虫の息すら聞こえてきそうな深夜。唯一明かりがつけられた部屋の中から小さな物音が聞こえる。
格調高い執務机の上で奏でられているその音は、司令官としてこの鎮守府を統べる男の書類仕事の音だった。
添えられたいくつかの資料に目を通し、署名欄に名前を書くと、その横に自分の名が刻印された判を押す。それだけなら別段なんの事もない作業だが、問題はその圧倒的なまでの量にあった。
艦娘をはじめとした各人員が行う演習や作戦の許可、本部に送る定期報告書、工廠が提案する装備開発計画の可否など、司令官として男が判断しなければならない案件は山のようにあり、そのために熟読しなければならない資料や書類もまた、小さな山が出来るほど存在していた。
幾重もの書類で形作られたそれらの山脈を机の上から取り除くべく、男は早朝から作業に取りかかっており、その甲斐あってか机にどっさり置かれていた書類の束も、今ではすっかりその姿を消し去っていた。
「……ようやく終わったな」
男は満足げに息を付くと最後の一枚に判を押し、それを処理済みの書類が入った箱へと入れる。
これで晴れて明日の非番を味わう事が出来る――何か特別な用事がある訳ではないが、丸一日書類と顔を付き合わせなくていいという事実だけでも、男にとっては至高の休日と言えた。
役目を終えた資料と文房具を片付け、最終確認を終えた男が部屋を出ようと椅子から腰を浮かせたその時、不意に入り口の扉から小さなノック音が聞こえてきた。
男は再び椅子に腰を落として首を傾げた――こんな時間に誰かが訪ねてくる予定など、自分は入れていない。だとすれば、何か緊急の案件だろうか?
「誰だ?」
彼が尋ねると、扉の向こうから慣れ親しんだ声が返って来た。
「――司令官、私だよ」
幼さとは裏腹に落ち着いた調子のそれは、男がこの鎮守府で最も信頼を置いている秘書艦のものだった。
「ヴェールヌイか? 入れ」
扉が開くと、中から雪のような雰囲気を纏った少女が姿を現した。駆逐艦の艦娘、ヴェールヌイである。
「お疲れ様。まだ起きているみたいだったから、差し入れを持ってきたんだ。迷惑だったかな?」
言葉通り、彼女の手には白磁のティーセットと小皿の乗った盆が握られていた。
男は首を小さく横に振った。
「いや。たったいま今日の仕事を片付けたところだ」
「そうか。良かった」
安心したようにヴェールヌイは歩み寄ると、両手の盆を執務机に下ろし、慣れた手つきでポットの中身をカップへと注いだ。紅茶が持つ上品な香りが、立ち上る湯気と共に男の鼻孔をくすぐる。
「今夜は冷えるからな。暖かい紅茶はありがたい」
注がれる琥珀色の液体を眺めながら、彼はしみじみと呟いた。深夜の冷え込みはどんな季節でも油断できない肌寒さを運んでくるものだ。
「遠征の土産さ。西方に出た時、ついでに良い茶葉を手に入れてきたんだ」
淡い微笑みを浮かべると、ヴェールヌイはカップに注ぎ終えたそれをそっと男の前に差し出した。
彼女は男の好みを熟知していた。余計なものは何も加えないストレート。茶に砂糖やらミルクやらで味をつけるのは、昔からどうにも好きになれなかった。
紅茶で満たされたカップを口に傾けると、心地のいい苦味の中に爽やかさな甘さが香る。実に良い塩梅の淹れ具合だった。
「流石だな。美味いよ」
男がそう告げると、彼女は再び口元で小さな笑みを作り、今度は盆の上に乗っていたもう一つの小皿を取り出した。
「お茶請けっていう訳じゃないけど、チョコレートも用意したんだ。良かったら一緒に食べてほしい」
頷いた男は乗せられていたそれを一枚摘んで口へと放り込み、そして言った。
「ありがとう。だが感心しないな」
そんな事を言われるとは夢にも思っていなかったのだろう。予想外の一言に、ヴェールヌイは形のいい眉を僅かに顰めた。
「……何がだい?」
