もう二度と剣を持てないモードレッドとの優しい隠匿生活 作:オリスケ
第11話
「ふぅ……」
数時間握り続けていたペンを机に置く。手垢の付いた樹脂の軽い音が、石造りの地下室に反響する。
牢獄のような狭苦しい部屋。窓はなく、明かりは机を照らすスタンドライトと、天井からぶら下がる裸電球の一つきり。その頼りない光すら、堆く積み上げられた本の塔に遮られて、あちこちに闇を産んでいる。
不気味さを感じさせる魔術工房の薄暗さも、すっかり慣れたものだった。
あれから、早くも二ヶ月が経とうとしている。家の地下室を改装して作ったこの空間も、魔術師の工房としてそれなりの空気を醸し出してきている。
一日の三分の一は、こうして地下の工房に籠もって研究に明け暮れるのが僕の生活だった。せっかくの豊かな自然のある場所に引っ越してきたのに、思い出のほとんどは、書物と睨めっこしている薄暗い景色で埋められている。
椅子を軋ませて、軽く身じろぎする。冷えて固まった地下室の空気が、やっと目を覚ましたよう。音も空気の流れも、動くものがなさ過ぎて、時間が止まってしまったみたいだ。
僕は深く息を吸う。埃を念入りに払って掃除したお陰で、昔ワインセラーとして使われていた名残の、かぐわしい木と葡萄の香りがする。
それを楽しむ余裕は、あまりない。吐き出した息は、やっぱり重たい溜息になった。
「……疲れた」
思わず、そう悪態が漏れる。成果が感じられなければ、疲労も重くなる。目頭を揉んでも、答えらしい閃きは浮かんできそうもなかった。
ここに来てからずっと、僕は彼女の傷を治す答えを探し続けている。
魔術師であることを辞めて豊かな自然がある場所に越してきた筈なのに、こうして地下室で魔術を追い求めている。
それもしょうがない。モードレッドの両手の傷を治す事は、僕に課せられた至上命題だ。見識が正しければ、このままでは彼女は在り方を穢され、英霊でいられなくなる。
僕は彼女を召還したマスターとして、命を共にする一人の男として、彼女を責め苦から解放してあげなければいけない。
その使命感を抱え、研究に明け暮れ……しかしその成果は、芳しくない。
「……何なんだ、これは」
モードレッドが受けた呪いは……正直、理解の範疇を越えていた。
泉の側の穏やかな土地。そこで僕等が過ごした二ヶ月は、落胆と徒労の連続だった。
最初の一月で、いち魔術師として思いつく、あらゆる限りの対抗魔術を試した。西洋から東洋、アフリカ僻地の小さな伝承まで、手に入れられる資料を掻き集めた。僻地の片田舎まで足が付かないよう仕入れるのは相応に苦労したが、次々とやってくる膨大な書物に、読む物がなくなるという事はなかった。
一日の大半を文献漁りに費やし、めぼしい物などほんの一握り。そしてそのいずれも、有効な解決策とはならなかった。
幾つもの呪具も試したが、結果は同じだった。呪具が空打ちになる度に、モードレッドはつまらなそうに鼻を鳴らした。
「こんな道具に頼る方が情けないぜ」と言って、呪具を踏み抜き、残骸を蹴り飛ばす。その時ほんの僅かに肩が落ちる、彼女の落胆が忘れられない。
およそあらゆる退魔の魔術は、モードレッドの傷に効果を見出せなかった。彼女に与えられた呪いは、それ程に強く、意味不明だった。
途方に暮れた僕は、もう一度原点に立ち返り、呪いの正体を突き止める事にした。呪いを与えられたサーヴァントの真名が分かれば、打開策も分かるだろうと考えたのだが……。
「こんなの、神霊でも成せない芸当だ。世界の形をそのまま作り変える程の……ううん、考えれば考えるほど有り得ない」
低いうなり声が、静かな地下室に木霊する。
傷を最初からあった物にするなんて、前代未聞だ。それは時間改変と同義で、人類史上時を遡った事例は存在しない。
