「良い武器屋ねぇ…」
「あぁ、ここは鉱山都市だ。良い武器を扱っている場所くらいあるだろう?」
ミアと露店を巡っていると、武器も扱っていた店を見つけたので立ち寄ってみた。他にも下着や日用品、アクセサリーなんかも取り扱っているようだ。
ミアは綺麗な髪飾りを物欲しげに見ている。後で買ってやるからな。
「いやそれがよぉ。俺も取引ついで立ち寄ったここで店を開いてるだけなんでな。詳し事は知らねぇんだが…」
ミアはそーっと髪飾りに手を伸ばしている。可愛いのでそのままにしておこう。
「なんでも、鉱山でとあるモンスターが異常繁殖したとかでな。その影響で今は鉱石の採掘自体が止まっちまってるらしいんだわ。俺も鉱石を仕入れにきたのによー」
商売あがったりだ、と露店の店主は嘆いている。
「成程、つまり?」
「良い武器ってのはすぐに売れちまう。こうなってからもう一月以上は経つらしいぜ?もうまともな武器はこの辺の店じゃ売ってねぇだろうなぁ」
参ったな。これじゃあ武器を新調するってのは無理か。だが、
「ここにだって冒険者ギルドはあるだろう?彼らは何をしているんだ?」
モンスターを討伐するのは彼等の仕事のはずだ。
「いや、頑張ってはいたようなんだが…」
……頑張ってはいた…か。なら今は?
「おめぇ、鉱山で繁殖するモンスターってなんだと思う?」
突然、店主は話を変えてきた。まぁいいが…ふむ?
「普通に考えたら暗い場所を好むモンスターか…」
「そこに好物があるモンスター。食べ物があればそこに集まるのは必然」
髪飾りを手にとり、しげしげと眺めながらミアが口を開く。
ミアはじーっと髪飾りを見つめた後、突然興味が無くなったように元の場所に戻した。どうやらお眼鏡には叶わなかったらしい。…と思ったら値札を見て諦めただけのようだ。む、結構高いな。
「好物と鉱物をかけたのか。うまいな、ミア」
「うるさい」
げしげしと足を蹴られる。やられっぱなしは癪に合わないのでお返ししてあげよう。店主に見えない様にいやらしく尻を撫でた。うっかり指先が彼女の秘所をつついてしまったが些細なことだ。
「ひゃっ!」
「な、なんでい!?…ま、まぁいい。そこのお嬢ちゃんの言う通りさ。鉱物を好んで食べるモンスターが集まっちまったらしいぜ」
ミアは腰が抜けてしまったのか頬を染めながら腕にしがみ付いてくる。鋭い目つきで睨まれるが構わない、俺はこの視線が堪らなく好きだからな。
「成程。鉱物を好んで食べるってことは、鉱物を消化出来るってことか」
大体察しがついた。
「ああ、なんでも腐食液を飛ばしてくるらしくてな。退治に行った冒険者の装備を溶かしちまうもんだから、どうにもならないらしい」
冒険者というのは近接用の武器を扱う剣士や戦士が大半だ。武器を溶かされてしまえばモンスターに対抗できるはずもない。だからこんな事態に陥っているのだろう。
「おまけに鉱物を食べている所為か物凄く硬いらしくてな。生半可な武器じゃ傷も負わせられないらしいぜ」
詳しくないと言いつつ、かなりの情報通じゃないかこの店主。
「魔法が使える冒険者でもいれば話は変わるんだろうが…そんな冒険者がひょいひょい現れる訳ないしなぁ」
「はぅぅ…」
店主はため息を吐いていた。ミアは艶めかしい吐息を吐いているが…。
しかし店主の言う事はもっともなことだ。魔法が使える人間というのは希少で…ましてや魔法が使えるなら冒険者にならずとも生きいくには事欠かないだろう。魔法が使えるのに態々冒険者になる奴なんてただの馬鹿か…物好きな奴だけだ。
「アル…」
「そんな目で俺を見るな…」
つまり、俺達は余程の馬鹿か物好きなんだろう。
「邪魔したな。これを売ってくれ」
俺は先程ミアが熱心に見ていた髪飾りを指さす。
「お、毎度あり!随分と甲斐性があるじゃねぇか。そこの嬢ちゃんにプレゼントかい?」
「ああ」
「アル…でも…」
確かに高いが、俺達の稼ぎからすれば払えない額でもない。むしろ何を遠慮しているんだ?
「この街にきた記念だ。贈らせてくれ」
「…ありがとう。アルバート」
まるで花が咲いたかのような笑みに、胸を鷲掴みされたような錯覚に陥る。くっ!可愛い、可愛いよ俺のミア!
