あと、感想でエロシーンがないなと言われましたが、元々この小説は全年齢版でプロットを組んでいたためエロシーンが極めて少ない……予定だったのですが来るときゃラッシュで来ます。少々お待ちをば。
ストーリーを強引にねじ曲げれば挟めないこともなかったけど、それで質が下がったらどうしようもないからね仕方ないね。
「…………ほっ」
俺はベッドに胡座で座りながら、壁に掛けた遊戯用のダーツボードにダーツを投擲する。するとそれは吸い込まれるようにしてインナーブルと呼ばれるダーツボードのど真ん中に命中した。よっし、これで5回連続ぅ!
『熟練度が一定値に到達。
《
《特殊能力》:《集中Lv.1》を修得』
やったぜ。
──今さらかもしれないが、特殊技術として存在する行動は別に特殊技術を持っていなくても行うことができる。魔法系統特殊技術はある程度の才能がなければ修得することすら不可能であるためその例からは外れてしまうが、《剣術》に代表されるような武術系統特殊技術や《調理》などの生活に使うための特殊技術は誰でも修得可能だ。ただ特殊技術があればその行動をより上手に行うことができるというだけで。
それとは異なるが上昇値は極めて少量ながらもステータス値を上げる手段も存在する。筋トレやマラソンだ。筋肉量が増えることによって物攻や耐久、マラソンをすることによって体力が上昇する。まぁ、あってないようなものでレベルアップをした方が遥かに上昇するんだが……塵も積もれば山となるってな。早朝の筋トレとジョギングプラス朝シャンは俺の日課になった。
俺は異世界召喚3日目の休み時間に街で購入してきた時計に視線をやった。
時計のデザインは地球側と特に変わらない。1分は60秒、1時間は60分で1日は24時間。全く、ご都合主義というかなんというか。
そのため見方も全く変わらない。短い方の針は2のところを指していた。
うっは、マジかぁ……。
例のエリザさんの気まぐれ頬キス事件を思い出さないように、特殊技術の修得に没頭していたわけだが流石にこれはひどすぎだろ。特殊技術:《集中》を修得できたことからもその集中具合が伝わってこようというものだ。
──あ、思い出してしまったよ。
頬に触れたあの柔らかな感触に暖かさ。髪から薫ってくる柑橘系の香りに合わさった女性特有の匂い。それにそれは終わったあとの彼女の余裕を持たせた微笑みまでも。
本当に突発的に来たよな、あれ。頬キスは完全に想定外だったが、これは彼女に気に入られたということで間違いないのでは?
彼女とのコネクションを築けただけでなく、かなり親密な関係になれたことに俺は小さくガッツポーズ。
そんなことをしていると、頬を引っ張られる。
「……何すんだよ」
引っ張られた頬の方に視線をやると、そこにはご機嫌斜めな《聖魔》ちゃんがそこに。じとー、という擬音が相応しいその表情も非常に愛らしいね。そんなこと思っていると杖で額を叩かれる。
──はいはい、ごめんなさいね。
端から見て、今の俺はかなりだらしない表情をしていたことだろう。それが彼女は気に入らなかったらしい。『私の契約者なんだからもっとしゃんとしろ』ということなんだろうか。
それでも男の子の純情も分かってほしいなって。……『そんなこと知らない』ですか、そうですか。
《聖魔》は俺の腕を消防署にあるような滑り棒のように下りていくと、そのまま杖を掲げた。杖の先に付いた
わざわざ《影路》を使う意味が俺にはさっぱり理解できないが、俺の《聖魔》は人型であるためか知能が非常に高い。俺の言うことを寸部違わず理解してくれるし、俺がわかるように表情やジェスチャーを使うことによってある程度の意思疏通は簡単に行うことができる。そんな彼女が《影路》を使えというのだ、俺がそれに逆らう理由はない。
俺は魔法を発動させる前に魔光石──地球で言うところの電球のようなものだ──を消し、いかにも寝静まったかのように演出する。わざわざ魔法を使っていくということは、この行為は誰にも気付かれたくないものだと判断したためだ。
そして魔法を発動した。
「《影路》」
俺の身体も自身の影に沈み込む。感覚的に言えばプールで潜水を行うような感じだろうか。尤も、《影路》を発動させている間は呼吸も問題なく行えるため、あくまで感覚的なものにすぎないが。
念には念を重ねて、特殊技術:《隠蔽》を併用することによって魔力の痕跡も隠す。丑三つ時にせまり、メイドや執事も粗方眠ったであろう時間帯にこれほど警戒する必要もないと思うんだが……まぁ、石橋は叩いて渡らなければならないよな。
ドアの外に出た辺りで待っていてくれた《聖魔》と合流する。『こっち』と合図する《聖魔》に合わせて俺も影の水路を泳いでいく。城の構造も完全とはいかないまでも九分九厘頭の中に叩き込んであるために、彼女が何処に目掛けて進んでいるのかも予想がついた。
「玉座の間……か?」
彼女は頷くことによって肯定を示した。
玉座の間。基本的には国王が謁見に使用する場所であり、俺達《勇者》がこの世界にやって来た場所、そして彼女と出会った場所。
召喚されたばかりの頃はアンドリューとの集合場所に使っていたりもしたが、外周部の壁付近の施設──兵士の訓練所の場所が分かってからはほとんど訪れる機会のなかった場所だ。
にしてもなんで今さらこんな場所に……?
