美哉×健人押しの方は閲覧注意。可能な限り寄せたつもりですが、キャラ崩壊などにはご容赦願います
時系列は十八巻の後。健人は完全に死亡しているという世界線で描いています
七羽目の恋告鳥(前)
片翼を失い、それでも飛んでいた鳥は、残った翼を未来に託した
翼を失った鳥は飛ぶことを失い、地へと降りて自分が空を飛んでいた理由を忘れてしまった
千切れていた記憶、意識が徐々に形を織り成し、その後にあった記憶と結びついて本来あるべき場所へと還っていく
「――ぁ」
浅間美哉が我に返った時、その眼前にあったのは自身が管理する出雲壮の住人にして、六羽のセキレイの葦牙である佐橋皆人の顔だった
それと同時に、目を閉じた皆人と自分が唇を重ねていることを理解する
粘膜同士の接触――それが何を意味しているのか、セキレイ№01である美哉は、十分に理解していた
自身が葦牙である皆人によって羽化し、そしてそのセキレイになったのだと理解したところで、重ねられていた唇が離れていく
「……気分はどうですか、大家さん」
「佐橋さん……」
長年維持していた嵩天との接続が切れたことで意識と身体にきたしていた異常を回復するためとはいえ、羽化させたことに対する迷いを皆人から感じ取った美哉は、その後ろで事態を見守っていた出雲壮の住人達を見て全てを察する
「――そうですか。全て終わったのですね」
「はい」
噛みしめるように紡がれた美哉の言葉に、皆人は神妙な面持ちで答える
そして、出雲荘にこれまでと同じ日々が戻って来た
やがて、嵩天に残った結が帰り、出雲荘の住人全員が揃って今までと変わらない新しい日々が続く
「……」
相変わらず六人のセキレイたちに迫られ、翻弄される皆人だったが、新しくセキレイとして加わった美哉が時折寂しげな表情を浮かべていることには気づいていた
皆人のセキレイとなった美哉は、命日や月命日はもちろんのこと、時折気が向いたように亡き夫である「浅間健人」の墓を訪ね、手を合わせていた
亡き夫の墓前で手を合わせ、そよ風にその長い髪を揺らしていた美哉は、ふと気配に気づいて背後に視線を向ける
「……皆人さん」
花を手に佇む自身の葦牙となった青年――「佐橋皆人」の姿を見止め、美哉はほんのわずかに表情を曇らせる
セキレイは葦牙と添うもの。本来なら、葦牙となった皆人のために尽くさなければならない自分が、亡き夫への想いを断ち切れずにいる後ろめたさが、美哉の表情を曇らせていた
「俺もいいですか?」
「ええ」
しかし、そんな美哉の不安など気にした様子もなく、皆人は健人の墓前に花を供えて手を合わせる
「……大家さんは、いつも旦那さんとどんな話をしているんですか?」
しばし手を合わせていた皆人は、しゃがんで墓に向かい合ったまま声だけで美哉に訊ねる
その声音は特に咎めるようなものでもなく、むしろ健人と話すことを許している優しいものだった
「そうですね……色々です。皆人さんは、健人さんにどんなことを報告したんですか?」
その問いかけに、美哉は寂しげな笑みを浮かべる
美哉が健人の墓にくるのは、出雲荘の次にここが彼を感じられる場所だから――帰ってくるはずのない愛する夫の影を探しているからだった
だが、そんなことを皆人に言うことはできない。そんなことを言えば、心優しい青年に余計な心配をかけてしまうからだ
だから美哉は、あえて答えを明言せず、皆人に話を振った
「俺は……あなたの分も、俺が大家さんを大切にしますから、心配しないでくださいって」
「……」
少し照れながらも、真摯に返された皆人の言葉に、美哉は目を伏せる
分かっている。健人はもう死んだ。こうしていても何も変わらないということも
