とりあえず前戯まで。
一組の男女が寄り添って、林の中にあって尚、
道脇に生える木々は、誰かに間引きでもされていたのか何処か整然と並んでいたが、皆雪に
ごう、と横から吹き付けた寒風が新雪を舞い上げて、最後の一段を登ろうとした二人を遮るものだから、数秒ほど待ち、弱まったところで揃って登り切る。
靴底に踏み締められて声を上げたのは、先程までとは打って変わって、薄らと降り積もり、石畳を白に染め上げる
女──イルザは、数十分は変わりばえしなかった真白い雪景色に、違いを
「……あれが?」
「多分。やっと着いたね……まさかこんなに雪が積もってるなんて思わなかった。ごめん」
「確かに思っていたより時間がかかってしまったな。ま、冬のノース・ヴァスト周辺、それも山中というのはどこにしてもこんなものさ。気にすることはない」
白銀の景色にあってはどうにも目立つ、門を構成する古木の色合いにはどこか静謐な空気が漂って、これから異界に足を踏み入るように思わせる。
二人はどこか緊張したような面持ちで門をくぐる。その先の母屋へ伸びた屋根つきの通路には、この場所の名を書いた木板が吊られている。
少年は、『宿屋
「うん、ここで間違いないみたいだ」
二人は、この一風変わった立地にある宿へと泊まりに来たのであった。
*
中に入った二人を受付であるらしい文机の前で迎えたのは、がっしりとした体格の、ドラフの男性である。どこかのんびりとした雰囲気を纏う彼は、何やら書き留めていた手を休めて二人へ話しかけた。
「当宿、隠へようこそいらっしゃいました。私は此処を営ませてもらっております、ワクラバと申します。……シェロカルテ殿から話は承っております。直ぐに案内人を呼びますので、申し訳ありませんが少々お待ちを……」
彼がそう答えて文机を弄ると何処からか、り、りん、と鈴の鳴る音が聞こえた。
「さて、お客様方には本日より三日、西の離れを使って頂きます。その間の衣服や食事などは全てこちらで用意してありますから、お手を煩わせる事はありません。おや、来たようですね……では、あとは道すがら、この子が」
彼の言葉に横に目を向けると、いつの間にやら案内人であるらしい、これといって特徴のない、壁の花のようなヒューマンの少女が佇んでいる。まるでそこから生えたようで、そこに佇む有りようこそが自然であるような。
「では案内させていただきます。イチとお呼び下さいね」
彼女──イチはそう口にして、ゆったりと先導する。案内されるがままに着いて行って、離れに導かれて備えられているという風呂などについての説明を受けながら、ふとした疑問を少年は覚えた。
「……? 武器などは預けなくても?」
「ええ。私どもはお客様を信用しております。どうかここに泊まる間は、離れを
「あ、うん、分かりました。ありがとう」
彼女の言葉にどこか引っかかりを覚えながらも、二人はまず冷え切った身体を温める事にしたのであった。
*
「それじゃあ、乾杯だ」
こつ、と陶器製の小さな盃を軽く打ち合わせる音を鳴らして、二人は同時に中身を干した。
一家族はゆうに収めることができるほどの大風呂、その湯船に浸かる二人の動作が、ちゃぷ、と水面に波紋を作りながら露天に音を響かせる。
露天といっても大人三人程の丈がある木の柵に囲まれており、背にする夕暮れの遠景には、家々から立ち昇る煙にけぶる、薄ぼんやりとした明かりを纏った山下の町並みと、しんしんと降り積もる雪に化粧を施された山林があるばかりで覗きの心配はまずない。
……空でも飛べるなら、あるいは年中雪に覆われた山を登ってくるなら話は別だが、そもそもそこまでの能力を持つ者がわざわざ覗きを敢行するなどという特殊な事例は考える方が無駄である。
「うん……とても良い……」
「でしょう?」
と、傍の少年が微笑みながら相槌を打った。
雪がはらはらと降りて湯気に溶かされ消える、静かな光景は、確かに彼に連れられて、この上流階級御用達だという話の宿にまで来た甲斐があると思わせられた。
