次はもう少し短めになると思うから読みやすくなると思いまする。
……《鑑定》
名前:アンドリュー・ジンゴーズ
種族:人間族
年齢:43歳
称号:《指揮官》《魔獣殺し》《守護騎士》《魔族殺し》
レベル:52
体力:2013
物攻:3328
物防:2776
魔攻:31
魔防:1124
敏捷:1243
《剣術Lv.9》《第六感Lv.3》《身体能力強化Lv.7》《軍団指揮Lv.2》《強力Lv.5》《堅牢Lv.3》
特殊技術:《第六感》……稀に敵の未来の動きが察知できるようになる。
特殊技術:《軍団指揮》……《部隊指揮》の上位互換スキル。自らの配下にある者達のステータスに小補正。
特殊技術:《強力》……ステータス値、物攻のステータス向上値が上昇する。
特殊技術:《堅牢》……ステータス値、物防のステータス向上値が上昇する。
アンドリューの
にしてもステータスの値の差が絶望的だな。勝っているのは魔攻のみ、それ以外では話になりゃしない。
これは攻撃をもらった瞬間に敗けだな。粉砕骨折程度で済めばいいが…………。
などと考えていると、アンドリューが二人になった。
いや、それでは語弊が生まれてしまうな。正確に言うのならアンドリューの身体からモノクロのアンドリューが出現したのだ。それはアニメでの幽体離脱を表すような場面を思い浮かべてくれれば分かりやすいだろうか。
モノクロアンドリューは俺との距離を瞬間的に詰め、俺が構えた剣を弾き飛ばさんと下からブロードソードを切り上げる。
だが、その姿が俺に被っても俺の手に握られた剣は一切吹き飛ばない。まるでこのアンドリューは実態を持っていないかのようだ。
…………あぁ、そうか、これが《未来視》か。
《未来視》は視覚を通じ、未来を理解する特殊技術。モノクロのアンドリューは近しい未来に行われる本物のアンドリューの行動を表しているのだ。
にしても特殊技術ってのは便利なもんだ、前の世界では絶対になし得なかった事がこの世界では簡単にできるようになる。この力を持ったまま地球に帰還し、悪目立ちしないように心がければかなりの金が入手できるに違いなかった。
っと、不味い。避けなければ。
俺は飛ぶようにして後ろに回避する。
《未来視》はあくまでも未来を視るだけで、時間が停止しているわけではない。それでもかなりの時間が思考に割けたことを考えると、特殊技術《超高速演算》は常時発動型特殊技術なんだろう。まったく、俺の《聖魔》は可愛いなりして敵に回したくない
刹那、アンドリューの持つ剣は《未来視》の通り俺の剣を弾き飛ばす軌道で通過する。俺の髪が風圧で舞う。風圧で切れる、などという出鱈目な事は起こらなかったが、流石は敏捷値1000、物攻値3000越えの化け物だ。腕のモーションと《未来視》のお陰で軌道は分かるが、俺の瞳は剣の残像だけをとらえるばかりだ。
――《
俺は《聖魔》に命令を下す。
《聖魔》はこくん、と頷くと杖の先に付いた宝玉を輝かせ、俺の背後に六つの紫と黒が混ざり合う球体を作り出すと杖を振るってそれを放つ。
俺が習得している――正確に言えば俺の《聖魔》だが――特殊技術《闇魔法》の下位互換《影魔法》の最初から発動できる魔術の一種《影球》だ。攻撃力は
「――ッッ! チィっ‼」
俺に比較的距離も近かったこともあって、アンドリューはそれを回避することは叶わない。が、ステータスの恩恵によって、強引に上に振り切った剣を引き戻し、《影球》を打ち落とす。1メートルも離れてなかったにも関わらず、プロ野球選手の投球並みの速度で放たれた6発の球を打ち落とそうと剣を振るえるってどんな反射神経をしてるんだよ、恐ろしいことこの上ない。
