タイ出身の十六歳の少女、ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー。彼女は
「ぁっ、はぁっ、んんっ……」
ヴィシュヌは今、組織を束ねる総帥と呼ばれる男に抱かれている。西洋風の広い部屋に置かれた天蓋付きのベッドに押し倒され、先ほどまで処女膜が確認できた膣内を極太の肉棒で串刺しにされている。膣から溢れ出た破瓜の血が肌を伝い、ベッドのシーツに触れて赤い染みを作っている。
ズンッ、ズンッと男がヴィシュヌの体を上から押し潰す。その動きに合わせて肉棒が奥深くへと挿入され、膣肉を引っ掻く。初めての感覚。強烈な異物感にヴィシュヌは落ち着きなく身を捩り、深緑に近い黒のショートヘアを揺らした。
「そ、総帥……」
小さい頃から異性と接する機会はなく、ヴィシュヌは異性に免疫がなかった。恐怖症というわけではないが急に異性に接近されると反射的に足が出てしまいそうになる。ムエタイのチャンピオンである母親から格闘技を習っていたヴィシュヌの蹴りは凄まじく、それを受ければ大抵の者は悶絶するだろう。
だが、ヴィシュヌは目の前の男に危害を加えることはなく、自然と受け入れることができた。
逞しい体と肉棒を有した男。全世界を支配し、神同然に崇められている存在。愚かにも争いを繰り広げてきた人類を束ね、不要な国や人間を処分し、統一化を図った英雄。それだけの存在に求められている事実に高揚し、ヴィシュヌは豊満に実った乳房の内側で心臓の鼓動を速めていた。
この人の妻としてこれから生きていく。近いうちに孕まされることになるだろう。他の妻たちは既に皆仲良く子供を妊娠していて、大きく膨らんだ腹を撫でる姿はとても幸せそうだった。
男に魅入られた妻たちが羨ましく、ヴィシュヌも男の妻になって、子供が欲しいと以前から思っていた。だからこそ、自分の要望が通りやすいようにとヴィシュヌは構成員として懸命に働いた。タイの代表候補生だった彼女は、国から与えられていた専用IS『ドゥルガー・シン』を駆って組織主導の行事『間引き』に参加した。
生きていても無駄な人間を処分する『間引き』で、ヴィシュヌは大量の人間を蹴り殺した。蹴って、蹴って、人間を肉塊へと変えた。子供を庇おうとする親を嬲り殺し、子供に絶望を味わわせた後で小さな頭蓋を踏み潰した。
ヴィシュヌは忠実な兵士だった。男が求めていた通りの残酷で、面白味のある間引きを演じて見せた。その上、ドスケベな肉体を有していたことも幸いして、男の目に留まったらしい。その結果が、今の状況だ。男の部屋に呼び出されたかと思えば求婚され、ベッドイン。
ヴィシュヌは幸せだった。欲望に染まる男の眼差し。体内を支配する男の熱。神に等しき存在と繋がるこのひと時を噛み締めるように味わう。いつしか処女喪失の痛みは引き、代わりに快楽が体を満たす。
「いい体だ」
男が腰を振りながら気持ち良さそうに笑う。それを見て、ヴィシュヌは微笑んだ。
「ありがとうございます。私の全てを、総帥に捧げます」
「あぁ、これからも可愛がってやろう」
男はヴィシュヌの胸に顔を埋めるように乳房にしゃぶりついた。男の口から漏れた唾液が胸全体に広がっていく。男に胸を舐められる感覚もまた初めてで、ヴィシュヌは新鮮な刺激の連続に陶酔した。
「んっ、あっ、そ、そんなに吸っちゃ、駄目……」
乳首を思い切り吸いつかれ、ヴィシュヌは声を上げる。ヴィシュヌの熱を含む喘ぎ声に男は気を良くしたようで、腰遣いが激しくなった。ヴィシュヌが思わず背を仰け反らせる程度には強い突きが子宮口に放たれた。
「んっ……! あ、あぁっ……!」
男の亀頭で何度も子宮口を突かれる。子を育む袋をサンドバッグにされている。男の子供が欲しいと思っていたヴィシュヌだったが、このままサンドバッグにされて子宮を駄目にされるのもいいかもしれないと思っていた。この突きを味わえば、女ならば誰でもそう思うだろう。
