少年の手櫛に、髪を梳かれながら、イルザは奉仕を続けていた。
ちゅるん、尿道に
互いの
影法師が絡み合うそのうちに、彼女は彼の肩を借りて身を起こし、場所を変えて再び腰を、ゆっくりと落ち着ける。彼の剛直をその身に、胎に飲み込んでいく。
緩慢な動作ではあったけれど、それがまた、ようやくの来客に悦ぶ淫肉の蠕動する様を、膣口をこじ開けるようにして飲み込まれた雁首の凶悪なエラの形を、じりじりと襞肉に焼印を押して行く幹の熱を、自ずと弱点を差し出した道中の情けなさを、繋がった二人に鮮やかに伝えた。
たふ、と音を立てるように根元まで飲み込み、入り口から溢れる愛液は泡交じりで、薄らと白く濁る。子袋は口を伸ばして鈴口を啄ばみ、ぱくぱくとお互いに、涎を垂らしながら本分の達成を待つ。さり、と叢の擦れる音は不思議なくらいに官能的な響きを孕んで、二人の耳を打った。
少年がイルザの唇を奪った。己が精の残り香も気にせずに、口腔の隅々まで舐り、息を奪い、舌を掴み、彼女を犯し、剥ぎ取り、味わって、貪る。彼女は与えられた餌に白目を剥きかけて身悶えし、彼の背に爪を立てて、幾つもの跡を残した。
そのうちの一つ、直に爪を立てた場所、つぷりと肩に残った跡から血の珠が滲む。やっと唇を解放された彼女はそれに気付き、耳を震わせながら
凍えた仔犬の、震えるような。怯えて、赦しを請うような。そんな様子で、ぴちゃ、ぴちゃと痕を一心に舐める。
そんな彼女の姿に彼はたまらない愛おしさを覚えて、恋人を見真似て首筋に舌を這わせた。ぞっとするほどに濃密な、雌の味が、匂いが、彼の意識を痺れさせる。
数十秒、数分、数十分、いやもっと。時間を忘れて、二人は繋がったまま、互いの身体に舌を這わせた。
顔からは雄の味、首は心地よい舌触り、肩は血の味が漏れるよう、耳は冷たくて柔らかな、最も濃厚な媚香が匂い立つ脇に至るまで、胸元から上をすっかり味わい尽くした。そのため着衣は乱れに乱れて、辛うじて腰に留まっている有様。
彼女は恋人から終わりを報せるかのように肩口に残された、痕から発する甘美さを伴った鈍い痛みを拠り所にするようにして、僅かに込めていた力を手放す。ほんの少しだけ、地に近づく。
胎内で肉が、接合する。
子宮がほんの僅か、揺さぶられて
脈動をもって子袋を小突いた肉茎の執拗さは、彼岸の向こうにあっても逃れる気を無くさせるほどに彼女を打ちのめして、屈従させる。
少年が乳房を口に含んで、ぴんと勃った乳首を甘く噛む。ひ、とイルザは咽び、はらはらと涙を溢れさせた。一度、二度、と続けて、拍子を付けるように与えられる快感に、彼女は彼に
次から次へと襲い来る快楽に、彼女の意識には流し込まれる快感の、糖蜜のような甘さがみっしりと沁み渡っていた。思考を形成するはずのふやけた言葉は、覚束ないままほろほろと形を崩して溶け消える。彼女を制御するのは最早理性ではなく、ただ快楽を貪る本能だけが肉体を掌握していた。延々と与えられる快楽に、彼女の肌にじっとりと汗が浮かぶ。
揮発して放たれた汗、その媚香はいよいよねっとりとした甘さを湛えて、荒淫の果てにとうとう鼻が効かなくなっていた二人を、一帯の淫臭に身を交わらせて包む……。
どちらからともなく相手を導いて、イルザが褥に身を寝かせる。互いの激しい息遣いと、鼓動だけが聴こえていた。
彼女のしなやかな脚が、愛おしさを孕んで少年の腰へと絡みついた。涙の粒を湛えた、永い睦み合いに芯の芯まで色に漬け込まれ、蕩かされて尚、愛する男だけは決して忘れていない瞳が訴えていた。契りを求めた。
彼は、少年は、この愛おしい伴侶に応え、その身をかき抱いて、優しく唇を塞ぎ、大切な場所へ全てを
──伏せられた目蓋から、涙が零れ落ちた。
少年の子種袋が痛みを感じるほどに窄まる。巨木の唸りを思わせる力強さを宿した脈動に、放精は尿道を駆け抜けて僅かに遅れた。
イルザの最奥で蠢く粘膜の一画を、溶岩の如く熱く、砂金の如き重みを持つまでに育て上げられた、恐ろしい濃密さの
彼女が仰け反り、ぷしゃ、と潮を噴いた。
あっさりと意識を手放したのは、愛しいひとに抱かれる安心感によるものか。彼は彼女の、あまりの快楽の
二射、三射と続きを放つ。その度に背筋が痺れ、依存しかけるような快楽に襲われる。自らの感覚がおかしくなっているのを自覚できた。尿道をこじ開けて進む胤汁の途切れというものが全くわからなくなっていた。女陰と男根の熱が綯交ぜになり、互いが一体になったようにさえ感じた。
