なかなか濃厚な陵辱シーンに入れずに申し訳ない。
「ありがとうございましたー」
「また来るよ…日和ちゃんっ」
スーツ姿の仕事帰りと見られる男が、見送る日和の頭に軽くキスをする。
この地獄の"出向"からもう6日経つ。
つまり、今日が最終日。
「ふうぅっ…」
男が視界から消えると、ひとりでに大きく息をつく。
(やっと…やっと今日で終わるのね)
長かった。
あれから6日、バニーガールとして働かされ、様々な仕打ちを受けてきた。
といっても、息の臭い太った中年オヤジ共に体中を撫で触られたり、ディープキスをせがまれたりといったような事ばかりだが。
今まで自身の身体を武器に仕事をした事など一度もない日和にとっては、それが重い精神的苦痛となっていた。
日和のシフト終了まであと1時間。
待ち望んでいた瞬間を眼前に、思い寄らぬ客がやってくる。
「「「いらっしゃいませー!!!」」」
カランコロンとカウベルが鳴った先を見てみれば、そこにいたのは…
「おほっ、元気にやっとるかねぇ…」
「あ、あなたは…っ!」
思いも寄らぬ来客。
それは、他でもない、あの日和をこの"出向"に追い込んだ上司本人だった。
驚きの余り目を見開く日和。
しかし、その表情はすぐに引き締まった、鋭いものへと変わっていく。
「いやぁ、ちょっとね。この近くで会合があったもんだから様子見に…」
「…いらっしゃいませ」
呟くように言い捨てると、足早に上司の目の前から立ち去る日和。
「くっくっく…」と薄気味悪い笑みを漏らしながら、VIP席へつく上司とその仲間達。
結局、日和は指名されてしまい上司達から逃げる事はできなかった。
相手は計5名。
おそらく上司の仲間という事だから、皆取引先の会社のそれなりに偉いポストに就いている者達なのだろう。
上司以外の顔は分からなかった。
広めのVIP席に男5人嬢5人。
日和もある一人の男の相手をさせられる。
「ぐふふっ…久しぶりだねぇ、"日和"ちゃん」
「…えっ?あっ!」
またも予想だにしない事が起こる。
日和が今から相手させられる男。
その男は、日和がここに来て初めて相手をさせられたあの男だった。
強引に迫ってきて、挙げ句最後は抵抗してきた日和にブチギレて店を出て行ったあの男。
(な、なんでここにいるのよ…!)
記憶を辿れば、この男もどこかの企業の重役だったとか言っていた。
上司と何らかのつながりがあったのだろう。
まさかここに来るとは思いもよらなかったが。
「「「「「それじゃっ!かんぱ~~い!!!」」」」」
「「「「かんぱ~い!!!」」」」
酒を注がれたグラスをかち合わせて、乾杯する男女。
日和も一応口を付ける。
その酒は全く美味しくなかったが。
各々談笑し始めた頃で、男がずいと日和に体を寄せる。
「ぐふふふふぅ!こないだはとんだ赤っ恥かいちゃったからねぇ~、今日は存分に楽しませてもらうよぉ、日和ちゃ~ん」
「うっ…」
思わず吐き気を催す日和。
またこの男に気持ち悪い行為をされるのかと思うと、思わず目が眩んでしまう。
強引に押し倒され、無理やりキスをされ…
日和もこれまで6日間バニーの格好をして働いてきたが、あれほどまでにしつこく、そして強引に迫ってきた客はこの男だけであった。
初日の悪夢が蘇る。
(絶対に嫌…)
嫌と思っても、一応は客商売なので逃げるという選択肢はない。
ましてやVIP席に座らされてしまったので他の目が届きづらい。
早速、網タイツ越しにふとももを撫で触られる。
「日和ちゃん聞いたよ。本当は○○さんのとこの会社の人なんだってねえ?」
「なっ…!」
そんな事まで言ったのか、と、心の中で大きなため息をつく日和。
個人情報を見知らぬ中年オヤジに知られるのが怖くて怖くてしょうがない。
もしかしたら自身の仕事にも障害をきたすかもしれないし、今後も会う事になったら最悪だ。
「こないだ会った時はナースさんだって言ってたのに、ダメじゃないかあ…おじさんに嘘ついちゃ」
再会の喜びを全身で表現するように体をすり寄せてくる。
「そんないけない子にはお仕置きが必要だねえ」
嬉しそうに耳元で言うと、そろりと頬を舐め上げる。
「ひっ…!」
それこそ敵を眼前にした兎のように、身を強張らせる日和。
ただそれもあと1時間だ。
最後の最後でこんな試練が待ち受けているとは思いもよらなかったが、あと1時間耐えきれば解放される。
「ぐふふふぅ…っ、日和ちゃん、チューしよっ」
また、あの時と同じだ…。
うー…っと気色悪い擬音をたてながら、唇を突き出して日和に迫る男。
嫌、と言っても誰も助けてはくれないだろう。
強引に頭を抱えられて、接吻をさせられてしまう。
「う゛う゛っ…!」
(何これ!?臭っ!)
ここに来る前にニンニク入りのラーメンでも食べてきたのだろうか。
接吻した瞬間に伝わってきた、吐き気を催すような臭さに耐えられず、思わず唇を離してしまう日和。
「あれぇ~?日和ちゃんどうしちゃったの?」
ニヤニヤしながら、唇を手で擦る日和に問う。
あまりにも臭くて気持ち悪いので、手元にあった酒をぐいと飲み干してしまった。
その後もねっとりとした陰湿なボディタッチは続く。
大きな胸を揉みしだいてきたり、キスしてきたり、脚を撫で触ってきたり…
最後まで日和に絡んできたのはこの男一人だった。
余程自分の事が気に入ったのだろう、と考えると寒気がする。
店の時計が0時を指す。
(やったっ!)
この1時間はとても1時間とは思えないくらい長く感じられた。
だが、そんな地獄の時間も1時間で終わり。
男の撫で触ってくる手を押しのけて立とうとした、その瞬間だった。
視界がぐにゃりと歪み、体中の感覚が無くなる。
「あれ…なんか、頭が…」
思わず額に手を当て、再び座り込んでしまう日和。
「あれれ?どうしたの日和ちゃん…急に立ったと思ったら座りこんじゃって…酔っちゃった?」
剥き出しになった背中をさすってくる男。
薄れゆく意識の中でもその汗ばんだ掌の気持ち悪さだけは鮮明だった。
頭の中がぼーっとして、体に力が入らない。
別に酒はそんなに飲んではいない。
だから酔った訳ではない、飲んだのはたった一杯だけだから…
だとすれば、今自分がこんなに意識朦朧となっている理由は…
靄ついた脳内でも簡単にその答えは導き出せた。
全てはこの男達の策略。
この地獄が1時間で終わる訳がなかったのだ。
男が自分の体を抱きかかえて何か言っている。
何を言っているのかは分からない。
完全に体に力が入らなくなって、視界が真っ暗になった瞬間、日和の本当の地獄が始まった。
アニメスタッフは日和ママに酷い事したよね。