※この作品はR-18です。

Fate妄想集   作:メルヘンに気ままに

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遅くなりました。最後の方は結構駆け足になってしまいましたがなんとか終わらせる事が出来ました。この調子で未消化のやつも終わらせたいなぁ…(願望)


嵐は突然に!

「……」

 

カリカリカリ、部屋に響くその音に私は更に意識を研ぎ澄ませる。どれだけ練り上げた計画といっても現実ではそう上手くいくものでは無い。なんとなく固まりつつあった計画を更に練度の高いモノへとするため、私は更に深い思考の世界へと没頭していく。

 

「…ちっ、これじゃダメね……堕とすには弱すぎるわ」

 

途中まで書き進めていた紙をくしゃくしゃに丸め、ゴミ箱へとシュート。ポコン、と情けない音を立てて無事ゴミ箱へと落ちた紙を見届け、再び机に向き直り新たな紙にペンを走らせる。

 

何を考えたのか、共に地獄まで堕ちると誓った私ではなく、ただ付き合いの長いだけのバカ聖女を選んだバカマスターの目を醒させるための計画は今、早くもほぼ座礁しかけていた。あのバカ聖女ほどでは無いが、私だってそれなりにあの男との付き合いは長い。あの男がそれなりに一途で、それなりにあのバカ聖女を愛していて、それなりに頑固なのは知っている。だからこそ、計画は頓挫しているわけなのだが。

 

「まだチェリーボーイなんだし……やっぱ無理やり…?…いや、それはダメね。私の流儀に反するわ…」

 

カカカッと無事完走を終えたペンを置き、目の前の紙へと目をやる。いつぞやのサバフェスのおかげで随分と上達した作画能力を存分に駆使し書き上げた漫画には、マスターを押し倒し、快感とあのバカ聖女への背徳感で複雑な表情をしているマスターに無理やりことを迫る私の図がコマ分けされて描かれている……うん、ナシだ。これはナシ。決してマスターを悲しませたくないからなんていう甘ったるい考えではないけど、そういうのは私の流儀に反するから、えぇ、そもそも私から迫るなんておかしいのよ。本来なら私のことが大好きなはずのマスターちゃんから迫ってくるくらいじゃなきゃいけないわけだし?

 

再びペンを手に取り、理想の状態をパパッと描きあげる。どこか悔しげな表情で私を押し倒すマスター、私はいつも通りの最高にクールなニヒルスマイルを浮かべ、ここで一言。

 

「…一緒に堕ちましょう?…うーん、これじゃイマイチインパクトに欠けるわね。これじゃ売れないわ」

 

トントンと机を叩きながら頭を悩ますこと数分。何度かこのシチュエーションを思い浮かべるも状況に則した言葉が出てこない。

 

「……いっそセリフなしにしようかしら。そうね、擬音だけでいいでしょ」

 

パチン、と指を鳴らしその先を描きあげていく…マスターって意外と筋肉質なのよね〜、カリカリカリカリカリと紙に鉛筆を走らせる続け、こと数時間

 

「…っ!出来た!!」

 

まだネーム状態だがなんとなくの構想を書き込んだモノが出来た。はい、今回は今まで挑戦したことのない成人誌ということで様々な壁に当たりましたがなんとか脱稿できました。これも普段から応援してくださっている皆々様の声援のおかげで…

 

「って!違う!!何やってんの私ってば!!」

 

バシン!といつの間にやら出来上がっていた私とマスターの純愛本の原稿を机に叩きつけ、頭を振る。しまった、つい習性で創りたいものを創ってしまった。必要以上に早くなってしまった作業速度に内心驚きながら紙をめくっていく。

 

「……いや、でも私史上最高の出来ね、特にこのシーンなんて良いわ」

 

パラパラと雑にだが書き上げたページを読み進めていく。うん、やっぱりいい。この顎クイの所なんて実際されたら多分顔が爆発するくらいには良い。

 

「……ちょ、ちょっとだけ…もう少し、描いてみようかしら」

 

その後、8時間を掛けそれなりの形になった作品に私は満足し、睡眠を取るのであった。

 

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カリカリカリと部屋に響く音。かれこれ数分にわたるそれに俺は目を細め、天井を睨む。

 

「………ど、どうですか…?」

 

「普通に痛いですよジャンヌさん」

 

「……あれぇ…?」

 

雑誌に書いてあったのに…と呟くジャンヌに思うことがない訳では無いがそれはさておき、これ、普っ通に痛い。俺の腰の辺りに跨りまるで作業のように乳首を引っ掻き続けるジャンヌの努力には悪いが、これが気持ち良いってヤツがいるならそいつは被虐趣味のドエムに違いない。ジャンヌの爪が綺麗に整えられていることが不幸中の幸いだろうが、もし爪長い人にやられてたら今頃血塗れですよォ、クォレハ…まぁ、おかげさまで丁度ジャンヌが跨っている辺りにある僕の戦闘態勢入りかけだった愚息も大人しくなってくれた訳なんですけれども。

 

「…ジャンヌさん、言ったでしょ?」

 

「ん〜…触り方がダメなんですかね…」

 

あ、ダメだこりゃ。すっかり自分の世界に入りこんでしまったのか一旦手を止め何かを考えるジャンヌ。可愛いけど君のやっていることはただの暴力となんら変わりません。抵抗はやめて降伏しなさい。

 

もういいかな、俺のターンかな、と、そろそろおっぱい不足になりつつある俺の両手を解放しようかと手を伸ばそうとした瞬間、俺の両手は思いもしない感触で動きを止める。

 

「ん…ちゅ…」

 

「っ、ジャ、ジャンヌ!?」

 