不可能じゃない。世界の仕組みとして、あってはいけないのだ。果たして聖杯の力を用いても、実現可能かどうか。
けれど現に、モードレッドは力を奪われ、彼女自身の存在を危うくしているのだ。
何であれ、僕は彼女を治さなければいけない。
「……考え方を、抜本的に見直した方がいいのかもしれないな」
そう呟いてみる。この考えは、果たして発想の転換か、頭打ちの現実からの逃避か。
机のペンを指で小突きながら、思考を遊ばせる。粗野な少女の声が割り込んだのは、そんな時だった。
『オーイ、マスター。いつまで引きこもってんだよ。そろそろオツムにカビ生えてくるぞ』
「魔術師の頭脳に対して酷い言い様だね、モードレッド」
ぶっきらぼうな声に苦笑して、僕は霊話に返答する。張りのあるモードレッドの声が、頭に直接響いてくる。
『集中してるのはいいけどよ、もう日付が変わったぜ? いい加減寝た方がいいんじゃねえか』
「本当? 全然気がつかなかった」
言われて辺りを見回すも、地下室には堆く詰まれた本ばかりで時計すらない。身体が小刻みに震える寒さで、外がすっかり夜更けであることに気付いた。
まだ温かい季節と言えど、陽の当たらない地下室は予想外に冷える。外部の環境に反応して、僕の腕が鳥肌を浮かばせる。身体がやっと息を吹き返したようだった。
時間も忘れて没頭するのは、魔術師としては良い兆候だ。それでも、その没頭した挙げ句成果が見つからないのは、中々辛いものがある。僕は椅子に背中を押しつけて海老反りになって、背骨をポキポキ鳴らして……ふと思いついて念話を送る。
「モードレッド。もしかして、僕を心配してくれたの?」
『……悪いかよ。お前が死んだら、オレっていう存在もお陀仏なんだ。地下室で衰弱死とか、冗談でも笑えねえ』
「へえ、それで夜更けまで起きててくれたんだ。かわいいところあるね」
『死ね、二度と上がってくんなバーカ』
「ツンデレダブルスタンダード」
「テメエ小声でなんつった!? 昇ってきたら覚悟しとけよクソマスター!」
上擦った怒号に、僕はたまらず苦笑する。仏頂面の彼女の姿を想像すると、途端に顔を見たくなって、僕は身体を椅子から引き剥がした
ギシギシとしなる梯子を登り、古びた木の蓋を持ち上げる。厳重に鍵をかけた後、棚をずらして蓋をする。
元の状態に戻すのすら苦労する。工房を隠す相手は、自分自身も含まれていた。あえて厳重にする事で、魔術の存在そのものを遠ざけようとしていた。
モードレッドと平穏に暮らしたい。だから、できれば忘れていたい。
馬鹿げた絵空事だった筈のこの願いは、この地に来ていよいよ、叶えたい理想として存在感を強めている。
このまま穏やかに、老いるまで静かに暮らせたらと、今でも思っているが……モードレッドの手首に刻まれた傷が、深い谷のように理想の前に立ちはだかる。
現実は、そう上手くは転ばない。そもそもが、魔術に隠匿なんてないのだ。
モードレッドがここに居ること自体が、つまりは——
「……いや、よそう」
地下室の薄暗さが、思考さえ研ぎ澄ませてしまったようだ。頭を振っても、中々切り替えられない。原因を突き止めなきゃ行けないという使命感が、僕の深い場所で身を焦がし続けている。
モードレッドの言うとおり外はとっくに夜更けで、倉庫は真っ暗闇だった。小さな天窓から覗く月明かりが、立てかけてあるボートのオールや、古ぼけた芝刈り機をうっすらと照らしている。
僕は手を翳して出口を探しながら、思考を過去に引き戻す。
できれば見たくない、あの時の最悪な瞬間をもう一度思い出す。
街中。強襲してきたサーヴァント。僕を庇うように立ったモードレッド。敵の武器が、鮮やかな軌道でクラレントを避けて彼女の手首を切り裂き——そしてモードレッドは、『傷を最初からあったことにする』呪いを植え付けられた。
有り得ない事を実現する能力。呪い。いや、これは本当に呪いなのだろうか?
