まどろみから目が覚めると、目の前に柔らかなぬくもりがあった。
そのことに気づいた提督は、けれども驚いて覚醒したりなどしない。ただただ多幸感と安心感に包まれてぼやけた思考の海を漂うだけである。この腕の中の温もりが何であるかは明らかだったからだ。名前を羽黒という、彼の最愛の秘書艦がそれである。
前夜、致すことを致した二人組はそのままベッドへと直行し、裸のまま寝てしまったというわけだ。もちろん、抱きついたまま寝たわけではない。二回戦をして翌日早起きが出来るほど提督は体力馬鹿ではないのだ。というわけで、寝てる間に抱きまくらにしてしまっていたようなのだが、そのことだって驚くよりも前に暖かくて気持ちいいという感情で満たされてしまった。空調で一定に保たれた室温の中であっても、いやだからこそか、羽黒の温もりはじんわりと提督に染み込んできたし、規則正しく自分へと吹きかかる寝息は子守唄などよりもよほど耳心地のよいものだった。おまけに、ぎゅ、とさらに抱きしめると良い香りまで感じられて尚更である。
結局、羽黒の存在は提督を起こす目覚ましどころか、まどろみから二度寝に誘う睡眠導入薬に他ならなかった。柔らかな素肌に腕を沈ませていっぱいに羽黒を感じながら、提督の意識がもやの底へと移動していく。どうせ、時間になれば羽黒が起こしてくれるだろう、という幸福極まりない他力本願を想いながら、提督はまぶたから力を抜いた。贅沢な朝の光景である。
それで終わりのはずだったのだけれども。
「…………ん」
腕の中がごそりと動いたことで、深海へと向かっていた提督の意識が急速浮上した。柔らかさのみだった羽黒の素肌が提督のそれと盛んに擦れる。温もり、と表現できていたものが、特に顔のあたりで熱さと呼ぶべきものへと変わり始めていた。どうやら、提督が二度寝する機会は完全に失われてしまったらしい。
しばらく提督の腕の中でもぞもぞとしてから、羽黒が縮こまった。恥ずかしいのだろうか、と提督はほとんど確信に近いあたりをつけた。それなりに経験は重ねているはずなのだが、羽黒から初い反応が消えたことはないし、提督としてもそれは好ましいものだったからとりたてて是正させようという気もないのである。吐息すら熱っぽくなっているのだから、目を開かずとも真っ赤になった羽黒がすぐに見えた。さて、目を開けてもっと恥ずかしがらせてやろうか、などと余裕ぶって一瞬のんびりと構えてしまったのもむべなるかなといったところである。だいたい、ちょっとまどろみに身を任せた程度でああなると思う人間は少々想像力が過ぎた。
「……起きて、ないよね」
小声でそんな言葉が聞こえてきたので、起きようとした提督が固まった。驚いたというより、いいや起きてるぞー、とふざけて見せるか迷ったからである。悪手その2であった。
「……ん、ふぅ」
提督が固まった。固まったは固まったでも、今度は驚愕によって、である。当たり前だ。胸板に柔らかなものが押し付けられ、その拍子に甘い息が漏れてきたならば、誰だって固まる。偶然を期待するには、あまりにも羽黒の反応がおかしすぎた。つまり。
「……んっ……ぁっ」
声を押し殺した羽黒の動きは、決して速くなったわけではなかったけれども、柔らかだったはずの双丘に、いきなり硬いしこりが感じ取れるようになって、提督はもはや確信していた。あ、これオナってる、と。
「……っふぅ」
甘ったるい息の香りを努めて無視しながら、提督は上手いことまとまらない思考を強引に縛り上げる。なんでこの子こんなに欲求不満なんだっけ、という疑問はザルのようになっている提督の脳みそには極めて難題であったが、ようやっと結論を出せた。そう言えば、一戦交えた体を提督の腕枕で休めていた羽黒に、明日に差し障るから云々と言った所、少々不満そうな承諾が返ってきたのを思い出したのだった。もちろん、提督か妙高姉妹くらいじゃないとわからない程度の不満だったから無視したのだけれども、今後はもうちょっと反応してやらないとな、というところまで考えて、提督はその辺の思考を放棄した。
