今回は題名通り、超強化された湊と光義くんの戦いです。
早くエロシーン書きたい。といってもエロシーン書くのって今回で2回目だからね。上手く書けるかわからん。
あと今回は魔王二人と契約したことで、どれだけ強くなったかを見ていただきます。
──翌日、というよりは今日の朝。
ティアマトとの激闘を終え、基本的に血が足りていない状態でも、アンドリュー達はそれを考慮してくれない。そもそもそんなことがあったこと自体知らないのだからしょうがないことではあるのだが。
あれだけの戦いを繰り広げておいて、城に一切の余波が流れていないというのはおかしな話だと思ったんだが、そこはニュクスが手を打ってくれていたらしい。あの異形の剣を引き抜いたときに、空間を隔離。その上で、あの部屋の時間経過速度を10倍にしてくれていたそうなのだ。お陰で俺が戻ってきたときには、ティアマトが封印されていた部屋に出発してから5分ほどしか経過していなかった。
そして泥のように眠り、アイズさんに起こされ朝食を胃の中に放り込んだのがおおよそ1時間前の出来事である。異世界に来た直後からずっと7時に起こされているため、その生活習慣に慣れつつあったのだが、たかだが5時間の睡眠では彼女と戦ったことによる精神的疲労など取れない。
できることなら今日は体調不良と言うことにして休みたかったのだが、3日後にはエリザさんと共にブリステン王国西部に位置する《強魔地帯》に出立することになっている。その直前に体調を崩したとなっては、《強魔地帯》に出立できないために、こうして身体に鞭を打っているというわけである。
欠伸を噛み殺しながら朝の朝礼──的なものを聞く。
普段ならば『おはよーさん、今日も頑張ろうぜ!』みたいな感じでぱっと終わって、各々の訓練内容──最近はレベル別にも別れてきた──に移るのだが、今日はそうとはいかなかった。
「3日後から、宵坂湊は訓練には参加しない」
アンドリューのその言葉に桐生先生や陸堂も含めたクラスメイト達も困惑する。
そこには僅かな喜悦も入っているような気がする。そんなに俺と訓練するのが嫌かよ、傷つくわー。
「それは何故ですか? アンドリューさん」
陸堂が問うてくれる。別に俺から説明しても良かったんだが、アンドリューはご丁寧に説明してくれた。
「ブリステン王国西部の貴族を取りまとめる大貴族、エリザ・フォン・ミハロヴィーナ大公から緊急の依頼を受けたからだ。内容は魔王が統治する地域から国に流れ込んでくる《強化種》と呼ばれる魔物の討伐。レベル的にも不安が残りはしたが、大公が直々に彼を指名したこと、そして宵坂本人がそれを快諾したことから3日後にはフェイルメール辺境伯の領地にとんでもらう」
──エリザさんから話を聞いたときには『エリザさんの事を知らねぇ奴もいるかも知れねぇな。HAHAHA!』なんて思ってたんだが、流石に知っていたらしい。訓練に参加しないと聞いたときには彼らの背中からは喜悦が混じっていたように思われるが、こっちを振り向いたクラスメイトの大半には嫉妬と憎悪とも言うべき感情が込められていた。
嫉妬はともかくとして、憎悪の目線を向けるんじゃないよ。仲間だと思ってはいないにしても、もう少し隠す努力をしたらどうなんだ。
『嫌われてるのね』
『気にする必要はありませんよ、ミナト。こんな有象無象のことなど無視してしまえばいいのですから』
『悲しいことにな。まぁ、こっちから干渉する気はないが危害を加えられたら別だ。それまでは無視の方針で。関わったってどっちも不愉快になるだけだし』
頭の中に直接俺の《聖魔》達──ニュクスとティアマトの声が響く。ニュクスは俺の特等席である肩に寝そべり、ティアマトは実体化していない。ニュクスはともかく、ティアマトの事を王国関係者に見られてしまえば『そいつなんやねん』と言われてしまうからな。
──にしても未だに慣れないな、これ。
これは別に
しかしこの《念話》は自身の《聖魔》としか会話できないかわりに、絶対に傍受されないというメリットがある。異世界でも友人なんてできなかった俺は、これで充分だ。
べ、別に悲しくねぇし!