神に等しい絶対なる存在。この人にももっと気持ちよくなってもらいたい。ヴィシュヌは男は男への恩を返そうと考え、行動に移す。
「失礼いたします……」
ヴィシュヌは男に抱かれるばかりではなく、自分から抱き締め返した。両手を首に、両足を腰に巻きつける。にやにやと笑いながら自身を犯す男と密着し、近づいてきた唇に自身の唇を宛がう。
「ちゅっ、くちゅっ、ちゅるっ、ぬちゅっ、ちゅるっ……」
無礼と思いながらも自ら舌を入れ、男の口内を舐め回す。顔色を窺いながら舌を動かしていたが、男の反応は悪くなかった。じっと見つめ返す眼差しは優しく、愛情に濡れている。それを浴びることで承認欲求を満たし、自分を認めてくれる愛しい存在に愛情でもって答える。
「ぐちゅっ、ぬちゅっ、ぢゅるっ、ちゅぷっ、んっ、くちゅ、くちゅっ……」
男の舌が絡んできたことで、ヴィシュヌの振動は跳ねた。伝わる熱、ざらざらとした舌触りが心地いい。口の中で唾液を混ぜ合わせる行為がこれほど気持ちいいなんて。初体験の連続にヴィシュヌは興奮した。
頭の中が真っ白になり、思考が正常に働かない。
ヴィシュヌの動きが鈍る中、男の肉棒はヴィシュヌの膣内を蹂躙し続けた。自分専用の穴にしようと肉棒が前後に動き、膣内を押し広げる。カリ首で膣壁をゴシゴシと擦り、自身の臭いを刻みつけてくる。
こんなにすごいなんて。徐々に速度を上げ、男のプレスが本格的なものへと移行する。背にしたベッドと男に挟まれたヴィシュヌは身動きが取れない。肌と肌が触れ合う音と膣内から生じる水音を聞きながら、男と舌を絡ませ合う。
素敵。もっとこの人と繋がっていたい。
思いは強まり、男を抱くヴィシュヌの両手足に力が入る。そのおかげで膣内に肉棒がより深く押しこまれ、ヴィシュヌの意識が解れた。もう舌を動かす余裕もない。男の舌が離れていってしまうのを止めることもできなかった。
ヴィシュヌと男の共同作業で作った唾液。口に溜めていたそれを呑み込むヴィシュヌに向けて、男は新しい唾液をぼたぼたと垂らしてくる。ヴィシュヌは緩慢とした動きで舌を伸ばし、男が意図的に吐き出した唾液の塊を受け止めた。
ぬるりと舌を滑る唾液。それを嚥下して見せると、男が表情を綻ばせた。
「美味しいか?」
「はい、とても……。もっと味わわせてください……」
「いいだろう、と言いたいところだが、働かざるもの食うべからずだ」
「何をすればよろしいのでしょうか?」
「今度、お前主導で国一つを滅ぼしてみせろ」
「殲滅ですか……」
どこの国だ。神の気を害した愚かな人間でもいたのだろうか。全世界の人間が亡国機業とその総帥に平伏する中、随分気の狂った者もいたものだ。同じ人間として恥ずかしい気分になり、ヴィシュヌは早く殲滅してあげたいと思った。
「嫌か?」
ヴィシュヌの発言を後ろ向きなものと捉えたのか、男が問うてきた。ヴィシュヌは即座に首を横に振った。
「いえ、喜んで引き受けさせていただきます」
「目ぼしい女は既に回収済みだ。あとはもう全員殺していい。国全体の洗脳を解いておくから多少暴れるだろうが、問題ないだろう。何か必要な物があれば言え。何でも用意させよう。俺に楽しいショーを見せてくれ」
「はい」
ヴィシュヌは頷きながらも、男の言葉に引っ掛かりを覚えていた。
洗脳、とは何のことだろうか。国全体に洗脳を施している、といった口振りだったが、そんなことが可能なのだろうか。だとすれば、どうして洗脳を解く必要があるのだろう。操ったままでいれば面倒なことは起きないと言うのに。
「お前の洗脳も解いて、体だけ操ってみるのもいいかもな」
「え……?」
私の洗脳? ヴィシュヌは混乱した。