だが、それでも美哉は健人という最愛の人への未練を断ち切ることができずにいた。そんな想いが、皆人の優しい言葉に引き寄せられるように、その可憐な唇から零れる
「健人さんを失って、嵩天を結さんに譲って……力が抜けてしまったのでしょうね。今はとても穏やかで充実しているのに、時々どうしようもなく虚しくなってしまうんです」
もしここにほかの誰かがいたら、こんな言葉は出なかっただろう。だが、皆人と健人だけのこの場所で、美哉は自然と自分の本心を口にしていた
葦牙を得て羽化し、戦いを終えた今の生活が充実したものであるのは間違いない
皆人は葦牙として信頼にたる人物であるし、なんの不満もない。だがそれでも、その幸せの中に健人を探してしまう
「――結ちゃんが言ってました。あの戦いのときに大家さんは負けたいと思っていたって。もし大家さんが本気で勝ちたいと思って戦っていたら、最後の戦いのとき負けていたのは私達の方だったって」
皆人から告げられた言葉に、美哉は返す答えを持ち合わせなかった
事実、美哉は嵩天を委ねたいと願っていた。全ての葦牙とセキレイに自由な羽ばたきを求め、迷いなく勝利を求めた皆人と結とは思いの差があったのは否定できない
決してわざと負けたわけではないが、結果的に嵩天を司る重荷を結と皆人に背負わせることになってしまったのは事実だった
「大家さんは、これまで一人で色んなものを背負って頑張って来たんです。だから、これからは大家さんが一人の女の子としての幸せを見つける番なんじゃないでしょうか」
「っ」
ゆっくりと立ち上がり、自分の目を見つめて言う皆人の言葉に、美哉は思わず息を呑む
その言葉は、かつての自分に健人が言ってくれた言葉に酷似していた
墓の前という場所もあるのかもしれないが、自身の葦牙たる青年の言葉に心動かされた美哉には、皆人の姿に健人が重なって見えていた
「でも、私には……」
皆人がいう〝女の子としての幸せ〟は、美哉にとって健人そのものだった
それを失ってしまった今、美哉にはそれが何なのか、どこにあるのか分からなくなってしまっていた
「俺がいます」
「!」
その時、力強く告げられた皆人の声に、美哉は目を瞠る
声を張り上げたわけでもなく、ただいつもと同じように話しかけられただけだというのに、皆人のその声は不思議の美哉の心に響いていた
「もちろん、俺だけじゃなくて、結ちゃんやみんなも」
目を丸くする美哉に心から訴えかける皆人は、葦牙として、一人の男として気持ちを伝える
「大家さんが、今でも健人さんの事を愛していることは俺にも分かります。それを忘れるなんて、しなくていいんですよ
頼りないかもしれないけど、俺が力になりますから」
まっすぐに目を向ける皆人の言葉に、美哉は無言で聞き入る
皆人の言葉と声は自分の心へと向けられており、その気持ちを波立たせる。美哉の中にある女の弱さが、それでも忘れられない女の強い想いが心の波に掻き混ぜられて、思考を乱す
「――……私は、今でも健人さんを愛しています」
「それでいいんです。俺は、健人さんを愛するあなたをそのまま愛します」
この世にいないと分かっている失った最愛の人。それでも気丈に自分を保ち、一人崇天を支えてきた美哉は、その役目を終えた今、健人の面影だけを胸に生きていた
そんな美哉の想いを否定することなくまっすぐに受け止め、皆人はその為人を表すかのような穏やかな笑みを浮かべてみせる
「佐橋さん……」
「俺は、旦那さんに代わりたいわけじゃありません。でも、きっと旦那さんが望んでいるのは大家さんが笑顔でいてくれることだと思うから、俺は俺にできることをしたいんです!」
皆人の言葉に、美哉は遠い日の健人の姿と言葉を思い返す