何を思ったのか座る位置をずらしてまで俺の大して触っても面白くなさそうな乳首にキスをし始めたのだ。丁度俺の太ももの辺りに移動したジャンヌは、わざとなのか、天然なのかリップ音を立てながら行われるそれに先程まで無反応だった愚息に少しずつ血液が集まり始める。

 

「…あ」

 

「………」

 

たった一言声を発し、動きを止めるジャンヌ。どうやら俺の愚息の硬度が上昇していることに気が付いたのだろう。先程までの考え事をしていた顔が見るまに赤く染まり、それを隠すかのようにまた俺の胸へと顔を近づけていく。

 

「…ん」

 

「っ…」

 

再び感じた微かな快感に口を閉じる。危ね、変な声出るとこだった…俺の乳首を唇で啄むように何度か刺激を加えるジャンヌは、一旦それを止めると微かに口を開き…

 

「れぅ…」

 

「っ、ちょっ…!」

 

俺の乳首を口に含んだ。初めて味わう感覚、暖かくて柔らかい舌がゆっくりと乳首をなぞっていく。まずい、これ気持ち良いかも…!

 

「…ん…〜、んちゅ…」

 

俺の反応を見てか、少し激しさを増したジャンヌの口撃にどんどん硬度を上げていく愚息。さっきまでの大人しさはどこへやら、すっかり戦闘態勢である。

 

それをお腹の辺りで感じているのか、空いている手で恐る恐るといった様子で愚息の辺りを撫でられる。やだ…この娘本当に聖処女?自然と下ろされていくズボンのファスナー。完全に下ろされると中からはパンツを押し上げ、熱したボディを覚ますため外気を浴びん、と愚息が主張を始める。コラっ!はしたない真似はよしなさいって散々言い聞かせたでしょう!!

 

そちらに目をやったジャンヌは俺の乳首から口を離すと、1度俺の方へと目を向ける。潤んだ瞳に赤らんだ頬がとてつもなく扇情的だ。

 

「…はぁ…はぁ…」

 

特に激しい運動をした訳でもないのに荒い呼吸が部屋の中を満たす。これが俺のものなのか、それともジャンヌのものなのか、はたまた両者のものなのか。考えようにも上手く回らない思考のせいで一向に考えが纏まらない。

 

「…ズボン、脱がせますね」

 

どこか上ずった声音でそういうジャンヌに頷き、彼女の動きに合わせ腰を少し上げる。衣擦れが響き、俺のズボンが丁寧に畳まれ、シャツの上へと置かれた。股座の辺りに移動したジャンヌはおっかなびっくりといった様子で俺のラスト1枚となったパンツを押し上げる逸物に手を添える。

 

「…すごい……熱い、です」

 

熱の篭った息を吐き出すジャンヌはそのままゆっくりと手を上下に動かし始める。刺激としては弱いそれに、しかし俺は脳が蕩けそうなほどの快感を覚える。あのジャンヌが、こんなにエッチな顔で俺の股間をまさぐっているんだ。そりゃ興奮するに決まっている。

 

「ジャンヌ…もっとこっち来て」

 

「はい…」

 

手招くと股座の辺りから俺の肩あたりまで全身を俺に擦り付けるかのようにジャンヌが寄ってくる。顔は今まで見た事がないほどに赤く染まっており、俺と目が合うや否やそっと目を細められる。この可愛さたるや、なんと伝えれば良いのだろうか、ジャンヌの後頭部に手を回し、強めに抱きしめながらキスをする。一瞬肩をピクリと揺らしたジャンヌだったが直ぐに情熱的に舌を絡めてきた。向い合い、添い寝状態でするキスは先程までの覆いかぶさってするキスよりもなんだかイチャイチャ感が凄く、脳みそが沸騰してしまいそうだ。

 

「…、はぁ…ジャンヌ、パンツ脱がすね」

 

「…はぁ…は、ぁ…立香くんのも…」

 

そっと壊れ物を扱うようにジャンヌの腰に手を回し、ゆっくりとジャンヌの最後の砦である1枚の布を下ろしていく。それは俺も同じ状態で、ジャンヌによりゆっくりと下ろされていくトランクスは互いの手が交差されている状態からか中々に下ろしずらい。俺もジャンヌも緊張と興奮から手が震えてるせいってのもあるかもしれないけど…

 

しかし、それも終わりが見える。姿勢が姿勢故に完全に下ろしきることは出来ず、ジャンヌの太ももの辺りで止まったショーツは、なんというか…これからことに及ぶって感じがして半端じゃないほど興奮する。

 

「っ、〜っ!!ぐぬ、ぬぬ…!」

 

「ジャンヌ、痛い」

 

まぁ、かく言うジャンヌは俺のテントを張っている愚息のせいで上手く下ろせずにいるんですけども…まぁぐぬぬ、と聖女らしからぬ声を上げるジャンヌも可愛いのでもう少し眺めていようと思います。

 

「〜っ、ぐ、ぬぬ…っ、よし………ぁ…」

 

ようやくぐぬぬタイムを終え、愚息を解放したジャンヌは小さく声を漏らし、視線をその一点に留める。なんだろ…もしかして変なのだろうか?

