ジャンヌ「とりあえず落としちまおう…そうすりゃ忘れるさ」
ぐだ「うぐぐ…('、3_ヽ)_スヤァ」
沖田さん「なんてこったい…」
「ん、あぁ…」
ふと、目を覚ます。頭の中に水でも入っているかのように思考が定まらない。
「おはようございます、立香くん!」
「ん、おはようジャンヌ……え?」
だからだろうか、同じベッドに入り横で嬉しそうに挨拶をするこの聖女様に何事もないかのように挨拶を返してしまったのは。
「はい!あなたのジャンヌです!」
「いや、なんでおんねん!!」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「…なるほど、俺の右腕の代わりね」
今、俺はジャンヌとテーブルを間に向かい合って話している。俺の右手はギプスでがっちり固定されており、自由に動かせない状況になっている。昨日の自分の行動を振り返るがギプスを付けた記憶はない俺が寝た後に付けてくれたのか。
「はい、私なりに考えた結果なのですが…気に入りませんでしたか?」
首を傾げ、少し不安げに聞いてくるジャンヌ。
「いや、全然?俺もジャンヌが朝から晩まで看病してくれるなら安心だし?でもなんで同じベッドで寝てんだ?」
「…逆に問いますが立香くんは右手を布団に入れずに寝るのですか?」
「え、いや…」
もしかするとこの聖女は天然なのかもしれない。長い間一緒にいたが新しく知った一面だ。
「…ジャンヌは恥ずかしくないのかなぁ…って、付き合ってもない男と同じベッドだよ?聖女的にどうなのそれ」
そう、俺とジャンヌは仲は良いが男女の関係にあるわけではない。いや、俺もこんなに可愛い子と付き合えたらとても幸せなんだろうなとは思うが、それとこれは別問題。付き合ってもいないのに共に寝るなど不健全も不健全、俺の童貞の部分が俺を許さないだろう。
「…あ…いえ…恥ずかしくないわけではないのですが立香くんのためですし…その、立香くんとなら、付き合っても全然…」
顔を真っ赤にしジャンヌは答える。最後の方は声が小さすぎて聞こえなかったがちゃんと恥じらいを持っているなら結構。
「じゃあ、朝ごはん作ろうか。とりあえず手伝ってくれ」
昨日は晩御飯を食べずに寝てしまったからかとてもお腹がすいている。
「え、待ってください立香くん!貴方が動いては私の意味がありません!料理は私にお任せ下さい!」
「…ん、あぁ、いやそういう訳にもいかないでしょ。部屋の主が動かない訳にもいかないし、右手だけで料理する人なんてそうそういないだろうしね」
俺は少し皮肉げに言う。ジャンヌはそれが先程の意趣返しと気付いたのかバツの悪そうな顔をし、俺をジト目で見ている。
「…はぁ、立香くんらしいですね。わかりました、では二人で作りましょうか!」
少しの間俺をジト目で睨み続けたジャンヌだったが、ふっ、と軽く笑うと明るい調子で話し始めた。なんだかお姉さんオーラ出してるけど俺の手折ったのお前だからな?