「お前がこんな時間まで起きている事に、だ」
男は持っていたカップをソーサーに戻し、わずかに窘めるような口調で言った。
「お前には早朝の事務作業に加えて昼の訓練もあったはずだ。だと言うのに、何故こんな時間まで起きている? 休んでおかなければ明日の仕事に支障をきたすぞ」
男の記憶では、彼女は一日を通して自分の隣と訓練場とを何度も往復しており、既にかなりの疲労が溜まっているはずだった。それがこんな時間になっても休んでいないどころか、わざわざ自分の元へと差し入れをするために出向いて来ている。その気遣いは確かに嬉しいものではあったが、それで彼女の体に負担をかけてしまっては元も子もない。
「……確かにそうかもしれないね」
自分でも分かっているのだろう。ヴェールヌイは肩をすくめて首を振ったが、やがてひどく真剣な眼差しを男へと向けて言った。
「でもどうしても来たかったんだ。○○さんに逢いたくて」
瞬間、男の心臓が大きく跳ねた。
彼女が男の名前を口にする、それは二人の間に出来た一種の合言葉だった。決して他人に知られてはいけない秘密の符丁――それは彼女が自分を“恋人”として呼ぶ時の密かな合図だった。
司令官と艦娘――軍隊に属する人間にとって決して一線を越えてはならない間柄だというのに、自分と彼女は互いにどうしようもないほど惹かれ合ってしまっていた。
こと組織において、部下に特別な感情を持つ事はそれだけで重大な破綻を招く。まして時には自らの意志で死地へと送り出さなければならない艦娘に恋慕を抱く事など、軍人としての観点から見れば断じてあってはならない事だ。
――だがそれでも、自分はこの娘を愛してしまった。
彼女の淡く儚い雰囲気を愛おしいと感じ、時折寂しげな色を見せるその顔を癒してやろうと思い焦がれ、ついには禁断の関係へと足を踏み入れてしまった。
拒絶されていれば良かったのかも知れない。間違いだと諭されていれば或いは違っていたのかも知れない――しかし彼女は、そんな自分の気持ちを受け入れてくれた。罪深い想いを肯定してくれた。自ら進んで共犯者となってくれたのだ。絶対に叶わぬ想いだと半ば諦めすらしていたというのに。
「……“響”」
男が彼女へ言葉を返した――合言葉のもう一つの符丁を。今や誰も呼ばなくなってしまった彼女の本当の名前を。
ヴェールヌイはそっと男に近寄ると、何も言わずにその体へ抱きついた。小さく柔らかな彼女の体からは、甘い石鹸の香りと仄かな潮の匂いがした。
「抱いてくれ。私が、あなたの恋人なんだっていう事を、私に実感させてくれ」
返答の言葉を告げる代わりに男は彼女の唇を自らのそれで塞ぐと、その手を取って足早に部屋を後にした。
◇
幸いにも二人が誰かと鉢合わせするような事は無かった。万が一こんな場面を他の艦娘や部下たちに見咎められたら、それこそ一大事だった。
男がその事を言うと、ヴェールヌイは「私が幸運鑑だからかな?」と隣で小さく笑った。その笑顔には普段の澄まし顔からは見られない無邪気な暖かさがあった。
果たして鎮守府内の官舎へと辿り着いた男は、ヴェールヌイを自室のベッドへと連れ込むと、再び強引に唇を奪った。
「んんっ……」
浪漫も風情もない無作法な接吻だったが、それでも彼女は快く受け入れた。唇を割って侵入する舌を優しく受け止めると、そこから染み出る唾液を愛おしそうに啜る。
しばらくすると受け入れるばかりでなく、彼女の方からも返礼があった。柔らかく小さな舌が触手のように男の口の中を跳ね回り、甘くこそばゆい刺激を与えてくる。
男も迷うことなくそれを迎え入れると、自らのものと絡みつかせるように擦りつけながら彼女の舌を優しく愛撫した。
口づけの激しさと共に粘ばりついた水音が部屋の中に響き渡り、互いの口元からはどちらのものとも知れぬ唾液が垂れ下がる。その淫猥な音色は、まるで媚薬のように二人の気分を昂らせ、より激しい行為へと誘っていく。
