指揮官にちゅっちゅっしながら甘えてるだけでもうそれでいいかなって思えましたよ……。
(意訳:エロは次回になりました)
「はい、休憩時間は終わりよ。ポットやカップはこちらで洗っておくから、早く仕事に戻りなさいな。私達に秘匿扱いの書類は休憩前に直接あんたのところへ事務官が持ってきてるでしょ? それ以外の本部からの書類は先に仕分けしてあげたから、テキパキ終わらせることね」
「ネルソン姉様、それぐらい私がやりますのに」
指揮官の斜め前に設置されている秘書艦用の執務机に腰掛けつつ、ロドニーは申し訳無さそうに口にする。姉の変化は彼女にも好ましいものだったが、ここまで甲斐甲斐しく些事を率先して行う様子を前にすると、指揮官の誘導が彼女に強い変化を促し過ぎてしまったかもしれないと。
「戦いでの勝利を得るのが指揮官や私達の本来の仕事なのに、書類仕事に忙殺されてちゃ世話ないでしょ。指揮官ならば戦術や艦隊運用、私達なら練度や連携の向上、自分達をより高みへと磨き上げる時間をしっかり確保するのも仕事の内よ。指揮官とロドニーがこの艦隊で今一番書類仕事に長けているんだから、今はそれに集中しなさいな?」
きびきびした物言いは変わらないが、あれ以来ネルソンの声色からは完全に険が取れていた。ネルソンの態度が心なしか柔らかくなったと艦隊内でも評判は上々だ。元々面倒見がいい彼女の一面を鋭過ぎる言葉が打ち消してしまっていたところがあったために、今では厳しくともしっかり仲間を見守ってくれるお姉さんといったところに駆逐艦たちの評価も変化してきている。
「委託を完了した子達の出迎えも必要なコミュニケーションの一つだけど、ここ最近はそれすらままならない状況だったわけでしょ。能力に合うだけ仕事をするのは当然のことなのだから、私に余計な手間を掛けているなどと余計なことは考えないの。今はあと30分ほどで一部隊が帰投するわ。それまでに捌ける書類を少しでも片付けなさいな」
「分かりました、姉様。ありがとうございます」
軽く手を振り、洗い物をトレイに乗せて給湯室へと歩いていくネルソンの背中は背筋が伸びた堂々としたもので、余計な気負いが抜けた結果かとロドニーは思い直す。そして、内心では姉に変化をもたらした指揮官の成長にも改めて喜びを覚えるのだった。
「流石は私の指揮官ですね。ふふっ。今晩はお約束はしてませんけど、こっそり押しかけてしまいましょうか?」
秘書艦を務めるロドニーには執務室近くの個室が与えられている。あとは艦隊への貢献度を飛び抜けて高いヴェスタルにも。彼女は工廠にほど近い区画に部屋がある。指揮官にも無論個室は与えられているが、業務量の兼ね合いで執務室奥の仮眠場所で眠ることが多かった。
「……あら?」
「まあ」
ロドニーと同じことを考えた者はもう一人。紫色のネグリジェに身を包んだヴェスタルその人に、執務室近くでバッタリと顔合わせすることになっていた。なお、ロドニーも水色のネグリジェに身を包んでおり、二人とも目的は一致しているのが互いに伝わる。
「ヴェスタルさんもそのつもりで?」
「そういうロドニーさんこそ〜」
「ふふ、こうでもしないと指揮官の競争率は上がるばかりですから。疲れが強いようなら、誘導して差し上げる形でもいいかなと思いまして」
おおむねヴェスタルも同じ考えだったようだ。あわよくばの期待はあるが、寄り添って眠ること自体にも充足感を得られる二人なので、指揮官の体調や疲労感次第でどちらでも構わないぐらいのつもりだった。自分達との親愛が深まれば主目的は達せられるのである。
「失礼しますね、指揮官〜?」
「もう仮眠場所の方だとは思いますが、なにか音が聞こえますね……?」