だが、剣と闇色の球体が接触した瞬間に爆砕。アンドリューの視界を黒で染め上げていく。
その間に様々な準備を整える。
――《
――《
何でもない、この城を守護する騎士ならば誰でも持っていそうなブロードソード。それに漆黒の靄を纏わせる。闇属性の魔力を武器に纏わせることによって攻撃力を上昇させる闇属性攻撃魔法《闇纏武装》。
加えて相手のステータス値を継続的に低下させていく闇属性特殊魔法《侵食の霧》を発動させる。
――正直言って、現段階ではアンドリューとまともにやりあっては勝ち目などない。100回やれば100回負ける。それはステータスの圧倒的格差からも分かる通りだ。
ならばどうすればいいかって? まともにやりあわなければいいじゃない。
というわけだ、俺は《闇魔法》を駆使して全力でアンドリューに勝ちにいっている。まずは《侵食の霧》これは相手の全ステータス値を継続的に下げていくという強力な魔法だ。だが、この真の魔法の強みはそこにあるのではない。
通常ならばこういう霧状の魔法は体内に取り込む――呼吸などといった行為が代表的だ――をしなければ無害そのもの、というものが多い。だがこの魔法にそのセオリーは通用しない。
この魔法の効果を正確に説明するならば『この魔法に接触している者の全ステータス値を継続的に低下させる』というもの。
つまりは肌が露出していたり、服と身体の間に隙間がありさえすれば霧は肌から体内に侵入するというわけだ。
しかもこの魔法に対する抵抗力は魔防のステータス値に比例して向上していく。ということは魔防も低下し続けている現在、どんどんステータス値継続低下という状態異常に対する抵抗力も低下していく。たったひとつの魔法だけで黄金コンボを成立させている。
敵にこの魔法を扱える奴がいたら本当に厄介だと思われる。この魔法の害悪さと強さは使用者である俺が一番知っているからな。これでアンドリューのステータスを最低限俺と同等ぐらいにまで低下させる。そこでようやっと真正面からの戦いができるというわけだ。
《鑑定》でリアルタイムでの情報を獲得するために発動したままにしておく。しかしそのままにしておけば、剣戟戦において大きな不利となるためにステータス表示を縮め視界の端に置く。正直、できるかどうかわからなかったんだがやってみるもんだな。
流石にまだ2000台か。《侵食の霧》の濃度を濃くし、さらにステータス下降速度を上昇させる。それと同時に《影球》を作り出し、アンドリューを《侵食の霧》内に閉じ込めておくために狙いをつけずに高速乱射。
――特殊技術《第六感》で奴に命中しそうなものは全部打ち落とされるのだろうが、それはどうでもいい。
さて、あんたのステータスが削りきられるのが先か、削りきる前に俺の魔力が切れるのが先か。チキンレースといこうじゃないか。
……俺には目の前の光景が信じられなかった。
黒い霧のなかに閉じ込められ、ろくに身動きがとれていないアンドリューさん。そしてそれをしているのが、俺達と同じように勇者としてこの世界に召喚され1日しか経過していないクラスメイトのひとり――宵坂だということが。
「……あの男、なかなかの手練れだ。ミツヨシ、奴は戦場に身を置いていたのか?」
「いや…………そんなことはない、と思う」
俺の隣に胡座で座り、宵坂とアンドリューさんの模擬戦を見ていた閻魔王に俺は答える。
閻魔王の言う戦場を俺は勝手に何かしらの武道をやっていたのか、と俺は解釈したがそれでも彼は特別何かをやっていたわけではないように思える。
普段の休み時間でも友人と喋るわけでもなくひとりで本を読み耽り、放課後になればすぐに帰宅するような、こう言ってはなんだが――いてもいなくても然程変わらないような奴。それが俺が持っている宵坂への印象だった。