 

「……ジャンヌ?」

 

「…こ、こんなに…大きいもの、なんですか…?」

 

どこか怯えたような目でこちらを見つめるジャンヌ。愚息のサイズを測ったことなんて今までないしなぁ…平均サイズはなんとなく知っていても自分のそれが平均を上回るかどうかなんて物は調べたことがなかった…多分平均より少し大きい位か?500ミリ缶より少し大きいくらいだし。

 

「いや、知らんけど」

 

「…これ………入る、のかな…?」

 

ボソッとそう呟くジャンヌに思わず吹き出しそうになる。こ、この娘なんつー事を…そういうのは男の心をくすぐるから止めろと今まで何回…も言ったことないですね。ジャンヌさんこういう話嫌がってましたもんね。

 

が、しかし…不安そうな彼女を優しくリードするのが彼氏の宿命というもの。確かどこかの文献で女性の膣はとてもデリケートな部位で、よくビデオ等で見る激しいプレイだと傷ついてしまうという。その際に痛みを軽減するのに大事なのは入念な愛撫、らしい。激しいプレイをするつもりはないけど、ビデオに出るような一流の女性たちですら痛いというものを聖処女のジャンヌにする訳にもいかない。ここは1つ、スマートな提案をしてジャンヌのハートをキャッチ、プリキュアするのだ。

 

「じゃあ…な、慣らしとく?」

 

ダメでした。ばっちり吃りました。

 

「……ぁ、う……ぅう……」

 

ピクンと小さく体を揺らすジャンヌはコクン、と首を小さく縦に振る。それに合わせピタと、ジャンヌの太ももに手を置く。うわ、本当全身触り心地良い…

 

ツー、とジャンヌの肌触りを堪能している俺をさておき、ジャンヌは俺のトランクスを太ももの辺りまで下げ、そっと、天を衝くバカ息子に手を添え、ゆっくりと掴む。それを合図に俺もジャンヌの誰も触れたことがないであろう所へ恐る恐る手を伸ばす。

 

触れた途端にクチュ、と小さく響いた水音にジャンヌは瞬く間にただでさえ赤かった顔を更に赤く染める。まず熱い…それに、その、濡れてて、なんかもうよく分からんけどエッチだ。初めて触れた女の子の1番大事なところにバクバクと悲鳴をあげる心臓。割れ目に指を添えただけなのに小さく身体を震わせるジャンヌに俺の脳は何度目か分からない停止を迎える。

 

「…ど、どうすれば良い……?」

 

「は、ぁう……聞か、ないでぇ…」

 

「そ、そう言われても……」

 

文献には俺が今しようとしている行為。俗に言う手マンもセックス同様激しいのはNGと書かれていた…けど、よく考えたらどこからが激しいのか分からないし、どうしたら気持ち良くしてあげられるのか分からない。中に指って入れていいのか!?この娘処女やぞ?指で処女膜って破れるの!?愚息の手柄にしてあげたいよそれは!?

 

「……わ、分かりませんよ…!自分でしたことなんて…ほとんどないんですから…」

 

「そんなん俺だって女の子とこんなことするの初めてだよ!!」

 

「ぅ、怒らないでくださいよ…」

 

思わず怒鳴り気味になってしまったことにジャンヌの表情を見てから気付く。らしくもないどこか怯えたような表情はこれからすることに緊張しているからだろうか。そりゃそうだ、ジャンヌだって初めてなんだもんな…緊張してるのは俺だけな訳じゃないんだ。

 

ジャンヌの顔を見つめる。ジャンヌとも短くない付き合いだ。俺がジャンヌの表情を見てなんとなく何を考えているのか分かるのと同じように、ジャンヌもきっと俺の顔を見ればなんとなく何を考えているのか分かるのだろう。先程の怯えたような表情ではなく、優しげな微笑みを浮かべ、そっと俺の頬に手を当て、ゆっくりと口を開く。

 

「……大丈夫ですよ…私も、分からないことばかりですけど、貴方となら」

 

「あの、チンコ触った手で触らないでくれるかな」

 

カチン、とジャンヌの表情がそのまま固まる。……いや、リツカズジャパニーズジョーク第三の形潔癖症ですよ。ジャンヌってば冗談通じないんだから、いやだな〜。俺の言葉に従ったからかゆっくりと頬から手を離され、一時停止、そのまま今度は勢いよく来た道を返ってくる。うん、いい音ッ!パチーン、と綺麗な音を立てながら頬に恐らく出来たであろうもみじマークに俺もニッコリである。

 

「貴方はこういう時にふざけなきゃいけない呪いにでも掛かっているんですか!?私結構思い切ったこと言おうとしてたんですけど!!」

 

「あー、ジャンヌさんマスターに手あげちゃったね?」

 

「だからなんだって言うんですか!!だったら貴方は私が真面目に…っ、きゃ」

 

先程までのいい話してそっからコトに洒落こみますオーラを出していたジャンヌはどこへやら、顔を怒りに染めたジャンヌのマウントを取り、上から押さえつける。愛を囁きあってうんぬんかんぬんってのも恋人らしくていかにもって感じだけど、だだでさえ童貞卒業で半端なく緊張してるのにそんなんやってたら心臓が保ちやしねぇ、俺の心臓が破裂、大敗北を喫してしまいますよ。なので半ば強引にそういうムードは無くさせてもらいました。これが俺流《大嘘憑き》。

 

『ーーーまた勝てなかった』

 

「な、にを、っ!」

 

まだ怒り足りないのか変わらぬ表情で怒鳴ろうとするジャンヌの唇を強引に奪う。最初は意固地にでも開こうとしなかった唇、さながら大手門と言ったところか、が、それも少しすれば、この通り。練習した結果さくらんぼのヘタを結べるようになった俺の舌技の前では簡単に陥落するってわけ。薄く目を開くと、怒りの表情を霧散させ、蕩けた表情を浮かべるジャンヌが見える。ふっ、大手門は開かぬ門だって?それを開けられるから男は皆狼なんですよ。

 

「……っ、さて、ジャンヌさん。よくよく考えたら童貞の私に前戯だなんだ難しいことは出来ないわけです。それに、十分濡れてるみたいだし」

 

「はぁ、はぁ…っ、ま、って…ちょっ、と……」

 

「ごめん、もう無理」

 

荒い息で俺を制そうとするジャンヌを無視し、ジャンヌの濡れた割れ目にバカ息子を這わせる。おぉ…なんかもう、感動とかその他諸々で挿入れてすらないのに射精そう。そのまま何度か入口で上下運動。嗚呼、是、本気気持良也〜。

