梨子は善子に告白とともに、ある抱えている問題を打ち明けられるのだが・・・。
いつも読まれている方はありがとうございます。
うみみです。
今回もよしりこを投稿させて頂きます。
少し冷たい風が吹き始めた内浦。
今年の春にここに引っ越してきた私、桜内梨子は同じスクールアイドルの仲間で、1つ年下の後輩のよっちゃんこと、津島善子ちゃんに放課後の屋上に呼び出されていた。
ま、まさかこ、ここここ告白?
確かによっちゃんは私によく懐いてくれてるし、お互いにあだ名で呼びあってて。女子校だからそういうのもあるのかも・・・。って!ダメダメ!何変なこと考えているの!そもそもこんな地味でおっちょこちょいな私を好きになることなんてないし!きっと、何か悩みがあって、その相談だよ!
屋上に向かうまでに邪な思考がグルグル回る。
あっという間に屋上に着いてしまった。
1度深呼吸をし、屋上のドアノブに触れた瞬間、私は気づいてしまった。
告白を期待したって言うことは・・・。
私、よっちゃんのこと・・・。
かぁっ、と顔が熱くなるのが自分でも分かる。
ど、どどどどどうしよう!!このドアノブが回せなくなっちゃった!
「何してるの?」
ドアノブに触れたまま固まっていると後ろから声がした。
「うひゃあ!?」
「わっ、リリー?どうしたのよ?」
「よ、よっちゃん!?」
声の主は呼び出した本人のよっちゃん。
綺麗で整った顔をしかめ、私の顔をのぞき込む。
「リリー?顔赤いわよ。熱でもあるんじゃないの?」
よっちゃんは私の前髪をかきあげ、おでこに手を当てる。
「ひゃあ!!??」
突然触られ、またしても悲鳴を上げてしまった。
「ちょっ、リリー!大丈夫なの?変よ?」
よっちゃんに心配されてしまった。
「だ、大丈夫!それより、話があるんだよね?」
「まぁ、そうね。屋上に出ましょう」
よっちゃんの言う通りに屋上に出る。
やっぱり屋上は風通しがよく、肌寒い。
「あのね、リリー。話なんだけど」
「う、うん」
よっちゃんは私を真正面から見つめる。
「私、リリーのこと、ううん。梨子さんが好きです。綺麗で優しくて。気づけば好きになってた。私と付き合ってください!」
ペコッ、と頭を下げるよっちゃん。
嘘・・・。本当に告白された・・・。
どうしたら・・・。
どう返事をしようと慌てているとよっちゃんは顔を上げる。
「・・・ごめんなさい。やっぱり気持ち悪いよね・・・」
よっちゃんは悲しげな顔をしている。
違う。私はよっちゃんにこんな顔をさせたい訳じゃないのに。
「違うよ、よっちゃん。私も嬉しいの。私もよっちゃんが好き。大好きです」
「え・・・?嘘?」
「嘘じゃないよ」
私はそっと、よっちゃんを抱きしめる。
抱きしめた体は私よりも小さくて華奢で。
壊れてしまいそうだけど、力強くてしっかりしてる。
そして、何より。
「温かい・・・」
抱きしめたよっちゃんは温かくて、ほっ、とする。
「ええ。こうやってリリーを感じてるととても温かい」
そう言うとよっちゃんも私の腰に手を回して抱きしめ返す。
「・・・梨子」
「よっちゃん?」
呼び方が変わった?なんて思った瞬間、私はよっちゃんに壁に押し付けられる。
「え?え?よっちゃん?」
よっちゃんはドン、と私の顔の横に手をつく。
こ、これが壁ドン!
実際にやられるとこんなにも近いんだ・・・。
それだけではなく、よっちゃんは私の顎にそっ、と手を添え、少し持ち上げる。
か、壁クイ!?
夢にまで見た壁クイをよっちゃんが!?私に!?