やがてどちらともなく密着していた唇を離すと、我慢できないとばかりに男がヴェールヌイの服へと手をかけた。
セーラー服とスカートを外し、可愛らしいデザインの下着を脱がせると、中から小ぶりな乳房と透き通った色の乳首がまろび出る。一般的な女性と比べればまだ控えめな膨らみかも知れないが、華奢で小柄な彼女の身体つきを考慮すれば、それは十分に立派なものだと言えた。
試しに爪の先端で胸の突起を弾いてみると、ぴくりとヴェールヌイの体が震える。濃厚なキスによる興奮のせいか、彼女の乳首はすでに固くしこっていた。
「もう、こんなになっているのか」
わざとらしく耳元で囁きながら、爪と指とで彼女の胸へ愛撫を続ける。言葉と仕草に反応して彼女の体が痙攣のように震えるのが、男には堪らないほどの愉悦を感じさせた。
「んぅ……気持ちいい……その触りかた、好きぃ……」
気持ち良さそうに目を瞑りながら、ヴェールヌイが男の方へと身を寄せる。喉奥から絞り出される甘い喘ぎ声は、澄まし顔の多い普段の彼女からは想像出来ないほど煽情的で、男の欲望をかき立てるには十分過ぎる程だった。
「なら、これはどうだ?」
目の前にある小さな胸を指先で柔らかく刺激しながら、今度はもう片方の胸に立つ突起を自分の唇と舌で挟みこんだ。
「ひゃあ!?」
突然の刺激とざらつい生暖かさに、ヴェールヌイは飛び出しそうになるくらい目を見開き、喉から驚きと快楽の吐息を漏らす。男はそのまま挟み込んだ突起を舌の腹で撫で上げては赤子の吸い付き、彼女への愛撫を続けた。
「やだぁ、胸舐めるのダメぇ……!!」
とめどなく迫る快楽に身を捩る彼女だが、それを逃がすまいと男が空いている片手で逃げる身体を引き戻す。
やがて乳房から唇を外した男は、次第にその顔を彼女の体の下へ下と移していき、ついには彼女の下腹部にまで辿り着いた。
最初はやや躊躇していたヴェールヌイだったが、これから得られるであろう快楽への期待が勝ったのか、恥ずかしがりながらも男に向かって静かに両足を開く。見やると、既に彼女の蕾からは透明な蜜が糸を引いてとめどなく滴っていた。
見せつけるように表面から溢れる甘露を指で軽く掬って舐め取った後、男は濡れそぼった目の前の姫裂の合間に、自分の舌を強引に割り入れた。
「ん、んぅ……!」
侵入してくる舌の感覚にヴェールヌイの身体がびくびくと震える。そしてそんな彼女の羞恥心を更に煽るかのように、男は唇と舌で卑猥な音を掻き立てながら蜜を啜る。
「いやぁ……そんなヘンな音、たてちゃ……!」
胸を弄られていた時とは比べ物にならない程の快楽に、彼女の身体は更に大きく痙攣し、声は快感と恥辱でからからに掠れている。
喘ぎ続け既に声すら絶え絶えのヴェールヌイだったが、男に手心を加える様子は無く、むしろ更に彼女を追い詰めるべく目の前の割れ目から滲み出る汁を舐め取り、陰核を舌で転がし、唇で秘所を弄んだ。
「いや……もう、イ……クぅっ……!」
次の瞬間、彼女の身体に一際大きな痙攣が起こり、彼女が絶頂に至った事を知らしめた。
「……ごめん、そっちがまだなのに、勝手にイっちゃて……」
荒い息と崩れた体勢を整えながら、気恥ずかしげにウェールヌイが呟いた。どうやら自分一人で達してしまった事を気にしているようだった。
「気にするな。お前のは身体と一緒で特に小さいんだ。こうやってゆっくり慣らしておかないと、後で怪我をするかもしれない」
「だけど……」
「いいんだよ。お前にも俺と同じくらい気持ち良くなって欲しいだけなんだ。だから、あんまり変な気を回そうとするな」
「ん……ありがとう」
そう言うと、彼女は再び小さく微笑んだ。慈しさに溢れたその笑みは、淫らな行為の直後とは思えない程に美しく、そして優しかった。