ひょっとしたら眠りの中かもしれないと思いつつ、仮眠場所へと近づいていけば、その音の主が確認出来たのだが……。
「きもちいいのぉ、しきかん。もっとぉ、もっとぉ、さわって……? しきかんにぎゅっとされながら、なでなでされるの、すごくきもちいいのぉ……」
声の主は聞き間違えようがないものだ。だが、あんな舌ったらずの声を出す彼女と普段の彼女がどうにも結びつかない。ロドニーとヴェスタルは固まったまま、息を殺して耳に意識を集中させる。
「えへへ、しきかんにあまえるのすきぃ。ネルソン、しきかんになでなでさせるとね……ふわぁってなって、まっしろになっていくの……。からだもね、とってもあつくなって……ほら、おへそのあたり、すごくねつをもってるでしょう……? からだが、すごくよろこんでるの、もっとわたしをすきにしていいんだよ……?」
軽い催眠状態にあるのは推測できるが、男に形振り構わず媚びを振る声がネルソンのものだと頭に入っていかない。ロドニーもヴェスタルも指揮官の誘導で催眠状態に入って繋がる楽しみ方をすることもあるが、記憶の限り、ここまで退行するようなことは無かったように思う。
「しきかんがふたりだけのときはがまんしないであまえていいっていってくれてから、わたしはねずっと、からだがかるいしこころもぽかぽかしてるの。だからね、ネルソンをぜんぶあげたいの。もっと、えっちなこと、してほしい……」
普段との落差も含めて、何という破壊力だろうか。そういう誘導の結果であると推測するのは容易くても、此処まで甘えん坊になるネルソンが奥底に潜んでいたとは想像がつかなかったのだ。
「ね、したぎもびしょびしょなの、わかるでしょう? おっぱいも、おしりも、お、おんなのこのばしょだって……しきかんにさわってほしいって、ずっと、さけんでるの……さわってもらえたら、もっともっときもちよくなれるって……ふぁっ、おっぱいもおしりもあつくなってきちゃったぁ……」
「だっ、ダメですよぉ〜!」
「そこから先は私達も混ぜて下さいっ!」
「えっ……ロドニー? ヴェス、タル……? どっ、どうして、そんな、い、嫌ぁぁあああああああああああああああああああ!!!」
全て持っていかれてしまうという強い危機感に囚われた二人は思わずその場に乱入してしまう。退行気味の甘えたさんな自分を見られたことでネルソンが催眠状態から一気に覚醒してショックから号泣してしまったものの、指揮官が強く抱き締めて優しく髪を撫でながら、ネルソンを自分が守るから心配はいらないと言い聞かせ続けることで、やがて落ち着きを取り戻すことが出来た。
「ぐすっ……酷いわよ、二人とも……」
指揮官にしがみついたまま、彼の胸板に顔を埋めて、赤いネグリジェに身を包んだネルソンは二人を見ようとしない。心地良さと安らぎは変わらず与えられているものの、流石に今は自分の心が催眠状態へ入ることを拒否している。ただ、こうなったら指揮官を二人に渡してやるものかと腕と足を彼自身に巻きつけて離すつもりなどないと態度で示していた。
「ごめんなさい、ネルソン姉様……」
「取られちゃうって焦ってしまって……だってネルソンさん、とっても可愛らしくてこのままじゃ敵わないと感じちゃったんですよぉ……」
「……ふんっ」
催眠状態には入っていないが、声や仕草はどことなく愛らしさを滲ませている。指揮官にしがみつく姿も、時折、気持ち良さそうな吐息が漏れてしまうのも、彼女が持つ豊満な肢体とは逆に可愛らしさを喚起させるものだった。
「姉様、謝って許されるわけではないと思います。ですから、催眠状態に入った私が指揮官に触れられるとどうなっていくか見届けてください。それで釣り合いが取れるかは分かりませんけど……」
