「エミリア!」
俺はギルドへなんとか辿り着くと馴染みの受付嬢の名を呼ぶ
「わっ!・・・なんですかいったい・・・誰・・・ですか?」
そうだった、俺は成長していたんだったな・・・
「俺だよ!アルバートだよ!」
「アルさんですか?・・・確かに似てますね・・・なんてイケメン・・・けどアルさんはあなたほど年を重ねていませんよ?あなた私と同じくらいじゃないですか?」
彼女は信じていないようだ
気持ちが逸って仕方がないがここは一旦落ち着くべきだ
「エミリア、これを見ればわかるだろう?」
ギルドの登録証を渡す
「・・・確かにアルさんの物ですね・・・何処で拾ったんですか?」
くそっ・・・まだ信じてもらえないか!
俺は刀を引き抜くと腕を斬りつける
「これで調べてくれ」
「そうですね・・・でもそんな豪快に斬りつけなくても・・・」
エミリアは俺の腕から血を少し採ると魔道具で解析にかかる
「・・・このスキルは・・・本当にアルさんですね・・・何故そんなお姿に?」
天才は体の成長も早いのかなぁっとボヤいている
「後で説明する、だから協力して貰えないか?」
「協力ですか?」
「・・・ミアが姿を消した。俺の所為だ・・・だから俺は彼女に謝らないといけない」
「ケンカでも?」
「ああ、だが俺が一方的に悪い。ミアの現在位置を魔道具か何かで調べることはできないか?例えば登録証を目印にしてとか・・・」
そんな話は聞いたことがないが登録証を作るには魔道具が使われている。藁にも縋る思いで頼み込む
「可能です。でも良質な魔石を使いますので物凄くお金がかかりますよ?」
よかった・・・本当にできるのか
「ああ、構わない。今すぐやってくれ」
「わかりました・・・金貨で20枚程ですが・・・」
ぽんっとカウンターに金貨を出す
「はい。確かに・・・」
エミリアは金貨を数えるとすぐにカウンターの裏へと引っ込んだ
少しすると彼女は戻ってくる
「どうやらミルスティンと別の街を繋ぐ街道を北に向かっているようですね、速度的には馬車か何かに乗っているようですが・・・」
「そうか!ありがとう!」
「あ、気を付けてくださいね!最近その街道沿いには盗賊が出るとの噂があります。ギルドでも情報を集めていますがまだはっきりとした情報はないんです。だから護衛の冒険者を雇う依頼もまだ来ていません・・・」
俺は冷や汗をかく
今のミアには戦う力が無いと手紙に書いてあった。何時ものミアなら山賊何て目じゃないが、それが本当だとすると・・・
いかん!
俺は無理矢理体を動かして街の厩舎に向かい、馬を借りて街道を進む
もうアミカに事の次第を伝える余裕はない・・・確実に恨まれるだろうな。だが俺にとってはミアが全てだ。思い出したんだ、最初の気持ちって奴を・・・
逸る気持ちを抑えながらミアの事を想う
「ミア、無事でいてくれ!」
私は乗り合いの帆馬車に乗ってミルスティンの隣の街を目指していた
「ぐすっ・・・アル・・・」
今頃はアミカを抱いているのだろうか・・・そう思うと涙が止まらない
膝を抱えて顔を埋める
今まで幸せだった・・・アルに助けて貰ってからずっと・・・なのに・・・
「アルを・・・殺してしまった」
信じられないことだ
「私は・・・恩を仇で返した・・・なんで傍に居るだけで満足できなかったの・・・」
その我儘のツケがこれだ。
アルの寿命を縮ませて彼の大切な命を私なんかと共有することになった。罪悪感でとてもじゃないけどアルの傍には居られなかった
「アルと磨いてきた力も失ってしまった・・・」
私の力はアルの傍に居るために必死に鍛錬して身につけたものだったのに・・・
急激な体の成長で今も満足に体は動かない。スキルが無くても技量は失われていない。だけど今だけはゴブリン一体倒せるかどうかも怪しい
「全て・・・私が悪い・・・」
ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・アル
「それでも・・・アルを想うことだけは許してください・・・」
どうしてもアルへの気持ちは溢れてしまう
「大好きなの・・・アル」
蹲って泣いていると突然馬車が止まる
「なんだ?」
「道に石でもあったのか?」
「急いでるのにやーねぇ」
他に乗っていたお客さんも騒ぎ出す
すると、外から野太い男の声が聞こえた
「俺達は盗賊だ!中に居る奴らは大人しく出てこい!」
馬車の中が更に騒がしくなる
「おい、嘘だろ?」
「ただの噂じゃなかったのかよ!」
「嘘でしょ・・・?嫌よ!こんなの!」
・・・まずい。いつもの私なら山賊程度物の数じゃない
でも今は・・・
「もう御者は死んじまったぜ!早く出てこい!矢を射かけちまうぞ!」
私を含めて4人居た馬車の乗客は大人しく外に出る。外には10人程の薄汚い恰好をした男達が馬車を取り囲んでいた。幾人かは弓を構えて私達に狙いを定めている
「お前達は奴隷商人にでも売りつける、諦めて大人しく捕まるんだな」
隣の女性は怯えて泣き出してしまう
・・・力がないだけでいつも弱者は奪われる。
それが許せず、怒りでギリッと歯ぎしりをする
「おい、見ろよ!女が二人も居るぞ!輪姦そうぜ!」
「まぁまて。そんなのはアジトに戻ってからでも遅くない。早く捕まえてずらかるぞ」
ふざけるな・・・誰がお前らなんかに!私の体はアルだけのものだ!