私の顔はきっと真っ赤で瞳も潤んでいるに違いない。
よっちゃんは誘うような妖艶な笑みを浮かべ、ボソリ、と呟く。
「ヨハネの罪の口付けで堕天してみない?」
「・・・は、はい・・・」
よっちゃんの赤い瞳を見ているだけで飲み込まれそうだ。
もはや、私に拒否するという選択肢はなかった。
「いい子ね、リトルデーモン」
そして、よっちゃんの唇が私の唇に重なる。
「・・・ん・・・」
何これ?こんなの知らない・・・。
体験したことのない感覚に体が跳ねる。
「・・・ンン!?よっ、よっ・・・ひゃ・・・!?〜〜〜!?」
薄く開いた私の口の隙間を狙って、よっちゃんの舌が入ってきた。
いきなりのことで驚いた私は逃げようとするが、よっちゃんは私の顔を抑え、逃がそうとしない。
お互いの舌が絡み合い、水滴音が聞こえる。
や、やだ。凄い・・・。頭の中が白く・・・。
やがて、唇が離れる。
私とよっちゃんの離れた唇にはお互いの唾液が混ざり、糸になって繋がっている。
「・・・ふぁっ・・・」
その感覚に耐えれなくなった私は腰を抜かし、その場に座り込む。
意識も少し朦朧としている。
よっちゃんは相変わらずの笑みで口についた涎を舌で舐めとる。
・・・なんだろう、いつものよっちゃんと雰囲気が・・・。
私はそこで眠ってしまった。
「なんて・・・して・・・!・・・・・・・・・勝手に・・・・・・!」
まだハッキリとしない意識の中、よっちゃんが何かを叫んでいる。
「・・・よっ・・・ちゃん・・・?」
名前を呼ぶと、彼女はしゃがんで、横たわっている私の顔を覗き込んだ。
「リリー!?大丈夫?」
「・・・うん」
「ごめんなさい、私が・・・」
「いいんだよ・・・。その、き、気持ち・・・よかったから・・・」
「そ、そう・・・」
よっちゃんは顔を赤くして顔を背けた。
きっと私の顔も赤くなってるんだろう。
「えっと・・・、それより立てる?」
今の私の状態を見かねたよっちゃんは心配しながら尋ねる。
体に力を入れて起き上がろうとするが、上手く体に力が入らない。
「ごめんね・・・。上手く力が入らないみたい・・・」
「そうなのね。私に捕まって」
よっちゃんは私の手を取ると同時に、肩を回し、私を座らせた。
「ありがとう、よっちゃん」
「いいのよ。私のせいだし。・・・・・・」
「よっちゃん?」
「いいえ。なんでもないわ」
何か小さな声でボソリ、と呟いたよっちゃん。
どうかしたのだろうか?
「リリー」
「何?」
「変な感じだけど、これからよろしくお願いします」
照れながら呟くよっちゃん。
「よっちゃん・・・!」
そんなよっちゃんが堪らなく可愛く、愛しくて、まだだるい体を無理矢理動かし、彼女に勢いよく抱きつく。
「リリー!?いきなり何するのよ!」
「だってよっちゃんが可愛いんだもん!」
「はぁ!?だからっていきなり過ぎるわよ!」
知らないー、とよっちゃんの胸に顔を埋める。
「ちょっと・・・。もう、手のかかる先輩ね」
「えへへ。ごめんね?」
「ううん。いいわよ」
その後、私は幸せな気持ちで一杯で、家に帰るまでずっとよっちゃんの手を握っていた。
自分でも気づかないくらい私はよっちゃんに夢中だったみたいだ。
それから2ヶ月ほど経ち、私とよっちゃんの関係はAqoursのみんなにバレ、冷やかされながらだけど、少しずつ進展しながら、幸せにお付き合いを続けていた。
そんなある日休日のこと、私は絶望的だと思っていた沼津の地で同人誌の即売会があることを知り、そのイベントに参加していた。
私はその日の戦利品をいっぱいに詰め込んだカバンを抱え、ご満悦。
すると、スマホがメールを受信する。
画面に表示された差出人は鞠莉さんだ。
スマホを操作し、本文を読む。
『明日学校で正式に言われるけど、ここ最近沼津市内で女性を狙った強姦事件が多発しているらしいの。みんな暗い道や人通りの少ない道は避けてね』
「え・・・。本当に?やだなぁ・・・」
辺りは既に暗くなり始めている。
今の今まで楽しかったのが一瞬で消えて、気持ちが落ち込む。
早く帰ろう、と思い、駅まで駆け足で進む。
すると、私はよっちゃんの後ろ姿を見つけた。
しかし、そのよっちゃんはいつもみたいにお団子ヘアーをしていない。
よっちゃんは平然と暗い道に入っていく。
まさか、鞠莉さんのメールを読んでいない?