太陽を背にして躍りかかった敵。手にしていた武器は、長物だったように記憶している。
一体、何者だろうか。どこかのとんでもない神様か、あるいは出会うべきでない悪魔だろうか。
そして——仮にそんな英霊がいたとして。果たして僕は、僕達は——
彷徨う思考に靄がかかる。今更眠気が押し寄せてきて、思わず大きなあくびが漏れる。かといって考える事も辞められず、僕は胡乱な足取りでリビングを歩き、ドアを抜け……
「おせえよ、タコ」
寝室に入った瞬間、背中をしたたかに蹴りつけられた。
突き飛ばすような蹴りに、僕は頭からベッドに倒れ込む。上体を起こす間もなく、背中に足が押しつけられた。
ぐりぐりと素足が動き、軽い体重を感じる。苛立ちを香辛料にした嘲笑が、僕の上から振ってくる。
「さっきはよくも生意気言いやがったなぁ。なんかオレに言うことあるよな、マスター?」
「もえんめ、もーおえっも」
ベッドに顔を埋めたまま口を動かしてみる。意識の九割方は、尊大な態度とは裏腹の小さい素足の感触に注がれている。
「なに言ってんのかわかんねえよ、バーカ」
呆れ果てたようなモードレッドの声。両足が背中に乗ると、首の根元にどっかりと腰を下ろされた。小ぶりなお尻が、僕の背中のラインに合わせてふにんと形を変える。
僕の背中の上で胡座を書いて、モードレッドはどこか楽しげに鼻を鳴らした。
「最近のテメエはずぅっと調子乗ってるからな。ここらで改めて、どっちが上かをハッキリさせといてやる」
「むぐも、もぐむうむむ」
「そうだ、家臣は王においそれと口を訊けないモンだ。しばらく尻置きとして使ってやる」
僕の頭を尻の下に強いて、得意気に笑う。
王というより、駄々をこねる子供のようだ。そう思ったけど、口にすれば僕の背骨はベニヤ板のように踏み抜かれてしまうだろう。顔をベッドに押しつけておいて良かった。
モードレッドの足が動き、踵が僕の腰から太股にかけてを往復する。心地よい圧力。机に齧り付いて固まっていた筋肉が解れる。
「むぐ……もしかして、マッサージしてくれてる? ——痛った!?」
「黙ってろ犬」
ふくらはぎに踵がめり込んだついでに、家臣からペットに格下げされてしまう。悶絶する僕なんておかまいなしに、モードレッドの踵が僕の身体を往復する。
「最近痩せたんじゃねえか? 引きこもってばっかいるからだ、根暗め」
「根暗なのは否定しないけどね。引き籠もりは魔術師の十八番だよ。慣れっこだ」
僕がそう言うと、足の動きがぴたりと止まった。モードレッドは暫く迷った後、つまらなそうに鼻を鳴らした。
「楽しそうに言いやがって。魔術師やめるんじゃなかったのかよ」
「辞めるよ、いずれね。今がその時じゃないだけだ」
「……それでも、オレのマスターが痩せこけてるのは、見てて情けねえ。たまには外に出て運動しろよ、血反吐出るまで走ってみるのはどうだ?」
「衰弱死の前に過労死しちゃうよ……あ、それなら今度、ボートに乗らない? 僕が漕ぐからさ。二人っきりの湖でのんびり過ごそうよ」
「……へんっ」
嫌そうな声音が振ってきて、僕はたまらず苦笑する。
モードレッドは僕の背中から立ち上がると、横腹を蹴飛ばして、仰向けに寝転ばせた。
さんざん好き勝手された、僕のサーヴァントの姿がやっと目に映る。
「……かわいい」
「ッテメーが着せたんだろうが! マジマジ見んな、殺すぞ!」
羞恥心と怒りで声を荒げるモードレッド。犬歯を見せて唸る狂犬のような姿も、柔らかな生地のパジャマに包まれていれば形無しだ。
