※この作品はR-18です。

Fate妄想集   作:メルヘンに気ままに

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お久しぶりでございます。あまりにも期間が空きましたがなにもサボっていたわけではありません。よろしくお願いします。


救国の聖女
嵐は突然に?


世の中で最も面倒なものを皆さんご存知だろうか。

 

「いや〜、分かるわ、マジ、本当それだよな」

 

「えぇ、全くもってその通りです」

 

ゴタゴタした政治関係?仕事終わりの洗濯?休日の布団干し?上司に対する気遣い?あぁ、それも間違いなく面倒であろう。いざ慣れてしまえばなんてことは無いというが、慣れるまでが面倒なのだ。結局の所面倒であることに変わりはない。

 

が、そうではない。世の中で最も面倒なもの、それは…

 

「本当、付き合ってるからってセッ……セック、スとかする必要ないよな!!」

 

「ぇ、えぇ!!えぇ!!っ、全くもってその通りです!!」

 

本当はしたいにも関わらず、変な意地を張ってしまい、未だに想い人と肉体を交わせていないこの2人の妙なプライドに違いあるまい。

 

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ぺらり、と図書館から借りてきた本のページを捲る。やたらとページの割合がピンク文字と肌色率が高いその本は、本来であるならば男性が読むことを想定して作られているである物なのだろう。

 

「…へぇ、男の人ってこういうのが良いんですね」

 

そういった経験はないが、女性の口の中に無理やり男性器を押し込み、苦しそうな表情をしているのが堪らない、のだとか…

 

「理解しかねます…幸い、立香くんはこう言ったことに興味が無さそうなのが助かりますね」

 

ふぅ、と頭に手を当てながら次のページへと目を進めていく。幸い、とは言ったものの、いつの間にやら私と立香くんの間に流れている交際関係=肉体関係に非ず。の式によって付き合い始めてから3ヶ月が経つのにも関わらず未だ純潔を保っている私の体。ここまで来ると少し強引なくらいが良いのだが…

 

「そんなことが言えたらどれほど良かったか…」

 

女である私の方からそのようなことを言うのは如何なものかと思うし、何より、彼にそのようなふしだらな女だと思われるのも嫌だ。が、しかし…いや、もうこの際だ。どうせ、心の中でくらいなら本音をぶちまけたって構わないだろう…

 

したい!!立香くんと、エッチしたい!!

 

そりゃそうだろう!!周りの反対を押し退けて、魔術的にも物理的にも理論上妨害不可能な2人きりの部屋まで作ったのだ。彼の希望で、日本の平凡的な1LDKなる間取りのアパート風にしてもらってまで作り上げたのにだ。家具もそれっぽいものを頼んで、この部屋にいる時は強制で実体化するような魔術までかけてもらって、もちろん1LDKだから寝る部屋も同じで、ベッドまでダブルベッドにしてもらって、枕までYES/NO枕にしてもらったのに!!

 

毎日YESにしててもなんも反応無し、彼の枕もYESであるのにも関わらず彼はその枕の存在理由すら知らないのか平然と寝てしまう。何度か寝ている彼の背中に偶然を装って下着も何も付けていない薄いパジャマ1枚越しに胸を当ててみたが、優しく手を握られるだけで、何もアクションを起こそうとしない…!

 

そこまでか!私の魅力はそんなにないのか!?

 

と思わず叫んでしまいたくなるような結果に終わり、結局今の互いに興味はないですよ〜って感じで落ち着いてしまっている。

 

そもそも、好きだから付き合っているのだ。オルレアンの特異点で出会ってから何度魅せられてきたと思っているのか…あの時とは違い、遥かに逞しくなった彼が魅力的じゃないわけが無いのだ。あの、お風呂上がりの上裸の彼なんてもう堪ったもんじゃない。濡鴉色のツヤツヤとした髪を濡らし、野生のチーターのように締まった肉体美を晒し、平然とリビング内を歩き回るのだ。その度脳内では『私がチーターなったろかい!!』とトンデモオルレアンジョークをかましているわけだが、もちろんそれを彼が知る由もなく、つい先日も例に漏れずそうだったのだが…

 

もう限界だ。

 

はぁ、と漏れるため息。向かう視線は、リビングの中央にあるテーブルの上にに巧妙に仕組んである1枚のDVDへと向かう。

 

そのパッケージには『ルーラーズ/エンドゲーム』と書かれており、彼が大好きな映画の最新作であるそれには、映画に出てくるキャラクター達が描かれている。

 

もちろん、中身はアダルトな…四十八手なるジャパニーズセックススペシャルムーブ(ゴリゴリの英語)を修めたものだ。

 

「…ふふ、流石の立香くんも2人きりの状態でこれを見たら私を襲いたくなってしまうでしょう。あ、テレビ寝室に持っていかなきゃ」

 

自然と溢れてくる悪どい笑みを必死に抑えながら、リビングにあるテレビをせっせと寝室に運んでいく。意外と慎重派だが基本チョロい彼のことだ。貴方が好きな映画だから私も好きになりたくて…とか言って、ゆっくり見たかったから…とでも言えば、喜んで寝室で見てくれるだろう。後は部屋を暗くして、ビデオが始まるなり止めようとする彼の手を止めて、そういう気分にさせてチェケラ…完璧だ。

 

「我ながら恐ろしい作戦です…が、それで良い、いや、それが良い!!」

 

ガシッとガッツポーズを決め、私は下準備を進めていくのであった。

 

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「で、立香。どうなんだよ。いい加減素直に教えてくれたっていいだろ?」

 

「この男はどうか知らんが少なくとも俺は立香の人生の先輩でもある。ある程度のことは教えられるかもしれないぞ」

 

「だからぁ…!本当にしてないんだって!!」

 