男たちを睨みつけていると指揮を執っているらしい男がこちらに目を向ける
「ん・・・?お前は何処かで見た顔だな・・・」
「盗賊に知り合いなんていない」
「まぁ、そうだろうな」
「・・・」
今の私じゃ盗賊一人倒せはしない。でもこのまま捕まるなんてできない。アルをこれ以上裏切る訳にはいかない!
だけど私が下手を打って殺されてしまえば今度こそアルは死んでしまう・・・
・・・どうすればいいの
私が考え込んでいると先程の男が騒ぎ出す
「あっ!てめぇはっ!その眼の色と髪色・・・忍者刀に犬耳!あのクソガキと一緒に居た獣人のメスガキじゃねーか!」
なに?
「"ハック"、どうした。知り合いか?」
はて?何処かで聞いたような名前だ
「こいつだよ・・・こいつともう一人のクソガキの所為で俺は冒険者を辞める羽目になったんだ。恥かかされて・・・パーティから追放されてな!」
記憶に少し引っかかった。この男は・・・初めて私とアルがミルスティンの冒険者ギルドに訪れた時、絡んできてお漏らしした奴だ
あれから一度も見かけなかったが盗賊になっていたとは・・・
「こんな所で出会うなんてなぁ。お前ら気をつけろよ、こいつはかなりの使い手だ。だが人数は圧倒的に有利だ。おい獣人、お前も抵抗しようなんて思うなよ?」
ハックと呼ばれた男がちらりと周りの盗賊たちに目を向け、矢を番えた弓を私に集中させる
「お前・・・随分と色ぽくなったなぁ。見たことがないくらい美人じゃねーか!・・・よし、お前は売らん。俺のペットになれ」
ふざけるな・・・
「あのクソガキが居ないってことはだ。大方飽きて捨てられたってことだろ?」
違う!アルは私を捨てたりなんてしない!
「ならたっぷり可愛がって俺専用の女にしてやるよ」
ハックと呼ばれた男の眼が色欲に染まり、吐き気がするほどの嫌悪感に襲われる
嫌だ!私はアルの女だ!
「気が変わった。お前は今ここで犯す。前の借りがあるからな・・・ぶっ壊れるくらい犯して犯して犯しぬいてやるよ!!」
どうすればいいの・・・私だけの問題ならここで死ぬまで暴れればいい。こんな男に犯されるくらいなら死んだ方がマシだ
・・・だけど
「アル・・・」
あなたまで死んでしまう・・・そんなことはもう許されない。
男が近づいてきて私の腕を掴む
「嫌!離して!・・・助けて!アル!」
ここには居ない、愛しい少年の名を叫ぶ
「アルってのはクソガキの名前だったか?あいつはこねーよ!お前を捨てたんだったら今頃他の女とよろしくやってるんだろーぜ!」
ハッとした。そうだ・・・アルは今アミカと・・・
涙が出る・・・どうして神様はいつもこんなに厳しいの・・・力がなくなっただけでアルも・・・私の自由も・・・全て奪われる・・・理不尽な世界・・・
これではまるでアルに助けて貰う前に逆戻りしたみたいだ
「嫌だよ・・・アル・・・」
あなたに助けられて・・・私は生まれ変わったのに・・・
「どうして・・・」
私は・・・あなただけの女でいたいのに・・・
「助けて・・・」
もうアルは私を助けてくれない。あの時とはもう違うのだから・・・
それでも・・・愛しい彼の名を呼んでしまう
「助けて!アルバート!!」
「当たり前だ」
瞬間、世界が光に包まれる。鼓膜を破る程大きな音が鳴り響き、その場に居る全員が蹲ってしまう
「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!」」」
「なに!?何が起きたの!?」
「とんでもない光だ!雷かこれは!?」
「晴れてるのにそんなもの落ちる訳ないだろ!」
光に目を焼かれ、馬車に乗っていた人達は口々に騒ぎ出す。私も目を刺激されて前が良く見えないけど・・・雷?