何を隠そう、モードレッドの為にわざわざ取り寄せた寝間着だ。淡い桃色で薄く花柄をあしらった、質素ながらかわいらしい寝間着は、下手な装飾がない分モードレッドの女の子らしさを際立たせている。
「もっとヒラヒラしたものも候補だったんだけど、やっぱりあどけないかわいさが最高だね。流石僕、名采配だ」
「狂気の間違いだろ……服片手に躙り寄ってきた時、目が据わってて本気で怖かったぞ、オレ」
「だって、いつも同じジーンズで寝辛そうだったからさ。その生地、サラサラで気持ちいいでしょ? わざわざ外国から取り寄せた良い服だからね」
「そりゃ、まあ……ああくそ、恥ずかしい……! 自分じゃ脱げねえのが更にもどかしいぜ」
そう呟いてモードレッドは、赤くなった顔を背ける。半袖パジャマから覗く彼女の腕は、両脇にだらんと垂れ下がっている。
羞恥心を感じても、動かす素振りすら見せない。両手首には、かさぶたが張ったように分厚く蓋がされた、痛々しくどす黒い傷が浮いている。
彼女の手首は、深々と抉られた傷が、抉られた当時のまま生きている。令呪によるブーストもあって塞ぐ事には成功しているが、それがなければ、寝室はあっという間に血の海になるだろう。
少し動かすだけでも激痛が走る。あらゆる動作を、痛みなしでは行えない。そんな生き地獄が二月続き、モードレッドはもう、反射的にも腕を翳したりしなくなった。
こうして他愛ないやりとりを交わしている間も、モードレッドは病的な程臆病に、自分の両腕に気を配っている。それでもしょっちゅう、瞼を痙攣させ、奥歯を噛みしめている。それに気が付く度、僕の胸も締め付けられる思いだった。
「……もういいや。オレもそろそろ寝るぞ、マスター」
モードレッドは両腕を垂れ下げたまま、くぁ……と欠伸を漏らす。
自然な動作で、モードレッドは僕の胸を優しく蹴った。
上体を持ち上げていた僕は、もう一度ベッドに仰向けに横たわる。そこにモードレッドが跨がった。
柔らかなパジャマに包まれた股が、僕の腰回りから臍まで昇ってくる。膝が動く度に、ベッドが小さく軋んだ音を立てた。
モードレッドの凜々しく可憐な顔が、僕を見下ろしてくる。強引に作られた、努めてつまらなそうな顔。それでは隠せない、緊張を孕んだ吐息。
「首、もうちょっと上げろ」
「……こう?」
「そっから動くな。勝手な真似すんじぇねえぞ」
そう釘を刺して、モードレッドの顔がぐっと近づく。すぅ、すぅという規則的な呼吸が、僕の息と重なる。
紅潮した頬。不機嫌そうな顔を近づけながら、モードレッドが囁く。
「……風呂、入ってねえよな。このまま寝るのかよ?」
「頭が疲れちゃって。明日朝入るよ」
「歯も磨いてねえな? 汚ったねえ」
「ごめん。でも、そんなこと気にするなんて、女の子みたいだよ。らしくないんじゃない?」
「……バカマスターが」
鼻先をくっつけながら、モードレッドが悪態を吐く。
女の子扱いされたこと、女の子として見てくれなかったこと、どちらが気に入らなかったのだろう——そんな疑問を呟く口は、モードレッドの唇で蓋をされてしまった。
「っ……」
呼吸が止まる。蕩けるほどの柔らかい感触。湿っぽい、上気した鼻息が頬を熱くする。
舌を絡ませたり、彼女の肢体を抱き締めたりしない、これっきりの素気ないキス。
痛みを和らげるための単なる魔力供給は、それでも五秒間、永遠のような長さで続く。
小さな水音と一緒に、唇が離れる。数センチの距離で、一瞬見つめ合う。翡翠のような綺麗な瞳は、得も言えない感情で揺れている。
切なげな顔は一瞬。すぐにモードレッドは、いつもの不機嫌なへの字口を作って、僕の胸を足で押してベッドに押しつけた。
「っし、痛み止め終わり。次はちゃんと歯磨いとけよ」