バシ!と少し強めに机を叩く。手に持っていた資料が少しクシャクシャになってしまうが、俺はそんなことを気にせず目前の2人を睨む。赤いアーチャー、エミヤと青いランサー、クーフーリン。ずっと前からカルデアを支えてくれた、それこそ…一応、俺の恋人であるジャンヌよりも前からいる古参の中の古参最古参の名高い2人の英霊に俺は啖呵を切る。

 

「そもそも2人のするアドバイスなんてたかがしれてるよ!!」

 

「…へぇ」

 

「ほぅ…」

 

スっと鋭くなるクーフーリンの目付きと、どこか面白そうに目を細めたエミヤに俺は発言してから思い出す。そういえば侮りは許さない的なこと言ってたかも。

 

「いいぜ、たかが知れてるってんなら言ってみな」

 

が、しかし、それも気の所為かにこやかに手を差し出し、俺へと発言権を譲るクーフーリンは楽しそうに笑う。やっべ…これ回答間違えたらどうなんだろ。と不安になるのもつかの間、普段から口癖のように言ってくるアドバイスを覚えていない俺ではない。

 

「どうせ、兄貴のことだから…無理やり押し倒しちゃえばいいみたいな話でしょ」

 

「ははは!なんだ!分かってんじゃねぇか!!確かにたかがしれてたな!」

 

いつも通りの豪快な笑いで俺の肩を叩く兄貴にやっとこ一安心。ジャンヌと付き合う前から男ならガツンとやってやろうぜ、と言っていた兄貴に俺はわざとらしくため息をつく。

 

「まぁ、実際それでも良さそう、というかそっちの方が良さそうって感じかね?なぁ、アーチャー」

 

「さてな、マスターはマスターの道を選ぶべきだ。私がとやかく言ってなんとかする話ではないだろう。が、経験則上言わせてもらうと、女性を待たせると怖いことになるぞ」

 

「ひゅ〜、経験者はやっぱり違うねぇ!」

 

「光の御子に言われるようでは私もよっぽどだったのかもしれないな」

 

俺を除いて勝手に盛り上がっている2人から逃げ出すように、部屋を出ていく。普段はめちゃくちゃ頼りになる2人だけどことジャンヌとの話になるとこうなってしまうのが難点というか…まぁ、1番厄介なのがいないだけ今日はマシなんだけど…

 

「待ってたぞ、立香」

 

「ぉわ…」

 

「なんだその態度は!!我の眼前だぞ?ほれ、喜べ雑種」

 

「AUOと会えるなんて嬉しー。じゃあ、僕、急いでいるので」

 

思っていた矢先に1番厄介なのが現れた。俺の逃走ルートを先んじて把握していましたとでも言わんばかりに俺の逃走通路上で待っていた英雄王に俺は挨拶もそこそこに切り上げようとぺこぺこ頭を下げながら英雄王の横をすり抜けようとする。

 

「おっと、待て!未だにあの堅苦しい女に手を焼いているお前に朗報だぞ」

 

「…あ、はい」

 

が、もちろん許されるはずもなく、ドン!という音と共に壁ドンをされ、朗報とやらを聞かされる羽目になってしまった。吐きたくなるため息を必死に押えながら、英雄王へと目を合わすと、その赤色の目をどこか愉しげに歪ませる。

 

「今日くらいは自分に素直になるといい…さすれば自然と悩みは解消されるだろうよ」

 

「あ、あれ?」

 

すっと、俺を解放すると俺から背を向けどこかへと歩いて行く英雄王。普段ならあと2時間はよく分からない話をされるのに…今日はやけにあっさりだ。

 

チラと時計を見るとまだ時刻は17時ジャスト。普段よりも2時間ほど早い…ならば、と俺は足を早め、つい最近できた俺の…否、俺たちの新居へと足を向ける。ジャンヌ、今日は何も無かったし、もしかしたら暇してたかも…早く会いたいな。

 

ウキウキと弾む足をそのままに俺は急ぎ足で部屋へと向かうのであった。

 

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「ただいま!」

 

突然響いたその声に、私は鍋の中身を確認する。まさか、もう帰ってくるなんて、まだ料理が終わっていない…とりあえずエプロンを外し、玄関まで迎えに行く。

 

「おかえりなさい!」

 

「うん、ただいま。今日は早く帰って来れたんだ」

 

「ごめんなさい…まだご飯作ってなくて…あ!お風呂入っててください!」

 

「いや、俺も手伝うよ。いつもジャンヌにやらせてばかりだから」

 

「お風呂に、入っててください」

 

「は、はい…」

 

手伝おうとしてくれるのは有難いが、今は拙い。脳裏に浮かぶのはキッチンの台所で締めているスッポンや牡蠣やらマカやらなんやら…精力を嫌という程付けてやろうと思い、用意し、現在進行形で調理中のそれらを見られると色々と勘違い…いや、勘違いではないのだが、彼に察されてしまうと、その、恥ずかしいし。

 

「あ、でも着替え」

 

「持ってきますから」

 

「いや、恥ずかし」

 

「今更何を言うかと思えば、普段から洗濯の時見てますから平気ですよ」

 

「…そ、そう?…じゃあ……あ」

 

「もう!なんですか!!まだお料理途中なんですから早くしてくださいよ!」

 

やたらと食下がる立香くんに少し声を大きくしてしまう。いかんいかん、私の中では最早ほぼ確定事項となっている立香くんとの睦事にどこかナーバスになっていたようだ。クールダウンよ、私。まずは料理を完成させて…

 

「一緒に入る?なんちゃ」

 

ズドンッ、と音が響く。

 

「……って…?」

 

気が付くと目の前に立香くんの顔があることに驚く。あ、あれ?私なにを…?ポカンとした表情でその場にへたり込む立香くんに、今になって私が立香くんを壁に追い込み、恫喝するかのように立香くんのすぐ隣の壁に手を叩きつけたということに気付く。

 

「……あ、あぁ!危なぁい!!こんな所に虫が!!っ、で!な、なんでしたっけ?」

 

「…あ、い、いえ……なんでも、ないです…じゃ、あの…お言葉に甘えてお風呂入ってきます」

 

「……あ、はい…行ってらっしゃい」

 

そそくさと私の足元から抜け出し、脱衣場のドアを開けて消えていく立香くんの後ろ姿を見送る。

 

何やってんだ私はァァァァァァァァァァァァァァァ!!!