『帰ったらいっぱい慰めてあげますから、元気出してください』
ニュクスの言葉にいやらしい意味を抱きかけた俺は右ストレートでぶっとばす。
以上の事が告げられ、各々の今日取り組むことが告げられたことによって今日の朝礼は解散となった。
「なぁ、宵坂。宵坂っ」
「……あ?」
馬車の揺れに身を任せながら、微睡みに沈んでいたところに陸堂からの声がかかる。
俺は瞼を開け、軽く首を眠気を完全に吹き飛ばしながら彼に視線を向ける。そこにはもう見慣れてしまった面々がいた。
まずは声をかけてきた陸堂に、彼の《聖魔》である閻魔王。閻魔王ががっしりとした体型な上に、3メートルに迫ろうかという巨漢であるので、彼らふたりだけで馬車内部にある席のひとつが完全に埋まってしまっている。
俺と同じ席に座っているのは桐生先生だ。
魔法クラスというべき場所に所属していた桐生先生がなぜここにいるのかというと、俺達3人はアンドリューよりも強くなってしまった──つまりは王国守護騎士団の誰よりも強くなってしまったために、より実践形式で実力を積んでもらおうという話になったのだ。そのためここ最近は盗賊の捕縛や魔物の討伐などに明け暮れていた。
彼女の横には彼女の《聖魔》達──ノームやサラマンダー、ウィンディーネにシルフという四大精霊が彼女の膝上に座っていたり、彼女の周りで談笑──のような何か──をしていたりで結構賑やかだ。とりあえず膝上に座っているノームの顔が若干にやけているように見えるのは、俺の間違いだと思いたい。
「悪い、もう着いたのか?」
「いや、まだだ。ごめん、起こしてしまって」
「いいよ、別に。気にしてない。それで何か用か?」
「あぁ、3日後から《強魔地帯》……だっけ? そこに向かうんだよな、ミハロヴィーナ大公の依頼で」
「そうだな。それが?」
「大公って凄い偉い人なんだよな?」
「そうですね。この世界の爵位はヨーロッパでの爵位と一緒ですから、大公というのは5つある爵位の中で一番上ということになります」
陸堂の疑問に桐生先生がすらすらと答えてくれる。さすがは世界史の先生だ。
彼は先生にありがとうございます、と律儀に礼を言ってから続ける。
「そんな人と、宵坂がどこで知り合えたのかなって。ほら、俺達って《勇者》だけどこの国の貴族の人達と会う機会なんて滅多にないだろ? しかも、大公直々に指名されたってことは結構親しい感じなのか?」
「あぁ……そういうことか」
別に隠すようなことでもないし、話してしまっても構わないか。
俺はふたりにエリザさんと知り合った経緯を所々はしょりながら説明する。
先日、街を歩いていたところに貴族によって暴力を振るわれていた奴隷の女の子を助けたこと。その奴隷がエリザさんの奴隷であったこと。そして助けた俺が《勇者》だった事を知ったエリザさんが昨晩城を訪ね、俺に依頼をして来たこと。そして俺が『俺が望んだものを可能な限り用意する』という条件で依頼を引き受けたことを。
「まぁ、そんなわけだ。奴隷の女の子を助けたのが俺じゃなく、陸堂や先生だったのならエリザさんはふたりに依頼したんじゃないか?」
「中々に立派な心がけではないか」
話を黙って聞いていた閻魔王が俺に言ってくる。その目には確かな称賛が浮かんでおり、欠片も嘘を言っていないことがわかった。
「別に普通のことだろ? それに俺は事態がどう転がろうが、最終的には国が何とかしてくれるだろうと思ったから行動できただけだ。国の権力を笠に着たようなもので、胸張って言えることじゃない」
「いえ、その普通の事をするのが難しいんですよ。日本人は国民柄、ことなかれ主義の人間が多いですから。例え、自分の身の安全が保証されていても」
「じゃあ、宵坂が寝不足なのはその依頼について詳細を詰めていたから?」
閻魔王と先生からの誉め殺しに合いそうな俺を気遣って、陸堂が話を変えてくれる。そういう気遣いが出来る男はモテると思うぞ。容姿も大事だが、女子と付き合って長続きがするのって性格がいい奴だし。
「あぁ、いや。これはそれとは別件だ。俺は魔法と剣技、それぞれ師事を受けていてな。それが昨日は長引いたんだよ。だから今日は寝不足だ」
