「これも主の大切な役目だ」
「これ、が…?」
混乱と不安を宿した小鳥の瞳に、彼はゆっくりと目を細め、その頬を撫でる。
「ああ。刀と主の繋がりを強めることで我らはより力を発揮できるようになる」
喉、肩と指を滑らせる。小鳥は僅かに身震いした。
「作法がわからぬのであれば、主は大人しく俺たちに身をゆだねておれば良い」
衣一枚しか身にまとっていない小鳥は、不安そうにしながらも頷いた。女性らしい丸みは乏しいものの、彼女が女性であることは見て取れた。彼が何をしようとしているのかは、わかっていないのだろう。わかっていればもっと違った反応をしていたはずだ。
「そう固くならずとも良い」
「そんなこと言われても、そんな、儀式?あるって聞いてないし、まだあんたと顔を合わせるのに慣れたわけでもないし」
「・・・」
彼の言ったことは必ずしも嘘ではない。だが、
刀剣男士と肌を重ねる、というのは。
「…っていうか、ちょっと恥ずかしいんだけど」
「主も美しい
細く折れそうな四肢に、少し力を入れれば潰せそうな喉。長い黒髪は簡単にまとめて背に流している。脆く、脆弱で、か弱い。丁重に扱ってやらねば損なわれてしまうのは明白だった。
寝台に小鳥を寝かせ、帯を解く。
「…え」
己に触れようとする手に小鳥は怯えた。他者に肌をさらすことにも、触れられることにも、慣れていないのだろう。
「声を抑える必要はないぞ、主。この室は外に音が出ぬようになっておるそうだ」
そう囁きながら、彼は小鳥の胸元に口付け、軽く歯を立てた。
「…みか、づき、何を、するの…?」
「わからぬか?」
彼は、直接的にそこに触れた。小鳥はびくり、と肩を震わせ、逃げようとするように躯を動かそうとした。彼は小鳥を見下ろしてにんまりと笑ってみせる。
「逃げるのか?主。そなたは俺たちの主となったのだろう?」
「審神者って、こんなことするもの、なのか?」
「でなければ何故俺がこのようなことをすると思うのだ?」
「…わかんない」
小鳥の小さな手が、不安を堪えるように敷布を握り締める。彼は空いていた手で小鳥に上を向かせて深く口付ける。酸素を求めて開かれた唇をついばみ、舌を絡める。潤み、上気した目元が情欲を誘った。
丹念な愛撫で躯が受け入れる準備を始めても、小鳥の瞳に肉欲の色が浮かぶことはなかった。その吐息が甘い色を含んでも、小鳥は怯え、恐れている。
「みかづき、もう、いい…?」
「うむ、そろそろ頃合か」
小鳥の小さな躯を抱きすくめるようにして、彼は己の太刀を突き立てた。
「っ」
「どうだ、俺とそなたが繋がっているのがよく感じられるであろう?」
小鳥の瞳から涙がこぼれ落ちる。それは、絶望にも似た色をしていた。
「繋がるとは、良いことだとは思わぬか?」
小鳥は何かを堪えるようにぎゅっと目をつぶった。彼はゆっくりと腰を動かす。呻き声のような小さな声が小鳥の唇から零れる。
「声を抑えずとも良いと、言ったであろう?」
「っふ、ゃあっ…」
ぼろぼろと、小鳥の瞳から涙が零れる。それは生理的なものでも、よがってのものでもないのだと、彼は見て取れた。小鳥は初めてで、女で、だから配慮が足りなかったのかもしれない。だが、彼はこうする以外の方法を知らなかった。
「…あまり泣くと目が溶けてしまうぞ」
彼は小鳥の目元に口付ける。
「善くなるまで、俺がじっくり教えてやろう。あまり俺ばかりが主を独り占めしていれば他の者が妬くかもしれぬが」
刀剣の中には、主に配慮するだけの余裕などないものもいる。主がしっかり受け止められなければ、互いを傷つけるばかりとなりかねない。それは不幸な事だ。
一度精を出して太刀を引き抜くと、血が付いていた。生娘は初めて男に抱かれる時に血を流すことになるのだという知識が彼にもある。懐紙でそれを拭い、ぐったりしている小鳥を見下ろす。小鳥は小さく泣いていた。精と共に注ぎ込んだ神力によって、その身に刻まれた呪いが活性化している。
「主、主、小鳥よ、俺はそなたを気に入っておる。…説明が足りなかったのはすまなかったな」
彼は小鳥をただ抱きしめた。髪を撫で、頬に口付ける。
「愛しく思っておるよ、主」
小鳥は答えない。ただ、ぼんやりとした瞳を虚空に向けている。初めてのことに許容量を超えてしまったのだろう。
落ち着くまではそっとしておいた方がいいだろう、と思う。彼は、待つことには慣れているのだ。気長に待つことは苦にならない。ただ、拒まれるという経験はあまりなかった。いつも求められる側の存在だったので、愛されるのには慣れているが。