彼女が止まる。
俺もその動きに従って、顔だけを影の水路から出す。するとそこには過度な装飾が施されながらも、その大きさから荘厳さを一切失っていない両開きの扉があった。言うまでもなく玉座の間に通じる扉である。
《聖魔》は再び顔を水路に沈め、泳ぎ始めそれに俺も追随する。
《影路》はそこに影や闇さえあれば物体の僅かな隙間を掻い潜って動くことができる。扉と床の僅かな隙間をすり抜けることなど動作もなき事だ。
影や闇がなければ使用ができないというデメリットは存在しているが、今夜は雲が多く月も中々顔を出さない。某段ボールを使用する傭兵みたく完全なステルス行動をするにはベストコンディションだ。
顔を出す。
ここまでもそうだったが、巡回をしている兵士達には全然出会さなかったな。外からの襲撃には警戒しているのかもしれないが、内部から玉座の間を目指そうという輩には無警戒なのかもしれない。はいはーい、そんなザル警備だと俺みたいな輩に好き放題されますよーっと。
「《
俺と《聖魔》の姿を黒い魔力の布で覆い隠す。
《純黒の羽衣》は闇の中限定という縛りはあるものの、特殊技術:《捜索》のレベル10すら看破できないほどの隠密性能を布を纏っている者に与える闇魔法のひとつだ。図書館で闇魔法にもついて調べてみたりしたんだが、この魔法は一般には認知されていない魔法のようだった。つまりはこの《聖魔》のオリジナルの魔法である可能性が高いんだが……こいつは本当に何者なんだろうな?
アンドリュー戦の時に大活躍した──というよりはこれがなければ勝てなかった──
こんなにも可愛い姿をしていながら、時折彼女は陸堂光義の《聖魔》──閻魔王すら凌駕している個体なのではないかと思ってしまう。
《聖魔》が俺の腕をよじ登り、俺の定位置につくと、杖で何かを指し示した。
そこには玉座に至るための階段があるが……、
「そこに行けってことか?」
《聖魔》は頷く。
俺は言葉にしたがって階段の方に近づくとそこで彼女は腕を伝って下り、階段の手前をこつこつと杖で叩き始めた。
そこに何かあるのかとしゃがみ込んでみると──、
「風……⁉」
本当に僅か、そこに何かがあるのだと理解し、注意してその辺りを探らなければ感じ取れないほどに微弱な冷たい風がそこからは吹いてきているのだ。それはこの下に空間があるのだという明確な証拠でもあった。
彼女はこの隠し空間に用があったのだろう。
──不安しかない。
王城に隠し部屋があるという情報など聞いたこともなかった。クラスメイトに知れ渡っていれば俺でも簡単に気付くことができるし、アイズさんやアンドリューに代表されるような城の面々からもそんな話は聞いたこともない。となると、この空間は城の人間にすら知られていない空間──国の機密があるかもしれない空間ということだ。王がこの空間のことを知っていないという確率はかなり少ない。
だが、そうなると気になるのはこの世界に召喚されてまだ1週間しか経っていない《聖魔》がこの空間のことを知っていたのかという疑問に行き着くんだが……この子との関係は良好といって良いものだ。俺を嵌める様な行動に出るとは考えにくいため、間違いなくこの下の空間には俺にとって嬉しいものがあるに違いない。
隙間があるということは《影路》で入り込めるため、そこに侵入しようとすると──あっさり入れた。
そこは洞窟になっているようで周囲が岩の壁になっており、まともな照明などないはずであったが、岩壁の所々から突き出た淡い水色の水晶が発光していることで視界は良好。つまりは《影路》も《純黒の羽衣》も効力を失ったため、俺はそれを解除し、念のために持ってきていた日本刀──いや、東和刀をいつでも抜けるように腰に差し、それの柄を右手で握る。