源泉から
この島に程近い極寒の地、ノース・ヴァストより一年を通して流れ込む寒気の鋭さというのは、山下の町からこの宿に来るまでの間に二人の身体を防寒着の上から易々と貫いて芯から凍えさせるほどであったが、それも湯の暖かさによって程なく解されていく。
さて、二人がこの宿へ来た目的はというと、それはもちろん湯治──ではない。
いや湯治も目的の一つではあるのだが、この宿泊を企画した少年本来の目的は、恋人と二人きりで過ごしたかったのである。
……少年には少々他人に言いにくい、また別の目的もあったのだけれど、その複数の目的を果たすにあたって懇意にしている商人──シェロカルテになるべく迂遠に訊ねたところ、この宿なら空いていると答えられたのでその場で予約を請うたのが事の次第。
尤も、二人はこの宿がどのような場所か、というのを知らない。
……このように来るにも苦労するような場所に建つ宿が上流御用達という事には裏があるもので、この宿の役割というのはそういった立場の者による交流に使われるものであった。
取引、人に言えぬ趣味、お手つき……様々な理由から必要とされ、こういった宿は各地に存在している。
それらに共通する規則はただ一つ、『知らず』である。要するに他人への詮索はしないという事だ。そもそも宿泊客に会う事の方が珍しいのだが。
つまるところ、此処は地位の高い者御用達の逢引宿であった。
ところで少年が相談するにあたって濁した目的というのは、恋人と、他の団員に気を遣う事なく交合したいというものであった。
その点シェロカルテは彼の意図を正しく汲んでいた。彼の思う迂遠な言い回しは、海千山千乗り越えた商人に対しては薄紙で誂えた鎧を着込んで戦に挑む若武者に似る。
では彼の率いる騎空団はというと、一週間ほどの休止中である。
これは状況を見かねた年嵩の団員からの、「偶には思う存分休め」といった言葉を受けたのが原因であった。
何しろ放っておくと延々と働き、偶の休日には恋人と一心に耽るのがこの二人の、半ば事故で関係を持つ様になってからの生活風景であるのだから、「ロボットみたい」とはさる研究所を手伝うドラフの少女の弁。
一週間とは長いようで短いものだが、しかし各々が心身を休めるには充分だろう。
……先の年嵩の団員が言った言葉もまた、この恋人達の溜まり具合を予測した上でのものであるのだから、この二人の性事情というのは分かりやすい。
……騎空艇の壁が薄い可能性もないとは言いきれないが。
それはともかく。
「その……ここでするのか……?」
イルザは自らの肌を躍っていた指先が徐々に手から腕へ行き先を変え、ぷかりと湯に浮かぶ豊かな双丘に向かうのを認めて、困ったように少年へ告げる。
さてどうだろう、と彼は意地の悪い微笑みで答えて、羽箒でくすぐるような手つきで乳房を全体的に撫ぜていく。
それが終わると、彼は特に敏感な乳輪から乳首へは一切触ろうとせずに、仕事道具を手入れするが如く丹念さを籠めて、獲物の香りを追う狼のように執拗に捏ね上げる。
初めてからこれまで、幾度となく繰り返された交わりで性感を開発され、より柔らかさと大きさを増し、今や焼きたての白パンさながらに指が沈みこむ、自分専用に育て上げられた肉毬を慈しんだ。
「──ひゃん♡」
愛する男からの愛撫による嬉しさか、それともじんじんと奥深くから漏れ出る快楽にか、甘やかな声がイルザの唇から吐き出される。お互いに身を寄せて触れ合い、けれど彼の手先は決して大事な部分には触ってくれず。
彼女は身を苛むせつなさに、じり、と太股を動かし、その動きは湯船の中に緩やかな流れを生みだした。
その事に気付いたのか彼の手が止まる。待て、と言いたげに太股の上に手を翳して、空いた胸への愛撫を続ける指先は谷間にほど近い場所を抓り、鋭い痛みを生む。
「……いっ♡」
火照ってなお白い肌に、