 

「ひゃ、ま、待っーーー!」

 

可愛らしい声を上げるジャンヌをめちゃくちゃにしたい気持ちもあるが、ここはクールダウン。ようやっと見つけた挿入り口らしき場所に少しずつ先端を埋めていく。あっ、思ったよりキツい…ギュッと俺の肘あたりを掴むジャンヌに目を向けると結構苦しそうだ。

 

「……ーー、っは…っ!…り、立香、くん…」

 

やべ、ちょっと欲望のままにやり過ぎたかもしれない。と反省も込めてジャンヌの目を見つめると、ジャンヌはそっと目を細くした。

 

「……そ、の……キス、しながら…にしてください……変な声、上げちゃうかも、なんで……」

 

それを聞くと同時に俺はジャンヌの唇も奪い、腰を前へと進めた。

 

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「出来た〜♪︎」

 

思わず音符が出るようなウキウキ声になってしまうのを抑え、私は改めて目の前の紙の束に目をやる。色を塗ってはないものの、本気の画力を込めて書き上げた作品だ。私が育て上げた優秀なアシスタントがいないから前の夏コミのようには行かないけど…まぁ、私ははなから出来る英霊なわけだし、1人でもやろうと思えばやれる女なのだ。

 

「……しかし、タイトルはもう少し捻りが欲しかったわね」

 

我ながら達筆に書かれた『竜の魔女と救世主』というタイトル。表紙には私に似た女が、偶然ながらマスターに似てしまった男キャラに肩を抱かれ、顎クイされている図が描かれている。うん…あの鈍感バカマスターはこういうことしないのでこれは彼ではありません。彼に似た何かです。

 

まぁ、それは良しとして、内容である。タイトルよりも中身の方が大切なのだ。ペラペラとページを捲る。書きたいことを書いていったらそれこそとめどなくアイデアが溢れ出し、いらない所を削りに削ってなんとか158枚。わずか1日で成し遂げられたのはそれこそあの地獄の修行の日々があってからであり、あとシンプルに丁寧に書いたとはいえ、売れるようなレベルでは書いてないからである。

 

物語としてはシンプルで、どうしようもなくひねくれた小娘が、馬鹿で鈍感で間抜けで、それでいて暖かくて優しい男に絆されていく話を小娘視点で書いたものだ。これは決して私と彼をモチーフにしたわけではない。そもそも私ひねくれてないし。

 

序盤では、主人公であるひねくれ小娘が、距離を詰めてくるバカ男に散々な罵詈雑言を飛ばし、距離を置こうとする話。以前敵対していた時から感じていた1人の青年が背負うにはあまりにも重い使命を全うしようとするその心意気は愚かながらも素直に素晴らしいものだと思ってはいた。ただ、今まで多くのモノに裏切られたひねくれ者の小娘がこれ以上裏切られないように、心に傷を負わないようにと張った虚勢だ。それを見透かした上か、はたまた知らずの上か、ズカズカとパーソナルスペースに上がり込んでくる彼に、わた……ひねくれ者が困惑するそんなありがちな始まり。

 

中盤は、そんなバカに嫌気が差して渋々私が…じゃなくて、ひねくれ者がそのバカを許容し始めるところ。別に理由なんて大したものじゃない。ただ、視界にアイツが映るのが普通になって、アイツが鬱陶しく話しかけてくるのも普通になって、アイツの隣に並ぶのが普通になっただけのこと。アイツがいないと何故か不安になって、アイツが話しかけてこないと少し寂しくなって、アイツの隣に立つと自分が真っ当な存在になったような気がして…

 

そして、終盤は私のこの思いの名前に気付いて、その気持ちに応えてくれたアイツがこんなひねくれ者の私を愛してくれる……そんな話。

 

「…………ノリノリで書いたけど…」

 

気が付けば、ページも最後の方である。行為を終え、私の額にキスをした彼が最後に一言…未だに埋められていない何かを微笑みながら呟き、終わる。

 

私の好きな話は、書きたかった話は…こんなめんどくさい話では無かったはずだ。皆から愛される主人公が一昔前の少女漫画みたいにチヤホヤされるような…っていうと馬鹿みたいだけど…こんな、面倒臭い女が、馬鹿みたいに不器用なひねくれ者が、たどたどしい恋愛をするような物が書きたかったわけでは無かったはずだ。

 

「……ふん、深夜テンションって怖いわね」

 

パタ、と本を閉じ、ベッドへとダイブする。ギシギシと鈍いスプリングが響くとそれがさっき書いた本の内容を思い出させる。

 

そう、あれは私が書いた本…言っちゃえば妄想だ。自分にも素直になれない愛され要素のひとつも無いひねくれ女が、本来なら相手すらしてくれないような男に恋心を抱き、それが成就するっていう。ある意味テンプレな馬鹿話である。全然明るい話でもないし、胸踊る話でもない。書いといてなんだが、全然私好みではない。

 

だが、それでも……これが今まで書いた作品の中で1番ストンと胸に落ちたような気がした。

 

そうだ……私…

 

「……っ、ぅう…」

 

アイツのこと、好きで好きでしょうがなかったんだな。

 

きっと…私みたいなひねくれ者じゃ、彼には選ばれない。

 

あの馬鹿聖女みたいな素直さも慈愛も持ち合わせない。

 

あのケルトビッチみたいな強さも魅力も持ち合わせない。

 

あのお花畑セイバーみたいな誠実さも可愛らしさも持ち合わせない。

 

そう、これは、私の創作話。叶わない夢だからこそ書いた物。素直さも慈愛も強さも魅力も誠実さも可愛らしさも何も持ち合わせない私を彼が選んでくれるっていう夢のまた夢のようなお話。