だからこそ、アンドリューさんとの模擬戦で真っ先に挙手をしたのは信じられなかった。彼が《聖魔》を一体しか召喚していなかったことから、クラスメイトの皆は『身の程知らずだ』と彼を嘲ったが……俺には驚愕しかなかった。
少し話が逸れてしまったが、俺が抱く印象は前述の通りで特に武道はやっていないように思われる。武道をやっているのならもう少し筋肉質でもいいはずだ。彼の身体は決して不健康さを感じさせるものではないが、武道をやっているとなればいささか細すぎる。
「なるほど……ならばあれは天性のものか。あやつめ、中々に戦闘の才能に溢れておるではないか」
「…………どういうことだ?」
「ミツヨシ、貴様ら勇者――――いや、戦闘の世界に生きるものすべてに絶対に必要なものはなんだと思う?」
戦闘に生きるものすべてに必要なもの……。
俺は閻魔王の言葉を脳内で反芻する。戦いのための技術、頭の回転速度、戦略性…………思い付くのは数あれど、閻魔王が言っているのは違うもののような気がする。もっと、そう、前提にして最低限の素質のような――――。
「…………分からぬか?」
俺は閻魔王の言葉に頷く。
すると彼は俺を諭すように言ってくる。
「それは勝利への渇望だ」
「…………渇望?」
「左様。いくら貴様ら《勇者》が強かろうと、勝利したいという気持ちがなければ自分よりも弱い相手にも負けてしまうのは道理であろう? そして対面した敵が己を上回る強者であればそれはより顕著に現れる。貴様もそれを味わったことがあるのではないか?」
……そうだ。俺も似たような体験をしたことがあった。
中学校の頃に所属していたサッカー部はお世辞にもあまり強いとは言えず、敗北続きだったときもあった。その時に同級生も先輩も口癖のように言っていた言葉があった。『相手が強かった』と。今思えば、それはただの自分達を慰めるだけの、なんの意味もない言葉だったのではないか? 最初から相手に勝ちたいなどと微塵も思っていなかったのではないか?
「…………ミツヨシ、貴様あの騎士には勝てんと思ったであろう? 少なくともまだ勝てぬと思ったはずだ」
……閻魔王の言葉はまさに的を射ていた。
アンドリューさんはブリステン王国王都守護騎士団団長。レベルの差は勿論、特殊技術の熟練度、単純な戦闘経験などすべてにおいて自分達が勝てる要素はない。少なくとも今は。
閻魔王に戦わせればあるいは、と考えたがそれが俺本人の実力と言えるのかと言われれば…………それは難しいところだろう。
「だが、あやつはそんなことはまるで考えていないぞ」
閻魔王が顎をしゃくる。
それに従って俺も宵坂へ視線をやる。
アンドリューさんを黒い霧の中に閉じ込め、本人は《聖魔》と一緒に黒と紫が混じりあったソフトボール大の球を霧の中に向かって放ち続けている。狙いはメチャクチャで最初から狙いなどつけていない様に思われる。
「あやつは最初から負ける可能性など考慮していない。最初からあの騎士に勝利するつもりでいる。そのために全力を尽くしている」
――――脂汗を顔に滲ませ、それでも魔法を放ち続ける姿はまさに真剣そのもの。もし、彼がアンドリューさんに敗北してしまえば『仕方なかった』と自分を慰めるのではなく、本気で悔しがり、どうやれば勝てていたのか、思考を巡らせる想像に難くない。
「貴様は知らんだろうが、貴様の仲間たちはあやつを罵っていた。身の程知らずだ、《聖魔》を一体しか召喚できなかったくせに何様なのかと」
「…………そんなことを言っていたのか」
確かに彼の《聖魔》は1体だけだ。しかも俺の閻魔王のように絶対的な覇気を持っているわけでもない、正直に言ってしまえば非常に可愛らしい《聖魔》だった。