しばらく彼女の笑みを堪能していた男だったが、やがてばつの悪そうな表情を浮かべながら呟いた。
「……ところで、俺もそろそろ限界なんだが……いいか?」
見れば彼のズボンは既に限界寸前まで膨れ上がっており、痛々しいまでの盛り上がりを見せている。彼もその拘束を外そうと既にズボンのベルトに手をかけている最中だ。
「あ、待って」
しかしそれを見たヴェールヌイが何故か少し慌てたように声をかけ、男の脱衣を制した。
「ん? どうした?」
彼が聞き返すと、彼女は少し迷ったように答えた。
「できれば服は、私に脱がさせてほしいんだ」
今まで言われた事の無い意外な頼みだったので男は少し首を傾げたが、別段断る理由もないので素直に頷き、彼女に身体を任せる。
受け入れられたヴェールヌイは嬉しそうに男の服に手をかけると、一つ一つ、味わうようにゆっくりと服を脱がせていった。
「…………」
静かに自分の服を脱がせる目の前の少女に見つめながら、男は小さく歯噛みした。
彼女の要求には応えたものの、正直な事を言えば、この何とも言えない時間は男にとっては耐えがたい程もどかしかしく、出来る事ならば今すぐ目の前の少女を押し倒し、無理矢理にでもその体を貪りたい気持ちを胸の内に募らせていた。
だが同時に愛しい彼女にそんな乱暴な真似はしたくないという気持ちも存在しており、男はどちらの気持ちを処理できるでもなく悶々とするしかなかった。
「……焦らしてしまっているね」
男の表情や仕草から読み取ったのか、ヴェールヌイは申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「もう我慢できないって顔してる。今すぐにも私を滅茶苦茶にしたい、って思ってるんだよね」
図星を突かれ、どう答えたものかと男は逡巡したが、隠しても仕方がないと思い、正直に首を縦に振った。
「ごめんね。あともう少しだから……」
そう言いながらも、彼女はこの瞬間を名残惜しむかのように服を丁寧に脱がせていく。
「こうしていると、まるで奥さんになれたみたいで、とても嬉しいんだ。たとえ誰にも言えないような関係でも、ね」
気恥ずかしさもてらいもなく、彼女は静かにそう言った。その健気さに思わず男の顔に朱が走り、嬉しさと共に彼女を抱きしめたいという欲望が麻薬のように興奮をかき立てる。
やがて身に着けていた全ての服が脱がされると、がっしりとした男の裸体と共に屹立した陰茎がヴェールヌイの前に露わになった。
「大きい……私でこんなにしてくれたんだ……」
時折震えながら反り返るそれをしげしげと見つめながら、ヴェールヌイが恍惚の声を上げた。
「お前があんな可愛いこと言うからだ」
男の言葉にヴェールヌイは顔を赤らめながらそっぽを向いた。
「私は……可愛くないよ」
小声でそんな風に呟くが、照れ隠しなのは誰の目にも明らかだった。そんな姿が逆に何ともいじらしく、男の口元が愉悦に歪む。
「可愛いさ」
「可愛くないってば」
水掛け論のような詮無い問答をしても仕方がないと悟った男は、その答えを身体で教えてやろうと再び彼女の唇を自分のそれで塞ぐ。
「んむっ……」
再び訪れた接吻に少し驚いた顔をしたヴェールヌイだったが、すぐに目を細めて応じると、啄むように男の唇や舌を愛していく。
やがてじゃれ合いのような口づけを終わらせると、男が告げた。
「なあ、これ以上は本当に限界なんだ。もう、入れてもいいか?」
そう言いながら彼はヴェールヌイの両足を優しく掴んで開き、自分のいきり立った怒張の狙いを彼女のスリットへと定める。
やがて意を決した彼女もそれに応じた。
「いいよ。来て。私を――響を、貴方だけのものにして」
彼は頷くと、指で割り開かれた目の前の秘裂にゆっくりと自分の腰を押しつけていった。
「あ……ん……」