不安に思った私はよっちゃんの後を追う。
「確か、この辺に・・・」
途中でよっちゃんの姿を見失い、付近を見回す。
「あ、居たっ」
間違いない。あれはよっちゃんだ。
見失わないように再び後を追いかける。
路地を進んでいくと変な声が聞こえる。
私は鞠莉さんのメールを思い出す。
やだ。嘘でしょ?
よっちゃんな訳ないよ・・・。
進むにつれ、声は大きくなる。
どう聞いても女性の喘ぐ声だ。
よっちゃんが襲われているイメージが強くなる。
「やだ・・・っ。やだよ・・・。よっちゃん!」
路地裏の行き止まりにつくと2人の女性が何かをしていた。
1人は知らない人。その人は服がはだけている。
もう1人はよっちゃんだ。
見間違えるはずがない。
そのよっちゃんが女性を押さえ込み、体中のあちこちにキスをしている。
「よっちゃん・・・?」
私は口元を抑え、震える声で名前を呼ぶ。
自然と涙が溢れ出してくる。
当たり前だ。自分の恋人が知らない人とこんなことをしているんだから。
よっちゃんは行為をやめ、ゆっくり振り返る。
女性はその場に倒れ込み、気を失ってしまった。
「あら?梨子。見ちゃったのね」
「酷い・・・。酷いよ、よっちゃん・・・」
「確かに酷いわよね、こんなの。でも、これはヨハネであって、善子じゃないわ」
「どういう、こと・・・?」
よっちゃんの言っている意味が分からない。
ヨハネであって善子じゃない?
どっちもよっちゃんでしょう?
「いけないリトルデーモンには忘れてもらわないとね」
ゆっくり歩み寄ってくるよっちゃん。
私は自然と後ずさる。
「やだ・・・。来ないで・・・」
「酷いわね。流石のヨハネでも傷ついちゃうわ。恋人じゃない、ヨハネたち」
「来ないで・・・。来ないで!」
私の叫びは全く届かず、よっちゃんは私の目の前まで来た。
よっちゃんの暖かい手が私の頬にそっ、と触れる。
「梨子、これは夢よ。忘れなさい」
「・・・え?」
目が合ったその瞬間、私は意識を失った。
「はっ・・・!」
気がつくと私は帰りのバスの車内にいた。
「あ、あれ?私いつの間にバスに?」
分からない。
私にはバスに乗った記憶が無い。
思い出そうとするが、思い出せる気配がない。
思い出せないということはそこまで重要なことは無かったのだろう、と無理矢理納得する。
バスのアナウンスは最寄りのバス停を告げていた。
「では、みなさん。本日の練習はここまで。体を冷やさないようにしっかり汗を拭いて、下校時刻までには帰るように」
放課後の練習が終わり、ダイヤさんが解散を告げた。
「クックックッ・・・。これで終わりなの?このヨハネには全く物足りないわね・・・」
黒いマントを羽織ったよっちゃんが倒れながら強がりをいう。
「せめて起き上がっていから言うべきずら」
そんなよっちゃんに花丸ちゃんがツッコミを入れる。
「じゃあ、善子は追加でもう3セット行ってみようか」
「ごめんなさい。許してください」
果南さんの言葉によっちゃんは深々と頭を下げた。
みんな思い思いに話しながら、屋上を後にする。
残ったのは私とよっちゃんだけだ。
「よっちゃん、帰ろ?」
寝ているよっちゃんを起こし、屋上を後にしようとすると、よっちゃんは私の腕を掴み、引き止める。
「どうしたの?」
「リリー、話があるの」
「話?」
いつになく、真剣な表情のよっちゃん。
「私と『ヨハネ』のことよ」
「ヨハネ?・・・ぅあ・・・っ・・・」
ヨハネという言葉で私は頭痛を感じた。
なんだろう、この痛み・・・。
「リリー?」
「う、うん。大丈夫だよ」
「そう。じゃあ、出てきて、ヨハネ」
そういうとよっちゃんは目を閉じた。
すると、よっちゃんの雰囲気が変わる。
目を開けると、よっちゃんはあの時のように、ここで初めてキスした時のような笑みを浮かべる。
「初めまして、かしら?リリー。いや、これは善子だけの呼び方だから、梨子でいいわね」
「あ、貴女は?」
「フフッ、私はヨハネ。正真正銘の堕天使よ」
少し前までの私ならいつものよっちゃんの癖だ、と納得していたと思う。
でも、今、目の前にいるヨハネと名乗るよっちゃんは本当に堕天使なんだろう。
雰囲気もだが、直感でよっちゃんじゃないと分かる。
「本当によっちゃん、ううん。善子ちゃんじゃないの?」
「まあ、信じられないわよね。それじゃあ、見せてあげるわ。ちょっと!やめなさいよ!そんなことやったら疲れるのは私なんだからね!善子は黙ってなさい」
な、何?言い争っているの?