だからと言ってそれを罵っていい理由にはならないはずだ。目の前で行われているように《聖魔》の数が多い=強いというわけではないのだから。
俺の中で僅かにクラスメイト達への怒りが募る。
それは閻魔王も同じのようで早口に続けた。
「だが、ならば貴様の仲間たちは一体何なのだ? あやつのように勝負に挑むわけでもなく、何もせずに外野から吠えるだけ。それではただの負け犬ではないか。…………いや、勝負の舞台に上がっていないのだからそれ以下だ。だというのに何故その負け犬以下の畜生の意見が大多数として通っている? それが手前には我慢ならん」
…………閻魔王は憤慨しているが、俺はクラスメイト達の意見もわからなくはない。
宵坂は目立たない生徒だった。だというのに、自分達の環境が一変した状態ではそれが真逆になり、俺達の指導者であるアンドリューさんを完全に封殺している。これまで無意識に下に見ていた――俺もそれを否定するのは難しい――存在が急に俺達よりも同等、もしくは上の状態になったのだ。
それを良く思わない人間の方が多いのは自然の結果と言える。…………宵坂は人望も皆無と言ってもいいぐらいだからな、いい意味でも悪い意味でも。
「…………それが世界の救世主たる《勇者》のあり方か」
落胆したようにひっそりと口から漏れた閻魔王の言葉は俺の心に深く突き刺さった。
「るるるぁぁあああぁぁぁぁ――――ッッ‼」
「――――ッ! クソッ」
ついにアンドリューが《影球》の弾幕を掻い潜って《侵食の霧》の外に出てくる。雄々しく吠えながら剣を振り上げ、振り下ろすがその動きは最初の頃に比べれば遥かに鈍重だ。
《侵食の霧》はしっかりとアンドリューの肉体を蝕んでいるようで俺は心の中で小さく息を吐く。ステータス画面でステータス値が低下していくところはちゃんと見ていたんだが、しっかりと目に分かる形でそれが現れると安心できるからな。
だが、もう少しで魔防のステータスを0にできたものを。そうすれば遠距離から魔法を打ち続け、何度かクリーンヒットさせるだけで仕留めきれたのに。それに思わず舌打ちが漏れる。
…………だが、まぁいい。そこは妥協できる範囲だ。敏捷のステータス値は2桁を通り越して1桁にまで削ることができたし、物防も100近くにまで低下させることはできた。ここの辺りが妥協点だろう。これ以上削ろうとすれば、俺の魔力が空になっていたしな。魔力が0になったとき何が起こってしまうのかを聞いていなかった以上、これ以上魔法を打ち続けるのは危険であると判断した。
さて…………。
ふぅ、と小さく息を吐いた。
ここからは
効果を見る限り、俺の《未来視》の下位互換特殊技術であるが『稀に』という言葉がどれ程の的中率を誇るのか、身体能力の強化倍率など未知な部分は多い。
故に自分から動くことは避けたい。出来ることならカウンターを狙って仕留めきりたいところではあるが…………。
『特殊技術《身体能力強化》使用中』
思考を巡らせている途中にそんな言葉が脳裏をよぎる。
……鑑定はやはり便利だ。
アンドリューが実は《隠蔽》と《鑑定》の特殊技術を持っていて、それを《隠蔽》で隠しているのではないかと僅かながら疑っていたのだが、この様子ではそれはないだろうな。わざわざ、特殊技術を使用したことを《鑑定》持ちに知らせるような愚行は犯さないだろう。
それさえブラフ……という可能性もあったが、アンドリューの性格と特殊技術構成からそれはありえないと判断した。
《未来視》の効果で無彩色だけで構成されたアンドリューが俺に襲いかかっている。軌道は真正面からの刺突のラッシュ。以前ならば完全に回避に徹していたところだが…………!