──基本的に俺達《勇者》には門限というものが設定されておらず、外泊だって事前にアイズさん達、俺達の世話をしてくれている人達に告げれば問題なく行うことができる。
俺達がしているような物だと1日で帰ってくることが難しいものや、時間は定まらないことが多い。それ以外でも外出をしていて、遅くなることもある。
故に自分の付き人に『今日は○○をしてくるから帰りは遅くなる』と告げさえすれば深夜に帰ってきたってなんの問題はないわけだ。無断でそんなことをするのは勿論厳禁だが。
それに王城は常に警備の人間がいるため、彼らに頼めば何時だって扉を開けてくれるしな。
師事を受けるというのは嘘であるが、あながち間違いではない。ただしそれが今日の夜からだという話なだけであって。それでも昨夜の死闘によって俺はかなりのレベルアップをしたうえに、武術と魔導の極みというものを見たから、別に嘘というわけでもないか。
「へぇ…………どんな人なんだ?」
陸堂が興味深そうに俺に聞いてくる。まぁ、未来には魔王に匹敵するだけの能力を持つようになるといわれている《
正確には人ではなく、俺の初代魔王ふたりなんだが…………そこまで馬鹿正直に話してやる必要もないか。
「ひとりは重力操作や空間そのものを切り裂く魔法なんかをぶっぱなしてくるし、その果てには時間操作なんてしてきやがる。魔力量自体が馬鹿みたいに多いから……そうだな、今の桐生先生が全力で放つ弾幕の100倍くらいの密度で魔法を撃ってくるのは余裕だと思う」
「「………………」」
ふたりが沈黙する。
ニュクスならそれぐらい余裕だろうよ。100倍ですら少なく見積もった方だぞ。
まぁ、それ以前に《
「あともうひとりは馬鹿みたいに速い。攻撃力も馬鹿にならなくて地面なんか紙でも斬るように斬ってくるし、長距離攻撃の手段も有しているから一瞬でも逃げに回ったらその瞬間に斬って落とされる。全力の彼女にここにいるメンバー全員で挑んで、誰かが1秒以上立っていられたら拍手喝采ものだろうな」
「そ、そこまでか……実力を盛ってるとか?」
「それだったらどれだけ良かったか。あの人達が魔族側にいなかったことを心底安堵してる」
「……その人達に魔王の討伐に協力してもらえばいいのでは?」
「いい意味でも悪い意味でも自分の興味のないことには無関心な人ですからね。この国が滅ぼうが、魔王との戦いに勝利しようがどっちでもいいんですよ。彼女達も俺に興味を持ってくれたから、俺に協力してくれているだけですし。俺以外の人間が会いに行っても、たぶん無視されますよ」
──寝る前にニュクスとティアマトに『俺は魔王を倒そうと動いているが、その事についてどう思う?』と聞いてみたところ『別になんとも思わない。ミナトの好きにすればいい』という旨が返ってきた。
彼女にとって大事だったのは彼女らの世代──初代魔王として領地を守っていたときであって、現在は世代交代も済んでしまっているため特に思い入れもなく、自分の元領地を統治している魔王を倒そうがなんとも思わないんだとか。『死ぬならその魔王が弱かっただけ』という弱肉強食全肯定の回答が返ってきました、はい。
ニュクスやティアマトに会いたいと言われても困るため、事前に予防線を張っておいた。これで陸堂も先生もそんなことは言わないだろう。
「なぁ、宵坂。もしかして…………その人に勝ったりしたのか?」
「一人には勝った。魔法の師匠の力を借りてだけどな。タイマンじゃボロ負け」
「だよな。…………じゃあ、そんな人達と戦ってみてお前はどう思った?」
「ムカついたさ。腹が立って、悔かったし、妬ましかった。なんでそんなに強いんだよ、ふざけんなってな」
ニュクスが最初に助けてくれなかったら俺の墓場は、あの水晶で囲まれたあのドームだった。判断力なんて欠片もない、数百年も封印されていたせいで全盛期の5割も出しきれていない状態で1分時間を稼ぐのだけで限界だった。止めを刺したのも結局はニュクスで、俺の攻撃が通ったことなんて1度もなかった。
こんなムカつく話が他にあるか? ティアマトには悪意も何もなかったんだろうが、俺は随分と虚仮にされたように思えた。
だが、それでも。
「でも、楽しかった」
「「────⁉」」
ふたりが驚愕に目を向いた。まるで俺が異常者であるような目を向けられる。