本当によっちゃんの中には2つの人格が?
「邪魔が入ったわね。行くわよ」
そう言うとよっちゃん、いや、ヨハネちゃんは手を前に突き出し、掌を上に向ける。
その瞬間、ボン!と激しい音と共に、ヨハネちゃんの掌には黒い炎が荒々しく燃えだした。。
「え?えぇ!?手品?」
「手品なんかじゃないわよ」
ヨハネちゃんは手を閉じると一緒に炎も消える。
「梨子の反応も面白いから凄いの見せてあげる」
ヨハネちゃんは手を広げ、意識を集中させている。
すると、ヨハネちゃんを中心に風が集まり始めた。
「何が起きてるの・・・?」
「フフッ、行くわよ」
その瞬間、ヨハネちゃんの背中には3対6枚の黒い翼が現れた。
そして、その翼でゆっくりと浮き始めた。
「どう・・・なってるの・・・」
「言ったでしょう?私はヨハネ」
本当に堕天使っていたんだ・・・。
「夢、じゃないよね・・・」
「夢じゃないわ。じゃあ善子、説明よろしくね」
ヨハネちゃんはそう言うと、床に降りてくる。
足が床につくと翼は消えてしまった。
「あーもう!バカヨハネ!こっちはかなりしんどいのよ!」
あ、これはよっちゃんだ。
なんというか、感覚でよっちゃんだと確信する。
言っているとおり、キツいのだろう。肩で荒く息をしている。
「あの、よっちゃん?」
「リリー、ごめんね?いきなりこんなこと話して」
「ううん。教えてくれる?なんでこうなったのか」
よっちゃんは1度深呼吸をし、ゆっくり話し始めてくれた。
「まあ、そんな感じでヨハネは私の中に居座るようになったの」
「そう、なんだ・・・」
よっちゃんの話をまとめると、まず中学生の頃に儀式をしていたところ、成功したようで、その時に召喚してしまったのがヨハネちゃん。
その時のヨハネちゃんは天使に追われていて、ひどい怪我をしてたらしい。
よっちゃんはヨハネちゃんを助ける為に自分の体を貸してあげたという。
そもそも天使には肉体という概念がないらしいが、魂が宿るための肉体は必要のようだ。
それからよっちゃんの体にはよっちゃんとヨハネちゃんの2人が一緒に存在している。
「なんというか、よっちゃんは本当に善い子だね」
「善い子言わないで。私だって一応堕天使なのよ」
「そう、だね・・・」
私は少し複雑な気持ちになり、俯く。
「リリー?」
「なんだか、よっちゃんが遠いなって・・・」
「そんなことないわよ。この堕天使のせいで私がどれだけ苦労したことか」
よっちゃんはおどけながら言う。
「・・・ヨハネちゃんは今、何してるの?」
「アイツは今、疲れて寝てるわ。魔力の使いすぎなのよ」
よっちゃんは文句を言っている。
「ヨハネちゃんは私たちの会話が聞こえるんだよね?」
「そうね。私が知ってることはヨハネも知ってるわ」
「そっか・・・。2人だけの秘密ってできないね」
「リリー・・・」
自分でも意地悪なことを言っていると分かっている。
よっちゃんに寂しそうな顔なんかさせたくないのに。
「帰ろっか、よっちゃん」
私は立ち上がり、出来るだけ明るい声で言う。
「・・・そうね。帰りましょう」
2人で屋上に出て、部室へ。
部室には1枚のメモ書きと鍵が置いてあった。
私はそれを拾い上げ、読んでいく。
『待っててもなかなか戻ってきそうにないから、部室の鍵置いておくね!帰りにチカに返しに来てくれると嬉しいなぁ。善子ちゃんといちゃいちゃするのもいいけどたまにはチカにもかまってくれないと怒っちゃうからね!』
「もう、千歌ちゃんたら」
「千歌なの?」
よっちゃんは頭をひょこっ、と私の横から出して、メモを読んでいく。
「全く!余計なお世話よ!」
「まあまあ。怒らないで」
「リリーは私のなの!あとヨハネ!」
「そこ!?」
おしゃべりを程々に着替え始める私たち。
着替えながら私は今日、よっちゃんを独り占めしたいと考えていた。
終バスに2人で乗る。
車内には私たちしかいない。
「ねえ、よっちゃん」
「何?」
「今日、泊まっていかない?」
「え?」
私の突然の誘いでよっちゃんは戸惑っているようだ。