「そうですね、私もお見せします。ネルソンさんの見られたくない姿を見てしまったのですから、それぐらいはしませんとフェアじゃありませんよね……」
「え? ちょ、ちょっと待ちなさいな、二人とも何を言ってるのよ?」
二人のぶっ飛んだ言葉に思わず素面に戻ってしまったネルソンだが、指揮官がこうなったら二人は止まらないし、弱みを見つけてやるつもりで見てやればいいと嘆息交じりに言われてしまうと、困難に真っ向から立ち向かう彼女の気質もあって、それならばとことん見せてもらおうじゃないかと心が定まる。
指揮官から離れるつもりが無いネルソンには自分の背中に抱きつく形に移動してもらって、彼はまずロドニーの背中を支えつつ額に手を当てて、視界を覆いながら耳元で囁いて誘導を行っていく。
ほら、どんどん力が抜けていく。周りに誰がいるかも分からなくなる。良く馴染んでいるあの気持ちいい感覚に包まれていく──。
指揮官の穏やかでゆったりとした口調に声が聞こえる位置のネルソンまで引っ張られそうになるものの、周りに人がいるという感覚と先程のショックが残っているために、首を軽く振れば誘導を振り払うことが出来た。
「……嘘、もう入っちゃってるの?」
瞬く間にだらんと腕を垂らし、口元が開き、あの優しさを感じさせる、くりくりとした青い瞳の焦点が飛んでしまっているロドニーの様子にネルソンは驚きの声を漏らす。そのまま一旦床へと横たわらせて、もっと深く落ちていく、どんどん気持ち良さが増していく、自分で気持ちいいと言えばもっと気持ち良くなる──そんな声を掛けつつ、指揮官がロドニーの下腹部あたりを撫でていけば──。
「こうやって雄叫びを上げるぐらいに深いオーガズムを得てしまうわけです~。本来は人前では入りにくいですけど、ロドニーちゃんがそれを良しと覚悟を決めた以上、後は指揮官の言葉や手に委ねるだけですから~」
ヴェスタルの言う通り、頬を緩ませ涙を流して、口元からは涎がこぼれ、今も目の前で痙攣を繰り返す妹の姿。指揮官に執拗に子宮や接合部周辺を肌の上から撫でられ続けて、気持ち良過ぎて壊れる、死んじゃうと雄叫びを上げながら、何度も身体を跳ね上げては、絶頂に身を震わせる妹を見届けた。普段はここまでやらないが、罰の意味合いも込めて、指揮官はロドニーの懇願にも手を止めなかったのだ。
今もまだ軽いオーガズムの波に身体が支配されているのだろう。妖艶な雰囲気をまとい、快楽に身を任せる妹の姿を不思議と恥ずかしいとは思えない。指揮官をここまで信じられて、女の幸せを甘受している妹を、ただ羨ましいと感じたのだ。
「ヴェスタルにはキーワードで一瞬で入ってもらうから、先に楽な姿勢になってもらうわけね……でも、寝転ぶわけじゃないんだ?」
ロドニーにはそのまま眠りに入るように誘導し、続けてはヴェスタルの番だった。座椅子に深く腰掛けて足を開いたような格好になり、なぜか指揮官は給湯室から大きめのたらいを取ってきた。流石に移動となれば動きにくいからと手を繋ぐ形で一緒に動いたわけだが、ネルソンはある意味開き直りの心理状態になっている。
「プライベートの時間なんだから、子供返りまでいかないにしても、こうして多少甘えたっていいじゃない」
そう言う彼女に微笑みながら、空いたもう一方の手でそっと頭を撫でる指揮官を愛おしく思う。あの状態に入っていなくても素直にそう思えた自分を、これもまた自分の一側面なのだとネルソンは認めることが出来ていた。