お預けをされて悦ぶ自らの、どうしようもなさに身を震わせながらも、彼女は彼の男性器が、湯船の中で見事にそそり立っている事に気付いた。
手を伸ばしかけて遮られ、耳をへたりと伏せてどうしてと目で訴える……が、彼からの言葉はなく。
代わりとでも言いたげに興奮にぷっくりと浮き始めた乳輪の境を、指の腹で擦られた。
既に乳首は硬く勃ち、乳房の至るところにはじくじくと残る快感の疵が塞がりかけていた彼女にとって、その快楽はようやく与えられたご馳走だった。
甘く痺れるような快感にしなだれかかり、もっと、もっと、と子供のようにねだって身を寄せて。
一度、二度と擦られ、与えられた快楽は蜂蜜の如き粘度で彼女の理性を垂れ包む。
あと一擦りで絶頂を迎えられる、そう彼女が思った時、ぴたりと彼の指先が止まった。
そろりと彼の手が離れていって、告げられた。
「……のぼせたらいけないから、ここまで。そろそろ上がろうか」
「え……?」
期待を裏切られたイルザは、ぽかんとした表情で、少年からの言葉をゆっくりと噛み砕く。
中で感情が、渦巻いた。
──なんで? どうして? あとほんの少しなのに……──様々な言葉が脳裏に浮かび、とぐろを巻いて彼女の思考を埋め尽くす。下腹部がきゅぅともどかしさに鳴いて、散々に弄られた双丘が不満の
木偶人形のように彼に手を引かれ、なされるがままに風呂から上がる。
彼が手にした盆に乗る、湯をこぼした盃の姿は、自らの情欲の澱みを表しているよう。
用意された寝巻には見覚えがある──いつか部下が浴衣と呼んでいたのを思い出す──。
広げてみると
エルーン用に背は開いていた。
手慣れた様子で着付ける少年の様子を見真似し、何とか形だけは繕って。結局目敏い彼に整えて貰う。感謝は伝えられず。
それだけで、焦らされた
不満につんと拗ねる自らの、女の感情の移り気さを情けなく感じながら、部屋へと戻る。
……ちりちりと燃ゆる淫欲のかぎろいは、ふっくりと衣を浮き上げて、裡に媚香を満ち込めた。
けれど、その身の主人が気付くことはなかった。
*
「お客様方は騎空士だとお聴きしましたので、料理の味付けを少しだけ濃くさせていただきました。皿を片すなど、何用かあった際は、この紐を引いて貰えれば、直ぐに私どもが駆けつけますので」
「うん、ありがとうございます」
しんと冷えた床板の冷たさの後に、植物を編み上げて作られているという敷物──後ほど訊ねたところ、畳と呼ぶのだとか──を踏みしめる感触は、ほど良い柔らかさと仄かな温かさが心地よく、普段とはまるで違うのでどうにも慣れない、素足で家屋を行ったり来たりするのも悪くないかと、藍地に灰で菖蒲を描いた浴衣を着る少年に思わせた。
彼は平べったい形をした独特のクッションに座って、ここへ料理を運んで来てくれた、この宿の女将であるという糸目のハーヴィンと受け答えをしつつ、一応訊いておくべきかと考えた。
「では……」
「あっ、少し良いですか」
「はい、なんなりと」
「案内人に言われたんですが、泊まっている間はどのように利用してもよい、とは?」
「ふむ……一つの極論でありますが、壊してもよい、という意味合いではございません。……ですが、それ以外であればどのように汚しても、騒いでも、
「あ、ああ、はい。大丈夫です」
「では、ごゆるりと……」
女将の言葉に、少年はようやく気になっていた言葉の意味合いに得心がいった。
静かに引戸が閉じられ、音もなく彼女の気配が遠ざかっていく。
彼は隣に座る、不満そうな顔つきの、きゅっと唇をひき結ぶイルザに向き直り、口を開いた。
「……イルザさん、ご飯食べようか」
「うん……」
彼は拗ねたような彼女に語りかけながら、根菜と猪肉を甘辛く味付けし煮炊いたという料理を一口。口の中で押し潰すだけで肉がほどけ、たっぷりと味を吸った様々な根菜、その味わいときたら。
「あ、これ美味しいよ。機嫌を治して欲しいなあ……あと少しの我慢だから」