だが、そんなものは無視して続ける。
「自分の方が強い。自分の方が優秀な人間だ。自分達の方が優位に立っている。
そんな風に思って粋がってる奴等に、必死になって頭回して、自分に出来ることすべてを尽くして、追いかけて追いかけて捕まえて、首根っこをひっ掴んで、引き摺り倒して、叩き潰す。
そんで怒りと悔しさに歪んだ顔を見下ろしながら、言ってやるんだよ。『お前の敗けだ』ってなぁ。今は敵いやしないけどいつかそうしてやるんだって必死に努力すれば……絶対届く。楽しいぞぉ、これだから
「自分の方が強い。自分の方が優秀な人間だ。自分達の方が優位に立っている。
そんな風に思って粋がってる奴等に、必死になって頭回して、自分に出来ることすべてを尽くして、追いかけて追いかけて捕まえて、首根っこをひっ掴んで、引き摺り倒して、叩き潰す。
そんで怒りと悔しさに歪んだ顔を見下ろしながら、言ってやるんだよ。『お前の敗けだ』ってなぁ。今は敵いやしないけどいつかそうしてやるんだって必死に努力すれば……絶対届く。楽しいぞぉ、これだから
──そう言う宵坂君の口が喜悦に歪む。
そのあり方に私は恐怖した。
私の《聖魔》達が戦闘態勢をとり、陸堂君の《聖魔》である閻魔王も陸堂君をいつでも守れるように構える。
先程、奴隷の女の子を助けたことを普通のことだと言ったとは思えない暴力の気配。瞳の奥で野心が爛々と光る。これが人類の希望である《勇者》がするような表情だとはまるで思えなかった。
それが次の瞬間、一気に霧散した。
「着いたみたいだな。確かこの周辺に潜む
「…………そうだな」
宵坂君と陸堂君が馬車から降りていく。次いで閻魔王が、最後に私達が降りる。
そうして私達はこの森林部に潜む魔物の群れを討伐していった。
「準備はいいか? 宵坂」
「あぁ、いつでもいいぞ」
──魔物の討伐は予想以上に早く終わった。
桐生先生の魔法乱射に、俺の遠距離から的確に急所を射抜くスナイプショット、陸堂と閻魔王の剣戟によって次々と魔物は血の海に沈んでいった。
帰るのには時間があるということもあって、陸堂と模擬戦をすることになったのだ。模擬戦といってもアンドリューとやった時とは違い、互いに傷を治療する手段も有しているために本気の本気、真剣を用いての決闘だ。
審判は先生が務めてくれることになった。先生が中級
名前:宵坂湊
種族:人間族
年齢:17歳
称号:《異世界人》《勇者》《
レベル:67
体力:6434
物攻:7004(+56631)
物防:5574
魔攻:9406(+76052)
魔防:5800(+47825)
敏捷:9919(+80119)
《言語理解》《聖魔契約》《神魔術法・闇》《神魔術法・水》《武神》《闇属性無効化》《水属性無効化》《超高速演算》《未来視》《不死》《
特殊技術:《神魔術法》……魔導の深淵に至り、神の領域にまで達した魔法。属性に対応した魔法の威力に特大補正。耐性無視攻撃。
特殊技術:《武神》……武を極め、神の領域にまで達した武術。全武術系特殊技術に対応した攻撃に特大補正。耐性無視攻撃。
特殊技術:《不死》……特殊技術保有者を不死にする。
特殊技術:《超高速再生》……体力の自己回復速度に特大補正。
特殊技術:《超高速魔力回復》……魔力の自己回復速度に特大補正。
特殊攻撃:《神魔結合》……契約している《神級聖魔》と完全に融合する。全ステータスに特大補正。
特殊技術:《飛翔》……特殊技術保有者に飛行能力を付与する。
──ニュクスの完全体化およびティアマトとの契約は俺に莫大な力をもたらしてくれた。
《闇魔法》の上位互換である《深淵魔法》はさらにその上──闇属性魔法の究極である《神魔術法・闇》に加えて水属性攻撃の究極である《神魔術法・水》、そして《体術》・《剣術》を統合した物理攻撃の究極である《武神》などなど、俺の戦闘系特殊技術は進化を遂げた。
魔力消費が激しくなったが、それ分超高速回復系特殊技術で回復し、飛翔という相手が絶対に届かない距離からの攻撃も可能となった。
──だが、それはあくまで使えるだけであって使いこなせているとは言い難い。それはティアマトとの契約によってもたらされた補正値によって上昇した物攻や敏捷も同様だ。