だが紳士な俺は、忘れてはいけないもう一つの物もしっかりと購入するのだ。うむ、いい生地だ。少し作りがえっちだがミアには丁度いいだろう。
「あ、これか?毎度あり。…それも嬢ちゃんにプレゼントか?」
「ああ、すぐに使うことになりそうだ」
「…あんたも好きなんだなぁ」
店主は下品な笑いをしているがそれは勘違いだ。別にいやらしいことに使う訳ではない。
俺は話の最中ずっと彼女の尻を撫でていた。ついでに女の部分もだ。つまり、
「あぅ…歩き辛い。早く着替えなきゃ…」
ミアはとんでもなく濡れてしまっていたのだ。…あながち勘違いでもないか。
路地裏で下着を履き替えたミアを連れ、今度は冒険者ギルドを探して街を練り歩く。彼女は下着を履き替えた時に先程買った髪飾りも既につけていたようだ。うむ、似合うな。
「可愛いよ、ミア。似合ってる」
「あぅぅ…アルぅ…。一度宿に帰って…」
ミアはもじもじとしている。どうやら贈り物の嬉しさと、尻を撫でられすぎた所為で発情してしまったらしい。
今のミアは私服だ。薄い生地の服の上から、胸の先端が激しく浮き出てしまっているのがわかる。それを隠すようにして俺の腕をぎゅっと掴んでいるのだ。結果、大きくやわからな胸が俺に押し付けられている訳で…くっ。俺も興奮して下半身に血が集まって来てしまった。
「わ、悪かった。今夜また一杯可愛がってやるから、今は我慢してくれ」
本当は今すぐにでも彼女を抱いて無茶苦茶にしてやりたい。発情したミアはとんでもなくスケベで俺好みだからだ。一物をいれてやるだけ狂ったように善がり、何度も何度も精を欲する。それでいて天使の様に可愛いのだから最高だ。だが…。
「うう、アルは酷い男。……でも好き…」
確かに俺が悪いんだが…そう。記憶が正しければ今朝も何度か致したはずなのだ。ミアは本当に性欲が強いな…。彼女には悪いが、楽しみは夜までとっておくことにしよう。
そのまま歩いていると、ふとミアが呟いた。
「…折角、ここまで来たのに…」
彼女に目線を向けると、落ち込むようにして犬耳がしゅんっと垂れているのが見えた。俺の気持ちを汲んでくれているのだろうが、落ち込んでいる彼女は見たくない。犬耳を優しく持ち上げてあげよう。
「あぅ」
「仕方ないさ。事情が事情だ」
確かに、新しい武器を手にれることを目的としてここまで旅をしてきたのだ。顔には出さないようにしているが落胆は大きい。
…そうか、だから彼女は髪飾りを諦めようとしたのか。武器を手に入れることが出来なくなった俺に気を遣ったのだろう。…優しいな、ミアは。
「ごめん。私が…」
「それはもういい。今は別の方法を考えよう」
武器は手に入らなくてもいい。俺には、最高の相棒がいるのだから。
ミアと腕を組み、たまに周りの視線を受けながら歩いていると何処か寂れた様子の大きな建物を見つけた。看板にはおなじみのマークがある。ここがこの街の冒険者ギルドだろう。
扉を開けようとミアの腕を解く。彼女は一瞬寂しそうな顔をしたが、すぐに何時もの無表情に戻った。
「いらっしゃ~い」
扉を開けるとやる気のなさそうな声が聞こえた。女性の声だ。何処に行っても冒険者ギルドの受付は女性なのか?
その女性はこちらを見ることもせず、ぐだぁーっと受付の机に向かって上体を寝かせていた。本当にやる気がないな…。
ミアは俺から少し離れてギルド内を見渡している。俺達以外にはこの受付嬢しかいないようだ。
「埃っぽい。掃除が行き届いてない」
俺の天使はお怒りだ。
「依頼は受けられるか?」
俺がそう声を掛けると、女性はものすごい勢いで上体を起こした。
「えっ!?冒険者!?戻って来てくれたの!?」
彼女は喜色満面で俺達を見る。だが、次第にその表情は曇っていった。
「だ、だれ?」
「俺はアルバート、こっちはミアだ。昨日この街に来たばかりの冒険者でな」
特に隠すことも無いので素直に名乗った。
「そう…なんだ。…私はこのギルドの受付嬢、名はハンナと言います。長旅、ご苦労様でした」
先程とはうって代わり、女性はぺこりと頭を下げる。綺麗なお辞儀だった。俺もとりあえず頭を下げておく。
「さっきのはどういう意味だ?」
「え?」
「戻ってきてくれただなんだと言っていただろう?確かに今は昼下がりだ。ここに冒険者がいないことは不思議じゃない」
だが、それにしては備え付けられている椅子や机に埃が溜まりすぎている。例えミアの言う通り掃除をしていなかったとしても、人が使えばここまで埃はたまらないはずだ。
俺の問いに対し、受付嬢は少し不安気な表情で口を開く。
「…今来たばかりのお二人に…お聞かせするようなことではないのですが…」
「構わない。俺達だって冒険者だ」
どうしてこんなことになってしまったのか、事情くらいは知りたい。まぁ、大体予想はついているが。
「……わかりました。切っ掛けは一月ほど前のことです」
そうして、ハンナはぽつぽつと事情を話し出す。初めからわかっていたことだが、露店の店主から聞いた話に付け足した様な内容だった。