「司令官さん、司令官さん……」
小声で、起こさないようにと自重しながらも呼びかけられる甘ったるい声がその理由であった。自分の愛しい人が、自分で快感を貪ろうと必死で動いており、しかも愛おしそうに自分のことを呼んできている。この三重奏で、提督のザルのようになっていた思考回路はついに破けきった。代わりに羽黒のことを気持ち強めに抱きしめてやった。尖りきった羽黒の先端が、先程よりも強く提督によって押しつぶされる。羽黒がびくり、と震えた。いかん、気づかれたか、と提督が眉を歪めた。
「……ん、ゃ」
幸か不幸か、提督の懸念は外れであった。ただただ強めの刺激、その余韻を楽しんだらしい羽黒は、いそいそと胸を動かすのを再開する。起こしたくないからか、提督の乳首を避けて腹の上の方で突起をこすり続ける羽黒は、腹筋に押し付ける感覚が気に入ったらしい。嬌声を我慢しながらある一点に集中して胸を押し付けていた。喘ぎ声を我慢するのは結構なんだが、と提督が苦笑いする。荒くなる鼻息がこそばゆくて仕方がなかった。もちろん、不快からはかけ離れたものだったからむしろもっとやれと言いたいのだが、色々と抜けが多すぎた。
「ぁ、ん…………ちゅ」
と、余裕ぶった思考を続けられるのもそこまでだった。気づけば、鎖骨の当たりに口付けがされていたからである。首筋を避けたのもやはり起こさないためなのだろうか、実際にやられてみた感覚としてはこそばゆさと心地よさはあまり変わらなかったから意味があるかはわからない。だが、熱っぽい吐息と涎が肌にまとわりつく感覚は、心地よいというか、ただただ艶っぽかった。
「ん、司令官さん……、ちゅ、好き……」
おまけに、胸元でそんな甘ったるいことをつぶやかれてはどうしようもない。好き、好きと小声で連呼するたびに、熱いと吐息と粘っこい水音が肌を伝って提督に聞こえてくるのだ。息を荒げながら情を振りまくその姿は、或いは性交の時はいつもそうなのかもしれないが、昂ってはいるものの責めでそこまで気が回らないいつもよりも遥かに色っぽく、愛おしかった。
「司令官さん」呼びかけが、妙にはっきりした発音に変わる。どうやら、慕情を伝える段階は過ぎ去ったらしい。「もっと、おっぱい、いじめて……?」
いや、これは普段も聞かないおねだりなんだが、と提督は思うが、実際には提督が言われる前にねちねちと責めまくるからわざわざ言う必要もないというのがその理由であり、文句はお門違いも良いところだった。妄想の中の彼は、どうやら現実よりは優しい野郎のようである。馬鹿臭い話だが、嫉妬心から提督が膨れた。今度はねだってくるまで焦らしてやろうと羽黒の望みとは正反対のことを思いつつ、彼女の妄想へ興味が膨れ上がった提督は、意地悪い笑みを浮かべながら羽黒のなすがままになった。
「ん、やぅ、気持ち、良いですっ……」
妄想の中の彼は、どうやらきちんと羽黒の願いを聞いてあげたようだった。肌の上で乳首が転がる感触の他に、下半身の方でももぞもぞとした動きと、ぴちゃり、ぴちゃりという水音がし始めた。どうやら、いよいよ昂ってきたらしい。
「ちゅ、んっ、……れろ」
羽黒を抱き寄せたのは、夢中で提督に吸い付いてくる頭を撫でたい衝動にかられ、とは言え起こすのももったいないと思い至った末の妥協であった。羽黒はと言えば、夢見心地で身を任せるのみであったから、妥協してよかったと言うべきだろうか。
「司令官さん、すきぃっ。もっと、してっ」