「……本当に?」
「確証もとれたしね」
「……なら、いい」
「ありがとう。楽しもうね」
そう答え、ゆっくりと彼女も傍の汁物に手を伸ばす。澄んだ色の汁に浮かぶ実は山で採ってきた茸だとは半ば上の空で聞いていたが、一つ口に入れて噛んでみると予想だにしない、しゃくしゃくと小気味よい歯触りで口の中を楽しませる。確かにこれは美味しい、記憶に留めていつか挑戦してみようかと考えた。
と、彼女は普段口にしない類の料理にいくらか機嫌を治し、先程まで目に入って来なかった卓上に並ぶ数々の料理を眺めて、次は何に手をつけるべきか思案する。
暫し、のんびりとした食事が続いて。
用意された料理がもうじき尽きる頃には僅かばかりの憤りも消えようか、消えまいか、懊悩して揺らめく有様で。立ち上がりに比べれば、霧雨にけぶる軒の下で
ふと思い出したように少年が言った。
「そういえばさ、言ってなかった気がするんだけど」
「うん?」
イルザは最後に残った山菜のフライを、お互いに分け合いながら齧りつつ応える。仄かな苦味が塩気を引き立たせた。
「ここには三日泊まるって、ワクラバさんが言ってたのを覚えてるだろうけど」
「うん」
相槌を打ち、彼女は喉を潤そうと分厚い陶器に入った茶を口にする。
「その三日間で確実に孕ませるから」
「────けふっ!?」
噎せた。彼に浴衣の上から背中をさすられる。
「……大丈夫?」
「…………そう見えるか?」
涙を浮かばせて、恨めしそうに彼を睨めつけながら答える──ああけれど、こんな言葉だけでこの身体は
そう自覚する自らの、なんと卑しい事だろうと考えた。
「けほっ……うん……嬉しい、けど……時と場合を、もう少しだけ考えて欲しかったかな……それに」
「?」
「初めての時に言ったろう? 私はもう君の物だ」
「覚えてる。でもあれはイルザさんの方からだったでしょ? だから、こっちからも改めて」
彼女は十秒程かけて彼の言葉の意味を理解して、顔を真っ赤に染めながら隠す。心の臓から幸福感が湧いて、歓喜に歪む表情を抑えられない。
(ああ、そんな事を言われたら……♡)
ふるり、胎が期待に疼く。冷たい外気に触れる背の肌は、残っていた熾火に炙られて、じっとりと汗を浮かばせる。
この愛おしいひとは、どこまで私をとろかせるのかと思えた。
「想像していた理想とは程遠いが、うん……私はてんで君に弱い、嬉しさで身が張り裂けそうだ♡」
「それは良かっ……わぶっ!」
勢い余ってカツンと、歯が当たる。
貪るような口付けは、茶の香り。
*
「はっ、はぁっ、はぁ……♡」
「……満足した?」
口付けは、既に隣室に敷かれていた寝床に倒れこむまで続いた。
お互いの口に残る味の名残を貪り、水気を奪い合い、舌は幹に絡みつく蔓草を思わせて縒り合わされ、唇の周りには薄く、紅紫の跡を引く。
「判ってる癖に……♡」
少年の言葉にイルザはそう答えて、乱れた浴衣で熱を持つ、宝にも思えるお目当てを指先で探り当てて外気に晒させた。
赤熱した炭のように熱を放つ、まだ鎌首をもたげるばかりの雄、その先端のつるりとした雁首に暫し親指の腹を当て、じんわりと熱が沁み込んだ事を認めて手を口元へ戻してぺろりと舐める──散々に焦らされた身には、その熱ですらご馳走だった。
ずるずると位置が変わり、互いが互いの性器を目の前にする体勢になる。彼女はご馳走にむしゃぶりつき、彼は
黒々と生い茂る叢に形のよい鼻梁を埋め、薄らと生える叢の滴を舌に載せ。
ぷんと匂い立つ淫臭を肺一杯に吸い込み、むわりと発される雄臭にうっとりとした。
柔らかな頬に熱で幹のおこりを記し、指先を差し込み肉襞の弱みを探る。
唇はすっかり開かれた花弁を優しく食み、紅い舌が夥しく浮き上がる血管をなぞる。
細い指が重たい子種袋をやわやわと揉み、ごつごつとした指先は蕾を剥いて外気に晒させた。
太い舌が淫花を蕾ごと舐り擦り、ぽってりとした唇を鈴口に着けて先走りを啜った。