 

思わずもう一度壁を叩きそうになるが、それをすんでの所で押さえ込み、頭を抱える。

 

一応付き合ってから3ヶ月は経つ…ハグも、キスもしてくれたのは立香くんからだったけど、今回のこれはあまりにも…その、レベルが違うだろう。2人でお風呂って…それ即ち裸で、2人で入るには狭すぎる浴槽内に入るということに他ならないのだから。

 

あまりのパニックに思わず壁ドンしてしまい、立香くんを怯えさせてしまった訳だが…

 

入りたかった!2人で!お風呂!!

 

なんか2人でお風呂って凄い恋人っぽい、そんな気がする。立香くんの背中とか流してみたかった。

 

あまりの悔しさに滲んできた涙。しかし悔やんでいたってどうしようもない、次だ、次。トボトボと台所までなんとか足を動かし、中断していた料理の再開だ。タイムリミットは立香くんがお風呂から出てくるまで、タタタタタと包丁をまな板の上で踊らせながら、私の脳内は次はどうやって立香くんとお風呂に入るかの議論をすすめていた。

 

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「…いただきます」

 

「どうぞ!」

 

今日はやたらとおかしい事が多い気がする。

 

エミヤとクーフーリンの2人は最近はあぁいうこと聞かなくなってきたのに今日は会って早々聞かれたし、英雄王だって普段ならあと2時間は話したのに今日はやけにあっさり終わったし…ジャンヌに至っては凄い威力の壁ドンしてくるし…そして極めつけは目の前の料理。

 

「な、なんか今日は豪勢だね」

 

「…どうぞ」

 

仮面のように貼り付けた穏やかな笑顔で、俺を見つめるジャンヌに苦笑いを浮かべ、とりあえず目前の揚げ物から手に取る。サク、と心地よい音と食感の後に口の中に広がるのは牡蠣のクリーミーな味わい。

 

「美味ぁい」

 

「うふふ、じゃあドンドン食べてください」

 

「なんで牡蠣とかスッポンとかやたらと精力付くものばっかなのぉ…?」

 

「…ドンドン食べてください」

 

「う〜ん…」

 

ジャンヌに言われるがまま、あれやこれに手を出している内に、気が付けば完食。ニコニコと変わらない笑顔を浮かべているジャンヌにごちそうさま、と声をかけるとお粗末さまでした、と嬉しそうな声で返ってくる。

 

「そういえばさ…テレビは?」

 

と、実は先程からずっと気になっていたことを質問すると、ビク、と肩を震わせるジャンヌに俺は今日だけで何度目か分からないクエスチョンマークを浮かべる。

 

「…あ、い、いや…その〜…立香くんの好きな映画あるでしょ?あの、えっと…ムーンキャンサーズでしたっけ?それの最新作を借りてきまして」

 

「ムーン…?あー!ルーラーズね!!マジか!エンドゲームまだ見てなかったんだよね!」

 

「え、えぇ、以前にそう言ってたのを聞いたので、私も見てみようかなと思って寝室にテレビを運んだのです」

 

「え?リビングで良くない?」

 

「ベッドで寛ぎながら見たいと思いまして」

 

「あぁ、なるほど。でもいきなりエンドゲームじゃ分からないと思うから1番最初の『鉄男』から」

 

「これから見ます」

 

「いや、それから見たんじゃあまり面白く」

 

「これから見ます」

 

「あ、あのね、これシリーズ作品だからいきなり見ても」

 

「これから見ます」

 

「…じゃあ…それで、いいや」

 

普段から頑固だが、普段以上に頑固なジャンヌにしぶしぶ頷く。marble作品好きな俺としては最初から見て欲しいものだが…まぁ、これで興味を持ってくれたらこれから全作品見てくれれば良いわけだし、それでよしとするか。

 

「えぇ、もう準備はしてありますから行きましょう」

 

「え!?もう!?まだ19時だよ?」

 

普段ならばようやく帰ってこれるくらいの時間、これからご飯を食べて、お風呂に入って、ジャンヌとまったり雑談に花を咲かせてから0時くらいにドギマギしながら寝るのがセオリーなのだが…今から映画を見てしまうと22時にはすることが無くなってしまう。たまには早く寝るのも良いかもしれないけど、エネルギーが有り余っている10代の俺としてはなんだか時間が勿体ないような気がしてしまうのだ。

 

「別に見てからナニをするか決めたらいいじゃないですか!」

 

「え〜…確かこれ3時間くらいあるから終わったら22時だよ?その時間から何かする気力出ると思う?いや、出ない」

 

俺の持つ国語スキルEXをフル稼働させ反語で締め括る。そう、何をするにも22時という時間は中途半端すぎるのだ。寝るには早いが、そこから何かをするにはもう遅い、かと言ってそのまま寝るには少し時間が勿体ない。まだ20時くらいなら何とか気力が出なくもないが、22時となるともう何もしたくなくなる。部屋でYouTube見るくらいしかやることが無くなるのだ。

 

「な、もう我慢出来ないんですよ!!早くシましょうって!!立香くんだって早く見たいんでしょ!?」

 

「いや…それほどじゃないけど。そもそもジャンヌはmarble見たことないんでしょ?我慢出来ないって何がだよ」

 

「……そ、それは…わ、私もここまで焦らされると気になってきちゃったから」

 