「くっそ!なんなんだこれは!雷が落ちやがった!」
山賊達からはハックと呼ばれた男の声だけがする
雷なら良く知っている。大好きな男の子が扱う魔法の中に同じものがある
まさか・・・
「ミア、遅くなってすまない。怪我はないか?」
涙が溢れた・・・その声は今朝私の所為でちょっとだけ変わってしまったけど・・・
「今、助けるからな」
力に溢れる・・・私の大好きな男の子の声だ・・・
「お前との約束を果たす時だ」
いつも私を引っ張てくれて・・・私を愛してくれる・・・ここには来るはずのない人・・・
「アル!!」
視界が戻る。私の前に守るように立って刀を構え、男と対峙する大好きな少年の後ろ姿があった
「ミア、お前は俺が守る」
ミアを背中に庇い、残った盗賊の男と対峙する
「よくも俺のミアに汚い手で触ってくれたな?」
震える手で刀を構える・・・くそ、力が入らん
「貴様は俺が直接殺す」
本当は魔法で片付けたかったんだがミアが近くに居たからな・・・
「なっなんだてめぇは!」
俺の魔法を唯一受けなかった盗賊が剣を構えて訊ねてくる
「俺か?俺はこの女の子の恋人だよ。まぁ捨てられそうなんだがな」
震える手にしっかりと力を込めて男を見据える
「お前を片付けて詫びなければいけない。さっさとかかってこいよ」
ミアは俺を許してくれるだろうか・・・
「なめやがって!・・・ん?てめぇはあのクソガキ!」
貴様なんぞ知らんが
「俺はてめぇらのせいで盗賊なんかやる羽目になったんだ!」
なんのことだ
「アル・・・お漏らし・・・」
ミアが後ろから教えてくれる。それだと俺が漏らしてるみたいじゃないか
「あっ!あれか!俺とミアに絡んできて刀を突き付けたら漏らした奴か!」
懐かしいじゃないか
「こんな所で何やってんだ、冒険者ならモンスターでも倒しとけよ」
「うるせぇ!てめぇらの所為で俺はパーティを追放されたんだ!」
「それはお前が漏らしたからじゃないのか?自分の品の無さを恨めよ、しつこく絡んで来たのが悪いんだろうが」
「ふざけやがって!ぶっ殺す!」
男は剣を上段に構えて迫ってくる
ふむ、その程度の腕では遅かれ早かれ冒険者なんて出来なくなっていたんじゃないだろうか・・・おっと、謙虚にならなければ。来世では真面目に生きてくれな
「来てくれて助かるよ、俺は今あまりうまく動けなくてな」
男の剣を受け流して返す刀で首を狙う
「じゃあな」
「ッ!待っ」
最後まで言う前に男の首を撥ねた
「終わったな」
盗賊は10人いたはずだ。だが雷魔法で9人を狙い打って焼き殺し、最後の一人も首を撥ねた。これで安全のはずだ
俺は振り返って愛しい少女を見つめる
「ミア・・・遅くなってすまない」
彼女は金色の瞳に涙を溜めて俺を見上げる
「アル・・・どうしてここに?」
彼女を抱きしめて囁く
「帰ってから言い訳をさせてくれ」
ここは血の臭いが凄い、モンスターが寄ってきたら今の俺達じゃ一溜まりもない
「アル・・・助けてくれてありがとう。嬉しかった・・・でも私は・・・」
「頼む、俺の前から消えないでくれ!俺はお前とずっと一緒に居たいんだ!」
俺に言い訳をするチャンスをくれ・・・
「・・・わかった。一度帰ってから話そう」
ミアもここで問答することが危ないとわかってくれたようだ
他の生き残った人達に目を向ける
「俺達はミルスティンへ帰る。あんた達はどうする?」
「待て、俺も戻るぞ!」
「私も!」
「俺もだ!」
そうか、ならできるだけは守らないとな・・・
街へ戻ってギルドへ報告し、しっぽ亭の部屋へと戻る
「アミカはどうしたの?」
「会っていない」
ミアの目が吊り上がる
「バカ!どうして・・・約束をしたんじゃないの!?」
「ああ、だが破ってしまったな」
本当に最低な男だ
「なんで・・・私のことなんて・・・放っておけばよかったのに・・・」
「それは無理だ。俺の中の一番はミアの傍に居ることだ」
「アミカを抱きに出て行った癖に・・・」
「すまない。それは言い訳の仕様がない、俺が愚かだった」
自分の中で何が大切か今回のことでやっとわかった
「今からでも行ってきて!まだ間に合うかもしれない!」
「ダメだ!!」
そこだけは譲れない
「今はお前と話をする。そしてその結果がどうなろうがもうお前以外の女は抱かない。そう決めた」
「なんで・・・どうして・・・私はアルに・・・ひどいことをしたのに・・・」