いったい何を言っているのだろう。口元を吊り上げて笑う男を見て、ヴィシュヌは首を傾げた。今の言葉の意味を聞き返してみたい。だけど、なぜだろう。聞いてしまうと、取り返しがつかないことになりそうだった。もしも今の自分が本当の自分ではなく、作られたものだとしたら。そう考えると、恐怖が募った。
「あっ……!」
膨らみ始めた恐怖心は一瞬にして霧散した。男の亀頭が子宮口に食い込んだことで。
ヴィシュヌは体を痙攣させた。たった今考えていたことも一瞬だけ忘れ、男によってもたらされる快楽によがる。そうだ。今は余計なことに思考を費やしている場合ではない。この人が気持ちよくなれるようにしてあげないと。
ヴィシュヌは纏わりつく疑念を引き剥がし、膣を引き締めた。
敬愛すべき総帥。この人を疑うことも、敵意を向けることもあってはいけない。自分を戒めてみたが、ヴィシュヌが男と敵対する可能性はゼロだ。絶対にあり得ない。わざわざ改めて誓うまでもないが、念のためにだ。
亡国機業と、総帥のために。
ヴィシュヌは心の中で繰り返し呟きながら、子宮口に亀頭を押しつけられた刺激を受けて絶頂した。
体が痙攣する。脳内が幸せで満ちる。
そんな状態で、ヴィシュヌをさらなる追い打ちが襲った。
膣内で膨らんだ肉棒。奥深くで挿入されていたそれは膣内を広げながら身動きを止める。これって、とヴィシュヌが予期した直後だった。ドクンッ、ドクンッと脈打つ肉棒から熱い何かが膣奥に広がった。
精液だ。男の遺伝子を含む子供たちの素。それが子宮に注がれている。
ヴィシュヌは声も出せなかった。目を見開き、雄の種を黙って受け止める。それを見下ろしていた男は小さく呻きながら射精を繰り返す。尋常ではない量だ。脈動を繰り返す度に子宮が重く、熱が高まっていく。
「たくさん人間を殺して、たくさん俺の子供を産んでくれよ?」
「んんっ……!?」
種付けされながら、ヴィシュヌは男の接吻を受け入れた。乱暴な口づけ。自分から求めたときの行為が生易しいと思える舌遣い。にやけた顔でヴィシュヌの口内を味わう男を見て、彼女は得体の知れない恐怖を抱いた。
今のはなに?
考えてみても、わからなかった。なぜ男に恐怖を覚えたのか。
わからないから、考えないことにした。これ以上はまずい。目覚めてしまう。確信めいた思いを抱き、ヴィシュヌは思考を振り払った。今はただ、総帥とのセックスを楽しめばいい。
ヴィシュヌは膨らみ続ける違和感を無視して、男と交わった。
正常位で、騎乗位で、バックで。ベッドの上で男と交尾を続ける。精液の大半は膣内に注がれ、子宮に貯め込まれた。口でも奉仕をし、男の睾丸を揉みながら精液を嚥下して胃の中に精液を送り込んだ。
「あんっ、あっ、んっ、ぁっ……!」
そうしていると、先ほど抱いていた悪い思考などすっかり消え去っていた。男の精液を体の内外に浴び、計り知れない幸福に酔う。これでいい。この幸せだけあれば、他にはもう何もいらない。
何十発と射精された頃になると、ヴィシュヌの体力は尽きていた。
ベッドで倒れ込むヴィシュヌ。小麦色の肌は白濁に濡れ、開かれた股の中心では精液が膣外へと流出していた。膣内にはまだまだ精液が残留しており、精液が全て排出されるまでに時間が掛かるだろう。
その間に、子宮に残った精子が卵子を仕留めてくれれば。
男の子供を孕む自分を想像し、ヴィシュヌは素直に喜ぶことができた。やっぱり、私は総帥のことが好きなんだ。自然に浮かんだこの感情が偽りであるはずがない。今の自分が正気であることを自覚し、安堵の表情を浮かべた。
爆発とともに立ち上る黒煙。人々の悲鳴が至る場所から聞こえてきた。戦場と化した街中を見慣れた人種の人々が逃げ惑う。
ヴィシュヌはそれを青ざめた表情で眺めていた。黒いボディスーツの上に専用IS『ダーク・ドゥルガー・シン』を身に纏ったまま、青空を力なく漂う。
