※この作品はR-18です。

Fate/fakeHoly Grail   作:ココアシュガー

1 / 1
プロローグ

第三次聖杯戦争から行方を眩ましている大聖杯が見つかったという報告を受け、目海津(めかいづ)瀬宮(せみや)はロンドンから日本に向かっていた。

瀬宮は14歳の頃自分は他者とは違うと分かった。 多くの人に出来なかったことが、瀬宮には出来たのだ。

その噂はすぐに広がり、瀬宮は魔術協会からスカウトを受けた。

それから20年ほどロンドンの時計塔で魔術を学び、今では君主候補にまでなっていた。

そんな瀬宮がわざわざ日本に派遣されるというのは、きっと余程のことなのだろう。

 

「目海津様ですか?」

 

空港につくと、礼装着の男が瀬宮に話しかけてくる。

 

「そういうあんたは?」

「私は聖堂教会から派遣された神父、言峰(ことみね)と申します。 今回の件、こちらとそちらが手を組むということはどれほど大きな問題かお分かりですよね? 事の発端をお話します。 一度教会に来ていただけませんか?」

「わかった」

 

空港から出ると、言峰が用意していたのであろう車に乗り、瀬宮は教会へと向かうのだった。

20年という長い月日を経て戻ってきた故郷の風景は跡形もなく、思い出そうにも初めて見るものが多かった。

四角いビルや巨大な駅、溢れかえる人々、次から次へと目が移る。

 

「そんなに珍しいものですか?」

 

言峰はそんな瀬宮がおかしかったのか、疑問を投げ掛ける。

 

「俺がいた頃の日本は、こんなに高いビルも駅も人もいなかった。 日本で生まれたが、正直あんまり故郷とは思えないもんで」

「時計塔、ですか。 確か20年でしたか。 あなたが魔術を学んでいたのは」

「まあな」

「私は生まれてから日本を出たことがありません。 それが私に与えられた役目だったので」

「それは、難儀なこって」

 

そこから会話は途切れる。

次に話始めたのは言峰の方だった。

 

「そろそろ教会につきます。 ご準備を」

「あぁ」

 

 

教会というと、なぜか大抵は十字架や油臭い蝋燭、聖母様くらいしか瀬宮にはピンとこなかった。

実際石作の教会には蝋燭と聖母様の像、そして十字架があり、自分のイメージ通りの教会で妙な安心感を抱いてしまっていた。

 

「どうぞ、お掛けください」

 

ミサをするための長椅子に腰かけて、瀬宮は話を催促する。

 

「それで、聖堂教会がじきじきに迎えに来てくれたほどの大事とは?」

「第三次聖杯戦争、突飛な終わりを迎えたあの聖杯戦争が、近々再開されます。 ですが、見つかった大聖杯が本物なのかどうか、我々には判断致しかねないのです。 そこで、魔術協会と手を組み、今回の聖杯戦争の根本を突き止めたい」

「なるほど。 今大聖杯を持っているのは?」

「最近日本に入国してきた中東の大富豪、讃(さん)角榮(かくえい)が保持していると」

「誰だそいつは?」

「中国で細々と錬金術を生業としていた讃家の子孫です。 魔術師としてはまだまだですが、魔力量はずば抜けているうえに、帝国との繋がりがある金持ちですよ」

「妙なやつだな」

「まったくです」

「それで、俺は何をすればいんだ?」

「あなたには、この聖杯戦争の監督役になってもらいたいのです。 讃家が言う物が本当に大聖杯なのか見極めてほしい」

「なんだ、あんたはなにもしないのか?」

「すみません。 私は、こちら側でして」

 

そう言って言峰が見せたのは聖杯戦争の兆し、英霊との確約たる印、令呪だった。

 

「そういうことか。 わかったよ、神父様」

 

こうして、第三次聖杯戦争の続きと言える大聖杯の調査が始まった。

 

 

 

黒須(くろす)架茄萌(かなめ)がそれを手に入れたのは偶然だった。

架茄萌は人間が嫌いだった。

自己中心的で弱いものを苛め強いものであろうとする。

そのくせ脆く簡単なことで死んでしまう本当に救いようがないほど愚かで大嫌いな存在だった。

だが、そんな架茄萌も魔術師の末端であった黒須家を憎いと思ったことはなかった。

いや、具体的には思ったことを、なかったことにしたのだ。

 

「こんなに素敵なものが手に入るなんて、初めてこの家に感謝してるかも」

 

煌々と燃え行く黒須家と両親の死体の中心で、架茄萌はにんまりと笑った。

 

『素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する

――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よぉ!』

 

すると、燃えていた家の炎が一点に集まり始める。

熱い風が頬を撫で、架茄萌は隠しきれない喜びと興奮に身をよじらせていた。

 

「本当に今だけは感謝するね。 パパ、ママ。 最高の令呪(おくりもの)をありがとう」

 

炎は人の形を模していく。

それは次第に剥がれ始める。

そして現れたのは紛れもない英霊、サーヴァントだった。

 

「召喚に応じて参上した。 吾の名は茨木童子。 汝がマスターか?」

 

現れたのは、自分と背の変わらない少女だった。

どこか違うところがあるとするなら、その少女には角が生えていた。

 

「そうだけど、あなたは鬼なの?」

「鬼で悪いか?」

「全然! むしろ人間の英霊じゃなくたよかった!」

「……妙な人間もいるものよなぁ」

「私人間は大嫌いなの! あなたとなら、きっと素敵な世界を創れるわ!」

「かかっ!! よかろう、気に入ったぞマスター」

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

『素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する

――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ』

 