「成程。武器を失った冒険者は割に合わないと鉱山に行かなくなる。ギルド側は当然見過ごせないから冒険者に圧力をかける。結果、他所の街に冒険者が流れてしまったと」
「はい…」
ハンナはしょんぼんりとしている。
まぁ、商売道具を失ってまでこの街に尽くそうという冒険者は少なかったのだろう。そもそも鉱山に出てくるモンスターは非常に硬く、通常の鉄や鋼で作られた武器ではまともに戦うことすら難しいのだそうだ。あの店主が言っていた通りだな。
それでいてそのモンスターが吐く腐食液は、当然ながら人体をも溶かしてしまう。まぁ、鉱物を溶かして食べているのだからそれも当たり前か。
そして何より厄介なのが…。
「やつらの数が多すぎるんです。アレが1匹や2匹ならギルドだって莫大な報奨金を掛けられました。ですが…」
……数が多すぎるため、1匹当たりの報酬単価はどうしても低くなってしまう。そうしなければギルドの財政が回らないからだ。その事実に、この街の冒険者たちは嫌気がさしてしまったのだろう。
仲間が生きたまま溶かされ、自分の商売道具も無残に破壊され、それでいて報酬は少ない。
つまり、リスクとリターンが見合っていなかったのだ。
「成程、事情はわかったよ。…それで?ギルド側だって何もせずに手をこまねている訳じゃないんだろう?」
「…はい。当然ながらギルドの情報網を通じて他所のギルドにも助けを求めました。ですが何処も人手不足は深刻らしく、例え来てくれたとしても…」
そういえば山賊団の一件でもそうだったな。意外と冒険者の数は足りていないのかもしれない。
そしてこの街、鉱山都市カルツは他所の街とはだいぶ距離が離れてしまっている。応援が来るのにしても時間がかかってしまうのだろう。俺達だって前の街からここに来るまでに2か月程かかってしまったしな。まぁ、急いでこなかった所為もあったが。
ミアとえっちばかりしていた所為だろう。半分以上はミアの所為だ。
「今はギルド職員に緘口令をしき、街の人々にはこの事実は伝わっていません。ですが…」
それも時間の問題ということか。そもそも、この街は鉱山経営で成り立っているはず。それが無くなってしまえばどうなるかは明白だ。先の店主の様に気付き始めているものだっているだろう。
冒険者ギルドに、この状況を打破する力が無い…ということを。そうなればこの街の景気は悪化の一途を辿る。最悪、このまま街自体が無くなってしまう可能性だってあるだろう。
「国は動かないのか?」
「…一応、領主様も手を打ってくれているらしいのですが…」
…貴族の面子というやつか。地方を束ねる領主は王国の干渉を嫌う傾向にある。これは俺も貴族の端くれだからな、ある程度事情は理解できる。
この国の資金源でもある鉱山の運営が円滑に出来ていないと判断されれば、その領地は取り上げになってしまうかもしれない。そう考えれば領主が素直に助けを求められない事情も…まぁ理解できる。
この辺の事情は一介の冒険者である俺達が文句を言っても…詮無きことだろう。
「成程なぁ…」
う~む、ここまでの話を聞いた限りだが。詰んでないか?この状況…。
「アル」
ここまで静観を保っていたミアが、俺を見つめていた。…わかっているさ。
「ハンナ、よく話してくれた。俺達は少し所用が出来た。依頼のことは忘れてくれ、また後で来るよ」
「あ、はい。…くれぐれもこの話は…」
「他言無用だろ?わかっているさ」
ミアを伴って冒険者ギルドを出る。ハンナは、最後まで俺達に協力は求めなかった。
あまり期待されてないのかもしれないし、この街の事情に来たばかりの俺達を巻き込みたくなかったのかもしれない。まぁどちらにしても俺達の身を案じてくれていたことは確かだろう。
「ここには困っている人達が居る」
ミアは俺の隣で口を開く。
「そうだな」
「こんなに綺麗な髪飾り、他の街で見たことない」
彼女は買ったばかりの髪飾りを優しく撫でている。俺はふと気になって彼女の胸に視線を向けた。相変わらず魅力的だ。だが…。
「きっと、腕のいい職人が丹精込めて作ったもの」
間違いないだろう。そしてその人たちは今、窮地に立たされている。鉱物が採れなければ職にあぶれ、路頭に迷うことは火を見るよりも明らかだ。
「普通の冒険者達には敵わないモンスター達がいる」
「ああ」
「だけど私達なら…」
「わかってるさ」
俺は大きく頷いた。俺とミアの思いは同じ。そして、俺達には力がある。だから、
「アル……行こう!」
当然、そうなるんだろう。ミアは俺の手を取って走り出そうとする。目的地は決まっている、この街の鉱山だ。
「待て、ミア」
だが、俺はそれに待ったをかけた。
「どうしたの?行くなら早い方がいい」
彼女の言う事はもっともだ。だがお前は…。
「ミア…乳首がたったままだぞ…」
まだ発情したままだったのか。しかも俺達は私服だ。帯剣だけはしているが…こんな状態で一体どうするというのか…。
「ッッ~~~~~!!!」
ミアは胸元を抑え、声にならない悲鳴を上げた。