たちまちに彼女の粘膜は胤を塗り込められて悦び、それでも止まる様子をまるで見せずに次々に送り込まれる胤の重みに打ち震え、奔流が作り出した流動に蹂躙される事に幸福感を見出した。肉体の保全という本来守るべき機能を果たすつもりは、この獣欲を貪る器官にはさらさら無いように思われた。放出されてから絶えず愛液を垂れ流し潮を噴く淫花は、子袋から膣道までを胤に灼かれる悦びに、体内を枯らさせるという目的を抱いてしまったようで、褥を濡らす水気は畳に侵食し始めていた。鈴口からゆっくりと吐き出される胤は何もかもを満たして尚止まらず、じわりじわりと滲み出るようにして溢れ、結合部から外界へ姿を見せ、水飴のような粘度を見せつけて、糸を引いて褥に垂れ落ちる。
やがて竿が萎れ、名残惜しげに最後の一搾りを溢して結合部から抜け出る。永い永い吐精が終わる頃には、溢れ出た胤が真白い溜まり場を形作っていた。
それは幾度となく襲い来る快楽の暴風に、とうとう意識を手放した少年と、一射ちで降伏したイルザの、抱き締め合ったまま泥のような眠りに落ちたつがい達の身動ぎに潰されて、二人の身体を汚す……。
*
……身体に感じる温もりと、重みが、愛おしくて、心地よい。イルザは目覚めて、あどけない表情で眠っている、つがいの、少年の顔を眺めながらそう考えた。けれど。
殆ど用を成していない衣と絡み合う肉体を毛布の代わりにして眠るというのは、さて、冬場には暖かな室内であっても少々肌寒い。それらを補っていた情欲の火も、一度発散されてしまえば集まるにはきっかけが要る。きっかけを探すに困っている訳ではないけれど、このゆっくりと身体を休める、彼の眠りを覚ますのも申しわけなく、何より胎に留まる種の重みが快くて、下手に動いて漏らすには
半ば天啓にも似た直感は、彼女に孕んだという事実を静かに伝えていたし、またそれを疑うつもりもなかった。
ただ、残る種を棄てる事を拒んでいた。できる限りはこの身に取り込んでやりたいと考えた。
彼女はより一層身を寄せて、彼の肉布団となって温もりを捧げる。
そんな訳で、今の二人には少々遠い位置に退かされた掛け布団が人に触れるには、今しばらくの時間を必要としたのである。
*
「ん……。今、何時?」
「おはよう。何時だろうな?」
少年が目覚め、開口一番にそう言ったのは日頃の習性が染みついているのか。
尤も、先に目覚めてからずっと彼を抱き締めて、背を撫ぜていたイルザにしても時間の感覚は掴めなかった。薄紙一枚を隔てた外の光は薄暗いままで、夜ではないだろう、という漠然とした答えしか返っては来ない。
泊まる者に時を忘れさせる為なのか、それとも別の意図があるのか、偏執的なまでに、この離れには、時計というものが一切備えられてはいなかった。
「鞄の懐中時計を出してこようか?」
「後で良いや……先にお風呂に入ろうか」
「うん」
そう決めて、殆ど裸の体で湯浴みに向かった。ちらりと横目に見た食卓は、綺麗に片されていた。
「…………」
「イルザさん、どうかしたの?」
二人並んで身体を洗う際に、何やらまごついている彼女を気にして、少年が問い掛けた。すると彼女は赤い顔でもじもじとして言った。
「その、笑わないで欲しいんだが……」
「うん」
「……君の……君の精が、私の体から離れていくのが嫌なんだ……」
「……その分頑張るよ?」
と、彼は間髪入れずに返答した。この返答にはさる服飾デザイナーも思わず
「君は、ずるい」
と、か細い声で呟いた。
その様子、蠱惑的な肉体を頼りなさげにかき抱いて言ったものだから、むらりときて、彼の嗜虐心をこの上なく刺激する。見る間に萎えていた雄に血が巡りかけたが、さてこの少年、この場で致したいという裡から絶え間無く湧き出た欲求を、鋼の理性で押し留めた。
とはいえ視線は細腕にたわむ乳房の肉感に吸い寄せられ、むっちりとした尻肉から太股の輪郭を伝う滴になりたいとさえ考えたが、ここは二人きりで、それも一種秘境めいた場所だ。誰ぞに情けないとでも罵られる事もない。
「洗ってあげようか」
「うん、終わったら代わるよ」
「ありがとう」
と彼女に返して、身を任せた。
彼女が独特の香りを持つ石鹸を泡立て、優しく髪を
安心感からか、それとも別の理由があったのか、ふと彼の口から洩れ出たのは本心だった。誰にも打ち明けた事のない。