俺の今の状態を言うのであれば、運転免許取り立ての初心者がF1レーサーが乗るようなマシンに乗って爆走しているようなものだ。そんな状態で無事に済むはずがない。
まぁ、ある程度ティアマトやニュクスが完全に使いこなせるまで補助輪のような役割を果たしてくれるそうだが、このステータスを完全に使いこなせるのはいつになることやら。
使いこなすには何回ものチャレンジが必要だったため、陸堂の申し出は非常にありがたかった。まぁ、ティアマトやニュクスと戦った方が怪我をする危険はあれど、怪我を負わせる危険性はないため安心して全力で戦えるんだが。
とりあえず《武神》以外のティアマトと契約して得られた特殊技術は発動させないでおこう。
『ミナト』
『ん? どうした、ニュクス』
収納スペースからエリザさんから貰った東和刀を取りだし、居合いの構えをとったところでニュクスから声がかかった。
『あの男の《聖魔》から、あなたの《隠蔽》では防げないレベルの特殊技術を発動させられました。《鑑定》と《読心》です』
『……どこまで視られた?』
《読心》は文字どおり心を読む特殊技術、《鑑定》は俺も持っている特殊技術のため説明は省略。
《読心》は特に問題ないが、最悪なのは《鑑定》だ。ここで称号のところまで視られたとしたら、不味いことになるが──。
『問題ありません。発動された瞬間に
『わかった。《読心》は無視していいから、《鑑定》にだけ常に抵抗は発動させておいてくれ』
抵抗というのは《鑑定》などの特殊技術を《隠蔽》などで防げず、ステータスを閲覧されてしまったときに対してとれる行動だ。レベル差などで成功確率は上昇するが、ある程度ステータスは視られてしまう事が多い。しかしニュクスは《未来視》で即座に感知したのだろう。流石、俺の《聖魔》は優秀だ。
俺も鑑定を発動させる。
名前、種族のところまでは視られたがぶつん、と停電が起こったテレビのように視界に表示されていたステータス画面が消失する。
くっそ、抵抗されたか。それかそれ以下を《隠蔽》していたため、閲覧が不可能になったのか。どっちにしても鬱陶しいことこの上ない。
手の内が知れなかったのは痛いが、これも計算の範囲内だ。
俺は右手に握った東和刀を振るい、抜刀した。
「しぃ──ッッ!」
「ぐっ⁉」
宵坂の手に握られた東和刀が咆哮とともに解き放たれた。距離は10メートルほど離れていたため、届くはずがない──そう思っていたのが過ちだった。
俺の手に握られたツヴァイヘンダー──ツーハンドソードとも呼ばれる大型の両刃の剣に、衝撃が走る。それは俺を地面から引っこ抜き、宙に浮かせるには十分すぎる威力だった。両腕に莫大な痺れが走る。
「行かせん──ッ!」
追撃せんと迫る宵坂に閻魔王が割り込んでくれる。しかし、閻魔王の身体が苦悶の息を漏らした。
──閻魔王は3メートルに迫ろうかという巨漢だ。その見た目を裏切らず、閻魔王の物攻の値は4万に匹敵する。そんな驚異的なパワーの閻魔王が苦し気に息を吐くなんて、どれだけの物攻なんだ⁉
「るるぁ──!!」
「ぬぅ──ッッ!?」
居合いから続く超高速のコンボ。それに閻魔王は対処するのに限界で防戦一方だ。幾度となく金属音が響き、火花が舞い散る。閻魔王──そして彼の契約者である俺には《読心》という心を読む特殊技術を持っている。それによって行動すべてを先読みしアンドリューさんに勝利することができたのに。
『ミツヨシ──!』
「閻魔王!?」
「おいおい、会話してる暇があるのか。ずいぶん余裕だ、なぁ──ッッ!」
閻魔王の巨腕が跳ね上げられ、次いで横薙ぎが閻魔王の身体を切り裂こうとするが、彼は手に握っていた鉄扇が形状変化した野太刀の柄で受け止めるが、身体は吹き飛ばされる。
俺の目の前で閻魔王の身体が止まる。
『ミツヨシ、《念話》で喋れ』
『わ、悪い』
『いいか、ミツヨシ。よく聞け。おそらくあやつの物攻は3万を超えている』
『な…………!?』
『それ以外のステータスもすべて万を超えていると判断してもいい。そしてあの騎士の時に使っていた霧の魔法、そして最初は抵抗された《読心》が現在は通用することから、間違いなく奴は手を抜いている。おそらくそうしなければこの戦闘が蹂躙に変化してしまうが故に。……いや、違うな。おそらくあやつはお主を力を加減する訓練を行う相手に選んだのだ』