セキレイ唯一の成体であった美哉を調整した健人は、皆人の言葉通りのことを望んでいた
美哉という一人の女の子としての幸せを。そしてそれは、今まで健人と同じところにあった。だが、全てが終わり、全てが新しく始まった今、その幸せを過去に置いたままにしておくべきなのか、美哉の心に迷いが生じる
(健人さん、私いいんでしょうか? あなたのことを過去にして、新しく別の誰かと前へ進んでも……)
皆人の言う通り、自分が愛した浅間健人という男性は、きっとそれを望んでくれるだろう――心の中にいる健人んい問いかけるようにしながら、美哉は二人の男の間で揺れる
「佐橋さん。あなたの気持ちはとても嬉しいです。……きっと私は、健人さんへの想いだけで生きていくこともできます。それでもあなたの手を取りたいと思う私がいるのも真実です」
この世界で一番愛していた――否、愛している人と自分の契約者となった心優しい葦牙の青年。どこか似たところがあり、決して同じではない二人の男性の間で美哉の女心は迷う
「――ただ、今あなたの気持ちに答えることは、あなたの優しさに甘えることではないのかと、健人さんのいない寂しさを埋めるための独りよがりな甘えではないでしょうか?」
「それは違います」
迷いを含んだ美哉の言葉を迷うことなく否定した皆人は、笑みを浮かべて言う
「だって俺は健人さんじゃありませんから」
「!」
改めて言い切ったその言葉に、美哉は小さく目を瞠って、自分の葦牙となった青年を見る
そこにいる夫とは似ても似つかない青年は、美哉をまっすぐに見つめると、苦笑したような笑みを浮かべて話を続ける
「俺じゃあ、健人さんの代わりになりません。だから俺は、大好きな旦那さんを失った心の痛みを抱えて生きていく大家さんが、それでも幸せになってもらうためのきっかけみたいなものです
でもそれは、俺があなたの葦牙だからじゃありません。俺が俺だからです」
「――!」
セキレイの葦牙としてではなく、一人の人間、一人の男として自分を必要としているという皆人の言葉――告白に、美哉は小さく息を呑む
この瞬間、美哉はその言葉を意味を理解する自分の心が乙女のように高鳴るのを感じ、そしてそれが自分の気持ちなのだと気づいていた
「改めて言います。初めて見た時から、ずっとあなたに憧れていました――俺と一緒に生きてくれませんか?」
「とても素敵な言葉ですが……佐橋さん」
「は、はい」
想いを込めた言葉をできる限り誠実に伝えた皆人は、しばしの沈黙を置いて返された美哉の言葉に、思わず声を上ずらせる
美哉の顔に浮かんでいるのは、普段と同じ笑顔。しかし、その笑顔と声は底冷えするような冷たさをはらみ、背後には般若の幻影がみえるようだった
「佐橋さんは、もう皆さんと関係を持っていますよね?」
「そ、それは……」
確信をついた美哉の指摘に、皆人は冷や汗を流しながら視線を彷徨わせる
皆人はすでに結、月海、松、風花、焔と関係を持っている。さすがに草野とはそういう関係に至っていないが、バレていないと思っていたことを美哉に知られていた事実に動揺を隠せない
何しろ出雲荘は「不純異性交遊禁止」と美哉によって定められている。それを破っていたことを知られた皆人の心中は混乱の極みにあった
そんな良くも悪くも正直な皆人の反応を見て小さくため息をついた美哉は、微笑を浮かべると静かな声で言葉を紡ぐ
「一つ、条件があります」
「は、はい」
その声に跳ねるような反応を示し、背筋を伸ばした皆人に向けて美哉は口を開く
「これから私のことは名前で呼んでください」
慈しむような眼差しと共に向けられた優しい声に目を丸くした皆人は、長い髪を風に揺らす美哉の姿を見て、その思いに答える