「いいの?」
「いいよ。今日家には誰もいないし。それに外も暗いから。最近物騒だし。ワガママだけど、いいかな?」
半分は私のワガママだが、最近が物騒なことには変わりない。
未だに強姦魔は捕まっていない。
よっちゃんは腕を組んで悩む。
自分のスマホを見て、何か操作をする。
「いいわよ」
「本当に?」
「ええ。ま・・・お母さんも今日は遅いって行ってたから」
「そうなんだ」
私は思わず口元が緩みそうになった。
私の最寄りのバス停で降り、千歌ちゃんの家である十千万に部室の鍵を返すため、寄っている。
「あ、梨子ちゃん!ちょっと待っててね」
自分の部屋から私に気づいたようで、窓から頭を出して手を振った後に、パタパタと玄関に走ってきてくれた。
途中千歌ちゃんのお姉さんの怒った声が聞こえたような気がする。
「おまたせー。あ、善子ちゃんもいたんだ!」
「ヨハネ!」
いつものやり取りを見て、私はクスクス笑う。
カバンから鍵を取り出し、千歌ちゃんに渡す。
「はい。ごめんね」
「大丈夫だよ。でも、善子ちゃんもう終バス終わっちゃったよ?」
千歌ちゃんは心配そうに言うが、よっちゃんはうちに泊まるから問題はない。
「ああ、大丈夫よ。リリーのうちに泊まるから」
「そうなんだ。仲良しさんだね」
「このヨハネのリトルデーモンが家に誰もいないから寂しい。と言うから仕方なくね」
「よっちゃん!そこまで言ってないよ!」
いつものように話に無駄に尾ひれを付けているよっちゃん。いつもの事だから仕方ないのだけど・・・。
「親がいない・・・。お泊まり・・・。2人っきり・・・」
千歌ちゃんは手を顎に当て、何か呟いている。
「はっ!?分かったよ、梨子ちゃん、善子ちゃん。今日チカは早く寝ます!窓もしっかり閉めて、カーテンもしておくから、チカのことは気にしないでね!」
「待って!何か勘違いしてない!?」
まずい。千歌ちゃんのいつもの暴走が始まったようだ。
「そうだよね〜。2人は恋人なんだから。うんうん、いい事だよ」
「お願い、千歌ちゃん。話を聞いて」
「ということで!お邪魔虫のチカはとっとと退散するのだ!寝坊しちゃダメだよ!」
「千歌ちゃん?千歌ちゃーん!?」
結局、私の言葉は聞いてもらえず、千歌ちゃんは部屋に帰っていった。
「?千歌は何を言ってるのかしら?」
「え?」
「だって、お泊まりするだけじゃない。早く寝る必要なんてないわよね?おしゃべりできなくなるし」
やだ。
このよっちゃん。
ピュアだ。
可愛い。
私はよっちゃんの頭を撫でる。
「な、何よ!いきなり!」
「よっちゃんはずっと、よっちゃんのままで居てね」
「どういう意味よー!」
頭を撫でなれながら、よっちゃんはムキーっ、と怒っていたが、可愛すぎてちっとも怖くない。
「とにかく!リリーの家に行きましょう」
「うん。そうだね」
正直な話、少しその気だったが、千歌ちゃんに言われてその気は全くなくなってしまった。
普通にお泊まりを楽しもう。
よっちゃんを家に招き、早速夕飯の準備から始める。
家には誰もいないが、食料はそれなりにあったため、買い出しの必要はなさそうだ。
簡単な食事を作り、出来上がるまでにお話をして、お風呂に入って。まるで家族みたいなことをしていた。
なんて思っていると、出来上がった夕飯を食べている最中によっちゃんが自分から「家族みたいね、私たち」と照れながら言うものだから、私は思わず、よっちゃんに抱きついたが、行儀が悪い!と怒られてしまった。
ごもっともです。
2人でドラマを見たり、雑談をしたり、そんな事をやっているとあっという間に就寝時間だ。
「よっちゃん、眠い?」
私の部屋のベッドに並んで腰掛けていると、よっちゃんはコクリコクリ、と船を漕いでいた。
「眠くない・・・」
よっちゃんは否定するが、全く説得力がない。
「口もあんまり回ってないよ。ベッド使っていいから」
「やだ・・・。リリーとおしゃべりする・・・」
もう!なんなのこの子!可愛すぎるでしょ!
