表立って小鳥につくといった人はいない。心情的には…うん
「おためごかしはいい。あんたの好きにしろ。…まあ、俺があんたの望む反応を返せるかは疑問だがな」
小鳥はそう言って目を細めた。三日月もすっと目を細める。
「それは、どういう意味だ?」
「そのままの意味だが。俺は助けを求めて泣き叫んだりはしないし、よがったりもしない」
流石に全くの無反応とはいかないだろうが。
「それはぞんざいに扱われようと、やさしく扱われようと変わらぬのか?」
「俺はあんたに何も望んでいないからな」
助けを求めたところで、それが叶うことはないと。
「…この本丸で最も鎮めなければならない神はあんただろう?」
「…それを俺に言って、殺されるとは思わんのか?」
「殺したければ殺せばいい。…それで、次に来る者にはせめて、いきなり斬りかかることはしないでやってくれると助かる。…まあ、どんなやつが来るかは知らないが」
「声を堪えずとも、良いのだぞ?」
「別に、堪えているわけじゃ…っ」
小鳥は苦痛に顔を歪めた。その瞳は、生理的な涙が浮かんでいる。
生娘がろくに慣らされもせず(潤滑剤を使ったとはいえ)貫かれたというのに、彼女は小さく呻いただけで悲鳴をあげはしなかった。
小鳥はいわゆる幼児体型であり肉付きが悪いしどこもかしこも小さく、抱き心地自体は然程でもなかったが、その霊力はとても質が良かった。味わう程に酩酊にも似た陶酔感を引き起こす、甘露のような霊力が汲めども沸き上がってくる。その体液に、特に多くの霊力が含まれている。
「素直ではないな」
「ひぐっ…」
強く突かれ、小鳥は敷布を掴み、歯を食い縛る。
「ほれ、啼いてみよ。そのように歯を食い縛るでない」
三日月は小鳥の口に指を入れて開かせる。
「あぐっ、あっ…」
小鳥の口から唾液が零れる。霊力を通じて小鳥の嫌悪感が伝わってきても三日月は気にしない。
「痛いのであれば痛いと泣き叫んでみてはどうだ。何か変わるかもしれぬぞ」
「っ」
小鳥は行為の最中に気を失ってしまっていた。注ぎ込まれた神力により活性した呪いが原因だ。虚ろな瞳からは涙が流れている。
「…無意識、か」
三日月は己の指についた唾液を舐めとる。含まれた霊力により、それはとても甘く感じられた。
「…やはり、殺すには惜しいなぁ」
そもそも、審神者なくして刀剣男士が現世に留まることはできないのである。留まることを望むのであれば、適当な審神者が必要となる。
小鳥は、色々と"悪くない"。
「…"壊す"か」
三日月は呪いに神力を注ぎ込み、強引に上書きを試みる。痛みで小鳥の躯が跳ねる。
「う、あ…」
朦朧としながら、小鳥は三日月の肩に思い切り噛み付いた。
「っ?!」
予想外の行動に動揺し、三日月の動きが止まる。思い切り、血が出る程に歯型がついていた。
「…あなや」
おそらく、無意識の防衛本能のようなものが働いたのだろう。
「・・・」
小鳥は片手で頭を押さえ、ぼーっとした目で三日月を見上げる。
「…みか、づき、さん」
三日月は小鳥に対して名乗った覚えはない。だが、名を呼ばれたと認識したことで契約がしっかりと結ばれる。本来、ただ名を呼ばれるだけなら仮契約レベルなのだが、抱いてしまっていたので仕方ない。
「…これは、してやられたか。仕込んだのは、"先輩"とやらか、それとも…」
契約そのものは問題ない。ただ、本契約が結ばれてしまった以上、意図的に苦痛や危害を与えることに対して忌避感を覚えるようになった。これ以上三日月が小鳥を壊すことは難しい。
小鳥は自閉状態になった。話しかけられれば反応するが、でなければ概ねぼーっとしている。この状態の小鳥が自分たちに危害を加えてくると思うものはいなかった。そもそも、小鳥が自発的な行動をしないのだが。
「…で、君は小鳥に何をしたんだ三日月」
「うむ…心を壊してやろうと思ったのだが、少し手違いがあってなぁ。中途半端なことになってしまった」
鶴丸は眉根を寄せる。
「心を壊すって、君なぁ…」
「元よりあれは呪われておっただろう」
「そういう問題じゃないだろう」
「完全に精神が崩壊し狂っておるわけではない故、回復する可能性はあるぞ」
「だが、それは元に戻るわけじゃあるまい」
「なんだ、鶴はそんなにあれが気に入っておったのか?」
「…ああ、自分のしたことを後悔する程度にはな」
ある意味でそれはしなかったことへの後悔でもあるが。
「であれば、言っておれば配慮したのだがなあ」
「俺も、何かしら行動しなかったことを悔やんでいるよ。…まさか、七日目になる前に手を出すとは思わなかったよ」
「死んでからでは遅いからな。…それに、気になることもあった」
三日月は目を細める。