稲妻にも似た快楽に撃たれて腰が砕けた。
ふつふつと滾り熟成された種を一吸いだけ搾られた。
一度体液を啜り合って尚、煌々と燃え盛り勢いを増す、情感の火に突き動かされて二人は睦み合う。
お互いの理性を捧げ合い、交尾への準備を着々と進めていく二人に、言葉というものは必要なくなっていた。
イルザは彼の望む事を感じ取って布団へ仰向けに寝転び、衣を辛うじて留める帯をゆっくりと解いた。
熾火に温められてすっかり出来上がった、柔らかな双丘が
少年も彼女の望みを感じて彼女の腹の上へ跨る。
主人の臍に着きそうなほどに硬く反り返る男根から発せられた臭いに彼女は軽い絶頂を覚え、顔をいやらしく綻ばせて肉槍を乳房で包み抑えた。
熟し過ぎた果実に指を沈み込ませるような有様を見せて、彼の肉が呑まれ、圧され、食べられる。
脂をじりじりと溶かすように、彼女の柔肉が焦がされ、蕩かされ、
互いを贄とし、
宙を食む鈴口からはとろとろと、先走りが漏れ出て彼女の頸元を汚して己が領と変え、渾々と愛液垂れ流す女陰は、
──ぴちゃりと音が鳴る。谷間から顔を覗かせる雁首に、彼女が舌を這わせた音だった。雄の苦味に恍惚としながらも這い回らせる舌の動きは激しくなるばかりで、追従するように乳房で雄肉を擦り、圧し、味わう。
よく育った柔乳は、汗と先走りが混ざった淫らな湿地帯に姿を変えて、傅くべき肉茎を咥え込み、姿も朧な、けれど昂ぶるには十分な量の快楽を送り込んだ。最早何が混ざり合っているのか判断もつかない
彼女は聴かされるその音に耳を侵されて幸福感を感じ、あばらに載る彼の体重による苦しさが愛おしく、数えきれないほどの、甘く浅い絶頂による浮遊感に
彼は肉と肉が絡み合う音を供にして、飛沫の音がかき消される様を聴き、互いの荒い息遣いが快く感じ、そしてつがいの鼓動の音が何よりも愛おしく、自らの分身を刺激している事を知った。
互いにずっとこうしていたいと思えたが、終わりを知らせる精嚢の窄まりは唐突で、どちらともなく絶頂を促すように働いた。
彼は奉仕する彼女の手を留めるようにして両の乳嘴を爪弾いた。
彼女はようやく与えられた快感に大きな絶頂を迎えながらも、忘我の体で、舌を伸ばして鈴口をこじる。
音を立てて噴き出した、固まり損ねた寒天を思わせる精の塊が、熱とともにべったりと、玉の汗浮く肌に貼り付いて、彼女の顔の大半を汚した。
身体を仰け反らせ潮を吹く動きに、放精に食いしばる彼は体勢を崩して畳に手を着く。辛うじて恋人を打ちのめす醜態を曝さずに済んだけれど、結果としては精を吐き続ける分身を彼女の蕩け顔に叩きつける羽目に遭った。つがいの剛直から吐き出される胤に顔はおろか髪まで散々に汚し尽くされて、更に鼻っ面を打たれて精に溺れかけさせられるという仕打ちを受けて、彼女は、イルザは絶頂していた。
「────ぁ♡♡」
より一段と深く重たい、酒樽一杯に貯められた樹蜜に沈められるような絶頂は、彼女の神経の隅々まで痺れを与えて愛おしさを足跡とした。
凄まじい勢いで満たされていく多幸感に脳髄は茹だり、熱の感覚を忘れ、精に汚れた顔をくしゃくしゃに歪め、涙を流しながら意識を落とす寸前、反射的に顔を掌で覆った。
けれど本能に支配された身体は淫らにも、掬われる形となった精を啜ろうとして失敗した。
代わりに濃厚な雄の匂いを吸い込んで、もはや乾いた場所が無くなった褥の一角を、更に汚させる……。
*
「んぅ……」
彼女は永遠に続くかと思われた絶頂の波が引いて行くのを感じて意識を戻しながら、傍で己を撫でてくれていたらしい少年に気付いた。
短くない時間が経っていたらしく、既に精の残滓が乾き始めていた、けれど未だ衰えぬ、汚れた雄肉の姿を見て、綺麗にする為にもぞもぞと、這うようにして肌を合わせに近づく。
「ん……♡ ……れろっ……♡」
ぬるりと呑み込んだ愛しいひとの肉は、えもいわれぬ味わいだった。
続きはまた来週に。