「焦らしてないんですけど…まぁ、いいや。ジャンヌがそこまで言うなら、見る?」

 

「っ!やった!」

 

モジモジと指を合わせているジャンヌに負け、重たい腰を持ち上げる。それを見てピョンと嬉しそうに小さく跳ねたジャンヌにふぅ、とまた小さくため息をつく。

 

さて、ここで一旦話はズレるが問題だ。

 

俺が普段ジャンヌと寝る時どんな思いで寝ているか皆さんは分かるだろうか。

 

無意識か寝相が悪いのか、俺の服1枚とジャンヌの服1枚越しに当たるジャンヌのジャンヌ連峰。ジャンヌと付き合ってからというもの一切解放することの出来ないでいる滾る情欲。それを抑え、普段からジャンヌと寝ている俺の気持ちが皆さんに分かるだろうか。

 

もう一度、チラリとジャンヌを見る。変わらず嬉しそうにウキウキとテーブルの上を綺麗にしているジャンヌ。わざとなのか、ブラジャーの存在を感じさせない揺れ方を見せるジャンヌの柔らかそうな双峰に無意識で目を奪われる。

 

「じゃあ!お片付け終わったら寝室に行きましょう!!……?立香くん?」

 

「あ、うん…ちょっと待って、もう少しお茶飲んでから手伝うから」

 

「ふふふ、楽しみですね」

 

「うん、そうだね」

 

本当に楽しみなのかニコニコと手際よく片付けをこなしていくジャンヌに俺は平坦な声音で返事をする。

 

グググ、と響いたのはなんの音か…強く強く握りしめた拳からはポタポタと血が垂れている。これほど固く握られた拳は俺の人生でもそうはないだろう。ただでさえ最近は色々とこらえていたから握力が爆増しているというのに。これでは明日には握力65キロくらいになってるかも…拳と同様固くなっている男の象徴をジャンヌに悟られぬように下らない思考で必死にクールダウンさせる。

 

さっきの料理、効いてるのかな。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

さて、時は少し飛んで今現在。

 

意気揚々とDVDプレイヤーにディスクを挿入…挿入…んんっ、挿入したジャンヌがボタンをポチポチ操作しているのをベッドで寝転びながら待機する。

 

それくらいやらせてくれと頼んだもののすごい形相で断られてしまった為、やる事がなくなってしまいおずおずとベッドに敗走してきたのだが、何故かテレビを点けずにDVDプレイヤーでポチポチ再生ボタンを押しているジャンヌに俺はなんとも言えない気持ちで掛け布団をお腹の辺りにセットする。

 

「…よし」

 

「え、なんで消した?」

 

それと同時にジャンヌもセットが終わったのか、小さく声を上げ部屋の電気を消す。

 

「映画なるものは電気を消して見ると聞きました。それに倣ったまでです」

 

「…まぁ、そうなのかな……?」

 

片手にリモコンを携え、ベッドに入ってくるジャンヌに首を傾げながらとりあえず肯定の意を示してお、くんくん…いい匂い。普段よりも身を寄せるジャンヌにドキマギしながらも必死に平静を装う。大丈夫、心拍数500くらいだからまだ平常運転だ。

 

「じゃあ……2人で最後まで見ましょうね」

 

「ジャンヌは多分分からないと思うけど…」

 

「そんなことありません…予習はしてきましたから」

 

「予習?」

 

どこか震える手でリモコンを掲げたジャンヌは、一瞬躊躇を見せ、次の瞬間電源ボタンを押した。

 

『初めてでも分かる!正義の性技!四十八手解説〜!』

 

変に明るい口調で始められたそれに俺は思わず硬直する。

 

『レッスン1!パートナーを知るには愛撫から!江戸時代から伝わる』

 

「ジャンヌ…」

 

『愛撫で愛しのパートナーもメロメロッ!』

 

「…ジャンヌ!!」

 

「っ、はい…」

 

ようやく状況に追いついた脳みそは咄嗟に愛しのパートナーの名を呼ぶ。暗闇の中、テレビの光が反射したジャンヌの顔はどこからどう見ても真っ赤になっており、その目はどこか涙ぐんでいるようにも見える。

 

『最初に紹介するのは«寄り添い»!四十八手はセックスの体位の種類だと思っている人がーーー』

 

「ディ、DVD間違えてるよ…」

 

「……」

 

一瞬俺へと視線をやったジャンヌはしかし、また潤んだ瞳をテレビに向ける。

 

『«寄り添い»はパートナーとの愛情を確かめる大切な行為!これをされるとされないのでは女の子の満足度は全く変わってくるよ!』

 

「っ、り、リモコン貸して…!」

 

「いやっ…!」

 

リモコンを無理やり取って再生を停止させようとするも、何を思ったのか俺からリモコンを遠ざけるように背中を向けたジャンヌの背後からリモコンに手を伸ばす。

 

「っあ…」

 

「…あ」

 

が、それもリモコンに手が届く前に止まる。

 

ジャンヌが小さく漏らした普段よりも少し高くて短い声。俺の手が触れたのは目指していたリモコンのような無機質で硬質なものではなく、1枚の布越しに感じたのは圧倒的な柔らかさと温もりだ。

 

『ーーー胸やお腹、頭を撫でたりするのも効果的かも!フェザータッチでパートナーとの愛情も深まるかも!?』

 

「っ、ご、ごめん!」

 

「…立香くん」

 

真っ赤な顔、震えた声で俺の名前を呼ぶジャンヌに一瞬心臓が硬直したかのような錯覚に陥る。少し遅れてようやく交錯したジャンヌとの視線に体の芯が震えた。

 

ゴソゴソとこちらに向き直ったジャンヌはそっと俺の胸の中心に手を当てる。

 

「…立香くんは、嫌…ですか?」

 

「な…にが…?」

 