 

…でも、あぁ……夢の中だけでも

 

「……マスター」

 

彼に愛されたかったな。

 

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それは、痛いというよりは苦しかった。

 

自分の体内に違うものが入っている違和感、無理やりお腹の辺りを押し上げられているような苦しみ、内部が裂けたような痛み…感じるものはいくつかあれど、総合して苦しい。

 

が、不思議なことに何故か脳がフワフワするような感覚があった。それが気持ち的な問題なのか、はたまた肉体的なモノなのか、それも分からず、ただ苦しみとそのフワフワを耐えるため彼の首に手を回し、目を強く瞑る。

 

最後の最後になって中々強引にここまで至った彼だが、予想外にも恐らく一番奥まで腰を押し出してから動く兆しは見られない。うっすらと目を開くと、彼と目が合う。

 

慣れるまでは、このままでいるよ。

 

と、優しく語りかけてくる彼の目に私は再びゆっくりと目を瞑る。強引にここまで押し切ったわりには分かっているじゃないか。もしここで激しく動かれていたら暫くはトラウマになっていたかもしれない。

 

「…やっぱ痛いもんなの?」

 

「えぇ…その、味わったことのない感じの……」

 

「そっか…どうしたらいい?」

 

ボソ、と小さく聞こえたその声に、瞬間私の脳に存在しない記憶が過ぎる。

 

 

 

『…どうですか?』

 

そこは、彼の祖国である日本ではごく一般的な住宅のリビングである。朝時だろうか、テーブルの向かいに座る彼の前に並べられるのは白米、味噌汁、焼き鮭というジャパニーズモーニングの王道だ。彼は焼き鮭を箸を器用に使い、1口サイズにすると米がよそられたお茶碗の上に一度バウンドさせてから口に含む、

 

『美味い!ジャンヌは料理も上手だし可愛いし、最高のお嫁さんだよ!』

 

『そ、そんなぁ〜。立香くんだってかっこいいし頼りがいのある最高の旦那様ですよ』

 

『コイツ〜』

 

歯の浮くような言葉に私も似たようなものを返し、互いに笑い合う。彼はそんな私の頭に手を伸ばし、少し乱暴に頭を撫でるのであった。

 

 

「どうやら、私達は夫婦のようですね……」

 

「え?」

 

その記憶に基づき、私は彼の手を取り、無理やり頭の上に乗せる。記憶の中(妄想)でみた彼は、優しげな表情で頭を撫でてくれた。今の状況でそういう記憶を見たということはきっとそこにヒントはある、という啓示(こと)に他なるまい。

 

「撫でてください」

 

「え?いや、まぁ…別にいいけど」

 

頭が追いついていないかのような表情を浮かべながら頭を撫でる立香くん。なるほど、子供の頃両親にやられた頃は鬱陶しく思いましたが、なるほどなるほど。こんなに良いものだったとは。先程まで感じた苦しみが和らぎ、フワフワとしたよく分からないモノが強くなった気がしなくはない。

 

「…んぅ…っ…り、立香くん…?」

 

と、思うのもつかの間、先程よりも強い圧迫感。例えるなら内臓を内側から持ち上げられるような、まぁ事実その通りなのだが…私の内側から内臓を圧迫する彼にむむむ、と抗議の意も込めて少し睨むが、当の立香くんの表情を見るとその感情も鈍ってしまう。

 

「はぁ…ごめん…ちょっと、耐えられないかも」

 

苦しげに表情を歪め、私を見下ろす彼はよく見ると震えている。その顔は女性用のエッチな同人誌に描かれている男性の切なそうな表情そのもので、彼のその顔に下腹部がキュンと疼くのを感じる。

 

「さ、っきから…その、ただでさえ、キツいのに…締めつけられるとヤバい…」

 

「ん、っ、わ、わざとじゃ、ひゃぅ…う、うぅ」

 

なんだコレは。苦しい、まだ痛いし苦しいのに、それとは違う胸の苦しみ、彼の一声一声が飲んだことは無いけど媚薬のように私の心と下腹部を熱くさせる。それに呼応するかのように彼のソレも熱を帯びているかのように私の体内で脈動する。

 

「…はぁ、はぁ…ジャンヌ」

 

切なそうな表情、それとは相対的にギラついた猛獣のような目の奥の輝き。私の奥に少しだけ生まれる彼にメチャクチャにされたいという欲望と、痛みを忌避する本能のせいで思考が上手く纏まらない。

 

「ま、っ、て…ん、っ…〜〜〜ふっ、んぅ」

 

先程ようやく取り戻せた普段通りの空気は一瞬、互いにまともに会話もままならないような今の空気。心の中のどこか臆病な自分が逃げ出そうとするのを必死に抑え、彼の首に回していた腕を外し、私の顔の隣に置かれている腕と律儀にも頭を撫で続けてくれている彼の腕の下に自身の腕を通し、彼の脇の下からそっと彼の背に手を回し、抱き寄せた。必然的に近くなった距離、私の奥の大事な所に先程よりも重い鈍痛と圧迫感が押し寄せる。

 

だが、何故だろうか、さっきよりもずっと痛いはずなのに、心が満たされるような、そんな心地良さが胸をうつ。

 

「っ、だ、大丈夫?」

 

彼も快感からか更に表情を切なげなものにしながら、そっと私の頭を撫でていた腕を後頭部に回し抱き寄せた。耳元で聞く彼の吐息は普段のものよりも遥かに荒く、それでいてとてもセクシーに聞こえる。

 

「ん、ふぅ…ふぅ……ぁ、立香くん……」

 

「なに?」

 