入り口の部分で僅かな抵抗を感じるが、そこを突き抜けていく従って、中の襞が男の肉棒を優しく受け入れていく。
「私の中にどんどん入ってくるのが分かるよ。大きい……」
小さく喘ぎながらヴェールヌイが呟いた。
「この瞬間が一番好きなんだ。私の中に入って来てくれるのが、私を支配してくれるのが、私が、貴方のモノになっていくのが」
言うや否やヴェールヌイは男の肩に腕を回し、抱き締めるように自ら腰を密着させた。
男も合わせて腰を何度か突き入れると、熱いぬめりと共に陰部の収縮を感じる。快感を受け取っている確かな証拠だった。
そのまま何度か前後に
「ご、めん……まだ入ったばっかり、なのに、嬉しすぎて、私……」
喘ぎ声に混じって今にも消え入りそうな声でヴェールヌイが言った。彼女の身体は、一度絶頂を迎えたことで快楽の箍が外れかかっていた。
「謝るな。好きなだけイけ」
「うん……また、イク……!」
そのまま男の身体を一層強く抱きしめると、彼女の身体は二度目の大きな絶頂を迎えた。
「あっ、ああぁぁ……!!」
再び大きな力が入り、幼い膣が大きく蠕動する。
果断なく締め付けられる男根は極上の快楽を味わい、男へとその衝動を伝えていく。
「ごめん……そっちがまだなのに、何回もひとりで、勝手に……」
再び荒くなった息遣いのまま、ヴェールヌイが謝る。
「だから変な気を回すな。お前が気持ちよくなってくれれば、俺も嬉しい」
「うん……もう大丈夫だから、して。もっともっと、あなたの事を私の中に刻み込んで」
彼女の願いを叶えるべく、再び男は自らの剛直を彼女の割れ目へと密着させ、そのまま中へと滑り込ませる。
「はぁ、……んんぅ……」
二度の絶頂によって、彼女の膣内は既に蕩けきっていた。まるで熟した果実のように蜜を滴らせ、中をかき混ぜる陰茎に満遍なくまぶしていく。
その温かさと狭さに魅入られたように、男も無心で腰を振るう。長い下ごしらえを済ませた末にようやく得られた快楽と言う名のご馳走を、ひたすら貪るように味わっていた。
「○○さん。キス、して…お願い……」
腰を振るのに夢中になっていたせいか、呼ばれてからしばらくして、男は思い出したように唇を重ねた。
互いの口は乾ききっていて、まるで相手の水分を奪い合うかのように激しく吸い合う。
唾液の味、舌の感触、歯の舌触り、相手の口に存在するすべてのモノを味わいながら、一つに溶け合い、また相手に自分のものを送り返す。
「んっ、やぁ……うぅ」
やがて繋ぎ合わせていたヴェールヌイの口が再び開き、短い喘ぎ声を紡ぎ始めた。再び頂点が近づいてきたのだ。
「やぁぁんっ……激しっ、いいっ、それ、すごくいいっ……!」
返事をする代わりに男も激しく彼女の膣内を蹂躙する。力強いピストン運動が彼女の柔肉をかき混ぜ、更に熱く蕩かす。
「やっ、あっ、だめっ、またっ、また、イッちゃ……」
ひくひくと再び膣壁が波打つように男のそれを刺激してくる。
迫りくる快楽に耐えながら男は顔を寄せて言った。
「俺もそろそろだ……! 出す前に抜くぞ……」
既に限界を迎えようとしている肉棒を引き抜こうと、男が密着させていた腰を浮かせる。
しかし、男の背後に回っていたヴェールヌイの両脚がそれを阻止した。
「だめ……! おねがい、中に、中に出して……!」
まるで獲物に巻き付いた蛇のように彼女の脚が腰を締め付け、男の退く道をがっちりと塞ぐ。
「お、おい、響……!?」
予想外の彼女の行動に、さしもの男も焦りを見せた。
陰茎を引き抜かなければ、爆発した精液の流れ出る先は当然、彼女の胎内だ。それがどんな結果を招くのか、知らない彼女ではない。
しかし、彼女はそれを覚悟の上で望んでいた。
「おねがい、きざ……んで、あなたの、証を……!!」
「あぁ……もう……っくぅ……!!」
限界を超えた快楽によって、ついに男の陰茎は臨界点を迎えた。
「あっ、ああああぁぁっ……っ!!」