「本当にひどいのは俺だ。お前を傷つけてばかりだ。こんなことになって本当にすまない・・・」
俺が馬鹿だったんだ・・・
「・・・理由を話して。何故アミカを抱きに行かなかったの?」
「向かう途中で気づいた。俺は結局、お前のことしか考えていなかった。そんな状態では彼女に失礼だと思ったし俺にもその気がなかった。もう一度お前と話しをして、結局は断るつもりだった」
「アミカとマリアのことを愛しているって言った・・・」
「ああ、そうだな。今でもそうなのかも知れない・・・だが、お前とは比べられないよ。その想いは断つ」
もう迷うことは無い
「嫌、信じられない。私を置いてアルは行ったんだ。アミカを抱いてから私を抱くとも言った!なのに今更そんな!」
ミアは涙を流しながら俺の胸を殴りつける
「もう放っておいて!・・・これ以上・・・惨めになりたくない・・・期待、したくないの・・・」
すまない・・・
「俺は・・・帰って来たらお前が居なくて・・・お前の手紙を見て・・・自分に絶望したよ・・・」
何時の間にか、俺は天狗になっていた
「周りの女の子にちやほやされて自分にとって何が一番大切か見失っていたんだ」
俺の一番は、ミア・・・お前なんだ
「俺が一番しなくちゃいけないのはミア、お前を傍で守り続けることだ」
「・・・」
「お前の許しがあるまで俺はお前に手を出さない。お前が俺と恋人なのが嫌だと言うなら解消してもいい。だが、お前を守ることは許可して欲しい。どんな形でもいい、傍に居たいんだ」
「嫌・・・」
「できるだけお前の視界に入らないようにする」
「嫌!」
「気配を断つ技術も磨こう。お前に迷惑はかけない」
「嫌なの!」
「どうしたらいい・・・どうしたらお前を守ることを許可してくれるんだ」
「違う!そうじゃない!」
ミアが俺を見つめてはっきりと喋る
「私のことが好きなら抱いて!恋人でいてよ!ずっと傍で守ってよ!わっ私だけを・・・見て・・・私だけを愛してよ!」
ミア・・・
「大好きなの・・・アルのことが大好きなの!何をしててもどんな状況でも、私はアルのことしか考えていなかった!ずっとずっと・・・好きだったんだもん・・・ふぇぇぇぇぇぇぇん!」
ミアを強く抱きしめる
「すまなかった・・・本当にすまなかった!俺は愚かだった・・・一番大切なはずのお前のことを蔑ろにしてしまっていた!」
俺は俺の大切な人達や自分自身に誓った
「二度と迷いはしない。俺は、お前だけを愛するともう一度誓う」
「・・・こんな私でいいの?」
「お前だからだ」
「すぐ嫉妬する・・・」
「可愛いじゃないか、お前が嫉妬しない様に気を付けるよ」
「私にはもう何の力も無い。アルの傍に居る資格はない・・・」
「誰がそんな資格を作ったんだ。俺は作ってないぞ」
「あなたを一度殺したのに・・・」
「自業自得だ、今までの俺はお前に殺されて当たり前だった」
「・・・アミカやマリアをけしかけたのは私・・・私が余計なことをしなければこんなことは起きなかった」
「そもそも俺がアミカを助けた時にキスをしたのがこの騒動の始まりだった。全て俺が悪い。二人には俺から謝っておく」
「私も謝る・・・私だって最低だった。彼女達をアルの盾にしようとした」
「そんなつもりだったのか・・・なら、一緒に謝りに行こうな」
抱き締めあって愛を囁く
「・・・もう一度だけ、アルを信じる」
「ありがとう」
「でも許すつもりはない。定期的に話題に出して戒めにする」
「お前の好きにしてくれ」
ミアにキスをする
「ん・・・ちゅ。アル、彼女たちの所に行こう」
「ああ、わかった」
「今日はえっちしない。アミカに余りにも失礼」
「そうだな」
「でも明日はたくさん可愛がって。元々その予定だった」
「任せろ」
俺達は、適度な距離をとってアミカの泊っている宿に向かった
アルバート・ディレス 13歳(16歳相当) 身長 165cm→175cm
スキル:刀剣術:7 火魔法:4 雷魔法:5 治癒魔法:4
装備 :上質な鋼の刀 変異リザードマンの革鎧セット
所持金:およそ金貨150枚
ミア 13歳(16歳相当) 身長 163cm→168cm D→Fカップ
スキル:
装備 :鋼の忍者刀×2 変異リザードマンの革鎧セット
所持金:およそ金貨170枚
テンプレは繰り返されました