必死に荒い息をなんとかしようと深い息を繰り返し吐きながら、どこかぶっきらぼうにそう言う立香くんのすぐ近くにある首元に、唇を当て、少し強く吸う。ちゅぅ、と響くリップ音に少ししてから唇を離すと、彼の首元には蚊に刺されたような痕が残る。

 

その痛みからか後のことを考えてか若干顔を歪めた彼の耳元でなんとか息を吸い、囁く。

 

「もう、大丈夫ですよ…?」

 

私のその発言にハッと息を呑んだ立香くん。

 

「っ、ジャンヌ!」

 

「ぉ、うっ…!」

 

直後ズグン、と更に奥へと突き立てられる立香くんのアレ。ただでさえ圧迫されていた私の大事な所が更に押し潰される感覚。ズキズキと痛むお腹の奥、痛みのせいか、はたまた圧迫感からか口から息が漏れる。

 

「や、優しくするから痛かったらすぐ言ってね!?」

 

「だ、大丈ひゃ、っう…」

 

瞳をギラつかせ、腰を引いた立香くん。たったそれだけの動きがこうも痛いとは…圧迫感こそ一瞬消えたものの、鈍痛は変わらず中を駆け、ビリビリとした謎の感覚が脳を犯す。

 

「っ、あっ、や、っ」

 

「はぁ、っ、やば…い」

 

そのまま始まった腰のピストン運動に脳がグチャグチャにされたような感覚に陥る。痛い、苦しい、なんかゾクゾクする…!私の意思とは別に口から漏れる声が恥ずかしくなり、口を塞ぐ。

 

「んんっ、っ、ふ、ん」

 

そのまま激しさを増す腰の動きに更に混乱を起こす脳。が、なんだろうか、先程からゾクゾクと変な感覚が…もしかしてこれが気持ち良いってことなのだろうか?な、なんか違う気が…なんかこの感覚、また別の時に感じたことのあるような。グチャグチャに混乱している脳から記憶を引きずり出そうとするが…あぁ、駄目だ、今は彼のことしか考えられない。顔を少し辛そうに歪めながら、腰を振る立香くんを見つめている私はどんな顔をしているのだろうか。無性に恥ずかしくなり、顔を隠すも、その手はすぐさま立香くんによって引っ張られる。

 

「…っ、ジャンヌ、隠さないで」

 

「っや、ん、っ、あぅ…ダ、ダメ、ですっ…!変、なっ、んぅ、んっ、顔、してる…からっ!あぁ、っ、ダメ…ん、っ、んぅ」

 

駄目だ、力が入らない。呆気なく手を剥がされ、その手を掴まれ、顔のすぐ隣に押し付けられる。あ、恋人繋ぎ…

 

「ジャンヌっ、ごめん、もう限界だ…!」

 

立香くんのその声に私は知識でしか知らない男性の最後を予感する。え、も、もう…?予想よりも早いソレに少し驚くもとりあえず本を読んで予習しておいたことを実践する。

 

「っ…!」

 

「あ、ちょ…待っ…ジャンヌ、足!!」

 

立香くんの腰に足を回し、拘束する。だいしゅきホールドなるこの技は相手への愛情を示すのには必須だとかなんとか…?よく分からないが、要するに最も愛されたい時にする姿勢なのだろう。混乱している脳が自然と取った行動でもあるが、これをすると腰が浮いてより深くに立香くんのが突き刺さる。

 

「っ、も、う無理…!ジャンヌっ、ごめん!このまま射精す…!!」

 

「んぅ、はっ、は、い…!この、まま、っ、んぅう、出してっ、くだ、さぃい…っ!!」

 

そう言いきるなり、私の唇を奪い舌を絡める立香くんは腰を引くと、思い切り前に突き出す。一際強い圧迫感を覚えると共に、少ししてから…

 

「っは、ぁ…」

 

「〜〜〜〜〜っ!?」

 

全身に響き渡るゾクゾクとした内側から灼かれるような快感。そして、今になってようやく思い至るこの感覚の正体。これは恐らく魔力供給によるものだ。電気の魔力供給とは桁違いの魔力そのものの直接供給。要するに体液による魔力供給、今まで彼とハグやキスをした際に感じたそれを遥かに凝縮したアレだ。

 

「っ、ちょ、っと…!?」

 

「〜〜っ、か、は…!」

 

そして、一度脳が快楽と覚えてしまえば後は早い。先程まで感じていた圧迫感も鈍痛も、全て気持ちよく感じてきて、呼吸が難しい程の激しい快楽に襲われる。

 

「ジャンヌっ!?ちょ、今イッたばっかだからそんな締められるときついんですけど!!」

 

「〜〜〜、わ、ざ…とじゃ、っ…」

 

私の内を灼き尽くす魔力に、彼の背中へと回している両手にも力が篭もる。こうでもしていないとどこかへと飛んでしまいそうで怖いのだ。そしてなにより…精を放出し終えたばかりのはずである彼のアレが、未だ確かな硬さを持っているのもその恐怖の一端でもあるのかもしれない。

 

「…、ジャンヌ、ごめん……もう1回したくなっちゃった」

 

「っ、はぁ、っはぁ…ま、って…今は、ダメ…っーーーーー!!」

 

可愛らしくそんな事を言う立香くんに、とりあえずの休息を告げる、も…恐らく偶然ではない彼の一突きにより私は再度為す術なく達してしまう。繋がっている部分から暖かいものが伝うのを肌で感じる。

 

「…っは〜、ごめんごめん、足滑った」

 

「…っ、は、ぁ…そ、そうですか…それは、仕方なっ、ーーーっ、!!」

 

「ごめん、今度は手が滑った」

 

「〜っ、わ、わざと…っっ〜〜〜!!」

 

「ごめんごめん、ちょっと腰痛くて」

 