「サーヴァントセイバー、召喚に応じて参上した。 お前が俺のマスターか?」

「あぁ、そうだよ。 僕は國盗(くにとり)世界(せかい)。 よろしく頼むよ、セイバー」

「こちらこそ、よろしく頼むぞ、マスター」

 

國盗は魔術師の家系に引き取られ、一から自己流で魔術を学んでおり、聖杯戦争への参加条件である令呪を手に宿したとき、養子にとってくれた魔術師に触媒をもらったのだ。

 

「間違いなくセイバークラスの英霊を引ける。 よいか、絶対に大聖杯を手に入れるのだ。 我願望を叶えるためにお前を養子にしたのだ。 せめてその恩義に報いよ」

 

だが、國盗にそのような感情はいっさいなかった。

すべては、あの日をやり直すため、そのために國盗は戦おうと決めていたのだ。

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

「サーヴァントキャスター、召喚に応じここに現界したわ! 名前は玄奘三蔵、あなたが私のマスター?」

「驚いた……! 本当に召喚できるなんて」

「もしかしてあなた、いえ、もしかしなくてもあなた、魔術師じゃないのね!?」

「なっ!?」

「やっぱり!! ……これはとんでもない事態ね。 どうか! 私たちに御仏の御加護がありますように!!」

 

この聖杯戦争唯一の一般人である金堂(こんどう)猟守(かりす)には、数週間前から令呪が手に宿っていた。

猟守は元々魔術に興味はあり、聖杯戦争のことを知ったのも最近だった。

 

「あなた、名前は? 魔力供給がないとなると、戦うにしても私不利なんだけど。 そのへん、しっかりと作戦とか考えていたりする?」

「あ、えぇっと……。 僕は金堂、金堂猟守だ。 それと、すまないが作戦とかはない。 まさか本当に召喚できると思わなくて……」

「そっか。 じゃあよろしくね、マスター。 まあ、私に任せなさい。 こう見えても私、弟子もちなんだから!」

 

その彼女の笑い声とポジティブな気持ちに、少年は少しだけ救われた気持ちになっていた。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

「ランサー、召喚の応じ参上いたしました。 貴殿が拙者のマスターか?」

 

煙る部屋の中、呼び声に馳せ参じたサーヴァントが問いかける。

 

「そうだ。 よろしく頼むよ、ランサー」

「御意」

 

龍ヶ峰(りゅうがみね)時崎(ときさき)、彼は魔術師として名高いアインツベルンに雇われた傭兵だった。

 

「君の願望はなんだ?」

「拙者の願い、ですか……。 生憎、七つ道具と一緒に置いてきてしまったかと……」

「冗談が言えるサーヴァントで助かった。 それじゃ、向かうとしよう」

「いずこへ?」

「決まっているだろう。 敵の偵察だ」

 

時崎は独学で魔術を学び、金次第でなんでもする男だった。

聖杯事態に叶えてもらう願いはなく、手に入れた聖杯をアインツベルンに返上することで、莫大な財産を手に入れるために参加したのだった。

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△△▼△▼△

 

「ライダー、召喚に応じて参上した。 初めまして、マスター! 僕はアレキサンダー、よろしく!」

 

クリス・ユスティーツァと呼ばれる少女は、魔術師として有望だった。

錬金術や天文学、さらには現代魔術よ扱いにも長けており、本当に有望な少女だったのだ。

 

「よろしくお願いします、ライダー。 私はクリス・ユスティーツァ」

「へぇ、お姉さん綺麗だね」

「あら、もしかして私口説かれてますか?」

「あはは! どうかな」

「されではライダー、いきましょうか」

 

私の願いを叶えるための戦いへ。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

今回の聖杯戦争、第三次聖杯戦争の続きと言っていた言峰の言葉に、瀬宮は疑問を感じていた。

 

偽物かもしれない聖杯を本気で奪い合う必要があるのか? 魔術協会側から七人派遣し、各自サーヴァントを自害させて見ればいいのでは?

だが、中東の富豪だったか、讃とは一体何者なんだ? それに派遣された俺が監督役とはどういうことなんだ?

……この戦争、なにかがおかしい。

 

すると、教会の扉が開かれる。

 

「失礼する」

 

現れたのは金色の綺麗な髪をもった男だった。

 

「君は?」

「俺は龍ヶ峰時崎。 ランサーのマスターだ」

「了解した。 あぁ、そういや今回の聖杯戦争なんだが、あまり期待はしないほうがいい」

「それはどういう?」

 

時崎は瀬宮に言及する。

 

「この聖杯、とある富豪が持っていららしいんだが、どうにも胡散臭い。 もしかしたら願望を喰うだけの器なのかもしれない」

「俺に願望はない」

「ほう、そいつは妙だな。 望まない者を聖杯は選ぶのか?」

「偽物ならあり得るだろう。 俺は雇われた身だ。 勝って聖杯を献上するだけでいい」

「そういうことか」

「それより、今回の追加ルールというのは本当なのか?」

「あぁ。 全マスターの情報を全マスターに公開。 それに伴い、マスター同士の殺しあいはしてはいけない」

「……もしサーヴァントがマスターを殺した場合は?」

「そのサーヴァントには退場してもらう」

「了解した。 さっそくだがマスターの情報をくれ」

「いいだろう。 さて、始まってしまうのか」

 

『聖杯戦争が』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。