全身を抱きしめられる心地よさにいよいよ辛抱たまらなくなったらしい。羽黒が、おねだりとは全く呼べないおねだりを口に出した。何しろ、その願いはすぐに成就されるのだから当然である。転がる乳首が一つ減った。いや、より正確に言えば、片方の動きだけが極端に鈍くなった。理由は明々白々である。
「ぁっ、りょうほう、だめですっ」
水音が一回り大きくなった。おそらく、秘芯を中心に責めているんだろうな、と音と言葉から提督は察した。腕の中で羽黒が可愛らしく震える。鎖骨への吸い付きが強くなった。痕が残るかもな、と提督が意地悪く笑った。後日のことを考えたのであった。羽黒に見せびらかせたら、どう反応するか。
「あ、司令官さん、ん、ふぅー」
もはや半分抑えきれていない声が漏れた。甘ったるい吐息が、汗ばんだ髪から立つこれまたただただ甘い香りと混じって鼻孔をくすぐる。羽黒と布団が擦れる音が、呼気と合わさって官能的としか言えない響きになって提督の耳朶を打つ。無意識のうちに、提督が羽黒を抱きしめる力を強くした。。
「司令官さん、好きっ、好きですっ。もっと……」
秘部での手の動きが振動でまるわかりとなり、羽黒は鎖骨のあたりで甘ったるくそう繰り返し、可愛らしい、桜色の突起部分は、提督の肌でこすられ、削られ、尖りきっていた。絶頂するのもそろそろ、と提督が思ったときである。
「ん、ふあ!」
羽黒の体が大きくはねた。声を上げず、もちろん目も開けなかったのは提督が突発事態に対する十分な教育を受けてきた重大な証左である。提督は誇ってよかった。問題があるとすれば、それがこの場合は何の役にも立たない事だけである。
「――っ! ――っ!?」
羽黒が快感を得ようとしていたすべての動きが止まる。提督の五感、もっと言えば触覚は、羽黒の肌が急に湿り気を帯びてきたことに気づいたし、嗅覚は甘ったるい匂いがましたことでそれを追認した。要は、冷や汗を掻いていたのだった。どうやら、提督を起こしたのかと慌てているらしい。
「…………」
じっと動かない羽黒に、動悸を高めることもなく、平常なままじっと耐え抜いていた提督は、こんどは意味のある行動をしていたようだった。ふぅ、と羽黒から全身の力が抜ける。また、胸が擦り付けられてきた。だが、完全に成功したとはいえないらしい。
「もうちょっとだけ」先程にも増して小さくなった声がぼそぼそと出てきた。「逝っちゃう前に、切り上げよう……」
そこでもうやめよう、とならないあたり羽黒も羽黒だったが、何れにせよちょっとまってほしいと泡を食ったのは提督である。狸寝入りでここまで来たのは良いものの、このまま羽黒がイく姿も見ずに終わり、では生殺しも良いところである。タイミングを見計らう必要があるな、と提督の瞳が瞼の裏で妖しく光った。
「ぁ、司令官さ、ふぅ」
先程までの快感が残っていたのか、羽黒がある程度まで登ってくるのは比較的早かった。くちゅくちゅと股ぐらからの水音は先程以上で、むしろ見られそうになったことでよりいっそう興奮していたらしい。
「ちゅ、ちゅる」
それで満足したらしく、羽黒の手の動きが緩やかになる。そのかわりと言わんばかりに、羽黒が再び口付けてきた。どうもキス魔の傾向があるらしい、と提督が軽く笑う。荒んだ息が再び提督に吹付けてきた。そろそろ頃合いらしい。それに。
「司令官さん、大好きですよ……」
妄想の中ではなく、再び自分自身に向かってこんなふうに呼びかけられて、辛抱が続くわけないじゃあないか。
提督が素早く回していた腕、そのうち片方を上げた。とすん、と提督に抱き上げられていた力が抜け、気持ち羽黒が布団に沈み込む。もっとも、心地よさ気な羽黒はそれに気づかず、名残惜しげにもう一度キスをしてから、付いてしまった涎をぺろぺろとなめとっているようだった。お陰さまで、体と胸の間に手を潜り込ませるのは容易いことだった。
「ふぇ?」