唇を震わせたジャンヌはそっと俺の腕を取り、ジャンヌのその柔らかい双峰へと乗せる。

 

「…聴こえますか?私の鼓動、こんなにドキドキしてるんです。今日だけじゃありませんよ…?立香くんといるといつもこうです」

 

「……ぁ、う、うん…」

 

その柔らかさと状況についていけず、意図せずして口から漏れ出た返事。それを肯定と捉えたのか否か、俺の胸へと当てた手へと向けていた目を俺の目線と合わせる。

 

「立香くんも…ドキドキしてますね」

 

「…う、ん」

 

「…立香くんも、いつもドキドキしてましたよね。私と一緒に寝る時……分かりやすいんですよ?緊張すると喋り方が平坦になったり、手に力入れすぎて震えてたり…あ、血が出るまで握るのはダメですからね?シーツの血って落とすの大変なんですから」

 

「あ、はい…」

 

既に手遅れであることを隠しつつ、俺はジャンヌの潤んだ瞳から目を逸らす。ジャンヌがどういった意図でこの状況を作り出したのかは分からないが、ベッドで、恋仲の男女が互いの胸に手を当てて、熱い言葉を交わす後にやることなんて俺の頭ではアレしか考えられないのだ。

 

ふと頭に過ぎる行為を手を強く握りこみ、痛みで飛ばす。ごめんなジャンヌ。このシミは俺の生きた証だと思ってくれ。

 

「……我慢しなくていいんですよ」

 

「………へ?」

 

「…………きっと…きっと、ですよ…?私のドキドキも、貴方のドキドキも、同じなんです…私は、貴方が…立香くんが大好きで、私の全部をあげたくて…立香くんも…私が大好きで、きっと私の全部が欲しいんです…」

 

その発言とは裏腹にどこか確信めいた言い方をするジャンヌに俺は思わず逸らしていた目をジャンヌへと向ける。

 

「私の顔が、私の体が、私の心が…貴方は欲しいんです。それはもちろん私も…貴方にあげたいし……貴方の全てが欲しい」

 

色っぽい吐息と共にゆっくりと紡がれるその言葉。少ししてから放たれたその言葉を最後に俺の理性は意識を落とした。

 

ーーーだから、ください。貴方の初体験…私も、貴方に全部捧げます。

 

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ギシギシと響いたのはなんの音だろうか。それとは別のタンタンと響く高らかな音は己とぶつかり合うものから響いていた。

 

「…別れる、別れない、別れる、別れない、別れる、別れ…………ろぉぉぉぉ!!!!」

 

ギシギシと響く椅子は立ち上がる勢いで脆くも崩れ落ちる。ガシャンと倒れた椅子に舌打ちをしながら立て直し、再びその椅子へと着席する。タンタンと再びセッションを始めた己の靴と床は、いまや最高速で刻まれており、先程床に叩きつけた花は、その花弁を無様に散らせている。

 

「ふん!やっぱ花占いなんてアテにならないわ!明らかにおかしいまじないよ!所詮は愚鈍な神任せの馬鹿が考えた遊びだわ!そもそもマスターが私じゃなくてあんな馬鹿聖女選んだ時点で何かがおかしいのよ…!」

 

最高速だと思っていたそれが更に加速を見せる。もはやここまでのビートを刻むこれは貧乏ゆすりと言って良いのだろうか?ここまで来たらゴージャス貧乏ゆすりと言った方が良いのではないのだろうか。ゴージャスなのに貧乏とはどういう事なのだろうか。

 

「それをあの馬鹿ランサーと飯美味アーチャーと金ピカアーチャーが変に煽るからすっかりあの馬鹿姉……馬鹿聖女もその気になっちゃって…!!」

 

脳裏に浮かぶのは姉…じゃなくて姉を名乗る馬鹿聖女の姿。いかにもって感じの幸せ面でマスターの隣を歩く姿は見るだけで殺意が湧き上がるし、その隣で幸せそうに歩くマスターにも死ぬほど殺意が沸く。

 

が、まだだ。まだ逆転不可能な位置にいる訳では無い。先程までのイラつきが霧散し、口元が緩むのを堪えながら、今日(盗み)聞いた会話を思い出す。

 

『だからぁ!本当にしてないんだってば!!』

 

そういったのは他でもないマスター自身。嘘をついている様子もなかったし、これは間違いないだろう。

 

「…ふふ、付き合ってから3ヶ月も経つのにまだセ……んん、も済ませてないなんて。バカ姉もお子様ねぇ…私だったらすぐにでもあの女たらし縛り上げてでも骨抜きにするわ…ふふふ」

 

本当にバカ…そんなんだから。

 

「…私に盗られちゃうのよ」

 

ニヤリと極悪な、いかにも復讐者顔を見せた彼女、ジャンヌ・ダルクオルタ。そう、どれほど腑抜けても彼女は復讐者なのだーーー

 

 

 

 

 

 

後日、彼女がマスターを寝取りに行った際その現状を知り、嘆くのはそう遠くない未来だったのだが、それはまた別の話。

 

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信仰とは、一種の逃避である。

 

こう言うと一部の信仰者達は異を唱えるだろう。その発言は不敬である、と。主に対する侮蔑の言葉だ、と。

 

しかしこれは事実、逃避である。

 

私達人間は弱い。それは人間という種ができた時から変わらない事実であり、真理である。

 

だからこそ、私達人間は人間の力ではなく他のものに頼りここまでの進化を遂げたのだ。

 

それは、時に火であり、石器であった。人類はそれにより、私達よりも強大な生物に立ち向かってきたのだ。

 

そして、我々はその火や石器、自然のモノへと対する神格化を始めた。我々人間を繁栄へともたらしたそれらは我々人間に対する恵みである、と。

 

それらは全て我々人間の人智を超えた存在からの贈り物である、と。

 