「美哉さん」
「はい――皆人さん」
互いの想いを伝え合い、各々の想いを受け止めることを決めた皆人と美哉は、ゆっくりと歩み寄ると、抱擁を交わす
美哉の背に手を回し、優しく抱擁を交わした皆人はその温もりを確かめながら、鼻腔をくすぐる甘い香りを堪能する
「…………」
そのまま息がかかるほどの距離で互いを見つめ合った皆人と美哉は、どちらからともなく顔を近づけていき、そっと唇を重ねる
触れ合う唇の感覚が美哉の心を解きほぐし、自然と脱力する身体が皆人に自身の全てを委ねるようにしなだれかかっていく
そんな美哉の身体を受け止める皆人も、唇を通して心が触れ合うような感覚に、感動を覚えていた
「……皆人さん」
「美哉さん」
セキレイにとって口づけはかけがえのないもの。羽化のための鍵であり、祝詞を発動する力の源――正確には粘膜接触なのだが、多くの場合で用いられる
だが、今美哉と皆人が交わしているのは、葦牙とセキレイとしてではなく、一人の男と女、
重ねていた唇を離し、熱を帯びた視線で見つめ合う皆人と美哉は、互いへの愛心に胸を高鳴らせていた
「美哉さん。俺、必ず美哉さんを幸せにします。だから――いい、ですか?」
その白魚のような細い指を持つ手を握りしめ、皆人は抑えきれない自分の想いのままに美哉を求める
皆人の男の手で力強くも優しく包まれた手から温もりと共に心が伝わってくると、美哉はその想いに答えるように白い指をそっと絡める
「信じています、皆人さん。私の心と身体の全てを皆さんに捧げます」
頬を赤らめ、恥らいに目を伏せながらも自分の想いに答えてくれた美哉の言葉に、皆人はこみ上げる愛おしさを抑えきれずにその身体を優しくも力強く抱きしめた
◇◇◇
美哉と手を繋いで帰った出雲荘には、誰もいなかった
「静かですね」
「ええ。普段のにぎやかさが嘘のよう」
美哉と想いを通じ合わせた後、まるで機を見計らっていたかのように松からの着信があり、「全員で一泊旅行に出かける」と言づけられた
もちろんそれが結達が気を使ってくれたということであることを皆人も美哉も正しく理解している
そもそも出かけた美哉を心配して皆人が出かけたことに結達が気付かないはずもない
「こうなることが分かっていたのかな?」と照れながら言う皆人に、美哉は「いつかこういう日が来ることが分かっていたんですよ」と答えた
皆人が言ったように、同じセキレイとなった今、結達は美哉のことを祝福し、歓迎してくれている
皆が皆人の事を好きになったように、いつか美哉も皆人の事を好きになる――好きにしてくれると信じていたのだ
「でも、ここでよかったんですか?」
「はい。ここがよかったんです……私の始まりの場所、帰るべき家ですから――だから、ここで私はあなたのものになりたいと思ったんです」
指を絡めるようにして手を繋ぎ、皆人に身体を委ねるようにしながら美哉は言う
これから結ばれるにあたり、ホテルなどを使うという選択肢もあったのだが、美哉はこの場所――出雲荘で皆人と愛し合うことを望んだ
それは、ここが美哉がずっと守り続けてきた思い出の場所であり、健人への想いに満ちた場所だから。ここで皆人と結ばれることで、天国にいる健人に、自分はもう大丈夫だと、皆人と二人、そして結達皆と共に生きていけると伝えたかった
「美哉さん」
健気なその言葉と、普段は穏やかな微笑を浮かべている美哉がみせた恥じらいの表情に、皆人は自分を抑えきれずにその身体を抱きしめる
告白の時に告げたように、皆人は初対面の時から美哉に憧れていた。穏やかで笑顔の似合う物静かな大人の女性――怒らせるとてつもなく怖いが、家庭的で慎ましやかな男の理想の一つが具現化したような人
