはかかせないものだ
街頭のランプや部屋の明かり、食材を冷やすための冷蔵庫など種類は多岐に渡るが、それらはまとめて"魔道具"と言われている。魔道具は魔石なしでは動かすことはできない。
ギルドは冒険者からダンジョン産の魔石を買い集め、各地から来る商人へ売却していく。
その代わり、冒険者はダンジョンへ潜るときに必要なサポートを受けられる、というわけだ。
ダンジョンへ潜る冒険者は魔石を集めつつ、一獲千金を狙って宝箱を探しながら探索していくのが一般的だ。
改めて依頼掲示板を確認し、ボヤいてしまう
「見事に何もないな・・・」
「ごめん・・」
ミアが小さくなっていく。あぁいいんだよミア、お前はこんなにもかわいいじゃないか。
いつもなら、ふらっと二人で遠くまで狩りをしに行ってもいい。泊りがけで狩りをするなど、冒険者には当たり前のことだ。
しかし、今はそうもいかない
メインの武器は研ぎに出しているし、防具も修理中だ
何があるかわからない冒険で必要以上のリスクを被るのは避けたかった
俺達には、余り無理をできない理由があるからな
何より、今は夢のマイホームを建設中(実際は図面を引いてもらっている最中だが)なのだ。何時大工からの相談がくるかわからない
あまり遠くへ行き過ぎればそれだけマイホームの建築が遅れてしまうだろう
二人でさてどうするかと悩んでいると、エミリアから声がかかった
「お寝坊のお二人さ~ん、ちょっといいですか~」
失敬な、ミアが発情していたせいで遅れただけだ
う、冗談だよミア。だからそんなに睨まないでくれ・・・
「・・・」
何か言ってくれ、お前の目は怖すぎるんだ
「ふんっ!」
ミアがぱっと手を離して俺から離れて行ってしまう。あぁ、俺の幸せが・・・
「あらぁ?ケンカですかぁ?じゃあ、アルさん!私とデートとかしちゃいます!?」
エミリアが言うとミアがものすごい速度で戻ってきて俺の腕を取る。お帰り、俺の幸せ
「ケンカなんかしてない」
うぅ~っと唸り声をあげてエミリアを威嚇する。かわいいので撫でる
「もう、見せつけないでくださいよぉ。・・・お二人さん、お暇ならこの子と森に行って薬草採取でも手伝ってあげてくれませんか?」
はて?この子とはどの子だろうとエミリアの視線を追うと、入ってきたときにエミリアと話し込んでいた冒険者風の少女がいた
年の頃は16歳くらいか、身長は150cmくらいで腰にダガーを刺している。茶色の髪を背中の真ん中くらいまで伸ばしていて頭からは猫耳がぴょこんっと生えている。ふむ、猫族だな。乳は・・・まぁそれなりか。
「何故胸の大きさを確認する必要があるの?」
ミア、心の中を読んではいけないんだぞ
「アルはさっきしゃべってた」
そうか、いけないお口だな
「あ・・・あの!」
猫耳娘が声をかけてくる。装備を見るに新人さんなんだろう、ここは優しく対応しよう
「なんだい?」
「あの・・・私!村から出てきたばかりで知り合いがいないんです!でも一人で依頼に行ってモンスターに襲われると思うと怖くて・・・。冒険者の先輩さん・・・なんですよね?お邪魔でなければパーティーにいれてもらえないでしょうか!?」
「邪魔だから嫌」
「ひぅ!」
ミア、さっき優しくしようって言ったろ!
「なんのこと?」
いけないお口は大切な所は伝えていなかったようだ
「ひぅ・・・ごめんなさいぃ・・・やっぱり、無理ですよね。」
泣きそうなくらい落ち込んでいる。流石に可哀想だ
「いやいや、いいよ。確かに俺らは先輩だ。年も近いだろうし、一緒に行ってみようか」
猫耳娘の表情がぱぁ~っと明るくなる。
「アル、本気?」
ミアが俺にだけ聞こえるようにつぶやいてくる。勿論、本気だとも
「A級の私達の中にE級の新人を入れるの?」
薬草採取にAもEもないだろう。
「・・・わかった。今日は私が悪いから、アルに任せる」
あまり納得していないようだが、話を進めてしまおう
「ありがとうございます!朝からパーティーを組んでくれる人を探してみたのですが、新人ということで断られ続けていて・・・ほんとにありがとうございます!」
「いやいや、薬草採取くらいでそんな・・・ってそうか。朝からいたら、最初はDランク以上の討伐依頼とか受ける冒険者ばかりだもんな、そりゃ断られるよ」
「はい・・・考えなしの私が悪いんです。あ、私はミミカって言います!今日はよろしくお願いします!」
「ああ。俺はアルバート、こっちはミアだ。今日はよろしくな!」
「はい!」
「やっぱりアルは、女の子に甘い」
男だからな
「ふふっ、アルさんですからね」
エミリア、何を笑っている