肩で口を拭って、モードレッドは素早くベッド脇のソファに寝転ぶ。シーツをかけてあげるのは僕の役目だ。
「いい加減、一緒のベッドで寝ない?」
「テメーみたいなエロ河童と同衾なんて、誰がするかよ……ッてて」
痛みと共に身じろぎし、モードレッドはソファの背もたれに顔を向けてしまった。これ以上話す事はない、という構えだ。ごねても不機嫌にさせるだけなので、僕もベッドに身体を潜り込ませる。
明かりを消すと、唇に残ったキスの残り香がする。
最早日課となっているこの魔力供給は、いつも満ち足りた気分にさせてくれる。
大切な人が側に居て、人生を共にしているという安心を与えてくれる。
現状に満足する、安易な幸せ。
いつまでも続いて欲しい、ささやかな充足感。
でもそれは、妥協と何が違うのだろう。
「……」
——ここに来て、二月目。
安らかな時間は続いている。静かな森の空気は、僕達を平穏で満たしている。
ずっと変わらない。変わって欲しくないと思う平穏が、二ヶ月。
有り難いと思う。幸せだと感じる。それと同時に、こうも思う。
——二ヶ月も、前に進めていない。
「……マスター」
暗がりの中、モードレッドの声がした。独り言のような小さな声で、彼女は僕に問いかける。
「やっぱり、ダメ……か?」
「……うん」
「……そうか」
嘘を言ってもしょうがなかった。けれど絞り出された納得の声は、僕の心に消えない無力感を残す。
「不甲斐なくてごめん。けれど、探し続けるよ。どれだけ掛かっても、君の傷を治してみせる。それが僕に課せられた使命だ」
揺るがない気持ちを口にする。試していない方法なんて星の数ある。死ぬ気で魔術を学べば、新たに使える対魔術もある。僕の人生は、まだ折り返しにも来ていないのだ。諦めるには、まだまだ早い。
暗闇の中で、モードレッドが身じろぎする気配がした。
「……気持ちは、嬉しいぜ。こんなオレに付き合ってくれて、助かってる」
「……」
「けどよマスター……お前、逃げてるだろ」
核心を突く声。
穏やかな声音が、僕の心を見つめてくる。
「呪いを解く一番簡単な方法を、お前は知ってる。知っている上で、お前は逃げてる。ここで……それ以外の方法を探そうと躍起になってる」
微睡みの混じる声。穏やかで規則的な呼吸。夢うつつに放たれる糾弾の言葉。
ぴりつく神経が、疲れ切った脳がもたらす睡魔にぼやけていく。夢見は最悪だろうと、僕はぼんやりと思った。
「……ここは良い場所だ」
微睡みの中で、僕は呟いた。奈落の底の縁で、僅かに引っかけた指に力を籠めるように。
「君が好きだ、モードレッド。このまま、ここでずっと一緒にいたい。君と一緒に、穏やかな時を暮らしたい」
「……そうだな……それはきっと、いい時間だな」
僕の呟きに、モードレッドが微かに応じる。
心の底から出た言葉。
けれどもそれは、本当に本心なのだろうか。
この願いは、現実を受け止められない、子供のような駄々ではないだろうか?
ああ、そうだ。
本当は全部分かってる。
モードレッドがここにいる。
彼女が受けた呪いは、まだ続いている。
かつて世界を生きた英雄の残滓は、まだここに影法師を落とし続けている。
——聖杯戦争は終わっていない。
安らぎに満ちた眠りに落ちたところで、その事実は、決して揺らがない。
——聖杯戦争は終わっていない。
——僕等はいずれ、戦わなくてはいけないのだ。
お久しぶりです。
色んな声を頂いたのと、もう少しやりたいことがあったので、
身から出た錆をC.C.Cしにきました。
頑張って考えたので、お付き合いいただけると嬉しいです。