そして俺は一瞬だけ魔力を進行方向──下っていく階段に向けて放つ。
超音波なんかで建築物の構造をスキャンするようなイメージで考案した索敵方法なんだが、案外うまくいったらしい。この隠し空間の構造が手に取るようにして──とはいかないまでもある程度は理解できた。
眼前の下へと続く階段はおおよそ50メートル下まで続いており、分かれ道などは特になし。一番下のまで行った先には巨大な空間が存在している。ただその空間に入った瞬間に俺の魔力が掻き消された。
そのことからそこはおそらく魔力が無効化される空間、もしくは俺の魔力を木っ端のように吹き飛ばせるような魔力が常時放出されているようだ。
警戒しながら、俺は階段を下っていく。コツ、コツという俺が岩の階段を踏みしめる音のみが静寂が支配している空間に響き、何重にもなって反響する。
──正直言ってくっそ怖い。
この下に何があるのかという不安や反響する足音。
魔物と戦うときとは別ベクトルの恐怖が、俺の心をじっくりと侵していく。その恐怖から少しでも早く逃れたいという思いながらも、戻るという選択肢は存在していないため、次第に階段を下る速度は早くなっていく。
正体を確認し、それがもし明らかにヤバイ物だと判断できたら逃げられるようにしながら、俺は最後の段を下りた。
そこにあったのは──、
「なんだこりゃ…………」
──広がっていたのはドーム状の空間だった。
面積はちょっとした球場くらい。この上に城が建っていることが信じられないほどの空洞だ。
階段にもあった水晶がより大きくなって、壁や天井、床などから突き出ており、それは異世界に迷い混んだかのような勘違いを生ませてくれることになっただろう。
しかし、そんな幻想じみた空間をぶち壊すものが存在していた。
──鎖だ。
闇色の鎖が水晶に巻き付いたり、壁から突き出ており、幻想世界を見事なまでに汚してしまっている。しかもこの鎖は超高密度の魔力の集合体である。勇者の中では特に魔法に特化した桐生先生でさえ、現段階ではこれほどの密度の魔力は作れないだろうと思えるほどの。
これはおそらく現在も発動している魔法の効果なんだろう。
鎖の色的に《闇魔法》──いや、それの上位互換である可能性が高いが、それを俺は全く知らない。図書館の魔導書を読み漁ってみても闇魔法で鎖を作り出す魔法など存在していなかったし。
「一体何者がこれを…………?」
そんなときだった。
俺の髪を掻き分け、いい感じのポジションについていた《聖魔》が杖を振るったのがわかった。紫色の光が俺の視界に入った瞬間に──鎖は完全に消え失せていた。
「嘘だろ……⁉」
目の前に広がっているのは、それがなければ良かったのにと俺が思った通りの幻想的な空間だった。
先程まで俺が見ていた光景は幻だったのではないか、そう思わせるほどに何の痕跡も残さずにそれは消滅していた。
そしてそこ──あちこちから突き出ていた鎖が集中していた部分──にあったのは一振りの剣だった。
いや、グリップや剣身としか思えない部分があったために剣と表現したが剣身は剣とは思えない形状をしていた。
それを剣の種類に分類するのであれば大剣という表現が相応しいのだろう。
禍々しい白に所々に蒼い線──おそらくは魔力の線だ──が混じりあっている。鞘というものがこの剣に存在しているのであれば絶対に収まらないような形状をしており、その形は化け物の腕を彷彿とさせる。
そんな剣が大地に突き刺さっている光景は、おぞましいながらも俺の心を昂らせた。
俺は吸い寄せられるように、その剣の前に立った。
《聖魔》も俺の肩に乗り直しており、そちらの方に視線を向ければ、剣を引き抜くようなジェスチャーを行っている。
──引き抜いていいんだな?