そう、よっちゃんは眠くなると堕天使とかそういう厨二病みたいなことは全く言わなくなる。
むしろ素直で天使だ。
素直なよっちゃんとお話したい気持ちはあるが、眠そうにしているのをずっと起こしているのも悪い。
「ダメだよ。明日も学校なんだなら寝ないと」
「やだぁ・・・」
「わがまま言わないの」
むすーっ、とむくれるよっちゃん。
いちいち可愛いのがずるい。
「じゃあ、リリーと一緒に寝る・・・」
「え?」
「リリーと一緒に寝るのー・・・」
そういうとよっちゃんは私に覆いかぶさるように倒れてくる。
「ちょっ!よっちゃん!?」
私はよっちゃんの体重を支えきれず、一緒に倒れてしまう。
「えへへ・・・。リリーいい匂い・・・」
覆いかぶさったよっちゃんは私のお腹に顔を埋めている。
「よ、よっちゃん!?恥ずかしいよ!」
「すー・・・。すー・・・」
「よっちゃん?」
どうやら抱きついたまま眠ってしまったようだ。
「全く・・・」
基本的に自由で元気で、でも誰よりも優しい善い子。
そんな愛しい恋人の髪をそっ、と撫でる。
「・・・もう。イケないこと、しちゃうよ?」
すると、よっちゃんの腕が、私の腰を強く抱きしめた。
「えっ?」
今起きたことに頭が追いつかない。
よっちゃんは確かに眠った。
まさか?
「ヨハ・・・きゃっ!?」
よっちゃんの手が私の服の中に入ってくる。
その手はすぐに私の胸に伸びて、揉み始める。
「や、やめて!」
「なんだ。まだ起きていたのね」
「ヨハネちゃんなんだよね?」
「ええ、そうよ」
「なんでこんなこと、するの・・・?」
私が質問してもヨハネちゃんはその手を止めようとしない。
「どうしてこんなことをするか、ね。貴女も善子にしようとしたくせに。・・・まあ、それは置いておくわ。そうね・・・。強いて言うなら、生きるため、かしらね」
「い、生きる?」
話しながらもヨハネちゃんは私の体を触ることを止めない。
それに体に走る快楽のせいで思考がまとまらない。
「そうよ。ヨハネたち天使は魔力が生命力でもある。この下界は魔力の供給源がないの。そもそも空気中に魔力が漂っていない時点でもうしんどいのよ」
「こんなことする理由にはっ・・・。はぁん・・・♡ならな・・・いよ・・・。ぁ・・・♡」
息も途切れ途切れで言葉も上手く繋がらない。
「話は最後まで聞きなさい。下界で魔力を集める方法が食事、睡眠。その他にもあるんだけど、1番効率がいいのが・・・」
ヨハネちゃんは私の唇を奪う。
荒々しく、舌を入れ、私の口の中をかき混ぜる。
「性行為における粘膜の摂取。聞いたことない?有名な話なのよ。ヨハネもこれが1番楽しいから好きなのよ」
唇を離したヨハネちゃんは楽しそうに私の顔を見下ろしながら撫でる。
「フフッ。とろけた顔しちゃって、可愛い。そんなに良かった?」
「そんなこと、ない・・・」
私は睨みながら返事をすると、ヨハネちゃんはまた嬉しそうに笑う。
「威勢がいいのね。でも気持ちいいでしょ?ヨハネの術が効いてる証拠よ。こんなのはどう?」
ヨハネちゃんは私の目をじっ、と見つめた後に再びキスをする。
すると、私の頭の中にはある光景がフラッシュバックした。
狭い路地。
そこにはお団子を作っていないよっちゃんと知らない女の人。2人が混じりあっている。
2人の後ろに私がいた。
よっちゃんは私に気づくと同じように私を犯した。
「・・・!いや、なんなの?これ!?いやっ!!」
思い出してしまった。
あの日の出来事を。
あれは・・・。ヨハネちゃんだったんだ・・・。
「分かってるはずよ?あの日の事だもの。私がちょっと術をかけて記憶をしまってあげたの」
「・・・生きるためだからって・・・。知らない人をこんなに・・・」
「そう?ヨハネがそういうことしてきた子って、善子に惚れた子かファンの子よ。それにまんざらでも無さそうだったわよ、その子たち。顔はいいからね、善子は」
「よっちゃんを利用して・・・。貴女は・・・!」
「そう怒らないの。聞くけど梨子はなんで善子に惚れたの?」
いきなりの問いかけに驚く。
なんでそんなことを。
「決まってる・・・。よっちゃんの優しさに惹かれて」
「じゃあ、その優しさを知ったのはいつ?」
「そ、それは・・・」
答えが出てこない。
いつ?いつから?