包容力を持つ母性にも似た美哉の雰囲気は、母や妹、皆人の周りにいた女性達にないものであり、無意識に惹かれていた
そんな女性が今、自分のものになってくれようとしている。――その想いと現実が、皆人の理性の箍を外していた
「ぁ……っ、皆人さん、待ってください。まずは身体を清めないと……」
「すみません美哉さん。俺、もう我慢できません」
腕の中に抱きしめた美哉が顔を赤らめながら、恥じらいの声を上げるが、もはや皆人は自分を抑えることができないほどに昂っていた
もし、美哉が本当に拒絶していたなら、極度のヘタレである皆人はその手を止めただろう
だが、皆人の腕の中に抱きしめられた美哉の抵抗は形ばかりでその身体には全く力が入っていない、それは、皆人を受け入れることを許し、求めているからだ
「あっ、皆人さん……待っ」
まぐわいの場で男が女性をリードする時、女性が恥じらいから発する建前の「いや」と本当の「嫌」を見極めた上で、時に強引に押し切らなければならない時がある
愛する男に求められ、それに従うことを女性は本能的に悦びとして受け取る。本当にいい男なら、優しく女性を労わり、時に強く導かねばならないとセキレイ達に教わった皆人は、美哉の反応が本当に嫌がっているものではないと見てとって、少しだけ強引に攻めていく
「本当に汚いですから……ぁ」
「そんなことありません。美哉さんは綺麗です。その証拠にほら――すごくいい香りがします」
汗のにおいなどが気になるのであろう美哉の申し訳程度の抵抗にも動じず、皆人はその長い髪に隠された首元に顔を埋めて匂いを嗅いでみせる
発情してしっとりと汗ばんできた美哉の身体からは、女性特有の甘い香りが漂っている。美哉が恥じらうそれらは男の欲望を昂らせるものでしかない
「や……っ、そんな……」
首元に顔を埋めた皆人の言葉に恥じらい、首筋にあたる息遣いに柔肌を刺激されるくすぐったさを覚える美哉は、軽く身を悶えさせる
「本当ですよ」
美哉の身体から立ち昇る甘い香りを堪能しながら、皆人は癖のない髪を梳くように優しく撫でて女体に安らぎと昂りを与える
女性の身体は心の開き方と、事前にどれだけ高めておくかで感度も反応も変わる。それをここ最近のセキレイ達との経験で知り、教えられた皆人は美哉にも同じように優しい愛撫と焦らす責めを施していく
「いいですか? 美哉さん」
しばらくその髪を撫で、優しく抱きしめた皆人は、頃合いを見計らって低い声で訊ねる
「皆人さん……」
愛する女を求める男の声で皆人に呼びかけられた美哉は、そのまっすぐな熱意と愛情の込められた視線にしばらく視線を彷徨わせると、観念して目を閉じる
ここまで皆人に求められて、拒絶する理由は美哉にはない。むしろ本心では、こうなることを望んでさえいた美哉の身体から力が抜けたのを確認して、皆人は自分に捧げるように向けられた唇に自分のそれを重ねる
「ん、ぁ……あ、んむ、んう、ぅ……」
触れ合うような口づけで互いの想いを確かめ合い、そのまま焦らすように刺激していくと、美哉の唇が緩んでくる
すかさず舌を滑り込ませると、それに応えるようにおずおずと差し出された舌が皆人の舌と絡み合い、唾液を交換する
(皆人さんのキス、凄く気持ちが安らぎます……撫でて下さっている手もとても優しくて、私とてもいやらしく反応させられてしまっている……皆人さんに、私のはしたない姿を見られてしまう)
そしてそれは皆人の狙い通りに美哉を反応させ、感じて乱れてしまうのは恥ずかしいのに、自分を乱れさせて欲しい、そんな自分見てほしいという矛盾した気持ちをもたらしていた
「美哉さん……んっ、ちゅっ、ん」
「ぁ、み、皆人さん、ん、んぅ……」