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「「いただきます」」
とくになにごともなく無事に料理を作り終えた俺とジャンヌは、二人仲良く席につき食事の挨拶をした。
「…すげぇ、もう匂いからして美味そう。ジャンヌ最初の頃と比べて料理上手になった?」
俺の目の前にあるポトフからは嗅ぐだけで食欲が刺激されるとてもいい匂いがする。
昔食べたジャンヌの手料理を思い出す。決して不味いという訳では無いが不味くも美味くもなくthe普通と言った味だったのを思い出す。今思えばあそこは嘘でも美味しいって言っておくべきな気がしなくもない。
「はい、食べてもらいたい人がいたので練習したんですよ」
ニコニコ、とジャンヌは嬉しそうな顔をして言う。
「…へ、へぇ…そんな奴が…へぇ、余程幸せな奴だね…?」
とても幸せそうに誰かの話をしているジャンヌを見ていると少しイライラする自分がいる。
「ふふ、立香くんのことですよ」
そんな俺の心中を見抜いてかジャンヌは優しい声で俺を見つめながら言う。
「…お、俺?」
「えぇ、昔食べてもらった時に美味しいって言ってもらえなかったので頑張って練習したんです。なので今度こそ美味しいって言ってもらおうと思って…」
「ジャンヌ…」
健気なジャンヌに思わず涙ぐんでしまう俺。ダメだ、最近涙腺が緩んで仕方がない。自由に動かせる左腕で涙を拭う。
「と、いうことで立香くん、あーん、してください」
「…ふぇ?」
「口を開けてください」
ジャンヌは俺の方へスプーンを向ける。この聖女は何がしたいのだろうか。
「…え?なに、俺に食えと?」
「えぇ、ほかに何があるんですか?私は今立香くんの右手です。右利きの立香くんは右手でスプーンを持つ、何かおかしいことあります?」
ジャンヌは澄ました顔で矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。あ、よく見たら耳赤い。ジャンヌもやはり恥ずかしいのだろうか?そうなると男の俺が逃げる訳にもいかない。
「そ、それもそうだね…あ、あーん」
顔が熱くなるのを感じるが我慢して口を開ける。口の中に控えめに入ってくるスプーン。その上にある具材を口に入れる。
「…お、美味しいですか?」
「あっっつ!!」
恐らく、美味しいのだろう。熱くてわからなかったけど。
「……」
「あの、ごめんなさい…」
「いや、別にジャンヌは悪くないんだよ…ただ俺って馬鹿なのかなって」
少し考えれば作りたてのポトフが熱くないわけがないのだがあの時の俺はそんなことを考える余裕はなかったのだ。許して欲しい。
「いえ、私が悪いんです…ちゃ、ちゃんと冷ましてからじゃないと熱いですもんね…」
ジャンヌはそういうと再びポトフをスプーンにとりフー、フーと冷まし始めた。
おい待て、俺はあれを食べるのか?童貞には壁が高すぎる。美女の息がかかった料理というのはそれだけで価値が上がるものだ。俺にはとても畏れ多い、ジャンヌを傷付けないよう上手く断ろう。
「ど、どうぞ、今回は丁度いい具合になっていると思います」
「あ、ありがとう…」
ダメだ、俺はどうやらジャンヌの上目遣いには勝てないらしい。口の中に広がるポトフの味に鼓を打ちながら俺の心のノートに新しく追記をする。
ジャンヌの上目遣いには勝てない、と。
「…美味しいですか?」
「すっっっっっっっっっげぇ美味しい!!本当に上手くなったねジャンヌ!俺なんかのために練習したんだもんな…ありがとう、本当に美味しいよ」
世辞抜きで本当に思ったことを言う。失礼かもしれないが最初の頃の料理とは月とスッポン程の差がある。この優しいけど強さも感じるこのポトフは正にジャンヌそのもの。言うなればポトフ界のジャンヌ・ダルクや!