「……何だか、髪を洗って貰ってるだけなのに、懐かしさを感じてる」
「懐かしさ?」
「ずっと小さな頃だけど……友達の家に泊まって、そこの親父さんに洗ってもらったんだ。その時、何でか泣いちゃったんだよ。今思えばその友達が、家族に髪を洗って貰えるのが、家族が一緒なのが羨ましくて」
「うん……」
イルザは静かに答えを返して、彼の髪を洗い流してやった。湯を被りながらも、繕いのない本音がぽろぽろと溢れていく。押し留めていた心の鍵は錆びて朽ちたのか、閉じようにも閉じられず、震えた声で続けられる。
寂しさを忘れたくて剣を振るい始めた事、ふとした事で助けられる度に大人達に申し訳なく思った事、星の島の存在を、証明しなければならないと思っている事、そこに待つであろう父親に会ったら殴ってやりたい事。
──
彼女は手に泡を伸ばして、愛おしさを傷跡だらけの背に塗り込める。この傷跡は少年が背負った苦しみの数だと理解して、そっと抱きしめた。
「……今さ、その時の事を思い出して泣きそうなんだ。……イルザさんに身体を洗って貰えるのが、家族に身体を洗って貰えるのが堪らなく嬉しいんだ。まだはっきりとした訳でもないのに、ごめん」
その言葉に、彼女は一層肌を重ねる。圧し潰された両の乳房を伝って、彼の鼓動が感じられた。
「……もうなってるさ」
「……え?」
「……昨晩、私の意識は朧げだったけれど、私が求めて、君が応えた事をはっきり覚えてる……夫婦である事に公な承認はいらない。お互いの同意だけがいるんだ。だから君と私は、夫婦だ。違ったか……?」
彼女の諭すような言葉に、少年は涙ながらに返事をする。
「ううん違わないよ……。イルザさん、
「はい」
彼女の穏やかな声の、なんと慈しみに溢れた。
「貴女は、僕を、ずっと……永遠に、
「誓うよ。私は……永遠に君のものだ。ずっと傍にいる。……昨晩散々したけれど、誓いのキスも要るか?」
「したい」
からかうような彼女の言葉に、彼は言うが早いか、唇を重ねた。
場所も、状況も、締まらないものではあるのだろうけれど、そんなものは関係がなかった。
誓いというものは塩の味がする事を、二人は知る。
「──ぷぁ。もうこんなに熱くなってる……」
「正直今すぐにでもしたいけど……流石にお腹が空いた」
「我慢できるのか?」
「出来る限り頑張る……それにイルザの身体も洗うって約束したし」
イルザは少年との間にそそり立つ、湯気が立ちそうなほどの熱を持った剛直をちらりと見た。ふむ、と考えて、手で触れた。
「身体を洗うには少々邪魔だな……一度
「……一度で終わる自信が無い」
「それは困った。……私が主導するなら?」
「なんとか、我慢する……でも変に誘ったりしないでね?」
「わかった。さ、こちらを向いて……」
彼は言われた通りに身体を向けて──いきなり根元まで飲み込まれた。
雁首を咽頭が甘噛みして、先走りを搾った。叢に鼻先を埋めて、洗い流されて幾らか薄れた、交わりの残り香を吸い込んだ。舌先が裏筋をなぞって、背筋にぞくぞくとする快感を与えた。舌の根元でエラの裏を
ちゅぽん、とわざとらしく音を立てて口を離したのは、その方が彼の興奮を昂ると覚えたからか。
粘ついた音を立てて陰茎が扱かれる。優しく、丹念に、まるで肌を融け合わせるように。
啄む音を立てて先走りを啜られる。優しく、執拗に、まるで盃を共にするような。
彼は与えられる快感にか、それとも目に映る光景の淫靡さにか、どちらとも判断が付かないままに雁首を膨張させ、あれだけ出して何処に眠っていたのか、夥しい量の精を放出した。
奉仕を続けていた彼女は、放出の予兆を感じ取るやいなや雁首を咥え込むのだから慣れたもの。舌で受け止め、そのままこくこくと喉を鳴らし飲み干して、精をすっかり胃に収める。陰茎を口にしたまま舐り、啜って口を離す。萎えない雄肉を横目に見つつ、けふっ、と濃い精の香りの吐息一つついて、口にする。
「それじゃあ、また汚れたから洗い直そうか……私の身体で♡」
さて、艶を含んで放たれたこの答え、提案した時から考えていたのか、どうか。
ともあれ、二人が湯浴みを終えるにはまだまだかかりそうな。
くぅ、と気の抜けた、どちらともない腹の音、睦み合う音にかき消える……。
区切りが中途半端だと思われるかもしれませんが、その部分を書くのは野暮であり、また余人には描きかねるのでここで区切りました。
サプチケ早く来てくれ……(嗚咽)