甘く感じられる美哉の唾液を味わい、そのまま口腔内を舌で丹念に愛撫する皆人に応じ、美哉も濃厚な口づけで答える
人妻ということもあり、ある程度小慣れた舌遣いで応じる美哉は、くぐもった艶やかな吐息を零し、皆人を受け入れることで皆人を求めていた
(なんて、いやらしい音……胸が切なくなって)
舌と舌が絡み合い、唾液が掻き混ぜられることで奏でられる淫靡な水音が脳裏に響くと、美哉の心身を髄から蕩けさせていく
自分が奏でる淫らな音が自分自身に共鳴し、淫らにされてしまうような感覚が生じ、美哉の心と身体を一層愛欲に溺れさせていく
「んっ、ふ……ぅん……っ」
濃密な口づけを交わしながら、その華奢な身体を抱きしめる手で背中をくすぐるように刺激すると、美哉の身体が敏感な反応を示して小刻みに震える
人妻で未亡人、さらには美哉の着ている和装が、どこか巫女のような印象を受けるものであることも手伝ってか、触れ難いものに触れて穢しているような背徳感にも似た感覚が皆人の獣欲を一層昂らせていた
この美しい女性が自分のものになろうしている――なってくれようとしているという事実が皆人の思考を沸騰させ、雄としての本能を燃え上がらせる
「ぁ……」
どれほどの時間かは分からないが、重ねていた唇を離すと皆人と美哉の口を唾液が糸のように結び、すぐに千切れて消える
「横になりましょうか」
「…………」
見つめ合いながら、皆人に囁きかけられた美哉は、恥らいながら無言で小さく、しかしはっきりと頷いて応じる
恥じらいを忘れない乙女のような初々しいその反応が愛おしくてたまらず、皆人は美哉の華奢な身体をゆっくりと畳の上に横たえる
「皆人、さん」
癖のない長い髪が広がり、白い着物と薄紫の袴を纏った美哉は、その美貌をほんのりと上気させて、愛情と欲情に潤んだ瞳を皆人に向ける
皆人の背には抱きしめるように美哉の細腕が回され、一時も離れるのを惜しんでいるかのようなその些細な所作が二人の愛情と欲情を高めていく
「大丈夫。今は俺に全部任せてください」
「皆人さん……んっ」
低い声で優しく囁くように言った皆人は、美哉と唇を重ねると、その身体に優しく覆いかぶさる
唇と舌を重ね合う深い口づけを交わす美哉は、心を掻き混ぜられるようなその感覚に甘い吐息を零しながら、されるがままに身を委ねて組み敷かれた身体をもどかしげに揺らす
「ん……っ、ぁ……」
一通り口腔内を堪能した皆人は、腰を揺らしてしなやかな身体をねじるように悶える美哉の頬に口づけを落とし、首筋をなぞるように舌を這わせていく
結達と身体を重ねて身に着けた経験と技術を総動員して、皆人は美哉が気持ちよくなってくれるようにその身体を愛し、心を解していく
「美哉さん、綺麗だ」
憧れの女性と身体を重ねている夢のような現実に興奮する皆人は、ほんのり甘くすら感じられる美哉に夢中になる
首筋や耳をを舌と口で責めると、それに応えるように熱を帯びた官能的な吐息が零れる。悩ましげな表情を浮かべる美貌、しっとり汗ばんできた肌、吐息のような甘い声――それらが全て皆人の欲情を昂らせ、愛おしさへと変わっていく
「もっと感じてほしい」、「もっと気持ちよくなってほしい」という気持ちが高まり、そして皆人の手は女の象徴でもある大きな果実へと伸びていく
「あんっ」
皆人の手で着物越しに乳房を掴まれた美哉は、先程までとは違う強い快楽に甘い喘ぎ声を上げて身を震わせる
「美哉さん。俺、もう我慢できません」
身体を起こした皆人が薄紫色の袴の帯に手をかけるのを潤んだ瞳で見る美哉は、慈しむように微笑んでそれを受け入れる
その微笑を受けた皆人は、美哉の身体を包む着物の帯にそっと手をかけ、ゆっくりとその結び目を解いていった――