「駄目……」
呟くヴィシュヌの横を、ISを着た数人の少女たちが駆け抜けた。逃げる民衆を追いかけ、人間に向けるには強力すぎる兵器で屠る。腕や足、頭が千切れる。吹き出した血液が地を汚し、近くにミサイルが着弾して跡形もなく吹き飛ばした。
遠くで場違いな歌声が聞こえた。視線を向けると、十代前半に見える幼い少女二人が一つのISを操る姿があった。彼女たちの歌声に反応するようにISが空を自由に駆け、人々に死を運んでいる。
これは夢だ。こんな戦場があるわけがない。ヴィシュヌは寒気すら感じる体を両手で抱き締める。乳房の大半が露出する扇情的なISスーツが気にならなくなるほど、ヴィシュヌの心は動揺していた。
「助けないと……」
この光景を止められるのはおそらく自分だけ。わかっているはずなのに、体が動かない。こうして正気を取り戻す前のヴィシュヌが下した命令を受けた少女たちが、殺戮を繰り広げる様を見ていることしかできなかった。命令を取り消そうとしても、簡単なはずのその言葉がなぜか思い浮かばない。
そんなときだ。どこからか罵声が聞こえた。
ヴィシュヌが足元の地上を見下ろすと、小さな子供がこちらを見上げていた。煤や涙で顔をぐちゃぐちゃにし、手に持った石を投げつけてくる。到底届くはずのない高さであるため敵性はないが、ヴィシュヌの体が反応してしまった。
『敵対勢力を確認。始末します』
自分にそっくりな、自分ではない声が脳内に響く。
「やめて、駄目、ねぇ、お願いっ……! 止まって……!」
ヴィシュヌは涙を流し、抵抗する。しかし、体は言うことを聞かない。脳内の声に反応した体がISを操作し、一人の子供に向けて空を駆ける。必死に呼び掛けてもその勢いが落ちるばかりか速度を上げ、そのままに地面に突っ込もうとしていた。
ヴィシュヌは叫んだ。自分で何を言ったのかもわからず、恐怖に突き動かされたわけだが、それは結果には何の影響も与えなかった。
「あ……」
ヴィシュヌは見てしまった。黒い脚部に纏わりつく赤い鮮血を。上半身を失った幼い亡骸を。
その亡骸は、ヴィシュヌが再び振り上げた足によって周囲に四散した。ぐちゃ、という音が耳にこびりついて離れなかった。
「あ、あぁ……」
地面に膝をつき、絶望するヴィシュヌ。その頭上を見覚えのないISが通りすぎた。そのISを纏っていたのは若い少女たちだったが、その腹は一様に大きく膨らんでいた。
胎内に新しい生命を宿した少女たちが、競うように空を飛び回り、攻撃を開始していた。それを呆然と見上げながらヴィシュヌは口を開いた。
「誰か、助けて……」
『初弾命中。やりましたわ。三匹まとめて』
『ちょっとセシリア! それはあたしの獲物でしょ! なんで横取りすんのよ!』
『あら、鈴さん。こういうのは早い者勝ちですわよ?』
『って、また殺したわね!? 見てなさいよ! あ、いたいた。このゴミ共! さっさと死になさいよ!』
『ねぇ、皆。総帥が見てるんだから、もっと落ち着いて殺そうよ。あ、ラウラ。そこの路地に団体さんが逃げたみたいだよ? 僕はここを制圧するから、向こうにいってきて?』
『了解だ、シャルロット。箒、一緒に来てくれ』
『あぁ。わかった。んっ……お腹の中の子供が喜んでいるな。待っていてくれ。今から、私の黒椿で人間の悲鳴を聞かせてあげるからな?』
楽しそうな少女たちの会話がISを介して届いてくる。彼女たちは人を殺すことに躊躇いがなかった。総帥と呼ばれる男のために、そして胎内に宿る総帥の子のためによりよい世界を作ろうと一生懸命の様子だった。
誰も彼女たちを止めることはできない。少女たちの賑やかな声がいつまでも聞こえてきた。
「あは、あはははっ……」
涙を流し、力なく笑う。ヴィシュヌは思った。この世界にはもう救いはない、と。