数珠丸と引き離されて他本丸に送りこまれた
碓氷本丸浄化済み 他の審神者(お嬢様)が送られている(うまくいくとはいってない)
その審神者は罪人なのだと刀剣たちは思った。
華奢な手首と足首は鎖のついた枷で縛められていたし、首には呪の刻まれた首輪がはめられている。口枷は外せそうだが、他の枷は外せないようになっているようだ。それらの枷の上から赤い縄で縛りあげられた状態で、審神者は本丸に送りこまれてきた。見るからに華奢な少女の何を恐れてそこまで厳重に縛める必要があったのかは謎だが。
「…どうする?」
「殺すも追い返すも容易いだろうが…気になるな」
口枷を外し、起こす。ぼうとした目が、ゆっくりと辺りを見回し、緩やかに首を傾げる。
「…ここ、どこ?」
舌足らずに、言葉が紡がれる。
「目は覚めたか」
「んぅ…んー…知らない、三日月、殿?」
「…。…お前は何をしてそのように縛されている?」
「んー、んー…わかんない。おれ、ほんまるをきれいにしなさいっていわれて、ていれして、えっと、んー…あたまいたい。…つねつぐ、ずっといっしょって、いった、のに…」
審神者の言葉にはいまいちまとまりがなく、要領を得ない。ただ、何もわかっていない幼い子供の様だと思った。縛めの意味がますますわからない。
「罪を犯したわけではないと?」
「おれは、おれにできる、さいぜんと、おもったことしか、してない。…つみ?んー……つねつぐにも、みかづきたちにも、ころされなかったこと?おれがころされることをきたいされていたなら、だけど」
「・・・」
「…あたまいたい」
眉をしかめる。
「♪~」
審神者の周囲、声の届く範囲が浄化される。
手枷を外せなければ衣類の着脱に制限があるからか、縄を解いてみれば審神者がまとっていたのは衣服と言えない布だった。また、太腿と尻にマジックで穴に向けた矢印と"ご自由にお使いください"という文字が落書きされていた。まあ、エロマンガで偶に見るアレである。
この審神者が、性奴隷的な用途で寄越された事に気付き、刀剣たちも流石に動揺した。本人はよくわかっていない様子だったから特に。そもそも、彼女の躯は肉付き悪く華奢で未熟な印象があり、まっとうな男に劣情を抱かせるような色気に欠けている。また、刀剣たちがそのようなものを要求したことはないし、他の本丸でもそうだろう。悪趣味にも程がある。一方で、その無垢さ、従順さに妙な色気のようなものがなくもない。端的に言えば、ヤろうと思えばヤれる。
「…どうする?」
その無垢な生贄は、彼らが拒めばそのまま他の元ブラック本丸に送られるのだろう。それは確信できた。別にだからといって気にかけてやる理由などないのだが、見捨てるのも気持ちが悪い。
「…一つ言わせてもらうならば」
一期がとても複雑そうな顔をして言う。
「弟たちの教育にはとてもよろしくないですな」
人間、そして審神者とはいえ、弟(しかも短刀)とそう変わらぬように見える子供を虐げることは一期には抵抗があった。他の短刀を可愛がっている刀剣もそうだろう。彼らは審神者を憎悪し殺意さえ持つものもいるが、人の全てを嫌っているわけではない。聡明で従順な子供となれば、寧ろ同情心さえ湧いてくるくらいだ。
「この本丸で何を今更、と言えなくもないがな」
審神者を害し、現世に送り返したことで刀剣たちは束の間の平穏を得た。それまで、刀剣たちはそれぞれに虐げられてきたのだ。その中には性的搾取も含まれていた。
「だからこそ、ですよ」
「♪~」
少女は我関せずとばかりに歌と浄化を振りまいていた。本丸とのリンクを繋ぎ直したわけではないため、パスは繋がっていないが、確かに周囲は浄化されている。
「えっと、審神者ちゃん」
「?なに、みつただどの」
「お腹すいたり、喉が渇いたりしていないかい?」
「え?うーん…喉は乾いてきたかなあ」
「じゃあ、お茶を用意しようか、それともジュースの方が良いかな」
「え、えっと…ありがとう?」
「遠慮しないで大丈夫だよ。弱い者いじめなんてかっこ悪いこと、僕はするつもりないからね」
「茶を淹れるなら俺の分も頼みたいな」
「鶯丸さんは僕より淹れるの上手いじゃないですか…」
「なに、自分で淹れるより他者に淹れてもらう方が嬉しいものだ」
「…言いたいことはわからないではないですけど…」
「茶菓子は饅頭が良いな」
「ないものは出せませんよ」
光忠は苦笑する。
「審神者ちゃんもお茶でいいかな?」
「う、うん…」
戸惑った様子を見せる少女に、光忠はまた苦笑した。
「茶はいいぞ」
「おちゃ、きらいなわけじゃないよ」
「光忠は努力家だから、うまいぞ」
「別に、そういう心配してるわけじゃないけど…」