言葉を視線に込めると、彼女も頷いてくれた。
俺は剣のグリップを握り──、
「ええい、ままよっ!」
それを引き抜いた。
「──《
そんな言葉を聞いた瞬間、俺の身体は膨大な魔力の奔流によって吹き飛ばされた。
身体が宙に浮き上がり、そのまま何度も空中で回転しながら、俺は背中からこの洞窟の壁に叩きつけられる。
「げほっ、ごほっごほっ!」
叩きつけられた衝撃で肺にあった空気は軒並み吐き出され、一時的な呼吸困難に陥る。幸いにも水晶の部分には当たっていなかったが、もし当たっていたらこれ以上のダメージを負っていたに違いない。
──痛みに悶絶している場合じゃない。
これぐらいの痛みなら多少は負ったことがある。慣れた──とは言わないまでも痛みに耐性がつき始めているのならば行動をすることも容易だ。
一体何が起こったか。俺の手に握られていたはずのあの剣はどこに行ったのか。何故俺の身体は吹き飛ばされたのか。把握すべきことはいくらでもある。
とりあえずは身体を起こして剣を引き抜いたことで、この洞窟の周辺環境が変化していないかを確かめなければ。
そうすれば俺は吹き飛ばされる直前に魔法を発動させた何者かの姿を確認できるかもしれない。
俺が背中の痛みに耐えながら身体を起こすと、
「──女?」
そこには女──らしき者がいた。
背中を覆い尽くすほどの純白の髪。手にはあの恐怖を掻き立てる暴力的にすぎる剣が握られている。
だが、それ以上に俺が怪訝に思ったのは臀部の辺りに存在しているものだ。
──それは人間であるならば絶対に備わっていないもの。
尾だ。
奴の身長の半分ほど。業物の尖鋭な槍を想起させるその尾は、現在振るわれておらず静止したままだ。いや尾のインパクトが強かっただけで、脚は膝下から、腕は現在俺の視界に入っているところは完全に髪色と同じ、処女雪の鱗に覆われてしまっており、足や手は完全に異形の物だ。
爪は完全に鉤爪と表現すべきもので、どうやってあの剣を握れているのかが俺にはひどく不思議だった。
「──?」
小さな呟きと共に彼女がこちらを振り向いた。
髪とは対照的な褐色の肌はロボットアニメのパイロットスーツを彷彿とさせる、ぴっちりと張り付きながらも太ももや横乳から腰辺りまでを露出させた特殊な装束に覆い隠されている。
俺の黒瞳と、眼球が黒く染まった異様な目がかち合う。青紫の瞳は美しく
装束のせいで嫌でも強調してしまう魅惑のボディーライン。地球では二次元のなかでしか拝むことができなかった褐色の肌に純白の髪。宝石のような双眸──そのすべてが男を引き付けてやまない魔性の美を放っている。
そしてそれとは対照的な原始的恐怖で俺の身体を縫い付けている。その恐怖は閻魔王のそれを軽く凌駕し、未だに正気を保っていられる自分自身を誉めてやりたかった。
──瞬間、この空間に爆発音のようなものが響いた。
そして彼女が俺の眼前にまで迫っている。剣を振り上げ、俺に向かって振り下ろす。《未来視》が今さら働き、俺が一刀両断される未来が見えた。
《超高速演算》と微力ながらも《集中》のお陰か、彼女のモーションがはっきりと見える。大上段から力任せの一撃が俺の命を刈り取らんと迫る。だが、脳は働いていてもそれに身体がついていかない。避けろ、と命令を下すもそれよりも先に死の刃が俺の命を滅するだろう。
これだけの速度と威力を誇った一撃だというのに、無音のそれはおそらく空気抵抗を発生させていないんだろう。ロスのない、極限まで精練されたその一太刀に俺はこんな状態であるというのにひどく魅せられた。
──俺も《剣術》と《体術》を極めれば、いつかはあの領域に至れたんだろうか?