いきなり自身の胸、その先端に出現した新たな感触に、羽黒が素っ頓狂な声を上げた。つまりチャンスである、と提督は断じた。攻撃は、重点へと奇襲的かつ徹底的に行うことで最大の成果を上げることができるのだ。というわけで、比較的近場で押しつぶされていた乳首を中指と親指で強引に引っ掛けると、ぐりぐりと弾き回した。
「ひゃ? あっ、あんっ! やん、ふぁっ!?」
今まで我慢していた反動だろうか。驚きというよりは突然襲った快感を堪えられなかったようで、羽黒が小気味よく鳴いた。変に我慢していた声を聞かされていた身としては、これだけで大変爽快感と達成感がある。
「あんっ!? なん、なんでっ!? やぁっ! だめ、だめだめぇっ!」
羽黒が逃げ出そうと身を捩るので、残しておいたもう片方の腕でちょっと押さえつけてやると、快楽で腑抜けた肢体はいともたやすく止められてしまった。羽黒がやぁー!と叫び声を挙げたが、物覚えの悪い娘だという感想しか無い。この場面でそんな反応されて、まさか止めるやつがいるとでも言うのか、と何度言えばわかるのだろうか。
「ひゃあ!?」
羽黒がいっそう甲高く鳴いた。いつの間にやら帰り支度、と手を止めていた秘部を咎めたのであった。ちょうど膝小僧のあたりだったので押し込んでやると、想像以上に濡れている。慣れた様子でクリトリスを探り出すと、ぐりぐりと刺激してやる。びくびくと先ほどよりも遥かに大きく羽黒がはねた。
「あ、だめっ! 両方、だめぇっ!」
「さっきまでは自分で弄ってたじゃないか」
目を瞑ったまま思わずそう突っ込んでしまうと、羽黒から煙が吹き出す音がした。不可抗力不可抗力、と心のなかで責任のがれしてから、提督は最後の仕上げに取り掛かった。先程最後まで羽黒によって動かされていた方の乳房をむんずとつかむと、揉みしだきながら親指で先端をこね回す。おまけに自分の肌へとこすりつければ役満だ。ついでに、膝の動きもより大きなものにしてやれば、そもそも提督でオナり始めるくらい欲情していた体が持つわけがなかった。
「やぁ! ダメダメダメっ! イくっ! イキますっ! やぁあああああっ!」
しがみつくようにしばらく飛び跳ねてから、羽黒がぐったりと寄りかかってきた。ようやっと提督が目を開くと、疲れ果てた羽黒が肌を上気させてひっついていた。頭を寄せ、真っ赤になっているおでこに口付けてやる。ぴくり、と震えてから、羽黒が恐る恐ると言った様子で上目に見てきた。
「しれ、しれいかんさん、あの、その、い、いつから起きて」
「起きて、ないよね? のあたりから」
「ぴぅっ!?」
羽黒が奇声を挙げた。必死に顔をそらしている。どうやら羞恥心がオーバーフローしたらしかった。
もちろん、ならやらなけりゃいいのに、と切って捨てるのは簡単である。だが、何より楽しませてもらったし……正直に白状してしまうと、提督も案外と人のことは言えない状態だったりするだった。
「羽黒」
「い、いっそ殺してくださいぃ」
はぐぅ、と縮こまった羽黒の顔を強引に提督へと向かせる。目を閉じて徹底的に視界を合わせるのを拒否している様に吹き出しつつ、提督は布団を無造作に放り投げた。
「ふぇ? 何して」
「まぁ、見ればわかる――というかなんで気づいていなかったのか、そっちのが疑問なんだけどね」
「え、……あ」
提督が指差した先には、いきりたつ提督そのものが有った。羽黒が、また別の理由で赤くなった。
「はぐ、でも、その、昨日は」
「それでこんなこと始めるからな。方針転換だ」
「いえ、でも、もう起きて執務室に向かわないと」
「問答無用」
「ひゃあっ!?」
その後。お昼ごろになってから、静かに怒る大淀の目撃談が相次ぐこととなる。話しによれば、その目の前には神妙に縮こまる提督と真っ赤かつ涙目で俯く羽黒がいたそうな。
どっとはらい。
嫁のR-18小説執筆の息抜きに嫁のR18を書く。無限ループって怖くね?
何故か要望が多かったので本番追加予定