「行こう、アル」
「そうだな」
結局、ミアの乳首をなだめるのに宿に帰って2回ほどえっちの相手をさせられてしまった。ミアは物欲と性欲を満たされてやる気満々のようだ。俺は少しばかり疲れたが。
「どうして嘘をつくの?アルから襲ってきた」
そりゃ愛しいお前が発情していたら俺も応えたくなる。
「馬鹿…えっち…」
どう考えてもえっちなのはミアの方だ。
装備を身に付けた俺達は早速とばかりに鉱山に向かった。時刻は夕刻前と言った所か。ちなみに依頼は受けていない。もし、俺達でもどうにもならなかったらハンナを失望させるだけだからな。
「今日は様子見だ。時間も遅しいしモンスターの数多いらしいからな。これから時間をかけてゆっくりと退治していこう」
「わかってる」
鉱山の入り口にはギルドの職員らしき男達が居た。俺達が入ろうとすると一瞬止めようとするも、ギルド証を見せると素直に引き下がった。
「新顔か…?気を付けてな」
「あぁ。まぁ、期待せずに待っていてくれ」
男達は疲れた様子だった。どうやら地上に出てこようとしたモンスターと一戦交えたようだ。入口の脇には大きな蟻のようなモンスターがひっくり返っている。
「そいつが件のモンスターか?」
「あぁ。アイアントだ」
見た目は大きな蟻だ。だが、その体は鈍色でまるで鋼の様な光沢を放っていた。大きさもかなりのものだ。…でかい虫ってだけで結構気持ち悪いな。
ふと周りを見れば、砕けた剣や槍が山ほど転がっていた。
「まさか、こいつ1体倒すのに使ったものか?」
「あぁ。俺達の技量じゃこれがやっとだ」
ギルド職員になる男達は冒険者上がりの者達が基本だ。つまり、それなりに実戦を積み、且つ今まで生き残ってきた…猛者と言っても過言じゃない。その彼らをしてそう言わしめるとは…。
「なぁ、ちょっと試してみてもいいか?」
気になった俺は刀を抜き、ひっくり返ったアイアントの前に歩いて行く。そういえば今日は剣の鍛錬を行っていないな。本当はギルドの訓練場で行うつもりだったんだが…まぁ、モンスター相手に剣を振るえばそれも同じか。
「それは構わないが…武器が壊れちまうぞ?」
「まぁ、ものは試しだよ」
軽く素振りをしてから調子を確かめ、ある程度の力を込めて刀を振り抜く。
「ふんっ!」
刀は見事に砕け散った。……ということもなく、若干の抵抗はあったものの、特に苦も無くアイアントの体を両断した。
「はっ?」
呆気にとられたような声が聞こえた。
「なんだ、斬れるじゃないか。ミア、お前でも余裕だぞ」
「試す」
ミアは忍者刀を引き抜き、俺の横に立つ。
「お、おいおい。君の剣の腕は確かだ。剣が見えなかったからな…。だが女の子じゃ流石に…」
「シッ!」
ミアが忍者刀を突き刺すと、その刀身は特に抵抗も無さそうにアイアントの死体に突き立った。
「………」
「硬い。少し手がしびれた」
ミアは手をプラプラとさせている。ついでに胸もぷるんぷるんだ。だが、
「腹なら柔らかそうじゃないか?」
彼女が突き刺したのは頭の部分だ。
「……馬鹿なアルが出た。腐食液を飛ばしてくるなら、お腹辺りにため込んでいるに決まってる」
あっ。
俺は急いで刀の刀身を見る。よ、よかった。特に問題はないようだ。
「運が良かっただけ。次からは首を撥ねるべき」
「善処しよう」
「私は魔法を使うことにする」
ミアは呆れたようにため息を吐いていた。
ま、まぁあれだ。非常時に武器でも対応が出来る。それが分かっただけでも十分だろう。
「な、なんなんだあの子達は…」
放心状態のギルド職員たちを尻目に、俺達は鉱山内部へと進んでいった。
「さて、早速お出ましか」
「二体いる」
鉱山に入って数歩で出くわしてしまったぞ。
先程入り口で転がっていたモンスターと全く同じ、アイアントと呼ばれるモンスターが俺達を出迎えてくれた。
アイアントはギィギィと嫌な音を立ててこちらを見つめている。どうやら威嚇されているようだ。
「色々と試してみようか。まずは一体間引く」
「もうやった」
何がだ?っと思ったらアイアントの一体がコロリと転がった。図体がでかいので本当はそんな生易しい音ではなかったが。
「風魔法で首を撥ねた」
芸達者な奴だ。そういえばアイアントと対峙した時には彼女の方から魔力の流れを感じていたな。魔法に関しては本当に勝てる気がしない。頼りになる相棒だ。
「次はアルの番」
「わかってるさ」
俺も彼女よりは遅いが、魔力を練り始めていたのだ。
「ふんッ」
俺は手を前に突き出し、火炎の玉を打ち出した。火魔法の初級呪文、ファイアーボールだ。
ギィィィィィィぃ!!