『ち、力を加減する…………?』
『そうだ。おそらくあやつはここ最近で急激なレベルアップを遂げ、自身のステータスに振り回されるような状態なのだ。事実、先ほどの剣戟において手前と拮抗するように力を振るおうとしているが、時たま手前の物攻を上回る攻撃が混ざってきた事がその証拠だ』
宵坂の《聖魔》は魔法に特化した性能を持っている上に、比較的制御がしやすいものであるため、急激にステータスが上昇しようとも特に問題はない。しかし、物攻や敏捷は《聖魔》によるサポートも得られないため、自分の力だけで制御しなくてはいけないので非常に難易度が高いのだと閻魔王は言う。
『そんな力を加減もせずに振るってしまえば、この世界の人間はいとも容易く死んでしまう。それをあやつは嫌ったのだ。それに同じ《勇者》であるミツヨシならば簡単に死にはしないだろうという判断もあったのだろう』
『つまりは…………』
『手前らがあやつに勝つためには、あやつが言うところの大物喰らいをする必要があるということだ』
俺は目の前の宵坂に視線を向ける。
その佇まいからは微塵も侮りを感じられない。それは力加減を誤ったら俺が死んでしまうという意味ではなく、俺が如何なる手段を使ってでも勝利をもぎ取ってくるだろうと思い、その上で叩き潰すと無言で圧をかけてきている。
──認められているのだ。
宵坂にとって俺は、自身の命に届きうる存在だと。
「話は終わったか?」
「あぁ、もう終わったよ。──俺はお前に勝つ!」
グリップを強く握りしめ、俺は宵坂に向かって吼える。
それに宵坂も笑って──、
「それでいい」
そして再度、閻魔王が宵坂と衝突した。
互いに万超えの物攻を持つもの同士の衝突が与える影響は生半可なものではない。剣がぶつかり合った衝撃で、森の木の葉が大きく揺れる。
「かぁ──!」
「ぬぅん──!」
今、宵坂の意識は目の前の閻魔王にのみ向いている。
閻魔王いわく、力を加減することに集中しているため他の事にも意識を割きにくいだろう。だからこそ、大きな隙が生まれる。
(くそったれ、鬱陶しい!)
読心を発動させれば、聞こえてくるのは苛立ちが混ざったそんな言葉。
いける、という確信が芽生え、俺は背後に10数個の《
が──、
「《
俺が作った《火炎弾》とまったく同じ数の黒い球に衝突。ひとつ残らず撃ち落とされ、爆音が森の中に木霊する。
「な──!」
「《
次いで発生する黒い槍が射出されるが、危ないところで剣によって弾く。
閻魔王との剣戟をこなしながら、見えないはずの背後に向かって的確に魔法を当てる。それがどれだけ難しいことかは、桐生先生の表情を見ればわかる。魔法に特化した先生でも、魔法は走りながら放つので限界。
それ以上では脳の処理が追い付かないからだ。だというのに、彼はそれを何でもないことのようにこなしてくる。
「陸堂。特殊技術や魔法を使うときは《隠蔽》を同時に発動させながらやった方がいいぞ。そうすれば相手の感知能力をある程度は誤魔化せる」
さらに助言まで一緒につけてきた。
要は『お前の特殊技術や魔法がいつ使われるかなんてお見通しだ』と言うことなんだろう。一体、どれほどの戦闘経験を積んできたというのか。
爆炎が収まり、次の瞬間に見たのは──俺の周囲を取り囲むようにして浮遊している二回り小さい無数の《闇球》。そして身体中にいくつもの剣閃が走った閻魔王の姿だった。
「悪いな、陸堂。チェックメイトだ」
いつのまにか背後に立っていた宵坂に視線を向けたときに──俺の全身に二百発を超えたソフトボール大の黒い球が打ち込まれ、俺は意識を失った。
威力を極限まで落とした──といっても、アンドリューと戦ったときに放っていた全力の《影球》ぐらいの威力はある《闇球》が陸堂の全身にヒットし、奴の身体が崩れ落ちる。
全身打撲になっているだろうが、奴の魔防ならば中級魔法薬で完全に回復する程度にはダメージを軽減できているだろう。
『あぁ、くっそ…………頭いてぇ』
『初めてにしては良くできていたと思いますよ。あと三日後には十倍まで出来るようになりましょうか』
『きっついなぁ……』