わざとらしい顔でそんなことを宣う彼を睨むも、それさえ彼の一突きにより阻まれる。おかしい、あれだけ苦しかったはずなのに今では気がおかしくなりそうな程気持ち良く感じてしまうなんて。必死に息を整えながら彼から逃れるように腰を引く。

 

「…いやいや、逃がさないよ」

 

「…っ、ま……ちょっと、休憩を…」

 

「……どれくらい?」

 

「2,3時間…考える、時間を、っゔ」

 

「ごめん、無理」

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

ここ2、3時間でいくつか気付いた事がある。

 

「………」

 

「…ジャンヌさん?」

 

「…はぃ……」

 

「…大丈夫?」

 

「……はひ…」

 

自身の荒い呼吸を抑えながら、なんとか隣でうつ伏せのジャンヌに声をかける。返事は俺以上に荒い呼吸と、舌が回っていないせいかキチンとした発音にはなっていないが…そう、これがまず1つ目の気付きだ。

 

SEXって超疲れる!!

 

普段使ってない筋肉使ったというかなんというか…もうアレだね、途中から完全に運動だったね。

 

「……その、今更だけど痛くなかった?」

 

「…本当に、今更…ですね……まぁ、痛かったですけど…」

 

枕に顔を押し付けたまま、そう答えるジャンヌ。息しづらくない?窒息しちゃいますよ?と俺の心配を知ってか知らずか枕から顔を離し、彼女はこちらを見つめる。

 

「でも、その……幸せ…でした…」

 

まだ行為の余韻が残っているのか、頬が赤いままのジャンヌは、どこか照れているような、それでいて幸せそうな笑みを浮かべている。嬉しいこと言ってくれるじゃない、と脳内でぼやくも、今は別のことに俺の脳内は埋め尽くされていた。

 

「にしても、途中から凄かったなぁ。ジャンヌあんな声出せたんだ」

 

「っ!?は、はぁ!?」

 

「最初こそ痛そうだったけど2回目からはそうでもなさそうだったよな。それでもまだ声は控えめだったけど、あの抑え気味の声も俺は好きだけど、最後の方の喘ぎ声も個人的には好きですね。普段のジャンヌからは想像も出来ないようなあの声、あれだけ喘がれちゃ俺も火がつくってもんですわ」

 

「な…あ、貴方って人は!!そんなに喘いでませんから!!」

 

「え〜、『や、ぁぁ、らめ、っ!!もう、ダメですからぁああ!!』って言ってたじゃない。可愛かったなぁ、あの時のジャンヌ。必死に俺から逃げようとする割には俺の体完全ホールドしてたもんね」

 

「〜〜〜っっっ!!な、なんなんですか!?待ちに待ったピロートークだというのにそういうことしか言わないんでしたらこっちにも考えがあります!!」

 

バン、とベッドのマットレスを叩き、ヨロヨロとベッドから降りるジャンヌ。その顔は今の会話のせいか怒りで真っ赤に染っている。

 

「ちょっと、立つと危ないよ」

 

「今更彼氏面しても遅いですよ!もう私怒りましたから!!」

 

フン、とらしくもなくそっぽを向き、フラフラとどこかへと歩いていくジャンヌの後ろをついて行く。まさか室外に出るわけじゃあるまいな、今全裸だよチミ?そんな状態で外に出たら明日から変態聖女という不名誉な名前を付けられてしまうかも…そんな俺の心配をよそにジャンヌは室内の一室の前で一時停止し、こちらへと振り返る。……脱衣所ですけど、ここ。

 

「お詫びとして立香くんは私に背中を流させなければいけないと思います」

 

先程までの怒りはどこへやら、にこやかに微笑むジャンヌは俺の手をそっと掴むとそのまま浴室内へと引っ張る。

 

「え、俺が背中流されるの?」

 

「えぇ、やってみたかったので」

 

2つの椅子を前後に分けて設置したジャンヌは、ボディウォッシュ用のスポンジを手に取り、ボディソープを垂らしわしゃわしゃと泡立てている。

 

「背中こそげ落ちたりしない?」

 

「…それがご所望でしたらそうしますけど?」

 

「嘘ですすみません」

 

瞬間の硬直を経てから真顔でこちらを見つめたジャンヌから目を逸らしながら、指示通り前に置かれた椅子に座る。大丈夫かな、なんかゴキゴキ聞こえるんですけど…と、心配している内にピタと背中に当てられたタオルに俺は今生の別れを告げるが…おや。

 

「どうですか?」

 

「うん、なんていうか…普通に気持ち良いや」

 

「なんですか普通に、って」

 

「あ、いえ…最高でございます…」

 

「ふふ、ありがとうございます」

 

その言葉を最後に暫くの間無言が続く。わしゃわしゃと、そんな念入りに洗うかなぁ、なんて思いながらも弱過ぎず強過ぎない適度な力加減で丁寧に背中を洗ってくれるジャンヌに軽く身を委ね、今後のことを考える。

 

いやぁ、やってしまった。

 

今まで必死で我慢してたけど、遂にやっちゃった。想像よりもずっと良かった。めちゃくちゃに気持ち良かった。多分相性がよかったからだろうか、ジャンヌの反応もすごく良かった。だからこそ、やってしまった。

 

明日から大丈夫かな…ジャンヌとエッチなことする以外に物考えられるかな、周りの皆にバレたらどうしようかな、なによりジャンヌにコトを迫りすぎて嫌われたりしないかな…しそうだなぁ、でもこんなに気持ち良いこと知っちゃったらもう我慢出来ないよなぁ。

 

「…立香くん」

 

「あ、は、はい」

 

ふと、呼びかけられ思考を止める。背中を洗う音がどこか日常的で癒されると同時にこのタイミングで呼びかけられることに不穏な何かを感じた。

 