やがて、人類が食物連鎖の外に出た頃、人間は愚かにも人間同士の争いを始めたのだ。傲慢にも、大いなる自然から与えられた贈物を我々人類が操っているものと勘違いして。

 

それでも、我々人類は信仰だけは忘れはしなかった。

 

自然に対する感謝はいずれ自然を、我々人間をも含む自然を超越した存在に向けられた。

 

人はそれを神と呼ぶ。

 

話を戻そう。信仰とは一種の逃避である。

 

自分の弱さを隠すための隠れ蓑であり、自分の失敗を許してもらえる免罪符であり、自分の正当化を図る言葉通り逃げ道でもある。

 

しかし、それも当然と言えば当然なのかもしれない。なぜなら昔から人類は何も変わっていないのだから。

 

人は、何かに頼らなければ弱いのだ。それは食物連鎖の外に立ち、生物の長を気取っている今も変わらず。

 

丸腰で熊に会えば殺されるし、海の中で鮫に会おうものなら死は免れない。厳密には人間は食物連鎖の頂点にいる訳では無い、その外へと出ただけなのだ。我々は変わらず弱いままなのだ。

 

故に、弱い我々は何かに頼る、何かに縋る、何かにしがみつく。

 

その先が火になり得るだろうか、石器になり得るだろうか…否、今やそれらはただの道具でしかない。しかし、人は覚えているのだ。完全にそれらを道具としてしか扱わなくなった今でも、古より伝わる遺伝子で刻んでいるのだ、それらに神が宿っていることを。

 

食物連鎖の頂点に立つような存在に立ち向かうには我々ではない超越的な存在が傍らにいなければならない。だからこそ、我ら弱き者には神が必要なのだ。

 

神秘が濃厚だった時代は己の力で全てを挫くことも可能であっただろう。だが、私達は違う。主も姿を隠してもう長い。神秘の薄れたこの時代に我々は最後の審判まで神を待つしかないのだ。

 

己の手が握る神を信じて。

 

だが、だからこそ誰が思おうか。

 

私が死して永い、それでも短い時を経てーーー

 

『レッスンワンーーー』

 

「…ぁ、う」

 

もはや何度目か分からない繰り返し再生された音声が響く。

 

だからこそ…誰が思うのだろうか。

 

「…ほら、ジャンヌ」

 

この、一定の逃避先を持たない…無宗教の国に生まれたこの少年が世界を救い、仮にも英霊として現界しているこの私を…先程の例にすると熊や鮫、食物連鎖の頂点に立っているモノに値するこの私を…

 

「…も……む、り…」

 

「まだ全然でしょ」

 

この男はどのような神をその身に宿し、ここまで蹂躙し尽くしているのだろうか。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

時は遡ること…どれほどだろうか。

 

私を覆うように押し倒した彼は、呼吸を荒らげ、少し強引に私の唇を奪った。何度かしたことのある触れるようなキスではなく、私の舌を持っていくかのような強引なキス。それだけで脳が痺れたような快感に包まれる。

 

「…ん…ぅ」

 

「…っ、はぁ…ジャンヌ…」

 

「…ぁう、りつ、か、く…んぅ」

 

1度離れた唇を今度は私から近付け、再び、一瞬にしては長いキスをする。

 

「…ん……ぁ、ん…」

 

口腔を経て体に響く水音はどこまでも私の心を熱くし、うっすらと開いた視線の先にいる彼への想いを偽りの心臓が破裂しそうになるほど高めていく。

 

「んぅ……っ、は…ぁ」

 

その一瞬にしては長いキスを経て、彼の瞳と視線を交じらせる。先程までのどこか迷いのあった光はすっかり消えており、今は私のことを獲物を前にした肉食獣のような目で見ている。

 

「…おっぱい、触っていい……?」

 

「…恥ずかしいから、聞かないでください……」

 

私のその発言をイエスと見たのか、その男性らしい少しゴツゴツした手で私の…今までは邪魔だとしか思わなかった胸に優しく触れる。

 

「っ…」

 

「……ぅわ」

 

直後、感じたことのない不思議な電流のようなものが脳を痺れさせる。服の上から軽く触れただけのそれは、今ではどこか遠慮がちに下から支えるかのように撫でられている。

 

「…〜、く、くすぐったい…です…」

 

「…ちょ、直接触って…いい?」

 

「っ、はぅ…き、聞かないで…!」

 

「…じゃあ」

 

先程までの遠慮がちな触り方とは一転して、いつの間に!?と思わず声に出してしまいそうになる程の速度で服の下へと潜り込んだ立香くんの手は、しかし、やはりというか、なんというか、慎重に、まるで壊れ物でも扱うかのように私の胸に触れた。

 

「っ、や…」

 

が、しかし、それ程のソフトタッチであるにも関わらず、服越しに触られた時よりも遥かに強い刺激に私は思わず小さく跳ねてしまう。

 

「ご、ごめん…痛かった?」

 

「い、いえ…」

 

不安げな表情でこちらを覗き込む立香くんになんと言って良いか分からず曖昧な返事をする。違う、痛い訳ではないのだ。ただ、味わったことの無い快感だったから体が驚いてしまっただけで。

 

「…その、気持ち良いですよ……?」

 

「っ、そ、そう…じゃあ、続けても大丈夫?」

 

「…だから、聞かないで、ひゃ、う…っ」

 

少しずつ強くなる彼の握力に身体の芯が熱を帯びていくのが分かる。普段のにこやかな彼とも、たまに見る平坦な彼とも、特異点の際に見せた必死な彼とも違う、肉食獣のようなギラついた表情を見せる彼。暗い部屋だからか尚更それが際立つ。

 

「…ジャンヌ……」

 

「は、はい…っ、う…ふぅ、ん…んん〜〜〜っ!」

 