長い射精が終わった後も彼女の膣は陰茎を刺激させ、最後の一滴まで搾り取る。まるでその全てを味わい尽くすが如く。
「はぁ、はぁ……お腹の中、とってもあつい……」
惚けきった表情の中、ヴェールヌイが下腹部を愛おしげに撫でた。その奧――膣を超えた子宮の中には、男が吐き出した精液がとめどなく流れ込んでいる筈だ。
「……すまない」
肩で息をしながら、男が謝罪の言葉を口にした。
「……どうして謝るの? 頼んだのは私の方だよ?」
「それはそうだが……」
言葉に詰まらせる男を前に、彼女は静かに首を振った。
「今だけは何も考えないで」
そして優しく男を抱きしめると、その頬に小さく口づけした。
「お願いだから、今はただ、私だけを見て」
「……そうだな」
男は小さく頷いた。
「お前がそう言うんだ。今はそうしよう」
「ありがとう……愛してるよ。○○さん」
「ああ」
「俺もだよ。響」
◇
心地いい気怠さと共に、男は自分の意識を取り戻した。
分厚いカーテンの隙間からは、煌びやかな日差しが薄暗い部屋を僅かでも照らそうと入り込んでいる。目を凝らして壁の時計を見やると、短針は既に正午近くを指していた。
普段ならば寝坊どころの話ではなかったが、生憎と今日の自分は非番の身だ。食堂の人間に多少嫌な顔をされるだろうが、何時間寝ていようが問題はない。
倦怠感を含んだ体を布団から起こすと、隣では未だにヴェールヌイが小さな寝息を立てて眠っていた。
一糸纏わぬ彼女の寝姿は、そのあどけない寝顔と相まってまるで学校に通う童女そのものであり、とても戦場に出て命のやり取りをする人間には思えない。銀糸のような彼女の髪を軽く手で梳いてやると、彼女は小さな身じろぎと共に気持ちよさそうに寝返りを打った。
そんな恋人の無意識な愛くるしさに微笑みながら、男はこの先起きるかも知れない出来事に思いを馳せた。
いつかこの歪んだ関係は破綻の時を迎えるだろう。部下と上司。司令官と艦娘――いくら互いに好き合っているとはいえ、いや好き合っているからこそ、その関係は組織という大きな枠組みの中では到底認められるものではない。誰かに見つかれば最後、自分たちの密やかな関係は終わりを告げる。そしてこの鎮守府は、いつまでも秘密の関係を続けられるほど大きくはない。
だが自分も彼女も、最後の瞬間まで決して互いの手を離さないだろう。あるいは最後の瞬間が訪れた時、自分は彼女とどういう結末を迎えるのだろうか。
今はまだ分からない。だが自分は決して後悔しないつもりだ。
隣で静かに眠る幼い恋人の横顔を見つめながら、男は一人静かにそう思った。
◇
夢を見ていた。平和で儚く、幸せで甘い夢を。
夢の中の少女はただの女の子だった。艦娘でもなければ軍属でもない。ごく普通の女学生。
自分が思い焦がれるあの男性も、同じく司令官ではなかった。自分が通う学校の先生。いつも仕事熱心で、少しだけおっちょこちょいで、見ていてとても愛しくなる人。
二人はごく自然な形で互いを好き合い、愛し合い、そして結ばれた。
暖かな家の中には自分と夫――そして小さな子供たちが居て、幸せで円満な家庭がそこにはあった。
その夢が羨ましかった。それは見ている者にとって実に都合のいい物語で、現実のように苦悩することも、いずれ来る破綻の恐怖に脅える事も無かった。
怖い。今の関係が崩れてしまうのが、終わりの時を迎えてしまうのが。
どうして互いに愛し合っている事を公にできないのか、なぜ他人から認められないのか、この優しい想いが、愛おしい感情が間違っているとでもいうのか?
怖い。恐い。こわい。司令官。○○さん――私を決して離さないで。私を決して見捨てないで。
もしすべてが終わるその時が来たら、その時は……。
○○さん……○○さん……
愛する人の名前を心で唱えながら、ヴェールヌイはただ静かに眠り続けた。