──陸堂の周りに発生させた《闇球》は数にして214発。それを閻魔王を相手取りながら、威力を極限まで減衰させてた上で、コンマ1秒以下で放つなんて神業は今の俺にはできない。
ならばどうしたかというと《
ニュクスは《時間加速》を空間に対して発動させていたが、《神魔術法・闇》をそこまで使いこなせない俺はそんなことはできないため、それを俺は自分だけに用いた。
そうすることで自身の固有時間を世界の1秒に対して引き延ばす魔法。それによって俺の5秒は世界にとっての1秒に匹敵する。5倍速で動く、それが今の俺の限界だ。
それと併用して《時間停止》を発動。陸堂と閻魔王の輪郭に沿うように魔法を展開。陸堂と閻魔王を覆う1センチ弱の空間の時間を停止させ、行動不能にした。時間が経過、そして時間を停止させる空間の体積が広ければ広いほどに消費魔力量が大きいため、余裕をもって行動してはいられない。
そうして30秒時間を停止させたことによって、150秒の時間的余裕を得られた俺は、陸堂の周囲に《闇球》を浮かばせたあと、時間が停止した空間と等速で時間が流れる空間の境界線に乗せるように浮かばせ、閻魔王を滅多斬りにしたことによって勝利した。
が、時間操作の代償は大きいものだった。
今も脳の奥を直接弄くられるような不快感と鈍痛が俺を苦しめる。今すぐ倒れ込んでしまいたいが、流石にそんなわけにもいかない。
戦闘が終わったため、ティアマトの常時発動型特殊技術をすべて発動させるとそんな不快感も癒えていく。もしかして《超高速再生》の副産物であろうか。なんと便利な。
『とりあえず圧勝ね』
『時間操作なんて反則級の魔法を使ってるんだ、陸堂には悪いが当然だろ』
時間操作を無効化するためには、真逆の時間操作をするか《闇属性無効化》の特殊技術を持っていなくては対抗できない。その分、魔力消費量が激しいから釣り合ってはいるんだがそんなこと陸堂は知ったこっちゃないよな。
まぁ、ティアマトくらいになると俺が5倍の速さで動こうが平気で対応してくるんだが。というよりも5倍速で動いてもまだティアマトの方が遥かに早い。ちゃんと意識が覚醒した現在では10倍速でようやく同速度で動けるかどうかという有り様だ。魔王っていうのはどいつもこいつもこんなに強いのか。恐ろしい話だよ。
「手前らの完敗だ、宵坂」
「閻魔王か。もういいのか? わりと斬ったはずだったのに復活が早いんだな」
「ミツヨシがあまり魔力を使っていなかったからな。その分を手前の治癒に回させて貰っただけの話よ。奴の魔力は空に近しい状態になってしまったが……なに、そのうち目を覚ますであろう。それにしても、手前があれほど好き放題に斬られるとは。一体何をしたのだ?」
「秘密だ。陸堂にも聞かれたらそう言っておいてくれ。相手の能力を考察して、対抗策を立てるのも重要なものだ。ヒントはちゃんと出してるから、多少頭を捻れば出てくるだろ」
「承知した。ミツヨシにもそう伝えておこう」
閻魔王と話していている間に、陸堂の意識が覚醒した。傷は治った筈だがまだダメージが残っているのか、ふらつきながら馬車に戻った。
そうして俺達は王城への帰路についたのだった。
~作中キャラ乳ならべ~
ニュクス>>エリザ>>>ティアマト≧アイズさん>越えられない壁>>奴隷ちゃん
ニュクスが無いものの僻みとか言ってた気がするけど、普通に美乳の域に入るんだよなぁ
あと湊くんは若干戦闘狂になってます。
弱者を蹂躙ではなく、強者をねじ伏せるタイプの。
騎士団長戦ってから、魔王と戦って勝利しているから、ただの勝利では満足できなくなっています。しょうがないね。
投稿時間についてのアンケート※一週間程度を目安に〆
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0時(今まで通り)
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6時
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12時
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18時