「ふふふ、練習してよかったです!ではどんどん食べてください!あーん」
「…あ、あーん」
「うふふ、嬉しいです…もっと食べてください!はい、あーん」
嬉しそうな笑い声は俺がポトフを食べ終わるまでずっと続いた。
ーーーーーーー
「ごちそうさまでした」
「いえいえ、お粗末さまでした」
「さて、どうすっかね?」
朝にしては多い量を食べたこともあるからか若干の眠気を感じたがジャンヌがいる手前昼寝なんてをする気は無い。嬉しそうなジャンヌになにかすることがないか聞いてみる。
「そうですねぇ、体は動かせないでしょうから…じゃあ私が好きなお話でもしましょうか?」
「ジャンヌの好きなお話?…童話とかってこと?」
「ん〜…少し違いますけどそのようなものだと思ってもらって結構ですよ」
「面白そう、聞かせてくれ」
「はい、では始まり始まり〜」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ジャンヌが話してくれたのは1人の少年が世界を救うという話だった。人類最後の勇者である少年が仲間たちと手を取り合い、過去に渡り、未来を守る。そんなどこかで聞いたことのあるようなストーリー。そんな少年に恋をした少女の話。
「…寝てしまいましたか、ふふ、立香くん、この話はまだ続いているんですよ…その少年の名は藤丸立香、少女の名はジャンヌ・ダルクっていうんです。ハッピーエンドで終わるといいですね…さて、立香くんが寝てる間に掃除でもしちゃいますか!」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「さて、掃除も洗濯も終わったことですしとりあえず立香くんを起こしに行きましょう!」
私は幸せだ。
だって、大切な人の近くで生きていられる。偽りの生命だけど私は私として今、立香くんの近くで生きている。
こんなに幸せなことがあるだろうか。ただそばにいるだけ、それだけでこんなにも心が踊る。話しかけられるだけで心臓が高鳴る。目が合うだけで胸が痺れる。
恋は病気という言葉はかなり的を射ていると思う。
「〜♪︎」
前に立香くんが歌っていた曲のフレーズを口ずさみながら立香くんを起こしに向かう。
立香くんは、私が掃除をする前と全く同じ格好で寝ていた。面白い夢でも見ているのかその顔には軽い笑みが浮かんでいる。
「起こそうと思ったけど、今日くらいはいいですかね」
幸せそうな顔を見ては起こすに起こせない。私はエプロンを脱ぎ、鎧を外して布団の中に入り立香くんの隣に寝そべる。
「はぁ…幸せです、立香くん…愛してます」
立香くんの胸に手を添え、一人囁く。最近始めたという筋トレのせいか彼の胸板はちゃんと男の子のものだ。私はおそるおそるその胸に顔をくっつける。服越しとはいえ、彼の熱と鼓動を感じる。
「……ん、ジャンヌ…」
「ひぃっ!!!な、なな、ななんですか!?」
私も少し眠くなってきたその時、立香くんが私の名前を呼び、頭を抱き抱えてくる。思わず叫んでしまう。今までにない程心臓が早鐘を打っている、今にも爆発しそうだ。
「り、立香くん…離して…」
「…んぅ…」
「…立香くん?」
自分の頭の少し上にある立香くんの顔を見上げる。どうやら寝ているようだ、先程のは寝言だろうか。
安心すると同時に少し落ち込む。立香くんがそんな簡単にこんなことをしてくるとは思っていなかったがもしこの私を抱きしめる手が彼の意志で動いていたのならそれは…
「…はぁ、とりあえず起こさなければ」
思考をそこで止め、起き上がる。
「…ん?」
起き上がる途中に硬い何かが膝にあたった。ポケットになにか入れているのだろうか?右腕を固定している今寝返りを打ち、それが足に刺さるなんてことは無いだろうが念には念を。一応とっておこう。
「…たしかここらへんに…あれ?ありませんね…?ちょっと失礼します…あ…」
布団越しに触って確認してみたが、何も無い。とりあえず断りを入れて布団をまくる。
「…そ、そういえば男性は寝起きとか寝てる時にこうなるって聞いたことがあるような…」
布団をまくったその先には、ズボン越しにも分かるほど屹立した立香くんのモノがあった。思わず目を逸らす。
顔がとても熱い。私はなにをしているのだろうか、急いでまくっていた布団を立香くんに掛け戻す。
「……」
やはり…た、たまっていたのだろうか?最近のことを思い出す、いつも私や沖田さん、オルタやメイヴさんと遊んでいて彼一人の時間があまり無かった気がする。男性は一定の周期で解放しないとすごくたまるみたいな話をメイヴさんが語っていたのを思い出す。
「…わ、私のせいでもありますよね…あと、今の私は立香くんの右手の代わりですし…」
自分に言い聞かせるように言葉を出す。そうだ、今の私は立香くんの右手。これはエッチなことではない。
「…そうです。立香くんのために…」
私は、何度も自分に言い聞かせ、布団に潜った。
今日の朝に投稿したんですが実は昨日から一睡もしていません。そのせいか自分でもうわ、なんだこれ…レベルの酷いアレになっています…ごめんなさい…あとで修正入るかも