私の名を呼び、先程よりも強引にキスをする立香くんに体が跳ねる。舌の裏側をなぞるように絡められた彼の舌に頭が真っ白になりそうな程の快感が脳を襲う。

 

「…っ、はぁ…っ、ジャンヌ、脱がすね」

 

「っ…はぁ…っ、はぁ…ま、って…」

 

その快感の余韻を味わう間もなく、先程までとは打って変わって強気な彼にあっという間にパジャマを剥ぎ取られる。パジャマ1枚とはいえ、外気に曝されると少し肌寒いと思ったが、そんな事はなく、そんなに高い温度に設定しているわけではない暖房が暑すぎるくらいだ。

 

「…ジャンヌ、綺麗だよ」

 

「っ、い、良いですから…そういうのは…」

 

にこ、と先程までの表情ではない普段の優しい笑顔を浮かべ、後頭部に手を回し撫でてくる彼に、脳みそが茹だるように沸騰する。少しずつ近付く彼の顔に目を閉じると優しく唇を奪われる。少ししてから離れた唇の感触に、薄く目を開くと愛おしげに私を見つめる彼の顔が見える。

 

「愛してる」

 

「…立香くん……私も、愛してます」

 

優しく頭から頬へ手を回され、撫でられる。ただそれだけの行為がとても気持ち良くて、思わず彼の背中に手を回してしまう。それに反応するかのように頬から首筋へと流れていく彼の手にピク、と身体が震える。

 

「……立香、くん…」

 

「…ん」

 

チュ、と小さくなったリップ音。首筋へと落とされたそれは全身の神経が研ぎ澄まされているのか、とてもセクシーに聞こえる。そのまま、ゆっくりと私の身体を這うように下へと向かう彼の手は優しく私の胸を撫でる。先程よりも優しいはずのそれは、先程以上に気持ち良く、ピリピリとした快感に気をやってしまいそうになる。

 

「はぅ、うぅ…」

 

「ジャンヌの声、可愛いよ」

 

「やぁ…!今、そんなことっ、言わないで、くださ、い…!」

 

邪魔でしか無かった私の胸を輪郭からそっと撫でる彼に、下腹部がキュンキュン疼く。誰の侵入も許したことのないそこは、立香くんのこと今か今かと待ちわびているようだ。

 

そのまま、徐々に胸の中心へと向かっていく彼の愛撫に高まる期待のような感情。今のままでも十分過ぎるほど気持ちいいのに、このまま先端に触れられたら私はどうなってしまうだろうか。ゾクゾクと背筋を這う快感に私は目を瞑る。

 

「……ジャンヌ、触っていい?」

 

少しして、ピタリと止められた彼の手に私はこくん、と小さく頷く。直後

 

「ーーーーー……あ」

 

味わったことのない快感に脳の奥から何かの堕ちた音が聞こえた。

 

■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

「……」

 

「…なんだ、狗。わざわざ我が来てやったのにその態度は?こんなしょぼくれたバーで我が呑んでやってるんだぞ。もっと喜べ」

 

「…いや、英雄王。残念ながら君は出禁だ。即刻立ち退き願おうか」

 

「ほぅ…中々面白い冗談だな贋作者。一応確認しておくがこの我にルールが通用するとは思っていまいな?我の機嫌が良くなければ貴様の首など疾うに飛んでいる、つまり貴様がここにいるのは我の気まぐれ、しょぼくれたバーの店主とはいえ感激して咽び泣くくらいはしたらどうだ?」

 

「随分と機嫌が良いみてぇだな。なんかあったのか?」

 

「…なに、雑種とはいえ気にかけてやってるのが″男″になったものでな。それを肴に下らん酒を呑んでやろうと思っただけのことよ」

 

「……立香が…?」

 

「おっと、ここから先は個人情報というやつだ。不味い酒も呑んでやったことだし我は帰る」

 

「ちょ!?おい、今の話詳しく!……行っちまった」

 

「なに、英雄王の戯言だろう。つい昨日の今日まで初心だったマスターがそう簡単にあの要塞に手を出すものか」

 

「……でもよ…」

 

「まぁ、それはそれとして…俺の作った酒が不味いなどという不躾な輩には説教が必要だな」

 

「へっ…だよな」

 

■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

俺は感動していた。

 

それこそ、某国民的アニメの映画大人帝国の逆襲を見た時の感動を超える…下手したら人理を救済した時以上の感動を俺は今感じている。

 

目下に映る愛しの彼女ジャンヌダルク。普段は凛としている彼女はいまや頬を染め、目は蕩け、口元を腕で覆いながらこちらを見つめている。

 

「…も……む、り…」

 

「まだ全然でしょ」

 

フニャフニャの声でそう言い、俺の手を振り払おうとするジャンヌ。だが、その力の籠っていない腕では俺の鉄の意志は揺らがない。俺の手の形に合わせむにゅむにゅと形を変えていく柔肉と俺の指先に挟んであるその先端の突起はどうしようもなく俺の幸福指数を高めてくれる。それでからか最早ずっと小さく痙攣を繰り返し、呼吸を荒らげているジャンヌはどうやら俺をまた1つ賢くしてくれたみたいだ。

 

巨乳が感度悪いのってあれ嘘だ。ジャンヌがこれだもん。

 

「っ、やぁ…も…ぅ、おっぱい、だ、めぇ…」

 

「…うわ…今のヤバい……」

 

「ぁ、っ!!っだ、だめ…ーー!!」

 

少しだけ強く左右の乳首をつまみ上げると顔を手で覆い、一際強い痙攣をするジャンヌに俺は満足げにジャンヌの柔肉を手放す。

 

改めて見ても素晴らしく美しいおっぱいだ。大きさと形の良さは以前から衣装越しに気づいてはいたが、乳輪のサイズから乳首の大きさ、色に至るまで全てにおいて理想通り。ジャンヌの浅く荒い呼吸に合わせ、上下する様子は最早扇情的という言葉を超越している。正に超越人力…