「どうしたって? ううん、自覚できてなかった自分自身が本当に色々隠れているんだなって、ちょっとおかしくなっただけ。私もそうだし、普段は優しくて温和なあの子があれだけ髪を振り乱して獣のような声を上げるんだもの。ヴェスタルにしても大きなたらいを用意するってことは、多分そういうことなんだろうし……」
決め付けは良くないと実感しただけだと、ネルソンは自分の言葉をまとめた。その後は彼女の当たって欲しくないと願いつつも残念ながら予測通り、キーワード一つで催眠状態に入ったヴェスタルが指揮官の誘導に従い、放尿プレイを行いながらオーガズムに達するという中々に変態じみた光景を見せ付けられることとなってしまった。呆然とその様子を見ながら、ネルソンはこれで釣り合いが取れたとまるで第三者のような思考が頭をよぎってしまうことで、自分の精神を守る防衛反応を起こしていたが。
尿道口の拭き取りに、下着をもう一度履かせて横にならせるところまで、彼女の世話を手馴れた様子で行う指揮官に我に返ったネルソンは咄嗟に抗議の声を上げそうになるが、指揮官の瞳から少し光が失われていることに気づき、心情を察してそっと指揮官を抱き締めるに留めておく。
「理解は出来なくはないわね。人のお世話が好きでそれを仕事にしちゃってるけど、反転すれば誰かに全部お世話されてみたい願望が隠れていたと」
あとはロドニーが普通に交わる時でも感じ過ぎて制止を懇願しても決して手を緩めることなく責め抜かないと後で拗ねてしまうことも、敵へ容赦しない部分が裏返って、信頼する相手にならとことん責められたい願望を秘めているなど、ぽつりぽつりと告白する指揮官。ロドニーの誘導に入る前に耳元で伝えるように囁かれていたのだという。
指揮官と二人が深い関係にあることは公然の秘密だったが、妹やヴェスタルはプライベートの時間を本当に堪能していたのだと改めて思わされる。そして、同時に懐の深さが行き過ぎるのも問題だと指揮官への憤りも覚えた。
「行くわよ。ちゃんと布団も掛けたし、起きた時に備えて書き置きも残したわ……どこへって? 私の部屋によ」
ネグリジェに防寒代わりにと彼の軍装の上を羽織ったネルソンは指揮官の腕に自身の腕を絡ませ、引っ張るように歩いていく。夜間警邏中の警備兵や同僚の艦船少女に発見される可能性もあったが、見られたら見られた時だと腹を決めていた。仮眠室で着替えた正装扱いのワンピースやジャケットは手に提げた携行鞄に畳んで仕舞ってあるし、自分の部屋──本来はロドニーと使う予定だった二人部屋だから、実質個室として使っている──にはシャワールームもあり、情事の後は残り香ごと汗を流すこともできる。
「私はもっと深くあんたを知りたい。理解したいと本気で思ってるから。あと、アブノーマル過ぎる相手ばかりじゃあんたが疲れちゃうわよ……ねえ、今晩のうちに完全に私をあんたのモノにしてしまってちょうだい。行き過ぎた時のあの二人の抑止力ぐらいに必要だと考えたらいいわ。私を使いこなしなさいな、指揮官」
部屋に入るまでネルソンの気焔が人避けになったのか、二人は誰ともすれ違うことは無かった。そのまま寝台へと倒れ込んで指揮官を引っ張り込んだ彼女は指揮官をわざと焚きつけるような物言いをする。
気兼ねせずに自分を組み敷いてくれればいいという思いからだったが、そんな理由で抱くなんて真っ平だと返す指揮官は自分の意思でネルソンを抱き、自分の女にすると告げる。
「うん……しきかん、わたしを、しきかんだけのものに、して……?」
あの心地良い感覚に包まれていき、ネルソンは指揮官の声と触れられる手や身体の温かさだけが認識出来る状態へと落ちていく。自分から深いところへと、指揮官と自分だけを感じられる深い海の底へ。