そんな場違いというべき言葉が脳裏に浮かび、死が目前まで迫っているというのに何故か俺の口の端が歪む。今から死んでしまうと覚悟したが故におかしくなってしまったのか。
死を覚悟したその時だ。
「《黒死の触手》」
異形の女を黒い触手が弾き飛ばした。
ドゴォ──ッッ! という爆発音が響き、奴の身体は水晶に衝突。そのままあり得ない角度で弾き飛ばされ、天井に叩きつけられる。
「──助かった……のか?」
目の前にいた可憐な死の具現が突如として現れた触手に吹き飛ばされるという状況の変化に、自分が助かったのだという安堵が合わさって、俺の口から漏れたのはそんな呆けた言葉だ。
「──無事ですか、ミナト」
そんな俺に背後から声がかけられる。
恐る恐る振り返ってみると、そこにいたのはこれまた女だ。しかもとんでもない美女である。
青と金色のオッドアイに濡れ羽色の長髪。水着のパレオに類似した露出度の高い装束を身に纏い、その上からフード付きのマントを羽織っている。マントの内は黒いが、所々に光を放っている点が見受けられ、星空のような印象を受けた。
手に握られているのは彼女の身長よりも僅かながら長い、先に紫の宝玉のついた杖だ。それは僅かながら紫色の光を放っている。
「良かった。怪我は負っていないようですね」
彼女は俺に向かって僅かに微笑みかけると、俺の前に出る。
そして杖の先についた宝玉が更なる輝きを帯び、周囲に出現するのは異形の女を吹き飛ばした触手だ。その数は十数本は下らないだろう。
「……お前は?」
「一週間ずっと一緒にいたではないですか」
彼女は苦笑する。
一週間ずっと一緒……。それに加えて物凄くデジャブ感のある格好…………まさか⁉
俺は彼女の正体に勘づいた。
「俺の《聖魔》か⁉」
「ええ。ようやく完全体になれたことですし、ゆっくりと話をしたかったのですが……話ができるのはもう少し後になりそうですね」
完全体とかどこのセル様やねん、とツッコミをいれそうになったがそれどころではない状況にあることを思い出した。
異形の女が立ち上がる。
腹部は触手によって抉られ、いくつかの臓器が吹き飛んだだろうと思わせるような重症を負っていたのだが──負傷した部分から赤い霧が発生する。そしてその霧の量が減少するにつれて怪我は時間が巻き戻るようにして再生。最後には怪我を負っていたことが信じられないほどに、怪我の痕跡は綺麗さっぱりなくなっていた。
くそったれ、どんな治癒能力だよ⁉
「ミナト、私の後ろに」
「あ、あぁ…………」
俺が巻き込まれれば間違いなく死ぬ。それを彼女もしっかりと理解しているんだろう。
俺を庇うようにしてさらに前に出て、対面する女を威圧する。
彼女の圧空間が軋みをあげているような気がした。だが、異形の女もそれに負けじと殺気を放出する。それだけで俺の頬は浅く切り裂かれ、俺の首筋辺りまで滑りのある生暖かい液体が流れる。
「──まさか、寝惚けてる?」
「ね、寝惚けてる⁉」
寝惚けてるって理由で俺は殺されかけたのかよ、怖すぎだろ!
「彼女は絶対に自分からは攻撃しません。しかしミナトが攻撃しなかったことを考えれば、封印から解かれたばかりで意識がまだはっきりとしていないのでしょう。──まぁ、そんなものはどうでもいいですね」
彼女の身体から闇が溢れだし、周囲の空間が軋みをあげる。その様は世界が絶叫しているようだった。
彼女はさらに一歩前に出る。
「私の主を殺そうとしたこと……後悔させてやりますよ。ティアマト──!」
「ニュゥウゥゥゥクゥゥゥスゥゥゥ──ッッッッ‼」
──この世界の頂点に君臨しているであろう2人。
それは怒号と咆哮を以て、闘争の火蓋は落とされた。
7話にしてやっと登場。重役出勤過ぎるティアマトちゃん。
登場が強引すぎると言われそうですが、ちゃんとそれっぽい事は書いてあったりします。
投稿時間についてのアンケート※一週間程度を目安に〆
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