「フッ!」
刺突に合わせて剣でそれを受け流す。
甲高い金属音が辺りに響きわたり、剣と剣の衝突によって僅かながら火花が起こる。
アンドリューの剣は特殊技術のレベルの格差もあって非常に鋭かったが、付け焼き刃とはいえこちらも軽く剣術を学んだ身。それプラス《闇纏武装》による武装の強化と程近くなった物攻ステータスで強引にパリィを成功させた。
だが、返ってきた反動によって俺の腕は痺れる。訓練で使っていた木剣とは比べ物にならない重さがぶつかったこともあって、その衝撃は馬鹿にならない。くっそ、真剣ゆえのデメリットが効いてきた。
アンドリューは流石に慣れているのか、すぐさま剣を引き戻し上段からの振り下ろしを敢行してくる。それを彼と比べれば稚拙な《剣術》でなんとか防ぎきったが……やはり特殊技術のレベル差が大きい。
《剣術》の特殊技術効果のひとつでもある『刀剣を用いた攻撃の際に物攻のステータス値に微弱補正』が効いてきている気がする。
俺もその補正を受けてはいるんだが、アンドリューと俺の特殊技術のレベル差は8。それに加えて《身体能力強化》も発動しているため補正される値も俺とは違って結構な量のはず。物攻のステータス値は総合的に奴に上回られている可能性が高いか。
しかし、その補正は恐らく《剣術》によるものが大きいはず。ならば奴の手から剣さえ離させればなんとか戦いになるか。
アンドリューは正面から俺に打ち合ってくる。だがその速度はアンドリューの方が速い。
先程までの魔法戦とは一変、俺が防戦一方の形だ。
「チィッ!」
奴の切り上げによって俺の剣が弾き飛ばされ、空中にくるくると舞う。それを目線では追っていられない。すぐさまアンドリューの剣が俺の首元に添えられ、模擬戦の終了を告げようとしてくる未来が俺に迫ってきているからだ。しかしそうは問屋が下ろさない。
俺は剣に使っていた《闇纏武装》を解除し、前腕から掌にまで発動させ裏拳でそれを弾く。正拳による攻撃に威力は劣るものの、剣を弾き、軌道を逸らす程度ならば問題なく行える。
「何――ッッ⁉」
《闇魔法》に《剣術》さらに《体術》、計3つの戦闘系特殊技術を持ち合わせているとは流石に思っていなかったらしい。驚愕に目を見開いたところに左の握り拳に《影球》を作り出し、奴の顔面に叩き込む。流れるような動きで右拳を握りしめアッパーカットを叩む。
いくら鍛えているとはいえ魔防を極限まで減衰させられた上で耐性を持たない魔法を叩き込まれれば隙が生まれるというもの。そして顎というのは人体で最も鍛えることの難しい急所のひとつ。顎から伝わった衝撃が頭蓋全体を揺らし脳震盪に追い込む。
「ぐぅ――――!」
一気に畳み掛ける。
ほんの少しだけバックステップを行い距離を空けると、爪先で奴の右手を蹴りあげ、剣を俺のものと同じように空中へ踊らせる。そこから一回転し、全身を両腕で支えるとブレイクダンスを踊るようにして踵をアンドリューの顎を掠めるようにして叩き込む。
――どれだけレベルが格上だろうと、本来のステータス値が上であろうとも、人間という種族から来る弱点はどうしようもない。顔面を殴打し、鼻血による呼吸困難を狙ったのもそのひとつであるが、より効果的に行動不能にさせるところが顎だ。
顎を掠めるように攻撃することによって脳を揺らす。脳震盪、と一般的に呼称されるものを引き起こすことによって奴を行動不能にしたのだ。
膝を地面につくアンドリュー。そこに空中を舞っていた剣を掴み取り、奴の首元に添えた。
「…………チェックメイト」
「……あぁ、俺の敗けだ」
アンドリューが両手を挙げたのを見て、俺は剣を離し、その場にへたり込んだ。
瞬間、俺の影から《聖魔》が現れ、今や彼女の特等席となってしまった俺の肩にぐだ~、と寝転んだ。
魔法戦が終了し、アンドリューとの接近戦に切り替えたときからどこかにいったな~、とは思っていたが、俺の影のなかにいたのか。確かに魔法をぶっぱなしている間は良かったかもしれないが、接近戦となれば俺の肩も居心地が悪くなるだろうからな。
