座敷牢に閉じ込められたことそのものは、小鳥はあまり気にしていない。元々引きこもり気質なので、全く外出せず数日過ごすことも別に苦にはならない。立地的に日の光も入る。端末を取り上げられているわけでもない(余所に助けを求めることはできないが)。
問題は監禁の目的が小鳥を性的に調教するためだということだ。まあ確かに、被虐趣味があるのか、拘束に興奮するのは否定できないのだが。そういうのは二次元で見るからいいのであって、現実にされたい願望があったわけではない。
「…わからない」
小鳥には性欲がない。だから、好きな相手を性的に調教する是非もどの程度共感を得られることなのかもわからない。いや、アブノーマルなことだとは思うが。
小鳥としてはそれで則宗に嫌悪感を持ったりとかはないが、調教されたいとは思っていない。性行為自体、拒みはしないが、望んでもいない。好意を持っているかはわからない。嫌っていないのは確かだが。
「…絶対もっと健全な方法があると思うんだけど」
対面座位ですることが多いのは表情が見やすいことに加えて、小鳥が刺激にぎゅっと掴むのを愛らしく思うからだ。縋りつかれると嬉しい。
「小鳥、僕の愛しい子」
口付ける。呪いのように繰り返してはいるが、やはり契約は結んでいない。どうするのがいいのか、決めかねている。愛おしく思って、執着している。だがそれは、刀剣男士と審神者、主従としての情ではない。かといって、恋なんて可愛らしいものでもない。それが則宗が祟りと化しているからなのか、それ以外の理由かは定かではないが。ともかく彼は小鳥を愛しく思っているし、執着している。独占欲を向けている。あるいはそれは、神としての執着なのかもしれなかった。
「僕の小鳥」
「あっ、くぅん…」
小鳥の躯中、則宗の触れたことのないところはないだろうというくらいその小さな躯を暴き立てた。小鳥には触れられることへの羞恥はあれど、それに反応して嬌声が出ることなどに対する羞恥などは薄いらしく、それを隠すことはない。
「ずっとずっと僕の手の中にいておくれ」
「ひゃいんっ…」
胎の奥までごりごり犯され、小鳥は生理的な涙を瞳に浮かべて喘ぐ。刺激に耐えるように、突かれるたび、腰に絡めた足をぎゅっと締め付けた。それが愛おしくて、高揚する。
何度犯しても本質のところで満足することはできていなかった。理由はわかっている。望みは愛し子を犯すことではないからだ。それは手段でしかない。犯し、奪い、蹂躙し、征服し、支配し、己のものとして手に入れたい。身も心も魂もその全てを自分のものにしてしまいたい。
小鳥は己の何も、他者に委ねるつもりがなかった。強靭な芯、自己観測の方法も碌に知らず狭間に送られても、自己を見失うことのない存在強度の強さ。何があっても核の部分はぶれない頑固さ。それが本質なのだといってもいい。小鳥は最初から今まで、状況に適応はすれど、本質は変わっていない。
則宗はありていに言えば小鳥を己の眷属に作り変えてしまうことを望んでいた。しかし、小鳥は表層の部分は変わっても本質は変わっていない。彼の都合よく作り変えられたりはしていない。その空回りがこの状況を招いている。
「僕の小鳥」
刻みつけるように甘い声で呼びかける。快楽に蕩かされた小鳥はそれに明確な反応をしない。とろんとした目で与えられる刺激に浸っている。ある意味で、小鳥は快楽に弱いし強い。与えられる快楽は拒まないが、自ら快楽を請うことはしない。ひたすら受け身。躯は確かに調教されているが、
「…小鳥は、僕のことをどう思っている?」
「どう、って?」
「…そのままだが」
「んー…嫌いじゃないけど、えっち?」
「えっち、か」
「俺、無性愛者だからなんでそんなにセックスするのかわからない」
真面目な顔で小鳥は言う。則宗は苦笑した。
「お前さんには、恋しい相手を求めるというのがわからないか」
「わかんない」
無垢な瞳で小鳥は則宗を見上げる。
「恋しい、というのがそもそもよくわからない」
小鳥はある意味で一人で生きていけてしまうタイプの人間だ。物理的な面では難しいところもあるが、精神的なところで、他者を必要としない。自分一人で完結できる。他者を求める必要がない。それを本人がはっきり自覚しているかはともかく。
「恋したこと、ないし」
「そうか…」
頬を撫でる。くすぐったそうに目を細めた。
「…僕が教えられたらよかったが、生憎そうもいかない。僕も他者に教えられるほど恋について知っているわけではないしな」
それに彼の気持ちは恋なんてものではない。あるいは、恋だったらこんなことにはなっていなかったかもしれない。