考えても考えても私の答えが見つからない。
気づけばよっちゃんのことが好きになっていた。
「分からないわよね。それもそうよ。梨子には善子に魅了される術を使っていたもの」
「え?」
「善子は貴女に一目惚れしていてね。せっかく宿主がそんな気持ちを抱えてるんだから応援したくなるじゃない。それで善子には内緒で少しずつ術をかけていってたの。善子と話しているうちにヨハネも梨子のこと気に入っていったんだけどね」
「そんなこと・・・」
震える声で否定の言葉を紡ごうとする。
「あるのよ。そもそも貴女は同級生の千歌にお熱だったじゃない。それがいきなり善子に向くなんてことは有り得ない」
千歌、ちゃん?
そうだったけ?
そうだ・・・。私は千歌ちゃんが・・・。
私にたくさんの輝きと勇気をくれた千歌ちゃんが・・・。
「貴女の今の善子への愛は全て偽り。作られたもの」
そうかもしれない。けど、けど・・・!
違う!
「私は・・・。私はよっちゃんのことが好きなの!本当じゃないかもしれない。作りものかもしれない。でも、私は!今の私は!むぐっ・・・!?」
またキス。
このキスをされる度に私の頭は働かなくなり、支配されていっている感覚に落ちる。
「フフフッ。嬉しいこと言うじゃない。本当に術にかかってるようね。ま、この術を解くつもりはないわ。何よりヨハネがつまらないもの」
いつもより長いキスが終わり、私は目に涙を溜めて、荒く息をする。
「・・・も、もうやめ、て・・・。よっちゃんを返して・・・。よっちゃんから出ていってよ・・・」
私は泣きながらヨハネちゃんに懇願する。
「返してよ・・・。私は・・・。私はただ、よっちゃんと一緒に居たいだけなのに・・・。なんで・・・?なんでこんなことするの・・・?」
私のお願いは無駄だったようだ。
ヨハネちゃんは顔を紅潮させ、歓喜の顔になる。
「いい・・・。いいわよ、梨子。やっぱり貴女は最高よ・・・!」
ヨハネちゃんは私の服を無理矢理剥ぎ取る。
「やだっ!嫌だっ!よっちゃん・・・。よっちゃん!」
術にかけられているらしい私の体はまともな力が入らず、あっという間に裸にされてしまった。
「助けて・・・よっちゃん・・・。・・・よっちゃん・・・」
「残念だけど、善子は起きないわ。この体はヨハネのモノ。梨子の声も聞こえていないでしょうね」
「やだよ・・・。助けて・・・」
力のない声を上げながら、私は涙を流すことしかできない。
「本当に綺麗・・・。久しぶりに興奮してきたわ。・・・光栄に思いなさい、梨子。これからは貴女だけ、と約束するわ」
ヨハネちゃんも服を脱ぎ、私の体。胸。秘部と触れ、体を重ねる。
その度に私は快楽に襲われ、甘い声を上げる。
「あっ・・・、ぁあ・・・♡・・・んくっ・・・!あっ・・・♡」
「いい・・・!いいわよ、梨子!もっとヨハネにその声を聴かせて!」
気づけば私はこの堕天使を喜ばせるだけの人形になっていた。
私は堕ちていく。
深い深い闇に。
堕天使の誘惑に誘われ、光の見えない快楽の底へと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんね、よっちゃん・・・・・・・・・ごめんね・・・・・・・・・・・・・・・。
いかがでしたか?
少しファンタジーのような暗いお話でした。
作られた思いが本物になるのか。
善子はどうなるのか。
梨子の謝罪は何に対してなのか。
少し考えてもらえたら嬉しいです。
感想等お待ちしています。