「…その、私は…求められて嫌なことなんてないですからね…?好きな人に求められて嬉しくないわけなんてないんですから」

 

「…あー、うん」

 

やっぱり。予想は的中だ。俺がジャンヌの顔を見てなんとなく何を考えているのか分かるように、ジャンヌもそうなんだ。どこか恥ずかしそうにしながらもそう言いきったジャンヌは、やはりいたたまれなくなったのかスポンジを手放すとシャワーを手に取り背中を流し始めた。

 

「は、はい!終わりです!もう時間も遅いですし後は普通にお風呂に入って寝ましょう!!ね!」

 

ジャンヌのその言葉を皮切りに俺らは互いに一言も発さずに淡々と身体を洗い終え、2人で浴槽に入ってから何事もなく出て、体を拭き、寝巻きに着替え、互いに背を向けてベッドに入った。そうやって心を無にしないと多分一晩中互いに求め合ってしまうから。

 

しばらく横になっていると聞こえてきた穏やかな寝息に、俺は振り返り、そのキレイな首筋にキスをす?。

 

「おやすみ、ジャンヌ。愛してるよ」

 

そう呟き、俺も寝ようかと再びジャンヌに背中を向け布団を被る。

 

「私も愛してますよ、立香くん」

 

最後にそんな声が聞こえたような気がして、俺は睡魔に身を委ねた。

 

■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

次の日は朝から大変だった。

 

「お、本当に男になったみてぇだな!やるじゃねぇか、立香!!」

 

「ふははははは!おい贋作者!今日は赤飯だ!我も機嫌が良い、最高の素材を用意してやろう!!」

 

「ふっ、言ったな英雄王、食材の貯蔵は充分か?」

 

普段の3人は俺が食堂に行った途端どんちゃん騒ぎ、それに釣られて集まった英霊達から尋問に近い質問攻めにあい、黙秘を貫き通すのにはそれはもう甚大な精神力が必要だった。俺1人だったのが幸いか。

 

ジャンヌは起こそうとしたものの、どこか魘されているかのように『うぅ、立香くん…もう無理ですぅ…』と寝言を言っていたのでそっとしておいた。夢の中で俺は一体何をしているというのだろうか。

 

目の前に並べられた昨晩に負けず劣らずの豪勢な料理の品々に朝からゲンナリしつつ、箸を伸ばす。

 

「大変でしたね」

 

「本当だよ…今日だって忙しいっていうのに」

 

「だから起こしてくれなかったんですか?」

 

「…ん?」

 

ピタリと箸を止め、隣を見ると普段通りの装備を整えたジャンヌが当然のように座っていた。

 

「朝起きたらビックリしちゃいました。昨日のが夢なのかと一瞬勘ぐってしまう程には」

 

「ビックリしたなぁ。ちゃんとテーブルに書き置きしといたでしょ?」

 

「それに気が付くまで、ですよ。はぁ…それで、もう皆に言ってしまわれたんですか?」

「まさか。変に言いふらしたら痛い目見るの俺だし、ジャンヌに迷惑掛けちゃうかもでしょ」

 

「…私は気にしませんけどね」

 

ボソッと呟いたジャンヌに俺は無言で返し、止めていた箸を動かし始める。そんなこと言ったって怖いもんは怖い。男性陣は特に害はないと思うが、ウチには俺なんかのために余裕で溶岩を泳いでくる女性陣がいるんだ。他にも飢えたコノートの女王他数名の危険人物がいるのにそう易々と彼女の身に危険を及ぼすわけもあるまい。にしても朝からこの量は大分ヘビーだと思ってたけど意外といけるな。流石は赤い調理師もとい食堂のエースといったところか。

 

「ちょっと!!!」

 

なんということでしょう。そんな普段よりも大分賑やかな食堂が更に賑やかに。匠の技術により凄まじい勢いで食堂に突っ込んできた猪女もとい邪竜の魔女の目線は明らかに俺とジャンヌの方へと向かっており、いつも通り不機嫌そうな顔を更に不機嫌そうにし、ズンズンとこちらへと歩み寄ってくる。

 

「アンタら…!そ、その…!……つ、遂にやることやっちゃったってマジ?」

 

「…え〜?なんのこ」

 

どこか泣きそうな表情でこちらを見つめる邪竜の魔女に俺はどこぞの青い槍兵がリークしたんだな…と恨みを募らせつつ、すっとぼけ…

 

「…っ、と…」

 

ようとしたところ、隣から思いもよらない妨害にあい、言葉を中断してしまう。俺の腕を取りどこか不敵な笑みを浮かべた救国の聖女様に、遠目から見ていたのか盛り上がりを見せるオーディエンス。その表情から言わんとすることを察してしまう。

 

「…立香くんは、私のですから!」

 

ドカンと歓声が湧くのと同時、へたりと地面に座り込んだオルタに対し、どこか勝ち誇った表情を見せるジャンヌ。あぁ、そこでこんなこと言ったら実質宣言してしまったのと変わらないじゃないか。と頭を抱えたくなるも、片方の腕に組み付かれてしまっているのでそれも出来ない。これからの事を考えつつも俺は天を仰ぎ、

 

本当に嵐ってのは突然来るもんだ、と心中独りごちた。

 





と、いうことで終わりです。前にも書きましたが、投稿していない間にも凄まじい量の話を書いては消し、書いては消しを繰り返していた私ですが、実はその内8割近くはジャンヌメインでして、今回のはその中でも比較的軽い雰囲気で書けそうなものをなんとか書きました。ここまで来れたのも皆さんの声援あってこそです!

それはそれとして、私が投稿していない間に普段コメントを書いて下さっていた方がいなくなってしまいました。寂しいと思うと同時にこことは関係の無いどこかで元気にやっているのだろう、となんとも言いがたい感情が私を襲うのでした。

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