 

「…ん、ぅ…は、ぁ…はぁ、っ…はぁ…」

 

「…………」

 

なんて、どこかふざけたことを考えてないと俺は何をしてしまうのだろうか。先程から痛いほどに膨張し、ズボンを押し上げているバカ息子に脳内で説教をかましながらジャンヌを眺める。もうさっきからず〜っとジャンヌを無茶苦茶に犯しちゃうビジョンしか見えんのよ!!(某ツッコミ芸人風)

 

「…はぁ…、りつ、か…くん」

 

「なぁに?」

 

弱々しい動作でゆっくりと俺の左手を掴むジャンヌに俺は素数を数えながら返事をする。もちろん、下手なことをしないように右手はMAXで握りこんでいる。あぁ、シーツが血まみれに…

 

と、思ったのもつかの間、世界が180度大回転、血飛沫汚い一輪の花が咲く。いつの間にやらジャンヌが俺にマウントを取った状態に…

 

「……What's ?」

 

「っ、はぁ…はぁ…散々、好き勝手…やってくれましたね…?私、お姉、さん、なんです、から…ね…」

 

先程と変わらず息も絶え絶えといった様子で俺にまたがるジャンヌ。その疲れきった姿と違い、残念ながら俺の抵抗は全て力により抑圧されている。うーん、この脳筋聖女め!

 

「脳筋?」

 

「……いえ、そんなこと少しも考えてなんておりません」

 

「…まぁ、いいです…私ばっかり、責められ、たままなのも…どうかと思う、ので…少しは、立香くんにも……」

 

俺の名を呼んでからというもの黙りこくるジャンヌに俺は目を見開く。彼女の顔が今まで見たことがない表情だったからだ。

 

口を三日月のように開き、目を妖艶に細める。その顔はまるでとびっきりの仕返しがあるような…そんな表情。

 

「…どれ、散々1人遊びしてきた俺に勝てるかな」

 

「………私がいたのに」

 

「それはそれ、これはこれ」

 

先程までの表情を消し、拗ねたような顔を浮かべるジャンヌ。うーん、この違和感のない感じ…うん、この普段通りの雰囲気で俺の服剥ぐのね?普段通りの表情で俺の上衣を着々と脱がせていくジャンヌに突っ込む間もなく、あっちゅう間に上裸になる…あら、ちゃんと畳めて偉い。

 

「…ふぅ、やっと息も整ってきました」

 

「一連の流れで脱がせてくれましたね」

 

「勢いがないと恥ずかしくなっちゃいそうだったんで流れでやらせてもらいました……相変わらず良い体ですね」

 

「っ、そ、その触り方くすぐったいんだけど!」

 

そっと、首の辺りから腹筋の辺りまで撫でられ、変な声が出かける。危ない危ない…うひゃあ!とか言っちゃうところだった。

 

「っひゃあ…!」

 

「うふふ、可愛い声ですね」

 

言っちゃった。っひゃあって言っちゃった。でもズルいじゃん、脇腹はズルいじゃん、そりゃ声出るじゃん。ニヤニヤと意地の悪い笑顔で俺を見下ろすジャンヌに俺は抵抗の意も込めて睨む。

 

「…こ、の…!ここから一切の手加減はなしだぜッ!!ひょ…!」

 

「立香くん、肌すべすべですね。ふふふふ」

 

今度はひょ…とか言っちゃった。ゆっくりと撫でるように俺の上半身をまさぐるジャンヌは先程までと違い、どこか楽しそうな、恍惚とした表情を浮かべている。うっわ…エロい。

 

「……さて…次は」

 

しかし、それもその言葉により一旦停止。何かを思い出すように上を向くジャンヌは少ししてから何かを思い出せたのかパッとこちらに顔を向け、また意地の悪い笑顔を浮かべる。

 

「…っ、な、なにをするつもりかね!私は何をされても口は割らないぞ!!」

 

「…ふふふ、立香くん…知ってますか?」

 

「…?」

 

「乳首って…男性も弱い方がいるみたいですよ?」

 

とっておきの必殺技を繰り出すかのような悪どい笑みを浮かべるジャンヌ。

 

「…」

 

「……あまりの恐怖に黙ってしまいましたか」

 

やれやれ、といった様子で俺の無言に対して芝居がかった返事をしたジャンヌに俺は小さく震え始める。乳首責め……だと?

 

「…っ、ははははは!!そ、それ!BL同人の中での話な!?俺!男!!乳首責めなんか痛くも痒くもありませーん!!」

 

馬鹿にするようにジャンヌのことを指さしながら笑う。もう片方の手でジャンヌの晒されっぱなしの胸の先端に咲く突起を撫でる。それだけで「っ…」と身をよじらせたジャンヌに俺は余計笑みを深め、彼女と目を合わせる。

 

「…残念だったね……それ、俺には効かないよ?」

 

「…試してみますか?」

 

「出来るもんなら…や っ て み な!」

 

 




長くなりすぎたので後日後編でやらせていただきます。以下、私の独白になりますので読み飛ばしていただいて結構です。


あまりにも長くの間お待たせしてしまい大変申し訳ございませんでした。しかし、なにも私はサボっていた訳ではなく、アプリのメモに200を超えるタイトルを産んでは消し、試行錯誤しては消し、気に入ったネタや後で使おうと思ったネタを取りためること84。書いている途中に『これはどう落とせばいいんだ…?』『あ、こういうのはどうだ…』とひとつの作品を追い求めずに浮気しまくった結果こんなにも長くの期間を取ってしまいました。お気に入り登録をして頂いている方にはもちろん読んでいただいた方にも大変申し訳ない気持ちでいっぱいでございます。

これからも辞める予定はありませんのでどうかよろしくお願いいたします。

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