にしても身体が重い。これが魔法の源――魔力を使用したときの反動か。今まではアドレナリンがどばどばだったお陰でどうにかなったが、自覚したら一気に来たな。これがあるから魔法と接近戦闘特殊技術を持ち合わせている奴が少ないのか。
『戦闘の終了を確認。人間族、アンドリュー・ジンゴーズに勝利。
経験値の取得を確認。宵坂湊のレベルが1から13にまで上昇。
体力、魔力の全回復を確認。
体力ステータス値が1146上昇。
物攻ステータス値が1243上昇。
物防ステータス値が995上昇。
魔攻ステータス値が1674上昇。
魔防ステータス値が1027上昇。
敏捷ステータス値が1765上昇。
特殊技術熟練度の取得を確認。
特殊技術:《剣術Lv.1》が《剣術Lv.4》に上昇。
特殊技術:《体術Lv.1》が《体術Lv.2》に上昇。
特殊技術:《隠蔽Lv.1》が《隠蔽Lv.5》に上昇。
特殊技術:《鑑定Lv.1》が《鑑定Lv.2》に上昇。
特殊技術:《闇魔法Lv.1》が《闇魔法Lv.7》に上昇。
一定条件を達成を確認。
称号:《
などと考えていると、急に身体が軽やかになる。先程脳内に響き渡っていたあのアナウンス――天の声と命名――の言葉の通りに体力と魔力が全回復したからだろう。
だが、思ったより得られた経験値が少ない。俺とアンドリューのレベル差は51。それにしては俺のレベルが12しか上がらなかったとなると……やはり殺した方が経験値は多く獲得できるのか。殺す理由がないためにそんなことはしないが。
それにても各ステータス値の上昇値が半端じゃない。敏捷値においてはレベルアップによって上昇した値だけでアンドリューを抜かしているし。ステータス上昇値に特殊技術熟練度上昇値倍加とは聞いてはいたが、こうやって結果を見せつけられると凄まじいことだ。
「見事だった、宵坂湊。完敗だ」
「俺の特殊技術構成があなたのものに上手く嵌まったというだけです。普通だったらこうはいきませんよ」
アンドリューが差し伸べてきた手を握り、彼を起き上がらせる。
アンドリューは清々しい笑顔を浮かべながら俺に言ってきているが、本当にアンドリューに勝てたのは偶然という他ない。俺が現段階でも使える魔法――《聖魔》の援護込みでだ――の中に相手の全ステータスを継続的に低下させることができる魔法があり、アンドリューが魔法を一切使えなかったこと。
それがなかったらまずアンドリューに勝てることはできなかった。もし彼が真っ向から近距離で戦う戦士でなく、魔法戦を得意とする魔導士であれば絨毯爆撃か弾幕によってやられていただろう。それでも今回は出番のなかった、俺の《聖魔》がよく使っている影に潜り込む魔法《
「それでもだ。俺が敗けたことに変わりはない。お前のような存在がいてくれて王国の未来は安泰だ。…………さて、俺はまだ辛うじて戦えるが、どうする? また後日にしようか?」
アンドリューの問いに彼らは全員が首を縦に振った。
ここに全力の彼と戦いたいと思った奴は一体何人いるのかねぇ? ほとんどが辛いことは先伸ばしにしたいとしか思っていなさそうだが。
まぁ、もう模擬戦を終わった俺には関係のないことだな。早く部屋に帰って風呂にでも入りたいでござる。
「まさか本当に勝利してしまうとはな…………」
陸堂光義の《聖魔》、閻魔王はすぐ隣にいる主にすら聞こえないほど小さな声で一人ごちる。
(それにしても……宵坂といったか。奴の《聖魔》は一体何者なのだ?)
光義には彼の精神面での才能しか話していなかったが、それ以上に湊がアンドリューに勝てたのはあの《聖魔》が大きな要因となっていることに違いはない。
(霧に触れた者の全ステータスを低下させる魔法など、レベル1の勇者が使えていい魔法ではない)
そんなことをしてしまえば間違いなく
ならばあの
(…………判断材料が少なすぎるな。ともかくあやつの《聖魔》は警戒しておくか)
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