俺が撃ちだした火の玉は見事アイアントに直撃し、その体を燃やし尽くした。しかし耳障りな泣き声だな。
「………」
ミアは燃えるアイアントを見て何かを考え込んでいるようだ。
「何かわかったのか?」
「うん。でもその前に…アル、その火魔法にはどれくらい魔力を使った?」
「ほぼ使っていないな。1割もつかってないぞ」
体感的にだが、この程度の魔法ならあと20発近くは撃てるだろう。子供の頃から比べると俺も成長したなぁ。まだ子供だが。
だが調節が面倒だ。次に同じ量の魔力で同じ結果がだせるとは言い難い。
「そう。私は1割強の魔力を使った。恐らく、これ以上魔力を節約したら首は断ち切れない」
ミアが倒した方のアイアントの首を見ると、ほんの少し、皮一枚だけ繋がっているのが見えた。
「成程。やはり、斬撃系は効果が薄いのか」
ミア程の魔法使いはそういない。それでも、一体倒すのにそれだけの魔力をつかってしまうのだ。
だからといってトルネードの様な範囲魔法はこの閉鎖空間では使えない。当たり前だが落盤を引き起こす危険があるからな。
火魔法の範囲魔法も避けるべきだろう。密閉空間で辺り一面燃やしてしまったら俺達が先に参ってしまう。熱もそうだが息もし辛いし、何が起こるかわからないからな。
となるとミアのもう一つの魔法だが…。
「恐らく氷魔法も通りが悪いハズ」
鋼の様な体を冷やしたところで動きが鈍くなるだけ…か。絶命に至らせるには莫大な魔力を必要とするだろう。そんなものを使っていては効率は望めそうにない。
雷は…風や氷よりも通るだろうが火よりは効かなそうだ。まだ試していないのでなんともいえないが。いや、それは氷も同じか。
「雷はダメ。あれは音が凄い。本当にアイアントの数が多いのなら、その音でどれだけの数が集まってくるかわからない」
言われてみればそうだ。そうなったらいくら俺達でも危険だろう。
「今回はアルの火魔法が鍵になる。的確に、アイアントだけを燃やして。魔力も出来るだけ温存」
「まじか…苦手なんだよなぁ」
思わず頭を掻いてしまう。俺は剣術なら自信があるが魔法はあまり得意ではない。特に、火魔法はあまりつかってこなかったから余計にだ。焚火を起すのには便利だが。…思えばそれくらいにしか使ってないな。
俺の使える攻撃魔法は雷と火だが、火は正直言っておまけみたいなものだ。雷の方が使いやすかったし、何より格好いいからこちらばかり鍛えてしまっていた。
「だから言った」
そういえばミアからはどちらの魔法ももっと鍛錬する様にと怒られていたな。尤も、雷魔法だって彼女からすれば下手くその域を出ないらしいが。
「ぐぬぬ…」
だが魔法の鍛錬は基本的に夜に行っていた。そして夜と言えば…。
「ミア、お前がもう少し節度をもってくれれば俺の魔法はもう少し上達してたぞ。スケベなお前に合わせてたらそりゃあ鍛錬の時間も短くなる」
俺ばかり責められるのは癪なのでミアに責任転嫁しよう。
「私の所為にするの?えっちな悪戯を仕掛けてくるのは何時もアルからだった」
言われてみればそうだ。だがここで引き下がる訳にはいかない。
「誘いに乗らなければいいだろうが」
苦しいが言い返す。するとミアが呆れたようにため息を吐いていた。
「……アルは私が裸で誘ったら、我慢できるの?私がアルのおちんちんを触ったら、何もせずにいられる?」
……そうか。……そうだな。
「……俺が悪かった」
「うん」
どうやら全面的に俺に非があるようだ。